フリスラン王国物語   作:灰色な人
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その日の夜のことだ。
俺達の人生が急加速を始めたのは。

「王都からの使者にございます!」

「…来ましたか。」

慌ててやってきた使用人から報告を受け、オカンが静かにうなずいた。
ちなみにここは食堂で、俺、殿下、オカンの三人で飯を食っている最中。
親父は食堂の肖像画の中でいつも静かに微笑んでいる…まあつまり、俺が生まれた直後に亡くなっている。
オカンが殿下の乳母に選ばれたのは、親父が死んだ件と関係あるらしいけど、詳しい事は教えて貰っていない。
子供の頃に教えることではないのか、ただ単にオカンが秘密主義なのか、事実がわからないので謎。

「通してあげなさい。
 使者殿の分の食事は用意出来ますか?」

「はい、直ちに。」

オカンの命令で使用人が一礼して立ち去った。

「ウィレム、立ちなさい。」

「うい、オカン。」

「オカンやめい、母上と呼びなさい。
 別に礼儀良く出来ないわけではないのに、わざと荒っぽい言葉を使うのはやめなさいと何度言えば…。」

「はい、母上。
 とは言え何度も言うように、何時もの口調は親しみを込めているつもりでありますのに。」

飯が冷えそうだが、席から立っておかないと無礼にあたる。
俺はオカンの言う通り、席から立ち上がる。

「僕も立ち上がるべきかな?」

「いいえ、殿下は王族なので、偉そうに座っていてください。
 何なら『いよぉう!よく来たな下僕ども!』とでも声をかけてあげて下さ…あいた!?」

立ち上がる準備をして俺に訪ねてきた殿下の質問に答えていたら、オカンの鉄拳制裁が。
正確に言うと、使用人の一人からお盆を受け取って縦チョップ。

「いたいけな殿下に嘘を教えない!」

「あたたたた…ういーっす。
 いやでもね母上、いくら純真な殿下でも嘘だってわかるでしょう、あれは。」

ぶったね!?親父にも殴られた事無いのに!
親父が死ぬ前、つまり俺が生まれた直後に殴られてたら、俺死んでるけどな。

「いや、わからなかった。
 ぼ、僕を騙そうとしたのか、ウィレム?」

殿下が俺を涙目で睨んできた。
あらやだ、殿下ピュア過ぎる…って、まだ9歳だからしかたがないのかな?
王族でも貴族でも、あんましピュア過ぎるのは長生き出来ないだろうから、そこら辺はおいおい教えていく事にしましょうかねと。
俺だって、永遠に一緒に居る事は出来ないわけだしね…特に男と女なら尚更。
取り敢えずは殿下に何か、上手い言い訳を考えなきゃだなぁ、これは。


第2話


「食事時でありましたか、これは失礼を。」

食堂に入って来たのは旅装の男性。
歳は40代くらいだろうか。
髭を生やしゴツい体型、いかにも騎士といった感じのオッサンだった。

「我が名はヨハネス・ファン・ミュッセンブルーク男爵であります。
 王都からの使いで参りました。」

「よくいらっしゃられた使者殿。
 私がユリアーナ・ファン・ヴァッセナール伯爵夫人です。
 そして、あちらにおわすのがカミル殿下にございます。」

「うむミュッセンブルーク男爵よ、大儀である。」

オカンの紹介で頑張ってキリッとした表情になった殿下が、誰の真似なのか知らないけど精一杯偉そうに頷いてみせた。
王族とはいえ、まだまだ子供なので威厳ゼロというか、むしろ微笑ましさすら感じる。
まあ傍目から見れば、俺も大して年の変わらないガキだから似たようなものなのだろうが。

ああそうそう、ちなみに俺の紹介は今のところ無い。
それでも身なりで召使の子供では無い事は確認できるようになっている。
要するに、オカンの縁者であろう事はわかるので、それで十分ということだ。
殿下の乳兄弟で伯爵公子っつっても、ここではただ突っ立ってるだけのガキだからしゃあない。

「陛下からの勅書にございます。」

ヨハネスさんとか言う騎士のオッサンは、オカンに国王の封印がついたロールを手渡した。
勅書というやつである。

「ふむ…やはり殿下の継承権の話ですか。」

勅書の封印を素早くナイフで切り外し、オカンは勅書を読みながらヨハネスに尋ねた。
殿下の継承権…?ひょっとして、王都で殿下の兄貴のどっちかが死んだのだろうか?
どちらも殿下よりかなり年上だったが、両方揃っていけ好かない野郎だった。
国王なんて野暮で面倒ばっかり多くて胃が疲れる職業に就きたがる莫迦だから、まあしょうがないのかもしれないが。

「殿下を王太子にすると、そういう事ですか。」

「ハッ。」

「ハァ!?」

オカンとヨハネスさんは至って静かだったが、俺は目を剥いた。
だってそうだろう。どっちとも死んでるとか想定外過ぎるわ!

