つらりつらりと語る、何不自由のない私の生活は。
友人はいらない、私はいつも臆病だからだ。
人と話すことがきつすぎて、吐き気がする。
いらない、友人なんか。
中学生の思春期の真っ只中、私はそうしてかっこつけた思想を抱いて
学校生活を過ごしてきた。
それでも、人と話すことが苦手なのは本当である。
こうして業後に、本を30分ぐらい読んで帰る。
これが私の生活であり、正義だった。
私の席は、窓際の列の一番後ろ。
私はいつもそこを「主人公席」と呼んでいる。
大抵の物語の学生の主人公は大抵この席に座ってるからそう呼んでいる。
別にそう考えた理由もないし、考えたところで誰にも話す奴はいないけどな。
今日も本を読んで帰ろうと、新しく買ってきた小説を読み始めた。
いつも30分ぐらいで帰ろうと思ったのだが、小説が面白くてクラスに誰もいなくなるまで
残ってしまった。
すると、私の前に座ってきた不届きものがいた。
「面白い?」
「・・・あぁ」
どうやら部活が終わり、教室に着替えに来た運動部の男子が私の席の前に
座ってきて絡んできたようだ。
すっかり読みふけったことを私はそこで自覚した。
身支度を済ませ、帰ろうとすると
「おい、暇だしちょっと残ってけよ」
とその男子は私に言い放った。
うざいな、絡まないでくれ。
「悪い、家の用事があるから帰る」
適当な理由を考えて、帰ろうとするが
「用事があるのにここまで学校に残って読書?」
と彼は笑って私を引き留めた。
「俺、その小説気になってんだ。どうせなら貸してよ。
貸してくれたら帰っていいよ」
なぜか悪い気はしなかった、読みかけの小説を貸そうなんて
思わないが
「いいよ、しおりの場所変えるなよ」
かわいそうだな、貸してあげよう。
「今お前すっごい上から目線で貸しただろ…
ありがとう、明日返すよ」
心の中を読まれた、誰にも読めないはずの
私の心を。
その翌日の業後
彼に本を返してもらおうと待っていたが、
どうにも待つときに読む本を家にわすれてしまったらしい。
彼が来るのは恐らく部活が終わった後だろう。
3時間ぐらい待ってようやく彼は来た。
「あれ!?もしかして待ってた!?」
君に本を返してもらうためにね
「うん、約束だっただろ?」
そうだ、約束だ。
「わり、誰かにお前の家教えてもらって返しに行こうと
思ってたけど・・・」
「まず俺の家知ってる奴なんかいねーよ」
「あ、そうなの」
これからも知るはずがない
「さっさと本返せよ」
「おっと、わりぃわりぃ」
すっと私の本を差し出してきた。
私がはさんだしおりの場所がかわってないが、
最後のページ彼のしおりらしきものがあった。
「おい、これお前のしおりだろ」
「待たせたし、あげるよ」
ちょっとおしゃれな、金属しおり。
それがお礼として私にくれた。
その時から少し、心が何かを欲した。
「なぁ」
私は、何になっただろう。
「少し話をしないか、暇なんだ」
高校に進学して別れてしまったが、今でも学校帰りに彼の家に寄ったりする。
友人はいらない、今もそう思ってる。
だが、親友はあるべきだと私は思う。