TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第百八席 関羽、江東に再び降り立つのこと

水平線まで広がる長江の上空、一羽のカモメが飛んでおり、木製の大船が港に停泊する

 

「……」

 

愛紗は、ようやく呉に到着し船から降りる

 

「関羽殿」

 

「おお、孫権殿」

 

すると孫権が直々に出向いてくれた

 

「お久し振りです」

 

「いや、こちらこそ……そちらは?」

 

愛紗は孫権のそばにいた少女について聞く

 

「これは軍師見習いの」

 

「呂蒙と申します」

 

「関羽殿、長旅でさぞ御疲れでしょう。まずは屋敷の方へ」

 

「あの~蓮華姉様?」

 

見るからに拗ねている孫尚香がおり、陸遜と周泰は苦笑している

 

「シャオ達も帰って来たんですけど~?」

 

「あっ、あら、ごめんなさい!」

 

孫権は慌てて孫尚香の元に向かう

 

「小蓮。周泰からの文によれば、隠忍自重して、見事務めを果たしたとか。

 

「尚香様、隠忍自重というのは、我慢して軽はずみの行動をしないという意味ですよ」

 

陸遜が孫尚香の耳元で教える

 

「分かっているわよ!それくらい」

 

「偉いわ、良くやったわね」

 

「まっ、シャオにかかればあれくらいの任務、どうって事ないわ」

 

姉からの好評価に、喜ぶ孫尚香であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

港から移動し、孫家の屋敷まで案内される。その道中、一人の女性と鉢合わせする

 

「おお、尚香殿」

 

「黄蓋!」

 

尚香は駆け寄る。そのまま黄蓋に抱きつき、彼女もそのまま抱き止める

 

「もう戻っておられたれたのか」

 

「うん、さっきの船でね」

 

「関羽殿、こちらは黄蓋。我が家に古くから仕える宿将です」

 

孫権が自己紹介を行う

 

「古くからは余計じゃ」

 

「お初にお目にかかります。関雲長と申します」

 

「おお、そなたが……袁術の所では、尚香殿が随分世話になったとか」

 

「あっ、いや、別に……」

 

少し驚いていた

 

「……」

 

その光景に笑みを浮かべる黄蓋であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ謁見の間へと向かう

 

「しかし、まさか袁術の所でシャオと鉢合わせするとは…姉様も、その時の話を聞きたがっているので、是非」

 

孫権は扉を開けると

 

「ああもう!うるさいわね!!」

 

瞬間、即座に扉を閉じた

 

「何度も言われなくても分かってるわよそんな事っ!」

 

「分かっておられないから申し上げているのですっ!」

 

「ちょ、ちょっとお待ちを……!」

 

動揺を隠せずにいる孫権。客人を待機させ、素早く中へと入室した

 

「姉様!周瑜!関羽殿達が来たと言うのに、何を言い争っているのです!?」

 

すると、孫尚香は面白がる様に、扉に近づいて耳を寄せる

 

「だって冥琳があんなに分からない事を言うから!」

 

手招きをし、愛紗は自分が呼ばれたことに気付かず、キョロキョロする

 

「だって冥琳があんなに分からない事を言うから!」

 

そして孫尚香は愛紗の手を引いて、扉に近寄る

 

「だって冥琳があんなに分からない事を言うから!」

 

近寄ると中からの声が、よく聞こえてきた

 

「それは雪蓮の方でしょ」

 

楽しそうに聞き耳を立てている孫尚香

 

「何ですって!?」

 

「事実を述べたまでです」

 

「何があったかは知りませんが、客人が来ているというのに喧嘩は止めてください!関羽殿の耳に入ったらみっともないじゃありませんか!!」

 

孫権の言葉に苦笑いを浮かべる愛紗であった

 

 

 

 

 

「よく来たわね関羽、孫家はあなた達を歓迎するわ」

 

謁見の間へと通される愛紗。しかし、玉座に座る孫策の表情は、怒りを押し込め、何とか笑みを浮かべ、どこか無理をしているようだ

 

「袁術の所では、尚香様の手助けをしてくれたとか」

 

