TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者 作:ヒーロー好き
橙色に染まった空。そびえ立つ山々も、夕焼け色に染まっている。勇作達は、森の中を歩いていた
「う~ん、やはりさっきの分かれ道。反対の方へ行くべきだったようだな…」
「このままだと、野宿か」
日が沈みかけるのを見て、愛紗と星はそう述べる
「鈴々、お前の占い通りにしたらこの様だ。当てにならないにも程があるぞ?」
「うぅ……」
愛紗がそう言うと、鈴々はお腹に手を添えている
「どうした?鈴々」
「お腹、痛いのだ……」
「だから言っただろう。茶店を出る時、厠に行っておけと」
「そんなんじゃなくて」
「愛紗!鈴々の様子がおかしいぞ!」
「えっ!」
「お腹がきりきりして…すごく、痛くて……っ!」
お腹を押さえて、その場に蹲る
「おい!!鈴々!?」
「鈴々ちゃん!」
「ぅぅ……ぅ…」
愛紗や朱里が声をかけるも、返事を返す事も出来ない位に苦しんでいた
「しっかりしろ!」
「ん?あっ!」
劉備が何かを見つける。目線の先には、煙が見えていた
日が沈み、辺りが完全に夜へと変わった。暗闇に包まれた森。その中で、一人の男が横たわった木を椅子代わりにして、焚き火をしていた
「突然、申し訳ない」
「ん?」
視線を向けると、勇作達がいた。勇作は鈴々をおんぶしていた
「実は、連れの者が急な病で、良ければ火に当たらせてもらえぬか?」
「何っ?病!」
その男は立ち上がる
「なら、俺に見せてみろ」
「えっ?」
「心配するな。俺は医者だ」
その男の指示に従い、地面に薄い毛布を敷いて、鈴々をそこに寝かせる。男は鈴々の腹を触診していく
「ここは痛いか?」
「ぅ……ぅ…痛くないのだ」
「昼は何を食べた?」
「鰻を揚げたのと、ご飯…後さっき、茶店でおっきな瓜を………」
鈴々がそう説明すると、男は何かに反応した
「ここか…!」
その男は、両手にそれぞれ一本の針を取り出す
「一体、何を…?」
「病根を滅する坪に針を刺し、そこに氣を流し込む」
男は、針を天にかざす
「我が身!我が針と一つなり!心気同体!全力全快!病魔服滅!」
「(な…何をする気だ)」
「元気にぃなぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
男の体が眩い光に包まれ、針も同様に輝きを増していく。その光に驚きを隠せない。その氣は周りの木々の葉を激しくカサカサと揺らしている。男は針を鈴々の右ひざ、右手の甲に軽く刺した
「病魔…退散っ!!」
針をゆっくり抜いていく。すると光が収まる
「あ、あれ…お腹、痛くなくなったのだ!」
鈴々は、自身のお腹を摩りながら起き上がらせる
「えっ?ほ…本当にもう大丈夫なのか?」
「チクッ!としてピキューン!てなってハッ!て気づいたらもう治ってたのだ」
先程の事が嘘の様に、明るい声で答える
「恐らく食い合わせが悪くて、胃の府が引き付けを起こしたのだろう。痛みが収まったのなら、もう心配ない」
「突然押し掛けたのにも関わらず、難儀な所を救って頂き、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
勇作と愛紗が礼を言って頭を下げる
「何、医者は病に苦しむ者を救うのが使命。礼には及ばんさ」
「申し遅れましたが、我が名は関羽」
「鈴々を治してくれてありがとうなのだ♪」
「こちらは連れの公明に、劉備殿」
「諸葛公明と申します」
「劉玄徳です」
「常山の趙子龍……そしてこの方が我らの主である」
「高杉勇作です」
「俺の名は華陀。旅の医者だ」
「(えっ!!華陀!!この人が………女ではないな)」
「華陀…もしかして、五斗米道の」
「ちっがぁぁぁぁう!!」
大声で否定した。
「五斗米道ではなく…ゴッドヴェイドォォォォォォォォ!!…だ」
いきなりハイテンションの掛け声で叫ぶ華陀。それを見て苦笑いを浮かべる一同
「うん…大事な事なので、正しい発音を心がけてくれ」
「わ、分かりました…」
「それで朱里。そのごと…ごっ…ごと?」
「ゴッドヴェイドォォ!だよ」
「おお…!素晴らしい発音だ!」
「そうですか?普通に言っただけですけど?」
「だが、間違わずに言ったのは先生と俺以外では、お主が初めてだ!ありがとう。今日から俺達は友達だ」
と勇作を手を取り、握手する
「(………友達)」
困惑する勇作だが
「ありがとう!俺の事、勇作と呼んでいいよ」
「そうか、俺の事は華陀と呼んでくれ」
二人は友達になった
「(こんな友達、欲しかったな………)」
「朱里、その、ゴッドヴェイド~~!というのは?」
