闇影の軌跡 〜黎明〜   作: 黒兎

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文才と時間と画力とマトモなサブタイが思い付く頭が本気で欲しい「 黒兎」です。正直、今回のサブタイは本気で思い付かなかったので、なんか凄い簡単に………極力、前回みたいなサブタイは付けたくないのです。ああいうのを連続で使うと、それで一貫しないと綺麗に並ばないですし………

一応、今回からは本ストーリーに乗った………はず。ただ、原作シーンがあるかと言われれば微妙という………ま、二次創作だから是非も無いよねっ!






実技テスト前日

「はい、朝飯だ」

 

 朝。

 器用に料理の盛った皿を第三学生寮の食堂に運んできたのはゼダス。

 で、運んで行った先にあったのは長机と備え付けられた椅子に座るⅦ組メンバー&サラ教官だ。

 何故、こんな事態になったのか。遡れば、入学式の翌日へと至る。

 

 あの時のゼダスは殆ど何も食ってなかった。故に空腹だった訳で………寮に帰るや否や、適当にあるもので料理を作ったのだが存外美味く好評で。しかも、Ⅶ組の第三学生寮には貴族が入っている第一学生寮とは違い、使用人の類が居ない。となれば、完全に自炊することが求められるのだが………まぁ、なんだ。トールズ士官学院は帝国内でも名門校。それなりに授業の内容は高度で日々付いて行くのが精一杯。

 結果、疲れ過ぎて誰も自炊しようとしない………というかしていられない状況。

 ただ、誰かが飯を作らねばならないのは生命活動的に明らか。で、そんな余裕のある奴はゼダスしかいない訳で。しかも、料理の腕自体も良いと露見してしまうと、後は察せる通り。

 サラの元で開かれたゼダス側に誰も味方のいない理不尽な投票の末、ゼダスが全員分の料理を担当する事になったのだ。

 料理担当という事で献立自体も考えねばならないし、料理に合った材料も調達しなければならない。それには金が掛かるということで、学院から寮に支給される資金の会計も任された。

 

「(───入学式から早三週間。なんとか支給された分の資金で賄えてるが………そろそろヤバいんだよなぁ)」

 

 で、最近の悩みの種は学業では無く、資金の減りも速さだったりする。

 いかんせん、食べ盛りの少年少女がゼダス含め11人いる上に教官1人だ。一食あたりに使う素材量が多過ぎて資金が目に見える速度で無くなっていくのは流石に考えものだ。

 最悪、執行者時代に稼いだ貯蓄を切り崩すのも一手だが、それは貧窮状況に陥った場合の最終手段として残しておきたい。極力は節約していきたいものだが………

 

「どうしたもんか………」

「ぬ? いきなりどうしたのだ?」

 

 椅子に座り、朝飯の一つであるトーストを齧りながら、心の声が漏れていたようで………目の前に座っていたラウラが声をかけてくる。

 そういえば、この少女………ラウラが妙にゼダスを気にかけてくることが本人としては凄い気になっている。別に悩みに化してる訳では無いが、変な奴と思ったことは一度や二度では無い。

 

「別に何でもない。ちょっと考え事してただけだ」

 

 と、短く答えて、口の中のトーストを咀嚼し、呑み込む。

 

 正直に話すと、ゼダスはⅦ組メンバーの中の誰とも話しても、今のように短く返すのが殆どなのだ。

 話を続ける気が無いというか、人に興味が無いのか………最低限の会話はしているとはいえ、何人を寄せ付け難い雰囲気を纏ってはいる。ただ、オリエンテーリングの時の大まかな指揮と本人自身の実力。加え、家事スキルの高さは信用に足るものなので、誰一人邪推にはしていないのだが。

 とはいえ、ゼダス自身に協調性という物が無い。故にゼダスはⅦ組内で完全に浮いた存在となっていた。

 

「よしっ、ご馳走様っと」

 

 結局、一番早く朝食を食べ終えたゼダスは空の食器を纏め、とりあえず流しに置く。すると、何やら足早に食堂を後にする。

 このゼダスの行動はⅦ組メンバーが毎朝見掛ける光景で、そろそろ見慣れてきたのだが………

 

