俺のFateな話   作:始まりの0

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EP18 弓兵

 ~特異点F 円蔵山~

 

 一行は、やっと円蔵山に大空洞の入口に辿り着いた。そして中へと向けて歩を進める。

 

 クーフーリンが先頭を行き、魔術で火を灯している。

 

 

「すげぇ……禍々しい魔力だな」

 

 龍牙は奥から流れてくる禍々しい魔力を肌で感じ、そう呟いた。

 

 

「そう言えば、キャスター。この先に居るのはセイバーだけなのか?」

 

 立香がそう尋ねると、クーフーリンは頭を掻く。

 

 

「確かにセイバーは一番、奥にいるが……その道を守ってるアーチャーが居やがる。どの道、邪魔してくるだろうから倒さなきゃならん」

 

 

「そう言う事は早く言いなさいよ」

 

 クーフーリンの言葉にオルガマリーはそういい放つ。

 

 

「光の御子、セイバーとアーチャーの真名は分かる?」

 

 龍牙はクーフーリンにそう尋ねる。

 

 この先に居るのはサーヴァントのクラスの中でも最良と言われるクラスのセイバー。仮に自分が知っている存在ならかなり面倒な事になると龍牙は考えていた。

 

 

「あぁ、知ってるぜ。これから先の戦闘、嬢ちゃんを頼りにしてるぜ。なんせ嬢ちゃんの盾なら奴の宝具を防げるかもしれねぇと思ったからだ。宝具が使えねぇと厳しいと思ったが、龍牙の坊主のお蔭で使える様になったんで良かったぜ」

 

 

「貴方がそこまで言うなんて……余程有名な英雄みたいね」

 

 クーフーリンの表情が真剣になって行くにつれ、その重要性を理解したオルガマリーがそう呟いた。

 

 本来、聖杯戦争において真名の把握はサーヴァント戦において重要になる。有名であればある程、その武器も弱点も分かり易くなるのだ。

 

 

「俺の他にいたサーヴァントが倒されたのも、奴の宝具が強力過ぎたからだ。あれは見れば誰だって分かる……王の選定する岩の剣の二振り目にして、星が産み出した奇跡。この時代においても、圧倒的な知名度を有する聖剣」

 

 龍牙以外の全員が固唾を飲んだ。

 

 

「【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】……それを持つのは騎士の王と誉れ高い、アーサー王だ」

 

 クーフーリンがそう言った瞬間、龍牙は何かの気配を感じると鍾乳洞の奥を見る。

 

 

「おう、言ってる傍から来やがったぜ。未だアイツを守ってんのかよ、テメェは」

 

 クーフーリンは鍾乳洞の奥から現れた影を纏う男が現れた。

 

 

「生憎とこれが役目でね、お引き取り願おうか。最も、逃げられればの話だが……」

 

 

「ハッ!上等!ここらで決着付けようや!そろそろ膠着状態にも飽きてきたんだ!」

 

 クーフーリンがそう言って杖を構えるが、龍牙が止める。

 

 

「アンタやマシュには騎士王の相手が待ってる、此処は俺に任せろ」

 

 

「では主殿、私が…」

 

 

「いや、牛若丸も今の内に休んでおいて……」

 

 

「ですが相手はサーヴァントです!」

 

 そうサーヴァントはかつての英雄であり、戦闘能力は人間を遥かに勝っている。

 

 

「問題ない……無銘の英霊よ、俺は慢心しない」

 

 

「何を言っているのか分からないが……マスターが前に出るなど、愚の骨頂!」

 

 影を纏ったサーヴァントが両手に双剣を召喚すると、凄まじい速度で龍牙に襲い掛かった。確かに魔術師であろうと人間ではサーヴァントに勝つ事はできない。

 

 唯の人間……魔術師ならばこのまま影を纏うサーヴァントに斬り伏せられるだろう。

 

 目の前にいるのは唯の人間ではない、しかも人類最古の宝物庫の鍵を持っているなど影のサーヴァントが知る筈ない。

 

 

「がっ?!な……に……」

 

 影のサーヴァントは何が起きたのか全く理解できなかった。自分は双剣で目の前に居る龍牙を斬ろうとした、だが現在、腹に6本、背に5本の剣が突き刺さっていた。しかもその剣全てに神秘が宿っていた。

 

 

「何…処か……ら」

 

 

「無銘の英霊、言ったろ俺は慢心などしないって……さようなら」

 

