TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第九十七席 呂蒙、暗殺を阻止するのこと

試験当日

 

「………」

 

問題を全て解き終え、孫権が採点を行っている

 

「………」

結果が気になるのか、呂蒙は時折様子を窺う。孫権が立ち上がったと同時に、慌てて席につく

 

「………」

孫権は腕を組んだまま、寝台に腰かける。少しのため息をついた後、呂蒙は孫権の前に立つ

 

「あの、孫権様……試験の結果は?」

 

「試験の……結果は……」

思い詰めた表情を見て、呂蒙も顔が強張る

 

「……………合格よ」

晴れやかな笑顔を見せる孫権

 

「へぇ!?」

呂蒙は思わず呆けてしまう

 

「おどかさないでください」

 

「ごめんなさい。心配そうな顔をしていたから、つい」

 

「よかったぁ……もし不合格だったらどうしようかと…」

主の寝台に身を投げ出す呂蒙

 

「あっ!?」

無作法に気づき、急いで体を起こすが、孫権がそれを優しく制した

 

「そのままでいいわ。二人きりなんだから、堅苦しい事は抜きにして、寝転がってお話ししましょう。そっちの方が楽でいいわ」

 

「はあ」

 

「試験、七割で合格って言ってたけど、八割以上正解してたわよ。これだと何かご褒美をあげなくちゃね」

 

「ご褒美、ですか?」

 

「そう、何か欲しいものある?」

 

「欲しいものとは、違うんですけど……一つお願いが」

 

「何?」

 

「私を、このまま孫権様のお側で仕えさせて下さい!

 

「それは駄目よ」

 

「えっ……?」

 

「だって……それは私からお願いしたい事だから。あなたへのご褒美にはならないわ」

 

「孫権様……」

 

「合格おめでとう」

 

「……ありがとうございます」

 

「あの」

 

「どうしたの?」

 

「一つ聞きたいことがあるんです」

 

「聞きたいこと?」

 

「はい、甘寧様のことで」

 

「甘寧の」

 

「はい、私…親衛隊の訓練で甘寧様と手合せすることがあるんですけど、一度も勝てなくて…努力はしているんです」

 

「………」

 

「けど、まったく歯が立たなくて少し自信を無くしかけているんです。なんで甘寧様はあんなに強いのか知りたくて」

 

「それ、甘寧から聞かなかったの?」

 

「すいません。とても聞けるようなことではなかったので」

 

「そうね。しいて言うならあれかしらね」

 

「あれと言いますと」

 

「呂蒙は高杉勇作って知ってる?」

 

「はい。天の御使いと噂とされ、黄巾の乱で1万の黄巾党の兵を何もしていないのに倒したという」

 

「そうね。天の御使いどうか分からないけど何もしないで倒したって事はあり得るかもね」

 

「どうしてですか?そんなありえないことなのに……なんで?」

 

「実際に見た…いえ体験したといえばいいのかしらね」

 

「体験?」

 

「彼ね一度ここに来たことがあるのよ」

 

そこから孫権は呂蒙に教えた。そこでの出来事、勇作と甘寧の一騎討ち、そしてそこでの体験を

 

 

「という事があったのよ」

 

「そんなことが」

 

「ええ、彼からの威圧は、正直気を失いかけたわ。姉様たちと親衛隊の者は気絶しなかったけど…その人たち以外は」

 

「気絶していた。確かに何もしていないのに倒したというのは信じられますね」

 

「ええ」

 

「もし戦うことになりましたら」

 

「そうね。こちらもただではすまない…いえ済まされないわね」

 

「はい」

 

「けど、甘寧は彼を倒すという目標を見つけた。それを達成するために努力している」

 

「それであの強さですか」

 

「そうね」

 

「(やはり甘寧様は凄いです。私なんかとは全然違う。それに高杉勇作…どんな人物なんだろう)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が変わり

 

「ヘックション!!!」

 

高杉達はある洞窟で野営をしていた

 

「どうしました?」

 

「いや、誰か俺の事を噂している気がして」

 

「ご主人様の事を」

 

「ああ」

 

「誰が噂しているのだ?」

 

「わからない」

 

「それだけご主人様は凄い人だという証拠ですよ」

 

「桃香」

 

「さて、そろそろ寝ましょうか」

 

「そうだね」

 

「じゃあ、お兄ちゃんの隣は」

 

「駄目です!今日は私です」

 

「ずるい!」

 

「タンポポが」

 

「(また始まったよ!雛里と別れてから朱里の様子がすこしおかしくなるし、なぜが俺の隣で一緒に寝る権利の争奪戦を行うし、どうしてこうなったんだ)」

 

これまでの出来事に頭を抱える勇作

 

「(覇気使えば一発なんでけど、この状況を考えれば…いやそんな訳ない…そんな訳が……あ、決まったんだ)」

 

そんなこと考えながら眠りにつくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り

 