「ゼダス………あいつ毎朝何してるんだろうな?」

 

 リィンは不意にそう口に付いていた。

 原因は勿論、ゼダスの行動。毎度の様に朝食後に何処かへ消えるのだが………その行き先は誰も知らないのだ。

 色んな人が何度か尾行してみたのだが、その度に気付いていたのだろう。毎回、綺麗に撒かれる結果にある。

 

「行き先は誰にも分からないけど、やりたいことは何となく察しは付いてるわ。やっぱり、アイツは馬鹿だわ、うん」

「馬鹿、ですか? でも、教官。ゼダスさんは成績は良さそうですけど………」

 

 サラの言葉が解せなくて、エマは意見する。が、サラも無考えで発した言葉では無かった。

 

「アイツは確かに頭は凄く良いわよ。多分、定期考査で高得点掻っ攫ってく位に。でも………そういう問題じゃない。阿保じゃなくても馬鹿よ」

 

 そこまで言って、サラは手元の皿の料理を食べ終えていた。加え、教職として、普通の授業が始まる前に色々準備があるのだろう。席を立ち、食堂を後にしようとする。

 そして、これからゼダスというⅦ組の中でも最大の異端な存在と良い付き合いをしていく為に、彼らがいずれ直面するであろう課題と成り得る言葉を残していく。

 

 

 

「私がアイツを馬鹿と呼んだ意味───とりあえずはこれを考えてみなさい。私としてはちょっと癪だけど、多分何か得れる物はあるはずよ」

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

「ここら辺まで来れば大丈夫か………」

 

 食堂を後にした後、学院で使う荷物を鞄に纏めたゼダスは街から少し外れた街道にいた。

 その荷物の中には、特別オリエンテーリングの時にも持っていた大きな包みも含まれている。

 

 ゼダスは一度、周囲を見渡しながら、気配を探り………

 

「誰もいない、な」

 

 ………何者もいない事を確認すると、両掌に可視化出来る程に濃い魔力を集中。パンッと合掌し、簡易的な空間断絶の魔術を行使する。ゼダスの中に取り込まれている《輝く環(オーリオール)》の断片が常時、空間を司る空属性の魔力を供給し続けるからこそ出来た芸当だ。

 誰かに見られる可能性を確実に潰す為とはいえ、毎朝毎朝、空間断絶なんて通常の手順を踏んだら、高等魔術の域に達するであろう物を行使しなければならないのは面倒だ。だが、これ以外に有力な手段が無いのもまた事実。ならば、仕方ないと取って良いはず。

 

「じゃあ、今日もササっと終わらせて、通学しますかね」

 

 気持ちを切り替え、持ってきた包みを開く。そこにあったのは真紅の大剣。刀身に触れれば、全てを焼き焦がすであろう熱量を孕んでいる様にも見えるソレは明らかに普通とは掛け離れている。

 

 ゼダスが毎朝、空間断絶による人祓いをしてまで行っているのは自身の鍛錬。特に真紅の大剣───銘を『レーヴァティン』と呼ばれる物による剣術の鍛錬だ。

 日々、鍛錬を続けねば、自身の腕は衰えてくる。

 執行者たる者、いつも万全であるべきと考えるゼダスにとって、それは避けるべきものであった。

 故に鍛錬。継続は力なりという事だ。

 

 充分、重量のある武器なのだがゼダスは実に軽やかに振るい、剣技を重ねていく。その度に風切る音が鳴り響き、放たれる技の威力を如実に物語っている。

 その姿を見た者はこう意見を発するだろう。───確かに強い、と。ただの剣技から滲み出る“強者”の圧。生半可な者ではその刃を止めることが叶わないのは事実。

 だが、ここ最近でゼダスが感じているのは全くの正反対。正直な話、前よりも若干弱くなってる気がしてならない。

 日々鍛錬は怠っていない。そう簡単に弱体化なんてしない………と、言い切れればどれだけ楽か。

 本当に弱くなっているとすれば、原因は大凡予想はついている。

 前の環境に有って、今の環境に無い物。それは────

 

 

 

「(─────生命の遣り取りをするレベルの死線)」

 

