TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者 作:ヒーロー好き
勇作達は御堂に案内された。化け物の方は、造形がよくできており、口の開閉は化け物の後ろにあるレバーらしきもので行っていた
「(ほえ~すごいな!長曾我部軍に登場しそうな兵器並だな)」
勇作はその完成度に驚いていた
少女は、化け物騒ぎの理由を語った。隣に少年三人もいる
「私達は皆、孤児なのです。賊に両親を殺された者、病で親が亡くなった者。事情は各々異なりますが、行き場も無く彷徨う内に、一人二人とこの御堂に住み着く様になり、橋の下に捨てられていた子や、行き倒れた親の側で泣いていた子を連れてくる内に、この人数になってしまって……」
少女が話す中、劉備は四人の小さい子供達の遊び相手になっている
「野草を摘んだり、近くの農家の手伝いで得た僅かな食べ物で飢えを凌しのいでいる私達にとって、雨露を凌げるこの御堂は、大変有難いものだったのですが、御領主さまがここを壊して別荘を建てる事になり……」
「成程、それで化け物の振りをして、近づく者を脅かしていたのか……」
「はい、そうすればいずれ誰も近寄らなくなり、取り壊される事もなくなるだろうと……」
「許せないのだ!今から袁術の所に乗り込んでぎゅぅ~っと言わせるのだ!」
話を聞いていた鈴々は、声を上げて立ち上がる
「まあ、待てって鈴々。そうした所で根本的な解決にはなるまい」
「じゃあどうするのだ?」
「朱里、何か良い考えはないか?」
「そうですねぇ……上手くいくかどうかは分かりませんが、化け物の事を鵜呑みにしている袁術さんが相手なら、打つ手はあると思います」
「それじゃあ……」
「朱里はおっぱいはちっちゃいけど、頭はいいのだ!」
鈴々の言葉に心を痛める朱里
「だから大ダコに乗った気でいるのだ」
「それを言うなら大ブナであろう?」
「「大船です(だよ)!」」
途端、その場に笑いが起きた。皆が楽しく笑っている中、一人だけ複雑な表情を浮かべる少年がいた。劉備と勇作はその事に気になっていた
「今から山を下りるのは大変でしょう?良ければ今夜は泊まっていって下さい」
少女からの誘いを受け、今晩はここに泊まる事にした
朝、チュンチュンと鳥の囀りが朝の挨拶をした。すると、扉が開く音が聞こえ劉備は目を覚ます。すると気になっていたあの少年がおり、そのまま真っ直ぐ歩いていく。劉備が少年の後を追う
少年が辿り着いたのは、森の中にひっそりと置かれている、小石で積み上げられた小さな石の山。少年はその前に座り、肩を小さく揺らし、涙を堪えていた
「母ちゃん……!」
「早起きなんだ?」
声が聞こえ、腕で目を拭く。振り返ると、劉備がいた
「な、何だよ……びっくりするだろ」
「ごめんごめん」
「もしかして、お母さんのお墓?」
劉備は少年の目の前にある石に視線を向ける
「俺の母ちゃんだけじゃなくて、皆の父ちゃんや母ちゃんの墓。下には何も埋まってねぇけど、そうしようって皆で決めて……」
「そう………」
劉備は悲しく表情を曇らせる
「ねぇ、お母さんにお花摘んであげない?」
「何でだよ?花なんて、そんな女みたいな……」
「何言ってるの?お花摘んであげれば、お母さんきっと喜ぶよ?ね?」
劉備は早速、近くに生えている白い花を摘む。摘み終えると、それを少年に手渡す
「はい。このお花、お母さんに渡してあげて」
「……」
少年は素直に受け取ると、それをお墓に供える。少年の頬は少し緩み、劉備も様子を見て、静かに微笑んでいた
「………」
その様子を後ろから勇作は見ており、そしてその場を後にした
勇作達は袁術の屋敷に戻った
「おお!それでは、見事化物を退治したのか?」
「はい」
「ほ~それはでかした!よくやったのじゃ!」
「しかし、彼奴に止めをさした宝剣はその霊力を使い果たし、光り輝く塵となって、敢えなく消え失せてしまいました……」
「なんと……それは残念なのじゃ」
