TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第六十四席 典韋、曹操に試されるのこと

夕食を食べ終えた一行は宿へと戻り、一休みしていた。そこへ、とある客がやって来た

 

「これは、夏候淵殿」

 

曹操の部下の一人、夏候淵がそこにいた

 

「えっ?曹操殿が先程の礼を?」

 

「はい。当家では月に一度、華琳様自ら腕を振るって、招いた客人をもてなす美食の会というものを開いております。明日の昼よりそれを催しますので、刺客より救っていただいたお礼として、是非関羽殿とお連れの方達をお招きしたいと」

 

「美食の会って、何をする会なのだ?」

 

「美食というのは、美味しい料理の事ですよ。だからきっと、何か御馳走してくれるんじゃないでしょうか?」

 

「「ご馳走!?やったぁ!」」

 

劉備と鈴々は二人してその言葉に反応する。お互いハイタッチするほどの喜び様だ

 

「こら鈴々!はしたないぞ!」

 

恥ずかしい所を見せるな、と愛紗は怒鳴る。二人はビクッ!と震え、縮小する

 

「あ、いや、劉備殿はその、なんというか程々に……」

 

「それでは主の招き、お受け頂けますね?」

 

「もちろんなのだ!明日の朝ごはんは、おかわりを三杯までにしてお腹を減らしとくのだ!」

 

「あははは」

 

苦笑いする愛紗

 

「…………」

 

「あの…ご主人様」

 

「ん?」

 

「どうしたんですか?難しそうな顔をして」

 

「…いや、なんでもない!どんな料理が出るのかなと考えていただけだよ」

 

「そうですか」

 

「………」

誤魔化す勇作。その様子に朱里は心に悪い予感を抱いたが、気のせいだと気にしなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日となり、場所は曹操のいる屋敷に移る。屋敷中のとある一室。中は薄暗く、一本の蝋燭だけが灯されているその部屋に、黒のマントを羽織った一人の少女がいた。少女の目の前には、肉・野菜・魚と、料理に欠かせない食材が台の上にずらりと並べられていた。少女は食材の中から一粒の梅を手に取ると、前に進む

 

「(出てきたか)」

 

 

部屋から出ると、目前に調理するために必要な器具やらが置かれている調理台。高い場所に配置された観客席から見下ろしているのは、少女から見て、右側に位置するのが魏の面々。反対が招かれた勇作達一行である。周りを少し見渡すと、愛紗に視線を向ける

 

「関羽、よく来てくれたわね。他の者達も、今日は私の料理をゆっくり楽しんでいってね?」

 

曹操は手に取った梅をかじると、舌を刺激する酸味に身を震わせた。

 

「それでは只今から、美食の会を始めるわ!」

 

曹操はエプロンを着け、早速調理を開始する

 

「曹操殿が料理も嗜まれるとは…」

 

「古代より料理の道は兵法に通ずと言いますし」

 

「そんなの聞いた事ないんだけど…」

 

「あぁ…さっき青梅をかじった時の酸っぱそうな華琳様のお顔…あれを思い出すだけで唾が湧いてくるわぁ……」

 

「別にそうでなくても、貴様は華琳様の御姿を見ては妄想を逞しくして四十涎を垂らしているではないか」

 

「春蘭、あなたこそ下の唇から四十、涎を垂らしていて乾く暇もないんじゃないの?」

 

「なっ、何を根拠にそんな事を!私がそうなっている所を見たとでも言うのか!?え!」

 

「あ、姉者。此れから物を食べようという時にそうした話題はちょっと……」

 

「私とて、好きで下の唇の話をしているのではない!桂花が……」

 

「分かった分かった。分かったから姉者、調理中に煩くしては華琳様の邪魔になる」

 

曹操は、てきぱきと調理を開始していた。今は魚介類を手にかけている

 

「見事な手つきですね」

 

「うむ、本職顔負けだな」

 

「どんな料理が出来るんでしょうね?」

 