「ウィレム?どうしたの…ではなくて、どうしたのだ?
 ミュッセンブルーク男爵が王太子とか言ったように聞こえたが。」

「殿下、恐れながら申し上げます。
 只今のミュッセンブルーク男爵の話から推測するに、殿下の兄上のお二人がどちらとも儚くなられた模様です。」

「はかなくなられた?」

「つまり、お亡くなりになったってことです。」

殿下は勉強不足のようだ。
あとで先生に座学追加してもらおう。

「ついでに言うと、王家直系で継承権持つのは殿下だけなんですよね。
 そして適当な男子が直系に居ない場合、女子を王とするというのがこの国のしきたりです。」

「え?父上も亡くなったの?」

王様殺しちゃイヤン。
殆ど会った事が無いとは言え、殿下の父君なのに…死んでないよね?一応確認。

「えーと…誠に恐縮至極な事をお訪ねいたしますが、陛下の御身は問題ありませんよね、男爵閣下?」

「殿下と随分仲が良いようだが…御身のお名前は?」

おっとっと、ヨハネスさんに名乗っていなかった。

「これは失礼をいたしました。
 我が名はウィレム・ファン・ヴァッセナール伯爵公子にございます。
 殿下の乳兄弟として、拙いながらも殿下の補佐をさせて頂いております。以後、お見知り置きを。」

「やはりヴァッセナール伯爵夫人閣下の息子殿でありましたか。
 陛下の御身に関してだが、至って壮健であらせられる。
 とは言え、今回の件には心を痛めていらっしゃるようだが。」

今回の件、知らねー…。
オカンももうちょっと、中央で起きてる事の情報を俺に公開してくれ。

「母上、幼き身にて知りませなんだが、王都でなにか起こったのでしょうか?」

最低限の情報くらい寄越せやこの腐れオカンとかいう意志を込めた視線を、俺はオカンに送りつつ尋ねる。

「う…うーん、子供であるそなたが本来首を挟み入れるべき事では…。」

「殿下の重大事と思しきこの事態に対して、乳兄弟である私が何も知らぬ方が良いと?」

オカンが俺や殿下に、あんまし血生臭い話をしたくないのは何となくわかる。
わかるが、時と場合を選んで頂きたい、マジで。
殿下はまだ9歳でピュアだからまあしゃあ無いが、俺にくらいは教えておいてくれないと、何がなにやらサッパリで非常に困るのだ。
今は終始クソガキ様な殿下だが、乳兄弟という縁もあるし、嫁に行くまでくらいは守ってあげたい。

「…………………。」

「母上、息子である私の事を愛しているが故に、まだ早いと思っておられるのでしょう。
 しかし、事は殿下の身にも及びます…曲げていただけませなんだか?」

俺だって、オカンの愛故だって事はわかっている。
自分で言うのもなんだが、オカンにとっては可愛い可愛い一人息子。
その一人息子に汚いもん見せたくないというのは、母親の人情というもんだろう。

「うわー、ウィレムがごく自然に丁寧に喋ってる。
 すごく胡散臭い。」

うっさいわ!
隣で蒼銀色の髪のガキが酷い事を言っているが、取り敢えず無視だ。
後でアホみたいな顔になるまで擽ってやる。

「わかりました。
 後でそなたには説明します。」

「あれ?僕には?」

殿下はピュアだから、聞かせられません。

「今日はもう遅いですし、折角なので食事を用意させて頂きました。
 卿の部下や使用人の分もこれから用意させるので、是非席について頂きたい。
 勅書の話はその後、別室にて…ウィレムも同室させますが、よろしいですか?」

「かたじけない、有難く頂戴いたす。
 勅書の件は、これほど聡明な御子息であれば、問題無いでしょう。
 殿下の乳兄弟でもありますしな。」

ふう…これでようやく飯を再開できる。
とは言え、日が落ちてから来訪するという事は、それなりに急ぎの用事ではあるはずなんだが。

「…僕は?」

仲間外れにされて、殿下ちょっと涙目。
…殿下のためなんだがなぁ、今の所は。
オカンも俺にそう思って、情報統制しているのだろうけれども。

「殿下、俺達がするのはおっかない話ですよ?
 血がドバーッとか、生首が飛ぶとか、そういう話ですよ…聞きたいんですか?」

「え?おっかない話なの?」

俺の言葉にびっくりした顔になって、殿下はオカンの方を向く。

「本当なの、ユリアーナ?」

はっはっは、殿下の信頼厚き乳兄弟なわけですよ、俺は。
なのに欠片も信じて貰っていないように感じるのは、何でだろうね~?

