TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第九十一席 劉備、決意し新たに旅立つのこと

「……落ち着いた?」

 

「……はい」

 

劉備を落ち着かせた勇作

 

「ところで、この人は?」

 

勇作が何進を指差す

 

「無礼であるぞ!わらわは何進大将軍じゃ!!」

 

「(えっ!!何進!!この人が!!)」

 

名前を聞き、驚く

 

「え~と、頭のそれは?」

 

「それは、何進殿」

 

「うむ」

 

勇作と劉備は席に座る

 

「全ては張譲の罠だったのじゃ!」

 

「張譲って宮廷の宦官を統べる十常侍筆頭の?」

 

「そうじゃ!妾と奴は、政敵としてずっと反目しあってきたのじゃが、ある時皇帝陛下より急な御召しがあって宮中に参内すると……!」

 

何進はくやしそうにテーブルをバン!バン!叩く

 

「あやつめは、妾を無実の罪に陥れ、怪しげな薬を無理矢理飲ませてこの様なおぞましい物を……」

 

「たんぽぽはそういうの可愛いと思うけど」

 

「ふざけるでない!妾は貪欲にして卑劣な宦官共の次に猫が嫌いなのじゃ!それにこれでは南蛮に住むという蛮族も同然。こんな格好では、もはや人前にも出れぬ…死ぬよりも辛い屈辱じゃ……!」

 

「そういう訳で、何進殿が人目を避けて山中を彷徨っている所を出くわしてな」

 

「そういうわけで、何進殿が人目を避けて山中をさまよっているのを出くわしてな…俺が医者だとわかると泣きつかれ、それで調べた所…何進殿は猫子丹を飲まされたらしい」

 

「猫子…丹?」

 

一同は頭をかしげる

 

「この薬は服用した者を徐々に猫へと変化させる効用がある」

 

「憎む相手を本人が嫌いなものに変えるなんて、あまりいい趣味じゃないですね」

 

「まったくだ!」

 

「(そんな薬もあるんだ…どうやって用意したんだ?)」

 

「この薬の解毒剤を作るには、三つの材料が必要でな…泰山の頂上という過酷な環境の中、一度花を咲かせるや、いつまでも散る事がないという持久草。江東の孫家に伝わる秘薬…その名も江東丸。そして南蛮の奥地にだけ生息しているという、南蛮象之臍之胡麻」

 

「(ああ…なるほど、そいうことか)」

 

「本来なら、自分で集めるべき所だが、俺には太平要術を探し出し、封印するという任務がある。聞けばそなたらは、何進殿とは満更知らない仲ではないとの事」

 

「(俺は初めて会うけど……)」

 

「ここは一つ人助けと思って、解毒剤の材料を集めては貰えぬか?」

 

「わかりました、お引き受けしましょう。なあ、姉上」

 

「ええ」

 

「おお!!」

 

「引き受けてくれるかや!?」

 

「いつぞやは鈴々を、そして今日は助からぬかと思ってた姉上を救ってくれた。その華陀殿の頼み、嫌とは言えまい」

 

「ごめんね、心配かけて……。皆も心配してくれてありがとう!!」

 

「しかし、腐っているのを食べてしまうほど劉備殿がメンマ好きだったとはな」

 

「(たぶん、違うと思うけど)」

 

「だが、今度勝手に食べた時は容赦せぬからな!!」

 

「はい」

 

「しかし、江東や泰山ならまだしも、南蛮となると、ちと遠いぞ?愛紗」

 

「え!あ、そ、そうだな……」

 

「そんなに遠いの?」

 

「そうですね…南蛮といえば、ここからは南西に当たる蜀の地に入り、更に南へ進んだ所…辿り着くまでに何日かかるか」

 

「あの、南蛮象之臍之胡麻なら、水鏡先生が薬の材料としてほんの少しですが、お持ちになってます」

 

「お~」

 

「ですから、私が水鏡先生の所に行って分けてもらってきます」

 

「そうか!では、南蛮象之臍之胡麻は朱里に頼むとしよう」

 

「けど、朱里一人だと心配だから、鈴々がついていってやるのだ」

 

「それじゃあ私も」

 