 

 

 執行者業を主としていた頃は幾度も死線を潜ってきた。

 しかし、学院に入ってからは勿論の事なのだが、そんな状況自体が無いのだ。

 

 生命を交わす程の死線ともなれば、全身全霊を以って掛からねば死ぬ。その為、自身の持てる全てを使うことになり、結果自分の底力の強化に繋がる。

 つまり、真に強くなるなら、死線との邂逅と突破は絶対に必要不可欠なのだ。

 

「考えれば考える程に何とかしたくなる問題だな。何処かに良い具合の猛者がいれば良いんだが………《紫電》も微妙だし、他にいるとも思えない。これは完全に手詰まりか………?」

 

 思考を動かし、ぶつくさと言葉を発し続ける中、そろそろ良い頃合いとなってきた。近い内に学院に向かわなければ、遅刻する可能性が出てくる。それだけは勘弁したい。

 まだまだ鍛錬し足りないが、ゼダスはレーヴァティンを包みに直してから、もう一度《輝く環》を使う為に魔力を集中。断ち切った空間を元あった様に“再生”することで、そっくりそのまま空間を繋ぎ戻す。

 そして、鍛錬に邪魔で断絶空間内の隅っこに置いていた荷物を手に取り、そのまま学院へと向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 一限目の授業開始の鐘にも間に合い、ゼダスは特に変わった様子も無く、授業を受けていた。

 延々と講義を聞き、出された課題を空き時間に適当に片付ける。よくある普通の学生としての姿を演じていると言えた。

 ただ、その演技がゼダスにとって、酷く退屈であった。

 もう理解の終えている内容の講義を聞くほど無為に時間を費やすことは無い。最早、復習にも成り得ない。ゼダスにとって、講義内容は完全に常識の範疇だったのだ。

 そして、それは士官学院にある教科全てに当て嵌まる事柄故、基本的に講義の時は思考は別方面に働かせていたりする。主に二つ存在する。

 

 一つ目が結社の動向についてだ。思惑についての方が近いかもしれない。

 どうして、執行者一人をわざわざ殆ど普通の学院と変わらない所へ派遣………というか、左遷させられたのか。これから結社がどういう方向に向かって行くのか。

 生憎、結社の“計画”とやらに関しては知らされていないし、正直学院行きが決まるまでは興味はあまり無かった。その所為で、計画にゼダスがどう関係するのかが今更モヤモヤしてもどかしい。………まぁ、この件に関しては、何度も脳内討論の末に明確な答えが出ないのは経験則で分かる。何処まで思考が及んだとしても、それは所詮推測以外の何でも無いのだ。

 

 そして、二つ目がⅦ組内で生じている人間関係の軋轢だ。単純に分かっているだけでも二案件分は確実に生じている。

 リィンとアリサの特別オリエンテーリング序盤でのトラブルが引き起こしたのと、ユーシスとマキアスの貴族平民間の軋轢。

 前者は時と各々の気持ちが落ち着けば勝手に解決するだろうから、別に気にする必要は無い。───問題は後者だ。

 初対面からアレだけの嫌悪感漂う関係性から始まり、その原因は帝国に蔓延る貴族と平民の格差問題ときた。こればっかりはどうしようもない。どれだけ手を尽くした所で意味を成さないだろう。唯一の手段といえば、純粋に格差問題を根本から叩き壊すことだが、それが出来ればここまで頭を悩ませる案件で無いのは火を見るよりも明らか。

 ………一つ誤解を招かない様に弁解しておくが、ゼダス自身、別に人間関係がどう転び、どの様な結末を迎えるかに関しては一切興味が無い。ただ、無駄な飛火を避ける為と無意味な時間が余っていたから考えていただけのこと。それ以上もそれ以下も有りはしない。

 

「解決方法が浮かばないなら、こっちに被害が飛ばない様にするべきか………」

「はい、ゼダスさん。授業中に私語は厳禁ですよ〜」

 

 どうやら、心の声が漏れていた様で注意された。

 今の講義の科目は帝国史で、担当教官は如何にも怪し気なメガネを掛けている事が特徴なトマス・ライサンダー。この人から微かに漂う妙な違和感が凄く嫌いな雰囲気しかしないのだが………流石に注意を無視する訳には行かない。