「はい、本当ですよ殿下。
 お化けも出てきます。」

「お化けも出てくるのっ!?」

殿下はお化けという言葉に怖がるが、オカンが言ってるお化けと殿下の想像しているお化けは恐らく違う。
オカンが言っているのは、宮廷に巣食う上級貴族の面々…って、一応うちも領地の規模では上級貴族に入るし、それだからこそ王族の乳母なんていう役目を仰せつかったわけだが、それは置いておいて…まあつまり、この王国の中枢で暗闘している暇な人達の事を指しているのだろう。
領地の事を代官に任せて王都で宮廷闘争とか、もうね。
宮中伯の類や坊さんでもないのに暇だなというか、ボランティア精神に満ち満ちているというか、金あるなというか、お前ら何時か身代持ち崩すぞというか。
いつまでも、あると思うな親と金、あと領地。




食事が終わった後、オカンと俺とヨハネスさんはオカンの執務室にて話をする事になった。
殿下はオカンからお化けの話をすると言われた結果、震えながら断固として辞退。
辞退させる口実になったのは有り難いが、殿下が怯え過ぎだったので若干心配な俺である。
いつもは元気な男の子みたいな殿下だが、ああいう所はやっぱり女の子だなぁと思う。

「後でフォローしなきゃな…。」

「あら、殿下の事が心配なの?」

オカンが普段の口調で話しかけてきた。
なんかニヤついた顔をしているが、何を勘違いしているのだか。
俺はロリコンでは無い…まあ、俺は現在子供なので、ロリコンという定義に当てはまるのかどうかは別として、そういう感情は流石に無い。

「勿論、俺は殿下の乳兄弟だもの。」

「平然と答えないでよ。面白く無いわねぇ…。」

オカンの考える面白い状況というのも、後々困るような気がするんだがなぁ…。

「へーへー、母上の楽しめる子供じゃなくて悪うござんした。
 ま…俺にとって殿下は、手間のかかる妹みたいなものなの。
 絶えず弛まぬ愛情は注いでいるから、それで勘弁して。」

「子供らしからぬ答えだわ。
 賢く育ったのは良いけど、それ以外の何をどう間違えたのかしらね?」

そこは大人の人格と記憶がプリインストール済みのガキだから仕方がないよ、オカン。
流石に面と向かってそう言うわけには行かないけど、何か御免と言いたくはなる。

「…とまあ、微笑ましい親子の会話はこのくらいにして、王都で何が起こっていたのか教えていただけますね、ミュッセンブルーク男爵閣下?」

「そなたは本当に一瞬で顔を切り替えるのですな、伯爵公子。
 子供の顔から、瞬時に理性ある大人の顔となるとは。」

急に話を振りすぎたのか、ヨハネスさんが若干驚いている。
オカンやうちの使用人は慣れているし、殿下は俺はこんな生き物だと思っているから良いけど、やはり普通の人は驚くんだな。

「宜しいか?」

ヨハネスさんが、オカンの方を向いて同意を求めている。
俺に話して良いかどうかの最終確認なのだろう。
ごつい髭面なのに、随分と気配りの出来る人だ。

「ええ、この子も殿下の為だと言っていますし。」

「では…王太子であったジルベルト殿下と、第二王子であったジェローン殿下が仲が悪かった事はご存知ですかな?」

ヨハネスさんの問いに、俺はコクリと頷いた。
王太子ジルベルトと第二王子ジェローン。この二人の不仲は流石に知っている。
なにせ毎年一回は王都に行くのが被養育者である間の王族の習わしで、乳兄弟である俺も当然ながらそれについていく。
そういう時は流石にオカンの情報統制も機能しなくなるので、俺の耳元には様々な情報が入ってくるようになるというわけだ。
主な方法は、何も知らない子供のフリして周囲の大人の警戒を解きつつ聞き出すというやつ。
頭脳は大人、体は子供の名探偵がよく使うあの手と言えばわかりやすいだろうか?
オカンや当家の使用人にはバレているんで通じないが、何も知らない連中には十分通じる手なのだ。