「はい。ゴッドヴェイド~~!というのは、漢中を中心に奉行している道教の教団で、貧しい者に施しをしたり、病に苦しむ者を治したり、という活動をしているんです。聞いた所では、華陀さんはその、ゴッドヴェイド~~!の中でも一番の名医とか」
「ほう、ゴッドヴェイド~~!一の名医か」
「はい、ゴッドヴェイド~~!一の名医です」
「ゴッドヴェイド~~!一とは凄いですね」
「ゴッドヴェイド~~」
「ゴッドヴェイド~~」
朱里と鈴々は二人でゴッドヴェイド~~を連呼している
「お主等、段々楽しくなってきているだろ…?」
「(そうでもしないと言えないのかこれ?)」
「うんうん、良い発音だ」
しばらくして
「太平要術?」
焚き火を囲う様に座り、勇作達は華陀の話を聞いていた。鈴々はすやすやと眠っている
「ああ、俺はその本を探し、封印するよう教団から命を受けて、こうして旅をしているんだ」
「太平要術っていったい?」
「太平要術というのは、只の妖術書ではなく、それ自体が妖力を持つんだ」
「妖力を持つ?」
「妖術というものは、例えその術の使い方を知ったとしても、それに応じた力。所謂、妖力がなければ使う事は出来ない」
「つまり、武術の型を知っていても、それ相応の体力や見のこなしがなければ、戦いでは意味をなさないようなものか」
「まあ、そんなところだ」
「(そんな本があるのか)」
「だが太平要術は、自ら妖力を持つが故、少しばかり妖術の心得があれば、それを用いて様々な術が使える様になる。そしてその妖力の源が、苦しむ民の怨鎖の声なのだ…乱れた世を恨み、平和を乞う力程、強い物はないからな……」
「あの、民の恨みの声を妖力に変えるのって、悪い事なんですか?」
「ん?」
「だって、その妖力を使って民が喜ぶ様な事をすれば、世の中良くなる様な気が……」
「ああ、そうだ。本来はその様に怨鎖の声を妖力に変え、それを使った妖術を苦しむ民を救う為の書物だったのだが……いつしか太平要術自身が、まるで自らの意思を持つかの如く、妖力を蓄える事、事態を目的とする様になってきたのだ」
「……」
「どうやら太平要術は、それを手にした者の、胸の内にある…悪しき心を擽り、妖術で世を混乱させようと仕向けるらしい」
「成程。そうすることで民の間に怨鎖の声が高まり、太平要術はより多くの妖力を蓄えられるようになるという訳か」
「なんて恐ろしい……」
「(民の怨鎖の声……もし見聞色の覇気を使ってその声を聴いたら……いや、やめておこう)」
「で、その太平要術がこの辺りにあると……?」
「実は、曹操が内々に太平要術を探し求めていると聞いてな」
「曹操殿が?」
「もし、既に手に入れているのなら、訳を話して、封印させてもらう。まだならその危険性を説き、入手を諦めさせるつもりだ」
「う~ん」
愛紗は腕を組む
「どうした?関羽殿」
「いや、私は曹操殿を知っているが、あの御仁の性格からして、そうした物に頼る様な方とは思えなくて……」
「確かに」
「そうか。ならば深い訳があるのかもしれんな……」
翌朝
快晴の下、勇作達は昨日出会った華陀と共に道を歩いていた。先頭では昨日の事がなかった様に、鈴々が劉備と一緒に張三姉妹の歌を明るい声で歌っている
「鈴々ちゃん、元気一杯ですね。昨日、腹痛を起こしたのが嘘みたい」
「子供は元気が一番。あの様子なら、母上も安心だろう」
華陀は愛紗を見ながらそう言った
「は…母上!?」
「それはどういう……」
「ん?違うのか?」
「(まただよ)」
「ち、違います!鈴々は私と姉妹の契りを結んだ仲で……ていうかそもそも!私は子供が出来るような事はまだ一度も!!」
「お。落ち着いて!」
「!!」
視線を外す愛紗
「あっ!」
「ん?」
「大変!」
劉備が向こうの方を指差す
「人が倒れています!」
全員でその方向へと駆けつける。森の茂みを掻き分けながら行くと、一人の女性が地面に横たわっていた。女性の顔の周りには、赤い血らしきものがベットリと付いていた。
「(これは!)」
華陀は直ぐ様女性の側に座り、呼吸や心音を確かめる
「息はあるか?それとも……」
「華陀殿、容態は?」
華陀は目を大きくする
「どこも悪くない…!」
華陀以外の全員がその場にずっこけた
「だ、たが!それならその血は一体」
「…大丈夫なのです」
声がする方に全員が後ろを振り向くと、少女が一枚の布巾を持って立っていた
「それは鼻血なので、ご心配には及ばないのです」
「(えっ!これが?)」
その少女は女性の近くに寄り、上半身を少し起き上がらせる
「稟ちゃ~ん。ほら、近くの小川で手拭いを濡らしてきたから、おっきしてこれでフキフキしましょうね」
そう言いながら、眼鏡の女性の顔を拭いていく
「けど鼻血って……その血溜まり……」
「どうなっているの?」
困惑する一同であった