朱里は残念そうに物語る。袁術も同じ様にするが、大して気に止めていないようだ。
「しかしまあ、あの宝剣は化物を退治した暁には、お主等に与えると約束していたもの。失った事は責めはせぬから、安心してよいぞ」
「有り難き幸せ!只、一つ気掛かりな事が……」
「何じゃ?申してみよ」
袁術に促され、朱里は口を開く。
「どうやらあの化物は、貧しさが原因で死んだ子供等の怨霊が寄せ集まって生じたものらしく、年貢を下げ、孤児院を作り、貧しい者に施しをしなければ、いつまた現れるやもしれません」
必死に語る朱里。だが、袁術は欠伸をするなど、まともに聞き入っている様子は見当たらない
「どうかこの事、心に留め置き、お考え下さい!」
孔明の説得が終わり、一行が退室した謁見の間。張勲が持ってきた蜂蜜水を受け取り、袁術はそれを飲み干す
「天下に二つとない名器で飲む蜂蜜水は格別じゃのぅ……しっかし、あやつらも間抜けじゃのう。妾にこの茶碗を預けた事をすっかり忘れていると見える」
「はあ…まぁ、それはいいとして…孔明とやらが言っていた件。どうします?」
「ん?貧しい者に施しをせねば、また化物が出るというやつか?」
「はい……」
「う~ん…正直、妾は自分の事以外にあまりお金を使うのは好きではないのじゃ」
「けど、そのままにしていてまた化物が出たらどうします?」
「ま、その時はその時じゃ。化物が出てから考えればよい」
「さすが美羽様♪惚れ惚れする様な短絡思考!考えの無さは中原一」
「うははは♪苦しゅうない、もっと褒めてたも」
似たようなバカ笑いをする袁術であった
袁術から用意された客室。宝剣も無事に取り戻し、一件落着…なのだが
「朱里よ。私の見た所、袁術はあの程度の脅しで素直に言うことを聞く相手とも思えぬが……」
「実際、そうだよ。まったく懲りてないよあれ」
勇作は覇気でさっきの会話を聞いてそう思うのであった
「多分そうでしょう」
「では……?」
「さっきのは前振り。本番は今夜です」
街や城の人々が寝静まった頃、勇作達は袁術のいる寝台の間へと進んでいた
「良いですか?怨霊の振りをして、死ぬ程袁術さんを怖がらせ、貧しい者に施しをする気にさせるんですよ?皆さん、準備は良いですか?」
以上が、軍師孔明が練った作戦である。指揮をする朱里は五人の準備を確認する
「ま~か~せ~て~お~け~…!」
「お~ば~け~だ~ぞ~」
「わ~た~し~も~で~す~」
「ふんにゃー!」
「……」
スタンバイはオーケーな様だ
「な、なんかノリノリですね……」
「うむ、私はこういう達の悪い悪戯が死ぬ程死ぬ程好きでなぁ」
「だと思いました……」
「(怒った時の紫苑に似ているような)」
「所で、鈴々ちゃんの格好は一体……」
「しちゃいけない所でオシッコすると、夜中にやって来てへそを舐めるという恐ろしい妖怪。ふんにゃもんにゃなのだ!」
「えっと…とにかく妖怪なんですね?」
「(何かアニメで出てきそうな妖怪だな。それ)」
全身を藁で羽織り、顔に虎の縞模様を赤い線で描き、鼻には黒鼻が付いて頭の上には豚の形をした陶器を乗せている
「愛紗さん、劉備さん。どっちがどっちかよく分かりませんが、お願いします」
「おうっ!」
「はい!」
愛紗と劉備は、頭から白いシーツを被っただけで、目穴もちゃんと空けてある。髪型のせいか、頭の片側だけ盛り上がっているお化けがいる
「ご主人様は」
「俺の国に居ると言われる妖怪総大将のぬらりひょんだよ」
特徴的な形状をしたはげ頭の老人の被り物をし着物を着た姿をしていた
「その被り物は」
「借りた」
「そ…そうですか…では皆さん、行きますよ?」
「「「「「「お~~……」」」」」
夜なので、掛け声は小声で行った
「ちょっと待て」
すると勇作が一同を止めた
「どうしました?」
「いや……袁術の寝室に誰かいるぞ?」
その時、袁術の寝室から悲鳴が聞こえた
少し、時間を戻し
