俺のFateな話   作:始まりの0

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EP10 褒美

 ~ウルク 宮殿 龍牙の部屋~

 

 

 部屋の真ん中で正座している龍牙。

 

 その前には仁王立ちの最古の最強コンビ、ギルガメッシュとエルキドゥがいた。

 

 

「龍牙!貴様という奴は……我が従者でありながらイシュタル(アバズレ)の元に行くと言うのではなかろうな!?」

 

 

「ダメだよ龍牙、イシュタル(アレ)はきっと君を不幸にするよ」

 

 

「エルキドゥの言う通りだ!奴が求婚した男の結末は貴様も知っているだろう!」

 

 

「えっと、イシュタルの夫達が不遇な死を遂げてるんだったかな……あんまり覚えてないが」

 

 

「そうだ、冥界下りの際には自分が生き返る為に夫を身代わりとした。アレはそういう女だ」

 

 

「ギルのお母さん……ニンスン神も言ってたよ『イシュタル(アバズレ)だけは止めなさいって』」

 

 ギルもエルキドゥは未だしも……ニンスン神まで、同胞をアバズレってどうなんだと思ったが龍牙は口にしなかった。

 

 実際にイシュタルは愛や豊穣の神であると同時に残虐な女神で、動物に非道を行ったり、愛の冷めた相手には酷い仕打ちをするとか……アヌ神から困ったものだと愚痴を聞かされた事のあった龍牙。

 

 

「しかしあそこで俺が返事をしなかったのも悪いと思う……取り敢えず神殿に赴いて話し合ってみるか」

 

 そう言って立ち上がろうとする。

 

 

「「駄目!」」

 

 とギルガメッシュとエルキドゥに止められる。

 

 

「何故?」

 

 

「怒った奴がウルクに犠牲を出さぬ代わりに、自分の物となれと言ってきたら」

 

 

「お人好しで、優しい龍牙の事だから民やボク達を庇って了承するよね?」

 

 確かに龍牙であれば『自分』と『ギルやエルキドゥ、民』を天秤に掛ければどうするかなど分かりきっていた。

 

 

「でもだな…」

 

 何かを言おうとする龍牙であったが、ギルは何かを思い付くと龍牙の腕を掴む。

 

 

「……………そう言えばフンババを下した褒美が未だだったな」

 

  龍牙はこれを聞いて?を浮かべる。今、そんな事を言ってる場合か?

 

 

「我直々に褒美をやろう……ついでにあんな女の事、忘れさせてやる」

 

 そのまま部屋の奥にある龍牙の寝台に向かっている。龍牙は危機を感じギルの手を振り払い逃げようとする、これまでにない速さで。

 

 

「戦略的撤退!」

 

 後、1歩で部屋から出てると言う所で……《ジャラッ》と音を立てて龍牙の身体に鎖が巻き付いた。龍牙はその鎖の先を見てみた。その鎖はエルキドゥの服の袖の中から出ている。

 

 

「えっエルキドゥ……」

 

 

「龍牙、逃げちゃ駄目だよ」

 

 

「良くやったぞ!盟友よ!」

 

 

「ボクも混ぜてね!」

 

 

「ウム!唯一無二の盟友であるお前で在れば良いだろう!」

 

 2人はそんな会話をしながら、鎖を引いていく。

 

 

「ちょっ……まっ……」

 

 龍牙は完全に寝台の中へと引きずり込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 -あぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!―

 

 その日、謎の叫び声が宮殿内に響き渡った。何が在ったかは神のみ………神様も知らず、本人達だけが知る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~夜中~

 

 

『前の世界のお父様、お母様、妹、ついでに弟………俺はもう汚れた大人になってしまいました。

 

正確には食べられました。正直途中から暴走した気がするが……。

 

何が在ったかは此処では拙いので話さない、皆さんのご想像にお任せします。ただ最後の方にギルとエルキドゥに【野獣】やら【狼】だって言われました。

 

 その2人は現在俺を挟む形で寝ています。産まれたままの姿で………さてこうして寝てる訳にもいかない、俺はこのままじゃどうなるか【知ってる】から………』

 

 龍牙は身を起こすと、ギルとエルキドゥの頭を撫でる。

 

 

「大切なもの……やっと見つけたのにな。だからこそ護らないと……」

 

 龍牙は2人を起こさない様に寝台を抜け出す。そしてある者の元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~アン神殿~

 

 此処は天の父であるアヌ神を祀る神殿だ。龍牙は此処を訪れたのは、勿論この神殿の主に会う為である。

 

 

「アヌ神」

 

 

「龍王よ……スマヌ」

 

 アヌ神が申し訳なさそうに龍牙に謝っている。

 

 

「はぁ………話し合いをする暇もないか」

 

 何が在ったのかは先日まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『天の父よ!天に輝きし聖牛を引き降ろし私にお与えください!!!天の牡牛(グガランナ)とそれを制する手綱を!』

 

 ギルとエルキドゥに追い返されたイシュタルが父であるアヌ神の元へと赴き、そう叫ぶ。天の牡牛(グガランナ)……それは天の父アヌ神が持つ宝具であり、ウルクでは聖牛と崇められ、黄道十二星座である牡牛座にも数えられる、フンババとは次元の違う神獣だ。一度放たれれば、地上のマナも生命も一切を吸い尽くし動物も、草木も、大地も死に絶え、地上にあらゆる厄災を齎すだろう。

 

 しかしアヌ神もイシュタル自身の数々の愚かな行動とその性格を知っている、そして今回の事も全て把握している。故に了承する訳にもいかない、何より今回の事に自分達の恩人でもある龍牙が関わっているのだから。

 

 

『天の父アヌ神と言えど我が恋を邪魔するのであれば冥界の亡者を地上に溢れさせます!』

 

 冥界の神にはあるまじき発言である。その様になれば世界のバランスは崩れてしまう。だが今のイシュタルであれば本当にそうしてしまうと感じたアヌ神は渋々、天の宝具……天の牡牛(グガランナ)を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………スマヌ」

 

 アヌ神はただ謝る事しかできなかった。

 

 

「いや……アンタは世界を護る為に最善の手を尽くした。それだけだ……まぁ分かってた事だが………今回はどうにかする。その代わりに幾つか頼めるか」

 

 

「あぁ……」


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