「ねえねえ、まだ着かないの?」
「もう少しだよ」
「まったく、天和姉さんは少し浮かれすぎだよ?」
「ちぃ姉さんも浮かれてると思う」
「期待はしてるけどね~。……やっぱ自分たち専用の舞台が出来るなんて聞いたら、浮かれない方が嘘でしょう♪」
俺は彼女達を売り込むための舞台と事務所を準備することになったのだ
「どんなのかな?楽しみだね~」
「広さとか、施設とか、どんなのかな?せめて曹操さまのお城の半分くらいの広さは欲しいわね」
「完成はしたけどあまり期待しない方が良いぞ」
「そうなの?」
「ついたぞ。ここだ」
4人はその場所に着いた
「………」
「………」
「……ふ~ん」
「……これが、私たちの舞台?」
「……兼事務所?」
「そうだよ」
それは、見物小屋という方がしっくりくる作りだ
「えーやだやだ!もっとおっきいのがいい!」
「こんなの舞台だなんて言わないわよ!」
「もっと踏んだり跳ねたり走り回ったり出来る広さがいいのー!」
「あたしたち三人を舐めているわけ?こんなところで歌わせようなんて、所詮あんたの期待度もその程度ってことね!」
「文句言うなよ。これが精一杯なんだから」
「やーだー!こんな狭いとこで歌えないー!」
「ちぃも天和姉さんと同意見よ。こんなところで舞台に上がるなんて、恥をかくだけよ」
「何言ってんだよ」
「ううん、これで十分」
「人和ちゃん!?」
「人和?ちょっと正気なの?ちぃたちの力はこの程度だって思ってたの?」
「違うわ」
「説明してくれるか?」
「最初の一歩はこの程度の小屋で十分。あとは私たちが稼いで大きくすればいいだけ」
「そりゃそうだけど……」
「……姉さんたちは私たちにその力はない、って思ってるの?」
「そうだよね!こんなボロ小屋、わたしたちが稼いで大きくすればいいんだもんね!」
「いやまあそうだけどさ……。なんか見くびられてるみたいでやだなぁ」
「見くびられていると思うなら、後で吠え面かかせてあげればいいのよ」
人和はそれだけ言うと、小屋に荷物を下ろして施設の確認をし始めた
「はぁ~っ、仕方ないかぁ。人和の言うことももっともだし」
「(人和の一言であっさり話が進んでしまった)」
「それにしても……ほんっと、こんなところにみんなきてくれるのかなぁ」
「来てくれるじゃなくて、来させるのが、天和姉さんたちの仕事でしょう」
「そーそー!ちーちゃんの魅力に掛かれば一発コロリでしょ♪」
「そうですか…宣伝の方は俺も手伝うから」
「……じゃあこれ」
人和は俺に一枚の書簡を突きつけた
「なんだこれ?」
「宣伝に使った瓦版屋の請求書。必要経費なんだから……城で払ってくれるんでしょう?」
「それくらいなら………なんだこれ!!」
思わず目を丸くする
「な!なんだよこれ!いくら何でも」
「それくらい必要よ。確認したもの」
「この値段だと、軍馬が百頭くらいは買えるぞ!!」
「当然でしょう。こういうのは、最初に大きく風呂敷を広げる方は効果があるもの」
「そうそう。要ははったりだよねー」
「うんうん」
「わかったよ。なんとかしてみるよ」
「じゃ早速取りに行って。そして配っておいてね」
「ほら、早く早くー!時間が惜しいんだから」
「はあ…わかりました(一人で配れるかなこれ?)」
そう思いながらその場を離れ、瓦版屋に向かった
「さて、これをどうするか?」
俺の目の前には、瓦版屋で引き取って来たチラシが大量に積まれている
「コンボでも使って配ろうかな」
と思っていると
「お腹すいたー」
「今日は何食べようかな……あれ、兄様?」
「季衣に流琉じゃないか。飯食いにきたのか?」
「うん、そうだよ。兄ちゃん、なんかおもしろそーなことやってるねー」
「何かお手伝いしましょうか?」
「ありがとう。二人ともお願いするよ」
「良いよ♪それで何を手伝えばいいの?」
「此処にある物を皆に配って欲しいんだ。今やっている仕事に必要なんでね」
「へぇ、これを皆に配って宣伝するんですか」
「なんか面白そうだね!」
二人は興味津々にチラシに目を通し始めた
「ねぇねぇ兄ちゃん、これなんて読むのー?」
「ん?……やくまんしまい?これじゃ面白くないから、数え役萬しすたーずで良いんじゃない?」
「しすたーずって?」
「天界の言葉で姉妹ってこと」
「ふーん……」
「それじゃあ、これを道行く人たちに配っていこう」
「頑張りましょう!」
「おー!」
その後、二人の活躍もあってチラシは全部配り終わった。二人に御礼としてお駄賃を上げた後、天和達に所に行くと
「みんなーまだまだ行けるかな~?」
「いぇーーーぃっ!!」
「でも、そろそろおしまいの時間だよ~」
「ええーーーーっ!!」
「大丈夫、また会えるから」
「おおーーーーーーっ!!」
「それじゃあ最後に一曲、聞いてくださいね!!」
三人は満面の笑みで、大きく手を振りながら舞台の上に立っている
「すごいな、三人の力は。こんなに皆を熱気させるなんて」
三人の実力を目のあたりしながら、舞台を見ていた。
その後、3人と一緒にご飯を食べに行き、初ライブを終えたのだった