 

 

「……ん?」

 

孫権は、寝台の上で不意に目を覚ます

 

「やだ、私…いつの間にか、眠ちゃってたんだ」

 

「……」

隣には、呂蒙が同じように眠りに落ちている

 

「……」

起こそうかと思ったが、手を止める

 

「きっと寝る間も惜しんで勉学に励んでいたのね……厠に行ってくるけどともは無用よ」

 

扉の閉まる音で目を明ける呂蒙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月が雲に隠され、辺りが更に暗くなった時

 

「……」

用を済ませた孫権は、厠から出て部屋へと戻っていく

 

「誰っ!?そんな所で何をしているの!?」

城の倉庫の前を通りがかったその時、門前にて怪しい人影が見えた。黒装束に身を包んだその人物は、孫権の存在に気づくと、その場を離れる

 

「待ちなさい!」

 

孫権も急いで後を追いかける

 

「孫権様、どこですか!?」

 

呂蒙はその人物とぶつかってしまう

 

「……」

 

すぐに立ち上がると孫権が怪しい人物を取り押さえていた

 

「曲者よ!手を貸して!」

 

「はい!」

 

こうして怪しい人物を捕えた

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

ドカ!!

 

 

呂蒙に待っていたのは、甘寧の鉄拳による制裁だった

 

「貴様……勤務中に居眠りをしていただと!?」

 

吹き飛ばされ、後ろの棚にぶつけられる。殴られた左頬は赤くなり、鼻血も少量出ていた

 

「忍び込んだのが、ただのコソ泥だったから良いようなものの…もしあれが刺客だったらどうなっていたと思う!!」

 

「申し訳ありません!」

 

呂蒙はすぐ立ち上がり、謝罪の言葉を述べる

 

「失礼します」

 

「何だ!!」

 

親衛隊の一人が二人を見る

 

「早く報告しろ!」

 

「はっ!!台帳と付き合わせてみた所、蔵の中から無くなった物はないとの事。おそらく蔵に入ろうとした所を孫権様が見つけられたものと思われます」

 

「よし!わかった。賊は徹底的に調べ上げて洗いざらい白状させろ!他に仲間がいるかもしれないからな」

 

「はっ!」

 

「昨夜の警備の者には全員、謹慎を命じてある。呂子明!貴様も官舎で沙汰があるまで大人しくしていろ!いいな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉の城内にある巨大な蔵。そこには軍備品や、書物などが貯蔵されている

 

「この中の物なら、どれを使ってもよいぞ。好きな物を選ぶがよい」

 

楽器である、琵琶などの弦楽器。勿論、笛などもある

 

「へい、ありがとうございます。さっ、お言葉に甘えて選ばせて頂きなさい」

 

兵士に礼を言うと、仲間である少女に声をかける

 

「……」

 

横一列に並べられた、笛が入っている木箱。少女はその中の一つを手に取った

 

「それでいいのかい?」

 

少女は、微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(馬鹿だ……私はとんでもない大馬鹿だ……!大事な任務の最中に居眠りするなんて……それで、それで孫権様を)」

 

頭、そして拳を壁に何度もぶつけ、やり場のない悔しさ。自分に対する怒りを吐き出していた

 

「呂蒙さん、どうしたの……?」

 

不意に扉が開かれた

 

「えっ……あっ!」

 

「頭いたいの?もしかして、病気……?」

 

「な、何でもない!大丈夫だから……ん?笛?」

 

「呂蒙さん、また目が怖くなった」

 

男の子の腰紐に収まっている見覚えのある笛だ

 

「その笛、どうしたの?」

 

腰を落として同じ目線になり、呂蒙は質問する

 

「拾ったの」

 

「拾った?何処で」

 

「御屋敷の蔵の側……昨日、泥棒が入ったと聞いきたから様子を見に行ってたんだ。そしたら、近くの茂みの中にこれが落ちていたんだ」

 

「(これが茂みの中に?もしかして、孫権様が賊を取り押さえた時に落ちた?いや、待て…あの時、蔵の仲を調べて無くなったものは無いと言っていた。なのにどうして……もし、これが賊が蔵から持ち出した物だとしたら、蔵にあったのは)」

 

そこで、自分が言った言葉を思い出した

 

『御前で演奏する楽器の中に、何らかの武器を仕込んでいるという事も』

 

呂蒙はすぐに、自分の部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、城の謁見の間

 

孫策が玉座に腰掛け、側には右腕である周瑜、侍女の二喬姉妹が控えている

 

「この度は、私共の様な卑賤の者に拙い芸を披露する機会を与えて頂き、恐悦至極に存じます」

 

旅芸人の二人は、垂れていた頭を上げる

 

「つきましては、本人の口より一言御礼の言葉を申し上げたく……さあ」

 

男性から言われ、少女は口を開く。しかし、静かに呟くだけで、何を言っているかが分からない

 

「聞こえないわ。恥ずかしからずに、もう少し近くにいらっしゃい」

 

玉座から立ち上がり、優しく声をかける。孫策からの許しを得て、少女も立ち上がる

 

そして、ゆっくりと歩み寄る

 

「……」

 

距離が縮まった

 

 

その時

 

 

バン!!