それは、周瑜も同様であった

 

「それについては礼を言うわね」

 

そして二人の距離が遠く、離れていた

 

「……」

 

気まずそうに抱拳礼する愛紗であった

 

「ねぇ、周瑜ってば何で雪蓮お姉さまからあんなに距離とってるの?」

 

「尚香様、そこは気づかない振りをすると言うのが大人の対応というものですよ」

 

陸遜は小声で伝える

 

「ふ~ん」

 

二人による険悪な空気が屋敷中を包み込んでいるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ない、お恥ずかしい所をお見せしてしまって」

 

屋敷内を案内される愛紗

 

「いえ。誰にでも、虫の居所が悪い時というのはあるものですから、あまりお気になさらずに」

 

「はぁ……ところで関羽殿は、江東丸を求めて我が家へ参られたとか」

 

「はい。御家に代々伝わる貴重な品だと思うのですが、僅かで結構ですのでお分け頂ければと」

 

「あ、いえ…確かに江東丸は我が家に代々伝わる物ですが、特に珍重している訳でもありませんし、お分けするのは一向に構いません。ただ何処にあるのか分からなくなってしまって……多分、幾つかある蔵の何処かにしまい込んであると思うのですが、先ほど紹介した呂蒙に言い付けて、収蔵品の目録を調べさせています」

 

提灯を片手に倉庫内を捜索する呂蒙だが中には書物や置物などの物品が収納されており、とにかく数が尋常ではない上に蔵はここ一つだけではないので気が遠くなる様な作業をする呂蒙であった

 

「闇雲に探し回るより、そちらの方が早道かと思うので、しばらくお待ち下さい」

 

「お手数かけて申し訳ありません」

 

「いえ、小蓮が任務を果たすに当たって、関羽殿には一方ならぬご助力を頂いたとか。その礼として、これくらいの事はさせてください」

 

「いや~、ご助力という程の事は……」

 

袁術の所でのことを思い出す愛紗であった

 

「当家に滞在中はこちらの部屋を使いください」

 

そして、宿泊部屋へと案内される

 

「かたじけない」

 

「あと、何か用があれば、この周泰に」

 

孫権のそばに周泰がいた

 

「周泰、粗相のないようにね」

 

「はっ」

 

「ところで関羽殿…勇作殿は元気でしょうか?黄巾の乱で怪我をしたと噂をしたので」

 

「ご主人様ですか…まあ少し厄介な」

 

「そうですか」

 

「心配いりません。大丈夫ですから」

 

「…わかりました。早く治るよう願っています」

 

「はい」

 

「(まさか孫権殿は……いや、そんなはずない。ご主人様は私の事が……ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、孫尚香はというと

 

「ほんと嫌になっちゃうわ!」

 

黄蓋とお茶をしていた

 

「せっかくシャオが初仕事を終えて帰って来たっていうのに、雪蓮姉様と周瑜も喧嘩しててろくに褒めてくれないんだから」

 

饅頭をやけ食いし、茶を啜る孫尚香

 

「普通だったら、よくやったわね小蓮、ご褒美に新しい服を買ってあげるわとか、流石尚香様、此度の功績を鑑みて来月から小遣いを倍にしましょう、くらいは言ってくれそうなもんなのに~~!!」

 

「まあ、それはないと思うが……」

 

「何とかしてよ~黄蓋…あなたウチで一番古いんだから」

 

「だああああ!!」

 

テーブルをひっくり返す黄蓋

 

「一番ではない!張昭のじじいはワシより古株じゃあ!!」

 

黄蓋に年齢や古いって言葉は禁句のようであった

 

「んん……それはさておき…あの二人、子供の頃から時折喧嘩をする事はあったが、今回はいつもより些か根が深い様じゃな」

 

黄蓋は立ち上がり、廊下の手すりにもたれながら、空を仰ぐ

 

「放っておいては政にも支障が出かねん。ちょっと探ってみるか」

 

こちらを振り返る黄蓋。その意図を察したのか、ニヤリと口角を曲げる孫尚香であった


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