闇影の軌跡 〜黎明〜   作: 黒兎

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リアルの方で一段落着いたので久し振りに執筆に取り掛かった「 黒兎」です

割と変なテンションで一話分殴り書いたので文量少なめ&誤字脱字あるかもしれませんがよろしくねお願いします………






5月の自由行動日

「だぁッ!!! 負けだ負けだ、もう一回!」

「せーんぱーい、ムキになって挑み直すとか破産まっしぐらのギャンブラーっすよー。一旦冷静になりましょうって」

 

 場所は学院の校舎のすぐ近くに置かれている技術棟。

 そこで賭け事───もといカードゲームを勤しんでいる生徒が2人いた。

 

 片や、快勝を続けている黒髪の少年───ゼダス。その表情には勝利が続いているからか、何処と無く余裕を感じられた。

 もう片や、敗北続きのバンダナを頭に巻いた青年。名前をクロウ・アームブラストと言う。学院ではゼダスよりも一個上の先輩、つまり二年生。だが、一年生のゼダスとは対象的に余裕が無かった。表情でいうと相当焦っていた。余程、負け越しているのだろう。

 

 互いに学生である以上、賭け事は教育的には良くないのだが、そんな事いざ知らずにこの2人は賭け含めてのカードゲームを興じている。………と言っても、賭けている物は少量の金くらい。これならば別に問題無い────

 

 

 

「あーーーー! またゼダスくんとクロウくんが賭け事してる! まだ未成年だからダメだってもう何回も言ったでしょ!」

 

 

 

 ─────訳がなかった。

 

 突如、開かれた技術棟の扉。そこには非常に愛らしく、小柄な女の子が立っていた。学院の制服を着ているから辛うじて生徒だとは認識出来ているが、服装が違えばそうはいかない。きっと実年齢より一回りも二回りも下に見られるだろう。本人が気にしているから、実際には口にはしないが。

 そんな子がこの学院の生徒会長なのだから、本当に驚きなのである。

 

「おいおい、トワ。別に賭けてるのは微妙な物ばっかりだし少しくらいは良いだろ」

 

 クロウは小柄な女の子───トワと呼ばれた子に苦笑気味に言葉を返すが───

 

「そういう問題じゃないの! 普通に考えて賭け事してるってことがダメなの!」

 

 即座に切って落とされる。

 トワが言っていることは最もだし、本当に怒っているのだと絡みが少ないゼダスから見ても分かるのだが、いかんせん見た目が足を引っ張っている。明らかに怖く見えない。寧ろ可愛く見えるまである。

 因みにゼダスがトワと初めて会ったのは入学式の日。その時に学院の正門で新入生の確認をしていたのがトワ───つまり、ゼダスに話しかけてきた小柄な女の子がトワだったのである。

 入学式以降はそれといって接点があったわけではないのだが、最近になって技術棟に入り浸るようになってからは鉢合わせる頻度が増えたので、それなりに会話はするようになっていた。

 

「そうだよ、クロウ。この可愛らしいトワがわざわざ注意してくれてるんだ。少しは自重したまえ。………どうせ、ゼダス君にまたもや負かされ続けているのだろう?」

「んだとゼリカ! 事実負け続けてるから言い返せねぇけど、やっぱ腹立つな!」

 

 トワと一緒に技術棟に訪れたのは学院内なのに制服でなく黒いライダースーツを身に纏っている美形の女性。名前をアンゼリカ・ログナーといいこの人も二年生で先輩。

 家名から察するに帝国の四大名門の一角である「ログナー家」の息女なのだろう。そんな人がまさかの男より女好きだったとは……まぁ、愛に性別は関係無いのだし、別に良いのだろう。そこはゼダスも納得していた。

 

「そういえば、何故に先輩方は技術棟に? 今日は月一の自由行動日なんですし、少しはリフレッシュがてらに適当に過ごすのかと思ってたんですけど」

 

 言い忘れていたが、そう───今日は自由行動日なのだ。

 わざわざ技術棟に用があった様子にも見えなかったゼダスは気付いたら、その疑問を口にしていた。

 

「んーと、確かに何処かに出掛けてリフレッシュするってのも大事だと思うけど……ね」

「ああ、言わんとすることは分かるよ、トワ。やはり、技術棟(ここ)での“日常”が私たちにとっての一番のリフレッシュな訳だよ。……それを言ったら、君こそどうなんだい? まだ入学して一月余りだ。疲れもあるだろうし、ゆっくり休むべきだと思うがね?」

 

 逆にゼダスに問われてしまった。

 意外にもこの学院生活に順応してしまっている感があるが、言われた通りまだ入学して一月しか経っていないのだ。普通に考えれば、疲労が溜まっている方が当然なのだし、休息せずに技術棟に顔を出しているところを不思議に思われても何ら可笑しなことではない。

 しかし、ゼダスはその事に対する明確な回答を持っていた。というか、純粋に技術棟に用があって訪れていたのだった。

 

「───っと、そうだそうだ。ジョルジュ先輩、ちょっとこれ見てほしいんですけど」

 

 と言って卓上に置いたのはARCUS。だが、本来のそれとは大きく形状が異なっていて………無理に言葉にすると何かよく分からない突起物が色んな所から出ていた。外見だけではまともに導力魔法が発動しそうになさそうに思えた。

 その最早異形と化したARCUSを見に、奥から黄色のつなぎを着た大柄な男が出てきた。この人がゼダスが「ジョルジュ先輩」と呼んだ相手。名前をジョルジュ・ノームという。因みに入学式当日にトワと一緒に校門前に立っていたのはこの人なのだ。

 