 

「はい、すいませんでした」

 

 凄く簡潔な謝罪だとしても、無視はしていない。ならば、問題無いだろう。

 注意されたことにより、思考は若干途切れる。故に再び思考を巡らせるのは面倒になっていた。

 

 

 

 はぁ…………退屈だ。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで今日の授業も全て無事終了。

 終礼時にサラから「明日、実技テストあるからね〜」という重要連絡を唐突に告げられたのは少し驚いたが、同時に今晩の飯の献立を考え直さねばならないのが面倒であった。

 流石に実技テストの前日となれば、翌日に響く物は余り好ましくない。だからと言って、力の湧かない物も却下だ。

 …………なんかすっかり主夫さが板についている気がするのだが、もう気にすることすら辞めた。

 

「ゼダス。ちょっと時間あるかしら?」

「無い。そんな時間は無い。今日も夕飯作るの俺だぞ。この諸悪の根源(サラ)め」

「あー……じゃあ、リィンで良いわ。あとで職員室」

「えっ⁉︎ ま、まぁ分かりました」

 

 サラの申し出をゼダスは速攻で拒否した結果、リィンに飛火。完全に貰い事故と化したが…………嘘は言ってないですし? 毎日三食作らされるのゼダスですし? 問題無いはずだ。

 とりあえず献立を考えながら帰るか……と思い、荷物を取り、教室の外へと行こうとしたその時。外に出る寸前で一度立ち止まる。

 

「(流石にさっきのは不味かったか……? 別にどう思われようが関係ないと言えば関係ないが、後々に面倒な蟠りになるのは避けたい)」

 

 人間というのはこの世の中でも一二を争うレベルで数奇で、奇妙で、理解不能な存在。そんな存在同士が絡み合う人間関係となれば、何が原因で変動するか分かったものでは無い。潰せる原因なら先に潰しておいて損はない。

 

 

「……悪いな、リィン。厄介ごと押し付けたのは謝るが、まぁ頑張れ」

 

 

 応えなんて要らない。

 そう行動で示し、ゼダスは謝罪か激励かよく分からない言葉を残して、教室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 夕食を終え、食器洗いなどの後片付けも一通り終えたゼダスは自室で一人、ベッドに倒れ込みながら、本を読んでいた。…………いや、“本”と称するのも、“読んでいた”というのも些か違う。

 何故なら、ゼダスが手にしている“それ”は全頁白紙で、その字面通り何も表記されていないのだから。何も書いてないなら読むことも出来ないし、本とも言い難い。

 しかし、そんな得る物が何一つ無いものをひたすら眺めているのだ。仮にその姿を他人が見たなら、きっと奇妙に思うことだろう。

 だが、ゼダスにとって、その行為はちゃんと意味のあるものなのだ。

 

「………………」

 

 白い頁をゆっくりとだが一定の速度で捲り続ける。

 眼は随分と眠たそうで、少しでも気を抜いたら寝てしまいそうだ。まだ風呂に入ってないのに眠ってしまうのはちょっと………

 

 備考だが、この第三学生寮には本来風呂なんて無かった。

 でも、この寮に集ったのは年頃の少年少女+α。流石に風呂が無いのは困るし、有って困ることは絶対に無い。

 しかも、玄関(エントランス)と食堂がある一階には空き部屋も何個かあって………まぁ、何だ。

 多忙な学院生活の中で月一に存在する休日である自由行動日を使って、突貫工事して、男女別の大浴場作ってしまったのだ。

 と言っても、そこまで大掛かりなことをした訳ではなく、無駄な壁を取っ払い、浴槽作って、配管繋げて、風呂っぽく仕立て上げただけだ。………………え、充分に大掛かり? 何気に《輝く環》の奇蹟を利用したので、そこまで苦労してなかったりする。

 

 今日はまだ風呂に入ってないが、入る気分では無い。それよりも泥の様に倒れて、寝てしまいたい気持ちの方が勝ってしまっている。

 手にしていた“それ”を閉じ、机に放り投げて、本格的に寝てしまおう………と思った矢先、コンコンと部屋の扉を叩かれる音が耳朶に響く。

 