「事は数か月前、陛下不在の折にジェローン殿下がジルベルト殿下によって、公衆の面前で面罵された事にあります。
 理由は多少の無礼であったとか何とか。
 しかし御存じの通りあの御二方は昔から仲が悪く、今までのわだかまりもあったのでしょう。
 とうとう怒りが限界に達したジェローン殿下は、一旦自領まで戻った後に兵を連れて取って返すと王都に一気に雪崩れ込んでジルベルト殿下の館を強襲してジルベルト殿下を拘束後、目の前で妻子を惨殺。
 そしてそのまま、ジルベルト殿下を更にじわじわと嫐りながら弑されたとか。
 遺骸は正視に耐えない状況だったそうです。」

気が短い上に、後先考えて無いなジェローン殿下16歳。
さすがガラスの十代、刹那的過ぎる発想だというか、誰か止めてやれよ取り巻きども。
まあそんな子供を虐めて遊んでブチ切れさせ、挙句の果てに見せしめで奥さんとき子供を目の前で殺され、自分自身も嬲り殺しにされたジルベルト殿下も相当のアホだが。
しかし、そんな連中が王になってたらと思うと、ぞっとするわー。
スットコドッコイが王様になるとか、貴族としてはマジ勘弁。

「そしてその後、引き連れていた親衛隊と王都守備隊にあわせて、周辺の諸侯から兵を集めた陛下御自らが王都に向かわれました。」

「なんかあっさり王都が占領されたと思ったら、王都守備隊が居なかったんですね…。」

王都守備隊が王都に居なかったら拙いだろうとは思うが、まあ基本的に王直属の軍という意味合いが濃いので仕方が無いといえば仕方が無い。
親衛隊を除けば最精鋭の常備軍組織だしね。

「はい、王自ら叛乱の鎮圧に向かっておられましたので、王都には名代としてジルベルト殿下が居らっしゃったというわけであります。」

この国の王様、特技と取り柄が戦争に特化した人で、何かことが起こると何処にでも軍隊引き連れて出て行っちゃうというアグレッシヴな人なのだ。
名前はヤン16世。そして他の名前の王が多くても3世くらいまでしか居ない、故に歴史に残るうちの王様の名前はヤンだらけである。
王様なんだから、息子の名前くらいもうちょっと捻れよ歴代の王様。
ちなみにこのヤン16世陛下、戦好きだが脳筋じゃあないし腹芸も出来るが、そもそも内政が嫌いという御仁で…思い返すと大丈夫なのかこの国、気が遠くなってきたぞ。

「叛乱の鎮圧に出かけたら、第二王子が叛乱起こして王太子を弑してしまったと…陛下は怒ったでしょうね。」

「ええ、元々戦争は大の得意な上に、王の帰還に際して王都が門を閉じるなどという事はございませぬから、勝負は一瞬でつきました。
 最終的に陛下と追い詰められたジェローン殿下が一騎打ちしたのですが、陛下は一撃でジェローン殿下を鎧ごと叩き斬ったとか。
 ジェローン殿下の遺骸は、叛乱者に対する処遇として衣服を全て剥ぎ取った上で長槍で串刺しにされ、王都の門の前に三日三晩曝された後、ひっそりと集合墓地に埋葬されたそうです。」

うわぁ、実の息子にも手加減一切無しだな、あの王様。
まあ身内の謀反人だからこそ、一切手加減するわけには行かなかったというのが真相だとは思うけれども。
王様も貴族も舐められたらそこで御終いという、893な商売だからなぁ。

「…そしてその結果として、当家で養育中のカミル殿下が王太子になった…というわけですか。」

「そういう事になりますな。」

正直な話、殿下を王都に連れて行きたくない。
あまりにも血生臭過ぎるし、フォローする事になる俺が面倒臭過ぎる。
頭脳は大人でも、やっぱし見た目が子供なんだよ、俺は。

「そして、あまり大人数ではないのは、素早く動く為と…暗殺防止ですか?」

「その通りです。」

アカン、これ俺も殿下も遠からず死ぬ。
なので取り敢えず、視線でオカンに助けを求めてみる。

「…帰路には当家からも、兵を出します。」

「それは有難い申し出ですが、宜しいのでありますか?」

「当然です。
 殿下は当家が養育を任されたのですから。
 私も代官を任じ次第、すぐに王都へ向かう事になるでしょう。」

成人する手前とかなら兎に角、まだ9歳の殿下の元を乳母が離れるわけには行かない。
とは言え、まだ代官が居ない当家で、オカンが領地を離れるわけにも行かない…と、いう事はだ。

「そしてウィレム、兵の指揮はお前に任せます。」

「母上、一応言っておきますが、私はまだ成人のかなり前なのですけれども?」

国法に於いては、成人前の子供に指揮権は無い。
そして俺の体は現在10歳で、成人は16歳からである。
成人の前倒し規定などというものも無い。つまり、俺には指揮権が無い。