「朱里!鈴々がついているから、どーんと、大豚に乗ったきでいるのだ!」

 

「愛紗、あの組み合わせで旅をさせるくらいなら、いっその事朱里一人で行かせた方が安心ではないか?」

 

「ん?」

 

「……確かに」

 

組み合わせを見て、不安になる愛紗

 

「もちろん、愛紗とお兄ちゃんも一緒に行くのだ!」

 

「そのつもりだけど」

 

「え?いや…私は江東へ行く」

 

「何でなのだ!?愛紗とお兄ちゃんは鈴々といつも一緒なのだ!」

 

「江東の孫策殿と面識があるのは、私を除けばお前とご主人様と朱里だけだ!三人が行くのであれば、私が行くしかなかろう。それともお前がこっちにくるか?」

 

「ぶ~~~」

 

「私たちのことは心配ないから」

 

「一緒が良いんでしょ?」

 

「鈴々はもう子供じゃないのだ!!愛紗がいなくても立派にやってみせるのだ!!」

 

「分かった分かった。後は…星、泰山の方はお主が行ってくれるか?」

 

「うむ、任せろ」

 

「だったらあたしも行くぜ。もう留守番は御免だからな」

 

「たんぽぽも~」

 

「お前は留守番だ!」

 

「えぇ~なんで?」

 

「当り前だ!!お前はまだ修行中なんだからここで大人しくしてろ!」

 

「そんな~」

 

「文句があるんなら西涼に帰ってもいいんだぞ!」

 

「っ!!ちぇ~」

 

「一緒にお留守番してましょ」

 

「璃々も一緒!!」

 

「どうやら、話が纏まった様だな」

 

「よろしく頼むぞ」

 

「俺は先を急ぐので、すぐにここを発つが、猫子丹の解毒剤の作り方は、これに書いておいた。材料さえ揃えれば、作れるのはそう難しくはない。孔明殿程の薬草の知識があれば、大丈夫だろう」

 

「分かりました。それは私がお預かりしておきます」

華陀から手渡され、大事に保管する朱里

 

「しかしじゃな」

 

何進が勇作を見る

 

「……」

 

正確には勇作の右目を見た

 

「おぞましいな。その右目」

 

「何進殿!!」

 

「大丈夫ですよ。華佗殿」

 

「勇作」

 

「華佗さん」

 

「何だ?劉備殿」

 

「ご主人様の目、何とかならないですか?」

 

「すまぬが、俺もわからないんだ。あるとすれば」

 

「すれば?」

 

「太平要術を封印すればあるいは」

 

「それじゃ!!」

 

「だが、俺もこういうことは初めてだから。確信があるわけではない」

 

「封印できても、このままもあると」

 

「ああ」

 

「そんな」

 

「そうですか……治らないかもしれないか」

 

「すまない!俺の力がないばかりに」

 

「治らないなら、いっそのこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀・で・え・ぐ・り・取・ろ・っ・か・な・右・目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作がつぶやいた言葉にその場にいた誰もが驚愕した

 

 

 

 

 

「な、なにを言って」

 

「ん?」

 

「そんなこと」

 

「そんなのだめ!!!!」

 

劉備が大声を上げる

 

「ご主人様!!そんなことしてはだめです!!」

 

「え?え?」

 

「そうです!!」

 

「主、なんてことを」

 

「いや?あの?」

 

「そうだぜ!それを言うなんて」

 

「そうだよ」

 

「そうです!変な事考えないください!」

 

「ご主人様、だめ」

 

「お兄ちゃん」

 

「え?あの」

 

「右目をえぐるなんてこと絶対するな」

 

「ど、どういう?」

 

「勇作が自分で言ったんだろう」

 

「そ、そんなこと言ってたの?」

 

「わからかったのか?」

 

「あ、ああ」

 

勇作は全然覚えていなかった。無意識で出たのであろう

 

「右目をえぐるなんてそんなこと言っちゃだめ!!両親が悲しむよ」

 

「両親がね…たしかに生きていればね」

 

「生きていればって」

 

「うん、俺が小さい時に事故で死んじゃったんだ」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「いいよ。それにやっぱり悲しむね。両親が生きていたら」