「………………」

 

 ───怠かった。正直、居留守を決め込むレベルで怠かった。

 一度、休息の命令を下した身体を再稼動させるのは、普段以上に体力を喰う。なのに、今に来客とはタイミングが悪過ぎて、笑えない。

 

「(悪い、来訪者………俺は眠いんだ)」

 

 心の内で謝罪し、意識を落とそうとするのだが、ノックの次は声が聞こえてくる。

 

『おーい、ゼダスいるか? ちょっと渡したい物があるんだが………』

 

 どうやら、声主はリィン。でゼダスは思考をもう一度稼働させ始めた。

 リィンには先程、サラからの事情を押し付けた“貸し”がある。しかも、このタイミングでの渡したい物………多分だが、その事情とやらも絡んでくるだろう。その上、わざわざ自室までの足労を煩わせてもいる訳で………

 

「(………………出ないと割に合わない気もするな)」

 

 頭で状況を精査すればするほどに何故か、罪悪感ばかりが募ってきた。

 少し面倒だけど、サッサと出て、サッサと要件を済ませて、サッサと倒れよう。フカフカのベッドが俺を待っているーーーー! みたいな普段では考えられないであろう可笑しいテンションで、身体を起こし、扉を開く。勿論、そこにいたのはリィンだ。

 

「なんだ、ゼダス。寝てたのか?」

「あー………ちょっと違うけど、そんなところ。で、何か用?」

「教官が『渡しといて』って、これを」

 

 差し出されたのは手の平サイズの手帳。

 

「ああ、確かに貰ってなかったな。………というか、今更生徒手帳かよ」

「俺たち、Ⅶ組はARCUSがある分、他の生徒手帳とは記載内容の濃さが違うらしいし、時期が遅れたもの仕方ないんじゃないか?」

「まぁ、別に良いけどよ。有っても無くても大して変わらない」

 

 生徒手帳を制服のポケットに入れて、ゼダスは扉を閉じようとする。が、リィンはそれを良しとしない。

 

「えっ、と………まだ用ある?」

「用って言う程の事じゃないんだけどさ。あの………ゼダスは何か後ろめたいことを抱えてるのか?」

 

 ………きっと、そのリィンの言葉は純粋な疑問なんだろう。

 Ⅶ組という一集団に与しながらも、確実に関係性に壁を築いている。何人たりとも寄せ付けない“孤高”の存在。形では近付いていても、真に心からは近付いていないその姿勢に関する疑問なのだ。

 

「(───分かっていた。いつか、こうやって切り出してくると)」

 

 分かっていたならば、幾らでも対策は取れたし、それなりの解答も作り、選べもした。

 基本、こういう時の対処は素直に話すか、それなりにはぐらかすか、一気に突き放すかの三択。

 勿論、一つ目は脳内会議で速攻で除外。三つ目も今後の展開を鑑みれば、あまり好ましくない。

 ならば、必然的に二つ目の選択が残る訳で………

 

「まぁ、色々あるんだよ。別に気にされる事じゃない」

「そうなのか………」

 

 ………このリィンの反応では妙に突き放した感が否めない。

 どうかして、修正したいが─────と、考えた瞬間。頭の中である案が急速に浮上。

 これなら、あくまで突き放してない風を装わせながら、上手くいけば最近の悩みも潰せる可能性もある。しかも………Ⅶ組のメンバーは素質自体はあるのだから。

 

「───でも、教えてやっても良いぞ」

「ッ! ホントか⁉︎」

 

 人の後ろめたいことを教えても良いと言った瞬間のこの反応は受け取り方によっては良くも悪くもなるが、今は気にする事ではなく、ゼダスは言葉を続ける。

 

「だが、条件がある」

「条件?」

「ああ、条件だ」

 

 少々の手間は掛かるが、成功すれば僥倖。失敗しても、退屈凌ぎにはなるであろう案をゼダスは告げる。

 

 

 

 

 

 

 

「これから出来る限り毎日特訓してやる。で………それで俺を完膚無きまでに倒してみせろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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