寝室では、天蓋付きベッドで袁術が眠っていた。寝言を言いながら寝相を悪くする袁術。彼女の足を、誰かがユサユサと揺さぶり、起こそうとする
「う〜ん…何なのじゃ……妾はまだおねむなのじゃぁ……」
ゆっくりと瞼を半開きにする。目の前には、見たことのない女性がいた
「誰じゃ…?見たことのない顔じゃが……」
途端に、女性の顔が骸骨へと変貌した。眼球のないしゃれこうべとなり、上顎と下顎をカタカタと鳴らす。
「ひっ!?」
目を見開き、目の前の事が現実と思い知る
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
時間を戻し
「「「「「「っ!?」」」」」」
廊下で待機していた勇作達は、逆に驚かされる。悲鳴を聞いて、直ぐ様駆けつける。すると尻餅をついて、壁に背を預けている袁術がいた
「わ、悪かったのじゃぁ!も、もう無駄遣いはせぬ!年貢も下げる!孤児院を作って貧しい者に施しもする!蜂蜜水も飲み過ぎぬ様にする!じゃからもう許して……ひぃいい!!」
命乞いする様に、袁術は必死になる。勇作達は呆気に立ち尽くしていた
「ほ、本当じゃ!絶対じゃぁ!じゃからもう許してたも~~~!!」
翌朝、袁術の街から旅立ち、勇作達は野道を歩んでいた
「う~ん…それにしても昨夜のあれは、いったい何だったんであろうな」
「きっと本物のお化けが出てきた袁術を懲らしめたなのだ」
「何言っているんですか…お化けなんているわけないじゃないですか」
「じゃあ袁術はなにをあんなに怖がっていたのだ?」
「そうですね…たぶん化け物退治の報告をしていた時に、話していたことが心に残っていて、それで怖い夢でも見たんじゃないですか?」
「それにしては、ちょっと様子が尋常ではなかったように思うが」
「そうなんだよな……あの寝室には袁術のほかにもう一人気配を感じたんだけど…いったい誰だったんだ?」
「まあいいじゃないですか。理由はともあれ袁術さんもやる気になってくれて」
「張勲殿に聞いた所では…まずは炊き出しをして貧しい者に食を施し、孤児院も早々に作る手筈を整えたようだし」
「まつりごとが良くなるんなら悪夢様様です」
「そう言う事だな」
談話しながら歩いていると、森の方に視線を向ける。木の側には、両手で白い花束を持っている女性がいた。女性はこちらに向けて深くお辞儀をする。劉備はそれに気づき、微笑みながらお辞儀する
「(あれ…この気配)」
勇作は気配のした所に視線を向けた。劉備ももう一度振り返ると、そこには誰もいなかった
「どうした?劉備殿」
「あ、いえ…なんでも」
その女性は小石で積み上げられた小さな石の山の中に消えた
「何はともあれ、劉備殿の宝剣も取り返せたし、めでたしめでたしだな」
「これも皆さんのおかげです。ありがとうございました」
「後は桃花村へ帰るだけ」
「ここからはのんびり行くのだ」
「って今までも結構のんびりしてた様に思えますけど……」
談笑しながら、桃花村へと足を進める一行。その道を、太陽の光が眩しく照らしていた……だが
「………」
勇作はどこか思いつめた表情をしていた
「ご主人様」
「ん?」
その様子に朱里は声を掛けた
「どうしたんですか?思いつめた表情をしていましたが」
「……いや、なんでも」
「嘘です……言ってください!」
「……わかった。なんか今回の事で……俺、無力だなって思ってな」
「無力ですか?」
「うん、覇気で町の人達の声がすごく聞こえてくるんだ。すごく元気のない声や、さっきみたいな子供達の悲しい声がすごく」
「……」
「分かっていても何もできない…何をすればいいかわからない。そう思うとすごく無力で、俺なんか役に立ってないなと思っちゃってさ」
「そんなことないですよ!」
劉備が言って来た
「え?」
「関羽さん達から、いろんな所で凄く助けられているって聞いてます。だから自信持ってください」
「……ありがとう」
その後、愛紗達からの励ましなどがあり、勇作の心は晴れ、皆の絆は深まるのであった