「………一体これは何なんだい?」

「知っての通り、ARCUSっす」

「僕の知ってるのとは相当違うんだけど」

「まぁ、事情を話せば少し長くなるんですけど─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「─────ARCUSの魔改造!?」」」」

 

 事情を聞くや否や、二年生組は全員口を揃えて叫んだ。で、そのゼダスが話した事情なのだが───

 

 入学前からARCUSという未だに目にした事の無かった戦術オーブメントに関して調べたり解体したりと色々試したのだが、その時にゼダスは致命的な弱点を見つけてしまったのだ。

 それが導力魔法の立ち上げ、発動からの処理終了までの一連の工程の速度の遅さだ。

 ………一応弁護しておくが、ARCUSは次世代型の戦術オーブメントだ。従って、従来のオーブメントと性能を比べれば間違いなく高水準なのだが………………だがしかし、ゼダスはそれでも満足してないという。

 その為、入学後も時間を見つけては分解して改良して試作するということを延々と繰り返してきたのだが、最近になってそろそろ取り返しのつかない状況になってきたという訳だ。因みにその作業をしていたゼダスでさえ「そろそろこれはヤバい」と思い始めている始末。

 

「────というわけで、こういうの得意そうなジョルジュ先輩に助力を求めに来たわけなんですよ」

「で、元の形に戻せば良いのかい? ………と言っても、戻る保証は無いけども」

「あー………そこなんですけど………もっと魔改造したいんですよね」

 

 

 

 

 

「「「「─────は?」」」」

 

 

 

 

 

 またもや声を挙げられる。それもそうだ。

 後戻り出来ないレベルにまで弄り回して、ほぼ失敗と言っても良い結果しか残していないのに、まだやりたいと言う。

 それを聞いた者は殆どは「こいつは何を馬鹿なことを」と思うのだろうが、生憎とゼダスはそういう無茶でもやり通したがるのだ。

 

「(というか、今の処理速度だと実戦では運用し難いんだよなぁ………)」

 

「ゼダスくん! 何馬鹿なこと言ってるの!?」

「トワの言う通りだ。これ以上は止めておくべきだよ」

「そうだぜ。下手な改造はどんな結果を齎すか分かったもんじゃねぇからな」

「まぁ、そりゃそうなんですけど、そうも言ってられない状況というか………もうすぐ実技テストですし、ARCUS使えないと流石に教官に怒られる………」

 

 別に教官に怒られようが、点を差し引かれようが痛くも痒くも無いが、流れでそう口走る。

 その後もトワ、アンゼリカ、クロウの三人からの説得をゼダスは様々な言い分で躱していく中、徐にジョルジュは口を開く。

 

 

「───良いよ、その話乗ろう」

 

 

「ちょ、ちょっとジョルジュくん!?」

「確かに変に弄ると危ないのは事実だけど、ゼダス君の話も技術者として興味深いんだ。最新型で、更に導力魔法の工程時間を短縮出来たとしたら、それは凄いことだよ」

「あー、ダメだコイツ。技術者としてのスイッチ入りやがった。もう俺らの話聞かねえやつだこれ」

 

 呆れた口調でクロウは言う。ゼダスとしては事が思い通りに運んで良い気分だったりしてる。

 

「───但し、僕はゼダス君のARCUSには一切触れるつもりは無いよ。こちらとしては『どの様なアプローチで工程時間を短縮するか?』が気になるだけだからね。それについての話し合いの中でゼダス君はARCUSを改造すると良い」

「んん………? なーんか想定してた内容とは違いますが、それで納得しますわ。それじゃあ………有意義なお話始めましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「───よしっ。それじゃあ、ジョルジュ先輩。今日はありがとうございました」

 

 時は既に夕暮れ。結局、自由行動日の殆どを技術棟で過ごした結果となったが、その見返りとしては十分過ぎる物を得た。

 これならば理想的な物へと昇華させれる。何一つ不自由無く………どころか、想像を超えた物となるはずだ。

 

「こちらこそありがとう。僕の方もあんな方法があったとは盲点だったよ」

「やっぱり悩んだ時は相談するに限るって再認識させられましたわ。んじゃあ、早速寮の方に戻って試作してきます!」

 

 とても楽しそうな表情で技術棟を飛び出して行ったゼダスにジョルジュは、

 

 

「────青春だなぁ………」

 

 

 と、ふと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 翌日、通常登校日にして5月の実技テスト2日前。

 ゼダスは放課後に職員室に寄り、サラにある事を頼み込んでいた。

 

「本当にお願いします次回の実技テストで“これ”試させて下さい本当にお願いします」

 

 ………………正直、普段ならこんなに必死に頼み込むことなんて無いんだろうが、今回に関しては別だった。

 

 折角の良いアイデア。試作品が出来たとしても、実戦で試せる場所が近くにないというのは余りに辛い。サラ自身が実戦相手になってくれるならまだしも、この駄目教官はきっと引き受けないのは想像に難くない。

 ならば、結社の人形兵器を使ってくれる実技テストで試す他無いのだ。あの人形兵器に関してもある程度の情報がある分、効果を分析し易いし、とても条件が良い。

 

「ふーん………アンタがここまでして頼むなんてよっぽどね。でも、これ………想像以上にぶっ飛んだ発想ね」

 

 因みにサラに渡したのはその試作品の現物ではなく、設計用紙。流石に一晩で現物を用意するのは無理だった。

 

「それは昨日、ジョルジュ先輩と延々と談義した結果に出てきたんですけど、個人的には相当納得がいってるんですよね」

「────ま、今回は特別に認めましょう。でも、テスト当日までには間に合わせなさいよ。じゃないと、無条件で0点にするから覚悟しておきなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………どうやら、2日連続で完徹することになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

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