「楽しみなのだ」

 

そこに、侍女が六個のコップがある御盆を手にやって来た

 

「飲み物と前菜を御用意しましたので、先ずはそれをお楽しみ下さい」

 

侍女は、コップを六人の前に出す

 

「曹操様が好物の蜜柑で御作りになった、果実酒です」

 

コップには芳醇な香りを漂わせる橙色の果実酒が入っており、勇作と愛紗、劉備と星はそれを口にする

 

「おお、これは…」

 

「初めて飲むが、悪くないな」

 

「美味しいな」

 

蜜柑の果実酒を飲み、絶賛する四人。他の二人はというと

 

「何で鈴々達はあれじゃなくて、山羊の乳なのだ?」

 

「大人の事情です」

 

魏の面々にも蜜柑の果実酒が出された

 

「はぁ~~~~……何て芳醇な香なの」

一口飲んだ後、コップを覗く荀彧

 

「(仕込みのために、美しいおみ足でみかんの身を踏みつぶす華琳様のお姿が目に浮かぶよう…そしてこの独特の風味!きっと滴る汗が中に落ち、それが絶妙な隠し味となっているんだわ。あぁ~果実を踏んでみかん色になった華琳の足をお舐めしたい。指のまたに下を這わせて綺麗にしたい!)」

 

「(お~い…何を想像しているんだ)」

 

「(いえ…いっそのこと………私が汁気たっぷりの果実となって華琳のおみ足に踏みしだかれてみたい!あぁ~もっと!もっと!)」

両の頬を押さえ、悶え始めた

 

「曹操軍は百合百合しいとは聞いていましたが、まさかこれ程とは……」

 

「野放しにしとくのは、何かまずいじゃないか?)」

 

「(いや…もう手遅れだと思うよ)」

 

そうしている内に、前菜の一品が目の前に置かれた

 

「温泉卵でございます」

 

「鶉の卵かしら?」

 

荀彧は黄身をスプーンで掬うと、それを口に運ぶ

 

「あ!こ、これ、もしかしてウミガメの卵?鶏卵では決して出せないこってりとした濃厚な風味。一見単純だけど奥の深い味だわ」

 

「(う、ウミガメの卵!……逮捕されないよね…これ食べても)」

 

「うぅ、こんなんじゃお腹の足しになんないのだ…」

 

鈴々は一口で食べ、勇作は躊躇しながらも食べた

 

「出来たわ。まずは一品目、江東の長江で獲れたススキの洗いよ。付け合わせに蜀の生姜があれば良かったのだけど、手に入らなくて…」

 

「口の中にまったりとした脂が広がり、舌の上で蕩ける様。吟味に吟味を重ねた素材の良さを損わない絶妙な仕上がりですわ」

 

「これ向こうが透けて見えるのだ。こんなに薄く切るなんてとんだケチンボなのだ」

 

「(刺身でも美味しいけど、お寿司にして食べたかったな)」」

 

ぶつぶつと言う鈴々。心の中でいう勇作

 

「蜂蜜に漬けた熊の掌の佃煮でございます」

 

「(何で佃煮…しかも熊の手)」

 

「燕の巣をチョウザメの卵の塩漬けで和えた物でございます」

 

「(初めてのキャビア)」

 

「軽く炙ったガチョウの肝臓に西方から取り寄せた松露の薄切り添えでございます」

 

「(これ…フレンチだよね)」

 

「ああもう!ちまちました料理ばっかで全然お腹一杯にならないのだ!こんなんだったら町の食堂で食べた典韋の料理の方がずっとずうっとおいしいのだ!」

 

「おい!ちょっと!」

 

「…それは聞き捨てならないわね」

 

「い、いや、子供の言うことなので、お気になさらずに……」

 

「私の治める地にそんなに腕の良い料理人がいるなら、その者の作った料理、是非食べてみたいわ。春蘭、その者を連れて来て頂戴」

 

「ぐむっ!?ふぁ、はい!」

 