 

 

謁見の間の扉が力強く開かれた

 

 

「……」

 

突入した呂蒙はすぐに状況を察知。少女が両手に持っている笛を見ると光に反射していた

 

「控えろ!孫策様の御前だぞ!」

 

呂蒙は足をフル稼働させ、二人組に立ち向かう。少女は急いで刀を引き抜き、孫策の元へと向かう。もう一人の男が間に立ち塞がる。

 

「であああ!!」

 

顔面に飛び蹴りを入れ、そのまま男を土台にし、高く跳躍する

 

「ああ!!」

 

向かい来る刺客の手から、孫策を守る為に周瑜が間に塞がる。刃が届く前に、呂蒙が飛びかかり、これを防いだ

 

「ぐっ!!」

地面に押さえつけられ、刺客の少女は刀を離してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が経ち

 

「けど、驚いたわ!昨夜、忍び込んだ男は刺客の一味だったなんて」

 

テラスに孫策と周瑜がいた

 

「誰しも賊が入ったと聞けば、何かを盗む為だと思うもの。まさかそれが、当家の蔵にある笛を、刃に毒を塗った物と取り替える為だったとは」

 

「楽器はうちの蔵にある物を使う事…言い渡された条件を逆手に取ったという訳ね」

 

「おそらく、取り替えた笛には彼らにしかわからない印が付けてあったのでしょう。身に寸鉄を帯びていない事を確かめた上に楽器もこちらが用意したものと思い込んでしたためすっかり油断してました」

 

「やれやれ、これじゃあ名軍師も形無しね」

 

「面目次第もございません」

 

「うふ、孫家を支える知謀の師、周公謹ですら見抜けなかった罠。しかし、それを見破った者がいた」

 

「親衛隊の呂蒙なるもの…軍師としての才があるやもしれません…いかがでしょう、試しに軍師見習いとして孫権様の傍に置いてみては?」

 

「そうね。蓮華には…今のあの子にはしっかりと携え、ともに歩んでくれるものが必要だわ。私にとってのあなたのようにね」

 

「雪蓮」

 

 

 

 

 

 

そして呂蒙はというと

 

 

 

「如何なる理由であれ、謹慎中に官舎を抜け出し、勝手に行動した罪は重い!分かっているな!」

甘寧から呼び出しを受けていた

 

「はい!」

 

「呂子明!褌を取れ!」

 

「はい!!えっ!?」

 

「純白の締め込みは、誇りある親衛隊の証。貴様には、それを身に付ける資格はない!」

 

面と向かって言い放たれ、茫然と立ち尽くす呂蒙。次第に、目元が潤み始め、涙が込み上げてくる。しかし、言われた通りに、褌を外した。身に纏いし白き布を、甘寧に手渡した

 

「追って沙汰があるまで、官舎で待機していろ。いいな」

 

「はっ!」

 

退室し、官舎にある自室へと向かう呂蒙。しかし、その足取りはどこか重く、意気消沈としている

 

「あっ、いたいた!」

 

落ち込んでいる呂蒙の元に、二人の少女が駆け寄ってくる

 

「呂蒙さん、周瑜様がお呼びですよ」

 

「えっ、周瑜様が?」

 

「ほら、早く早く」

 

戸惑う暇もなく、呂蒙は二喬姉妹に連れて行かれた

 

 

 

 

 

 

 

謁見の間の玉座に腰掛ける孫策に、傍で控える周瑜がいた

 

「わ、私が孫権様付きの軍師に……!?」

何が何だか分からず、茫然とする呂蒙に、周瑜は答える

 

「といっても、今はまだ見習いだがな」

 

「何かと手のかかる子だけど、妹を助けてやってね」

 

「でも、私ごときが軍師など」

 

「心配するな。貴様には磨けば磨けば光る物がある。それに甘寧が、学問に現うつつを抜かす様な軟弱者は親衛隊には相応しくない!……小間使いでも何でもいいから、私の下で使ってやってくれ……と言ってきてな」

 

「甘寧様……」

 

感謝してもしきれない。呂蒙は心中で礼を尽くした

 

 

 

 

甘寧は城壁の上にいた。風が吹くと呂蒙が身に付けていた白の褌が風に舞い、天高く、高く上がっていった

 

 

「呂蒙、高く……高く舞い上がれ。その志の赴くままに、天高く」

部下の事を思いながら、甘寧は激励の言葉を送った

 

「(……私もがんばれなければな)」

 

甘寧は自分の得物を上に掲げた

 

「(勇作…私はまだまだ弱い、だがいつか貴方を超えてみせる!!)」

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