TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者 作:ヒーロー好き
空は橙色に染まり、もう夕暮れ時、庭園にて掃き掃除を行っている雛里。覚えたことを口ずさみながら、作業を行っている
「雛里ちゃ~ん!」
「ん?」
遠くから自分の名を呼ぶ声が聞こえた。その方向を向くと
「雛里ちゃ~ん!」
「朱里ちゃん……」
雛里は喜びの笑みを浮かべ、朱里の元に向かう。距離が零となり、二人は手を繋ぎ合う。
「久しぶり~元気にしてた?」
「うん……」
「鳳統ちゃんは水鏡先生の弟子で、孔明ちゃんの妹弟子にあたるだよ」
「へぇ~」
「送ってもらった本、凄く勉強になったよ」
「本当?よかった~。なら今度は、もっとすごい物を送るね」
「うわぁ、楽しみ……」
「(何を送ったんだ…いったい?)」
「あら、朱里!」
この小屋敷の主である、水鏡が姿を見せた
「水鏡先生!」
朱里は、水鏡の元へ駆け寄り、甘える様に抱きついた
「おかえり、朱里」
水鏡もうれしそうに抱きしめる
「(微笑ましいな)」
心の中でそう思う勇作であった
「朱里ちゃん」
「何?」
「その……勇作さんは?」
「え?」
「勇作さんはいないの?」
「ご主人様も来ているには来てるんだけど」
「けど…」
「何かあったの?」
「………」
屋敷に招き入れて貰い、客間にて事情を説明する
「妖術による呪いですか」
「はい」
「書物でそういうものもあるとは知っていましたが」
「先生、直す方法は無いんですか?」
「ごめんなさいね。私も知らないのです」
「そんな」
「すいません。力になれなくて」
「気にしないでください。そう言う目的で来たわけではないので」
「たしか、南蛮象之臍之胡麻が必要なのね?」
「はい。貴重な物だと思うのですが、これも人助けの為、ほんの少しでいいので分けてもらえませんか?」
「元よりあれは、人を苦しみから救う薬の材料として手にいれた物。人助けに使ってもらえるなら、正に本望。それに、朱里がお世話になっている皆さんの頼みとあらば、断る事なんて出来ないものね」
「先生、ありがとうございます!」
快く了承してくれた。一同は礼を述べる。水鏡は早速、その薬がある部屋へと向かう
「おかしいわね……」
引き出しを開け、中を探している水鏡。だが、目当てのものである薬が見当たらない
「確かに、ここに入れてあったと思ったのに……」
「見つからないんですか?南蛮象之臍之胡麻」
「貴重な物だから、紛れてしまわないよう、○秘と書いた赤い紙に包んでこの中にしまっておいた筈なんだけど……」
「……っ!」
「私の思い違いかしら……」
「あ、あの……先生……」
「ん?どうしたの?」
両手の指を合わせながら、モジモジと落ち着かない様子を見せる雛里
「え、えと……あの………いえ、何でもないです」
何も言い出さずに終わってしまった。
それから客間へと戻り、全員で夕食を堪能していた。
「ごめんなさいね、朱里。南蛮象之臍之胡麻、すぐに見つかると思ったんだけど……」
「先生、謝らないで下さい。寧ろ、急にやって来た私達が悪いんですから」
「ねえ、南蛮象之臍之胡麻って、どっか他では手に入らないの?」
「洛陽の市で売ってたりしないのかな?あそこは国中の珍しいものが買えるって聞いたけど」
「そうですね……ものすご~く運が良ければ、どこかのお店にあるかもしれませんが、その可能性はとても低いと思われます」
「低いって、どれくらい?」
「砂漠の砂の中から、目当ての一粒を探し出す位でしょうか」
「そんなに!?」
「それに今、洛陽にはあまり近づかない方がいいと思うわ」
「都で、何かあったんですか?」
「大将軍の何進が、宦官の張譲に追い落とされた事は、あなたも当の本人から聞いて知っているわね」
「はい」
「その後、張譲は何進の代わりに、并州刺史の董卓を宮廷に招き入れたの。自分の手駒となる兵が欲しい張譲と、匈奴征伐で失敗した国力を宮廷の援助で回復したい董卓。当初は、利害が一致してうまくいっていたのだけど、何が原因か…最近は対立するようになってきて、都は随分混乱しているとか」