 

「……」

 

微妙な雰囲気になる

 

 

グ~~~~

 

 

その時、勇作のお腹が鳴った

 

「………あ、ごめん」

 

「ご主人様、お腹すいたの?」

 

「うん!ちょっとね」

 

「無理もない。あの状態で食も進まなかったのだからな」

 

「はい」

 

「出発は明日にしませんか?」

 

「そ、そうだな」

 

「そうとわかれば今すぐ用意しますね。腕を掛けて頑張りますね」

 

「あ、ああ」

 

「何進さんも華佗さんも一緒にどうぞ」

 

「すまない」

 

 

こうして、出発は明日になった。だが劉備の表情は晴れなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。劉備は空を見ていた

 

「………」

 

「眠れないのですか?姉上」

 

そこに愛紗がやってきた

 

「はい…ご主人様のことで」

 

「しかしあれは」

 

「わかっています。けどどうしても考えてしまうんです」

 

「……」

 

「私のせいで、ご主人様は」

 

「姉上」

 

「私どうしたら分からないんです。この罪をどう償えばいいか、どうしたら」

 

「姉上」

 

愛紗は劉備を抱きしめる

 

「愛紗ちゃん?」

 

「一人で抱え込まないでください。不安なら一緒に考えます」

 

「けど」

 

「あの時、言ったではありませんか。私達は、世の中を変える為の仲間だと。私たちを頼っても良いのですよ」

 

「愛紗ちゃん」

 

「まだ寝てないの?」

 

二人が振り向くと、勇作がいた。右目に包帯を巻いて

 

「ご主人様」

 

「その包帯は?」

 

「華佗殿に巻いてもらった」

 

「ご主人様、私」

 

「劉備、さっきも言ったはずだよ。気にしてないって」

 

「けど」

 

「それに一人で抱え込むより周りも頼ったら…愛紗も言った通り俺達はお互いを助けあう仲間なんだから」

 

「ご主人様」

 

「それで罪を償う方法が思い浮かんだら、俺に言っても良いよ。俺もそれに納得するから」

 

「じゃあ、二つほど言っても良いですか?」

 

「ああって二つ!?」

 

「ご主人様、私のこと桃香って呼んでください」

 

「それ真名じゃあ」

 

「何時までも劉備じゃなくて桃香と呼んでください。ご主人様」

 

「…分かったよ桃香。それでもう一つは?」

 

「私が、私がご主人様の右目になります」

 

「………え?」

 

「あ、姉上!!」

 

「いや、あの劉備さん」

 

「桃香!!」

 

「桃香さん。何を言って」

 

「私のせいで右目が見えなくなったんです。だから私がその代わりをします」

 

「いや、そういうことでは」

 

「駄目なんですか?」

 

「そういう訳では」

 

「うるうるうるうる」

 

「わ、分かりました。お願いします」

 

「はい!!ご主人様!!」

 

「(なんか勢いに押された感じだな)」

 

心の中でそう思う勇作であった

 

 

 

 

 

 

翌日、出発の時間となり、勇作達は門前にいた

 

「皆の者すまぬな…わらわのために」

 

「何進殿、困ったときはお互…い…うふふふ」

 

愛紗は何進の猫耳を見て笑う

 

「そこは笑うところではなかろう」

 

猫耳を触ろうとする璃々を睨む何進

 

「ん?馬岱の姿が見えんが?」

 

「一緒に連れてってもらえないもんだからすねてるんだよ。まったくいつまでたっても子供なんだら困っちまうぜ!」

 

「やれやれなのだ」

 

鈴々も呆れたように言う。背中に背負っている大きな箱を担ぎ直しながら

 

「それより主?」

 

「何?」

 

「眠そうですが、大丈夫ですか」

 

「ああ」

 

「まだ呪いが」

 

「違うよ!大丈夫だから」

 

「そうですか」

 

「(本当はあの後、なぜか償いだとか言って、桃香となぜか愛紗と三人で一緒に寝ることになって、そのせいで眠れなかったなんて言えない)」

 

「皆!!元気でね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作達は見送られながら、村を出発。新たな旅が、始まったのであった


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