口に含んだ料理を詰まらせかける夏候惇

 

「(あははは………………)」

 

この状況に苦笑いをする勇作。その後、ある場所を見続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、典韋が来て、は調理台の前に立っていた

 

「あのぅ、これは一体……」

 

「典韋とやら、聞けばそなたは中々の腕を持つ料理人とか。貴女の作る物を食べてみたいわ…そこにある材料は何を使っても良いから、何か一品作ってみなさい」

 

後ろにあるありとあらゆる食材を目にする

 

「何か一品……」

 

「すんごいの作ってクルクル頭をギャフンと言わせてやるのだ!」

 

「(クルクル頭って)」

 

「と言われても……」

 

腕を大きく振り、典韋に声援を送る鈴々。少し困惑するが何かを思い付き、顔を引き締めた

 

「分かりました!何とかやってみます!」

 

典韋はいつものエプロンを着け、調理に取りかかる。他の一同はその様子をじっと見つめている。包丁でトントンと慣れた手つきで食材を切り、中華鍋で炒める。今度は小麦粉等をこね、それに炒めたものを入れ、丸める。更にそれを竹を編んで作られた容器に入れ、蒸していく

 

「できた!どうぞ召し上がって下さい」

 

出来たのは肉まんであった。想定外だったのか、あまりにも普通過ぎて呆気にとられる魏軍

 

「いただきますなのだ!」

勇作たちは肉まんを食べる

 

「ん~おいしいのだ!」

 

「中のお肉は羊ですね」

 

「麻婆のピリ辛味が食欲をそそるな」

 

「この歯応えはメンマか?」

 

「皮もホクホクで美味しいですよ」

 

「確かに、美味しいな!」

 

六人が感想を述べるなか

 

「(肉まんか……)」

 

曹操もその肉まんを口にする

 

「(皮の食感は申し分ない。具に混ぜ混んだ細かく刻んだメンマの歯応えもいいわね。ただ、ちょっと味付けはしつこいかしら?羊の肉につけた下味と麻婆が互いの良さを打ち消しあっている)」

 

「あ!?これってもしかして……」

 

「この肉まんがどうかしたのか?」

 

「ほら、羊の肉に麻婆にメンマ。これってみんな典韋の店で食べて私たちが気に入った物じゃないか?」

 

「ああ、確かに!」

 

「皆さん、昨日の昼と夜、続けてうちの店に来てくれましたよね」

 

「(俺は夜だけだったけど)」

 

「どちらの時も、その三品を注文してたから、きっと気に入ってもらえたんだと思って…それで、急なことで何を作ったらいいか分からなかったから、皆さんの気に入っているものを一つにしちゃおうって考えたんです」

 

「成程、それでこの肉まんを」

 

「ただ、初めて作ったものだったから、味付けがちょっとちぐはぐな感じになってしまったんですけど……」

 

「…………」

 

「確かに、街の料理人が作ったにしては、良い味でしたけど、華琳様には叶いませんわ」

 

「いいえ桂花。私の負けよ…」

 

「えっ!?」

 

「関羽への礼の為と言っておきながら、私は招いた相手の好みを聞きもせず、自らの腕を見せつける様な料理を出してしまった。これでは、もてなしの心得がないと言われてもしょうがないわ」

 

「……」

 

「それに比べて、典韋は突然の事だったにも関わらず、食べる相手の好みを第一に考えて料理を作った。これは、明白に私の負けよ……」

 

「あの、それはちょっと違うんじゃないでしょうか?」

劉備が声をかける

 

「ん?違うって何が?」

 

「曹操さんは、関羽さんの為にと思って、一生懸命料理を作ったんですよね?だったらそれも、充分立派なもてなしの心だと思います。それに、張飛ちゃんにはちょっと口に合わなかったみたいですけど、私は曹操さんの御料理も美味しいと思いました。ていうか、そもそも料理に勝ち負けなんてないんです。ご飯は皆で楽しく食べるのが正解なんです」