「フィンセントを貴方の補佐におきます。
 彼なら問題無く貴方に従うでしょうし、指揮官としても有能ですから。」

フィンセントというのは当家が雇っている傭兵で警備隊長だ。
背が高くて、ゴツくて、そして何より顔がめっちゃ怖い。
なのに元はどこかの貴族のご落胤らしく、教養はそこそこあったりする。
だからこそ、当家の領内を荒らしまわっていた盗賊討伐の為に雇った傭兵団から、うちに引っこ抜いたのだが。
この世界、基礎でも教養のある人間というのは、なかなか貴重品なのだ。
なのにフィンセントは読み書きの他、計算も出来、古代の偉人の言葉もいくらか諳んじられる。
その上、うちに来てからは戦術関連の書物を読み漁って、指揮官としてもかなりのモノになっている。
ぶっちゃけた話、すげー良い買い物だったと思う。

「フィンセントをつけて頂けるというなら、願ってもない事です。」

ちなみにヘッドハンティングしたのは俺で、そのせいなのか俺には非常に友好的に接してくれる。
だからこそ、オカンも俺の補佐にフィンセントをつけるという話になったのだろう。
唯一の問題があるとすればアレだな。これは後にわかった事なんだが…若干、少年愛の気があるという所か。
若干なんで、今のところ俺のケツが悲惨な事になったりはしていないが、ケツ触ってきたりするのがちょっと嫌…それを除くと有能なんだけどね、本当に。
そんな少年愛なフィンセントだが、普通に娼館にも行くし、実は子供も居るらしい。

「ミュッセンブルーク男爵閣下、それで出発は?」

「出来れば、明日の明朝に。」

急ぎで来ているわけだし、それは当たり前か。
しかし、せわしない。

「わかりました。フィンセントの所に行ってきます。
 彼に頼めば、明日の朝までに編成を終わらせてくれるでしょう。」

「任せます。」

オカンが頷くのを確認して、俺は部屋を出て当家の警備兵宿舎へと向かう事にした。
さて、忙しくなるぞ…と。



「おーい、フィンセント居るか?」

「あ、ウィレム坊ちゃん…どうしやした、こんなむさ苦しい所に?」

警備兵宿舎に入ると、玄関を兼ねたちょっとしたホールでカードゲームをしていた警備兵達に出くわした。
時折盗賊が出たりはするけれども、王都に割と近いうちの領地は基本的に治安も良くて、寝ずの番もそんなには多くない。
だから、夜はこうして大半の警備兵たちがのんびりしている。
フィンセントもそうだが、彼らは全員うちの警備兵という定職にありついた傭兵だ。
領民に一定の兵役を課して警備兵として使っているところもあるけど、うちは基本的に傭兵を雇って警備兵としている。
まあ彼らも大半は、領民の次男三男なんだけどね。

「それについての説明は、後でフィンセントから詳しくさせるよ。」

「フィンセント隊長なら、部屋で本読んでますぜ。
 …部屋に行くなら、俺が案内します。」

教養があり指揮も的確で仕事の出来る皆の纏め役だが、少年愛の人でもあるというのはバレているフィンセントである。
それでも人望はあるから、矢張り出来る男なのだ。
少年愛方面では欠片も信頼されていないのは、ご覧の通りだけど。
俺はフィンセントの事を信頼してるけどね。

「うん…案内頼むよ。」

案内という名の護衛を警備兵に頼む程度には。
俺だって、不幸な事故は避けたい。
まあそんなわけで、俺は警備兵に先導されてウィレムの部屋の前まで来た。
そして警備兵が、ウィレムの部屋のドアをノックする。

「隊長、ウィレム坊ちゃんが来やしたぜ!」

「おお!今すぐ開ける!」

といった直後にドアがバンと開き…。

「ウィレムぼっちゃあああぁぁぁん!」

進撃してきたゴツいおっさんを、警備兵の壁でブロックした。

『ギャアアアアアアアアァァァァァ!』

抱き合う形になったオッサンと警備兵が悲鳴を上げる…ちなみに、このオッサンがフィンセント。
まことに遺憾な事ながら、当家の優秀なる警備隊長である。

「お前のようなウィレム坊ちゃんがいるかああああああああっ!」

「ウィレム坊ちゃんは俺の後ろに…ぎゃああああああああああっ!?」

警備兵はフィンセントにぶん殴られた。
…後で特別に何か報酬あげよう。



どうも灰色です。
もう一つの方で煮詰まると、こっちに逃げたくなるというアレで、何時の間にやら書けていました。
いかんいかん…。






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