 龍牙がそう言うと、影のサーヴァントは黄金の粒子となって消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程の戦闘を見ていた立香達の眼には、影のサーヴァントが龍牙に斬り掛かった、だが何故かサーヴァントの方が剣で貫かれていた。

 

 

「一体何が起きたんだ…?」

 

 

「わっ分かりません……一瞬で敵サーヴァントが剣に貫かれました」

 

 立香、マシュ、オルガマリーは目の前で何が起きているのか分からなかった。だが牛若丸逹、サーヴァントは違っていた。その眼は何が起きたのか見えていた。

 

 

「主殿の、あの武器は一体何処から……」

 

 

「おいおい……まさか…あの野郎の宝具だと……なんの冗談だよ」

 

 

「ちょっと貴方達だけ分かってるみたいだけど、アイツはなにしたのよ?!」

 

 分からないのでイラだっているオルガマリーがそう叫ぶ。

 

 

「多分、違う場所に在る武器を高速で飛ばしたんだろうよ。それこそ俺達サーヴァントでもギリギリ見える位の早さだ、坊主達に見えなくて当然だ」

 

 クーフーリンは立香達にそう説明した。

 

 

「ふぅ……終わった。どうかしたかな、皆?」

 

 龍牙は何事もなかったかの様な顔をしている。皆は何が起こったのかはクーフーリンに説明して貰ったが、何故龍牙がそんな力を持っているのかは分からない。

 

 

「いっいえ無皇さんのさっきの力……」

 

 

「あっ……まぁ知りたいって思うよね。でもそれは追々説明するとしよう。この先には騎士王が控えている、これが最後の休憩になる。ゆっくり休むんだ、俺は周りを見てくる。」

 

 

「主殿!私も御供します!」

 

 

「んじゃ、俺も行くか」

 

 立香に言われそう答えると、龍牙は辺りに敵がいないかを確認する為に、牛若丸、クーフーリンと共に見回りに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても驚いたぜ、龍牙の坊主があの慢心の塊の女王の宝具を使うなんてな」

 

 見回りしている時に、クーフーリンが突如そう言った。

 

 

「アハハハ……流石第5次聖杯戦争に参加していただけはある、彼女は4次からの生き残りでいたんだろう?」

 

 

「あぁ、お前アイツの知り合いか?」

 

 

「知り合い……と言うより彼女の従者みたいなものかな。彼女が聖杯に参戦していたことは知識として知ってたからね……この時代で実際に会った訳じゃない」

 

 

「従者?知ってた?ますますわかんねぇ……お前さんは一体」

 

 

「さてね……言えることは唯1つ、俺は自分の目的と理由の為だけに戦ってる自分勝手な奴ってことさ」

 

 

「主殿、私には良く分かりませんが私は主殿がどの様な存在であってもついて行きます!」

 

 何時の間にか忠誠MAXの牛若丸はそう言った。彼女自身、誰かの為に戦っている。生前は兄の為に戦ったものの、理解されず非業の死を遂げた。

 

 しかし龍牙は以前の世界より画面の中だけとは言え彼女の事を多少なりに知っていたので、ついつい褒めてしまった。本人曰く「(構って欲しそうにしている犬を見てるようで)可愛いのでつい…」だそうだ。未だ出会って間もない自分を信じ、認め、褒めてくれる。彼女にはそれで十分だった。

 

 更に龍牙は普通の魔術師などと比べ物にならない程の力の持ち主なので、牛若丸自身のスペックも向上している。その内に完全にブレーキが壊れて、狼人間から種を恐喝してきたり、1人で目玉びっしりの柱を倒して目玉を献上しそうだ。

 

 

「ありがとう、牛若丸。俺の事は落ち着いたら話すよ」

 

 そう言って牛若丸を撫でる。牛若丸はそれを気持ち良さそうに楽しんでいる、そして在りもしない筈の尻尾が見える。

 

 

「まぁ俺はお前さんが何者であれ、あの宝具を使えるのなら心強い」

 

 

「でも俺はあくまで合鍵を持ってるだけ……いわば借り物だ。あんまり使いたくない」

 

 

「ハハハ、確かにお前さんならサーヴァントと生身でやり合えそうだな」

 

 

「未だ真面なサーヴァントとは戦ってないがやるだけはやるさ」

 

 3人は話を終えると、立香達の元に戻り奥に待つ騎士王の元へと向かう。


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