 

「皆で楽しく食べるのが正解……勝ち負けなんてない……?」

 

一瞬呆ける曹操だが、すぐにフッと笑う。呆れが混じりつつも、綺麗な微笑だ

 

「全く、とんだあまちゃんね…」

 

「(皆で楽しくか……)」

 

突然、ガシャン!と典韋の後ろにある部屋から大きな物音が聞こえた

 

「(な、何だ!!)」

 

一人の侍女が悲鳴をあげながら逃げてきた

 

「た、大変ですっ!食材の牛が突然…きゃあ!」

食材の一つでもある牛が鼻息を荒くし、侍女を押し退けてその場に乱入

 

「郭嘉!貴方の鼻血で目つぶしよ」

 

「い、いや…赤い見せたら余計まずい事になるのでは」

 

牛は周りを少し見渡すと、ある一点に視線を向ける。目に捉えたのは、典韋。牛は狙いを典韋に定め、突進してくる

 

「(まずい!)」

 

劉備は顔を覆い、勇作は身を助けようと下に降りる

 

「……え?」

 

すると勇作の目に飛び込んできたのは

 

「う、ぐくくく……!!」

 

典韋が牛の頭から生えている二本角を両手でしっかりと握り、その動きを止めていた

 

「うぉぉりゃあああああっ!!」

 

典韋はそのまま、牛を上空に投げ飛ばした。牛は屋根を突き破り、空中で高速回転しながら、星となった

 

「(…嘘)」

 

ある意味予想だにしていなかった結末に、その場はしーんと静まり返る

 

「はぁ、びっくりした」

 

その場の全員、ズッコケる。

 

「びっくりしたのはこっちよ!」

 

「(あははは………………やっぱ悪来典偉だわ)」

勇作も内心驚きながら、動いた

 

 

 

皆が落ち着きを取り戻し

 

「えぇっ!私が曹操様の親衛隊に!?」

 

「ええ。貴女の怪力。このまま眠らせておくのは惜しいわ。よければ、私の側で仕えてはもらえないかしら?」

 

「私なんかには勿体無い御話ですけど、でも今働いているお店の事もありますし、急には……」

 

「勿論、今すぐにとは言わないわ。店の主人とよく話し合って決めて頂戴」

 

「…はい、分かりました」

 

「実は前から、料理について語り合える者が身近に欲しいと思っていたのよ。残念ながら、我が軍には料理の味が分かるものがいなくて……」

 

「稟ちゃん…早速良い後輩が出来そうで良かったですね」

 

「馬鹿……私は…私は…」

涙を浮かべる郭嘉

 

「貴女が私の所に来てくれるのを、楽しみにしているわ」

 

「はいっ!」

 

「(これでめでたしめでたしだな…それにしても鈴々といい、許緒といい、この子といい、何で小さい武人がこんな怪力の持ち主なんだよ。秀吉もびっくりするな!)」

 

そう思いながら勇作は、調理場に置いてコップを取り、飲む

 

「!?ちょっとアンタ!!」

 

「……」

荀彧はそれに気づき声を上げる

 

「それ!華琳様がこの後飲む果実酒なのよ!何飲んでいるのよ!!」

 

「!!」

 

勇作はすぐにコップを調理台に置く

 

「……」

頭を下げる勇作

 

「謝って済むはずないでしょう!」

 

「よしなさい!桂花!」

 

「しかし華琳様!」

 

「良いのよ…彼に貸しがあるし」

 

「でも」

 

「桂花」

 

「わかりました」

 

「高杉」

 

「………」

 

「これで貸し借りなしよ!次は無いわ」

 

「………」

 

「ご主人様」

 

愛紗が声を掛けるが反応がない

 

「………うっ!」

 

突然、首を押さえつけて苦しみ出す

 

「ご、ご主人様!!」

 

その光景に驚く皆

 

「……がは!」

 

次の瞬間、勇作の口から赤い液体が吐き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れた

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