「じゃあ、やっぱり南蛮に行って探すしかないんだ」
「けど、南蛮象は大変珍しい動物で、実物はおろか、絵姿すら伝わっていないんですよ。探すと言っても、どうすればいいのか」
「南蛮に覇を唱える孟獲大王が、南蛮象を飼っていると聞いたことはあるけど、風の噂で本当かどうか」
「そうなんですか」
「とにかく、明日もう一度探してみましょう。私の勘違いで、どこか他の場所にしまっているのかもしれないし」
「ご主人様」
「ん?」
「ご主人様は南蛮象がどういう生き物か知っていますか?」
「劉備さん…いくらなんでも」
「知っているよ」
「「「「「えっ!!」」」」」
勇作以外驚く
「お兄ちゃん!南蛮象知っているのか」
「それが俺が想像している動物ならな」
「どういう姿か書いてほしいのだ」
「わかった」
「朱里!筆と紙」
「はい」
「(いや、驚き過ぎるだろう……それにしても洛陽がそんなことにな…)」
勇作は洛陽の事を考えていると筆と紙が置かれた
「じゃあ、書くよ」
書こうとした時
ピタ
紙の上に何かが落ちる
「……赤?」
それは赤い水滴だ
「(なんで赤が?)」
顔を上げる勇作
「「「「「「っ!!」」」」」
驚きの表情をする桃香達
「どうしたの?」
「め、目の包帯が…」
「包帯?」
手で包帯を触ると
「…え?」
手に血痕が付いた。紙に着いたのは勇作の血だったのだ
「(な、何で!血が!!……あれ、俺泣いているのか?)」
気付かないうちに勇作が涙を流していることに気付いた
「(何で?)」
「先生!!包帯!!」
「わかました!!」
「いや、大したことじゃあ」
「「「「「じっとしてください(のだ)!!!!」」」」
「はい!!(なんで息ピッタリなの!!)」
そんなこんなで夕食を終える一同であった
夕食が終わり、勇作は自分の部屋で休んでいた
「ふう、お風呂気持ち良かったな」
「失礼します」
雛里が部屋に入ってきた
「大丈夫ですか?」
「ああ、心配ないよ」
「そうですか」
「雛里」
「はい」
「夕食の時から気になってたけど、何か悩み事でもあるの?」
「っ!」
「俺で良ければ相談に乗るよ」
「いえ、大丈夫です。失礼しました」
そそくさと部屋を出る雛里であった
「(何か隠しているのはわかるんだが、くそ!覇気を頼りにし過ぎたな。失ってありがたみがわかるとはこのことだな)」
皆が寝静まった頃、眠っていた鈴々はうなされていた
「待て待て~!待つのだ~~!」
素早い動きで屋敷内の廊下を走り回る一匹の小豚とそれを追いかける鈴々。階段を駆け上がり、誰もいない部屋に逃げ込んだ。ゆっくりとした足取りで、小豚に近づいていく
「食べたりしないから……逃げちゃ駄目なのだ……」
そのまま部屋の中で小豚と鬼ごっこを繰り広げていく
「こらこら、待つのだ!!」
机の上に乗り掛かり、そこから地面の上へと飛び降りる
ガシャン!
何かが割れる音が響いた
「……」
肩を震わせ、ゆっくりと振り返る鈴々
「うわああ!!」
地面の上には、隅の部分が大幅に欠けている硯が落ちていた
「こ、これは……朱里が大事にしている硯……!」
知るや否や、一気に顔を青ざめる
「はわわ~!ど、どうすればいいのだ!ばれたらきっと目茶苦茶怒られるのだ~~!!」
パニック状態となり、慌てふためく鈴々。
「っ!!」
そこで気がついた。何やら、背中に視線を感じ、ゆっくりと振り返る
「………………」
「あ、あ……」
状況を察知し、後ろの扉前にいたたんぽぽは、ニヤリと小悪魔の様な笑みを浮かべていた
「うわああああ!!はあ、はあ…夢だったのだ」
夢だとわかり、安心する鈴々
「ほっとしら、おしっこ行きたくなったのだ」
部屋をでる
「え~とたしか、厠は庭の隅っこに…ん?」
何か、物影が動くのを見つけた
「ん!!あれってもしかして…泥棒なのだ!?」
鈴々の声に皆が目を覚ます
「どうしたんですか!?鈴々ちゃん」
朱里がランプを片手にやってきた
「曲者を捕まえたのだ」
「えっ!曲者!!」
明かりを照らすと
「雛里ちゃん!!」
正体は背中に大きな風呂敷包みを背負って目を回している雛里であった