俺のFateな話   作:始まりの0

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EP22 生命の実

 龍牙は目を覚ますと、白い天井を目にした。綺麗なベッドで寝かされていた。

 

 

「知らない天井だ……まさかこの台詞を言う事になろうとは、よいしょっと」

 

 そして身体を起こして、周りを見た。薬品、包帯、ガーゼ、ピンセットなどの医療器具。此処は医務室だと直感した。

 

 

 -怪我をした?直ぐに患部を切断します!-

 

 

「……いる訳ない。未だいる筈がない……彼女が出て来るのは未だ先の筈……うん」

 

 脳裏にこの場に居ない筈の直ぐに怪我したら患部を切断しようとする婦長の姿が思い浮かぶ。そして「婦長はいない、婦長はいない」と言い聞かせた。

 

 

「何を仰っているのですか、主殿?」

 

 

「どわぁ~!?怪我してません!だから切断しないで下さい!」

 

 いきない声を掛けられ、驚いた龍牙はベッドから転げ落ちると土下座する。

 

 

「私は主殿を傷付けません」

 

 

「って牛若丸か……ぁあ良かった。婦長かと思った」

 

 

「ふちょうとは一体なんですか?」

 

 

「いや気にしないでくれ……それよりアレからどうなった?俺の記憶ではレイシフトに入って、疲れてぶっ倒れたと思うんだが」

 

 龍牙は自分の記憶を思い出していた。レイシフトでカルデアに戻ってそのまま疲れで倒れてしまった。それは合っているのか、牛若丸に確認した。

 

 

「はい、間違いありません。急に倒れられた時は何事かと思いました」

 

 

「久々の戦いでちょっと疲れた。流石は騎士王という所か…………最良のクラスセイバー……騎士王であのレベルか。やっぱ普通のサーヴァントとしての現界であの強さ……ちょいとばかり見直さないといけないか」

 

 龍牙は立ち上がると、目を瞑り魔力を全身に廻らせる。

 

 

「『全身の状況確認・診断……【外傷なし】【腕部、脚部に微細な筋断裂……戦闘によるものだと思われる、全治約2日】。封印術式・正常作動、【能力限定】【魔力封印】……魔力封印を5%を解除』」

 

 龍牙の足元に魔方陣が展開し、魔法陣がゆっくりと上昇し龍牙の身体魔方陣を潜る。龍牙が自ら施した封印が解除されたらしく先程より魔力が上がっている。

 

 

「『封印術式・解除の問題なし』」

 

 龍牙はそう言い終えると目を開けた。

 

 

「凄い魔力です」

 

 

「一応普段から封印はしてるからね……取り敢えず牛若丸には俺の事を話しておきたいが……それは部屋に戻ってからにしよう……ねぇドクターとサーヴァント」

 

 龍牙は入口の方を向いてそう言うと、入口からドクターロマンと女性が入って来た。

 

 

「アハハハ、ごめんね。盗み聞きみたいなことしちゃって」

 

 ドクターロマンが申し訳なさそうに頭を下げる。

 

 

「まぁサーヴァントと対等に戦える一般人の正体が気になるのは分からなくもないですから」

 

 

「では教えて貰いたいね」

 

 女性がそう言う。龍牙はジッとその女性を見ている。

 

 

「おやっ、どうしたのかな?もしかして私の芸術的な美しさに惚れちゃった?」

 

 

「モナリザそのままだな……レオナルド・ダ・ヴィンチ」

 

 

「私の真名を見破るとは……そこまで有名なのかな!?」

 

 

「そういや………アンタってモナリザ以外に何したんだっけ?」

 

 

「なっ!?」

 

 ビシッ!と何かに亀裂が入る音がした。

 

 

「わっ私の偉業を知らない……だって?冗談だよね?」

 

 

「何かのカレンダーにモナリザが載ってて、名前は知ってたけど………何したんだ?牛若丸は知ってる?」

 

 

「私は存じません」

 

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ありえない!!!モナリザを知ってて、他の事を知らないって何なの?!」

 

 ダ・ヴィンチは頭を抱えて、悶えている。どうやら誰でも自分の事を知っていると思っていたらしい。

 

 レオナルド・ダ・ヴィンチ……モナリザや最後の晩餐・医学・航空工学など様々な分野で偉業を残した天才だが、龍牙はそこまで深く知らなかった様だ。

 

 

「「興味ないから(です)」」

 

 龍牙と牛若丸はそう言った。それを聞いたダ・ヴィンチは「興味ないって……興味ないって……」と呟きながら部屋の隅っこで体操座りをしている。

 

 

「そう言えばお……おる………おる……おるが………えぇと……あっそうだ!オルガメリー所長は?」

 

 

「誰がオルガメリーよ!?私はオルガマリーよ!」

 

 

「そりゃ失敬……興味ないものは人だろうと、物だろうと記憶には留めない性格なもんで」

 

 

「私は貴方の上司よ!上司の名前くr……ひぃ!」

 

 と文句を言いながら入って来たのはオルガメリー……じゃなくオルガマリーだった。しかし口の聞き方が主である龍牙への気に喰わなかったのか、オルガマリーに刀を向ける牛若丸。

 

 

「貴様……主殿に助けて貰った分際で舐めた口を聞くな」

 

 

「牛若丸……戦闘経験がなく、たかがスケルトン相手に逃げ回っていたとは言え一応カルデアの所長だからね」

 

 ーグサッ、グサッー

 

 オルガマリーの精神に悪意のない言葉の刃物が刺さる。

 

 

「しかし主殿!コレは主殿に命を救われたのにも関わらず、名前を間違えただけで主殿に舐めた口を聞きました!」

 

 

「いや、まぁそれについては俺も悪いし……牛若丸だって親から貰った名前を変に間違えられると嫌だろう?」

 

 

「ムッ……確かにそれはそうですが……」

 

 牛若丸は何かを考えているが、一向に刀を下ろそうとしない。

 

 

「(何となくこの子の扱い分かってきた。完全に犬だ)牛若丸は俺の事を思ってやってくれてるんだろう……ありがとう、こっちにおいで撫でてやろう」

 

 それを聞いた瞬間に牛若丸は龍牙の前に立っており、頭を差し出していた。龍牙は牛若丸の頭を撫で始める。

 

 

「はぁ~主殿の撫では心地好いですぅ」

 

 蕩けた表情になっている牛若丸。

 

 

(ギルとエルキドゥ、動物達で鍛え上げた撫でテクを見せてやる。牛若丸は謙虚に言って来るが、ギルの場合は威圧してくるからなぁ)

 

 等と考えていると、オルガマリーやドクターロマンの事を思い出したので顔をそちらに向ける。

 

 ドクターロマンは乾いた笑顔で此方を見ており、オルガマリーはロマンの後ろに隠れ此方を伺っている。ダ・ヴィンチに至っては未だ立ち直ってない。

 

 

「そういやドクター、藤丸君は?」

 

 

「立香君なら未だ部屋で休んでるよ」

 

 

「マシュの方は?」

 

 

「彼女なら藤丸君の様子を見てるよ」

 

 

「そう……それで状況を説明してくれるか?カルデアの被害、生存者数とか」

 

 

「あぁ……カルデアの被害については…」

 

 ロマンと復活したダ・ヴィンチによって現在の状況を伝えられ、各時代に現れた特異点についても説明された。

 

 

「(俺というイレギュラーがいるがゲームとさほど変わってないな)成程…大体分かった」

 

 

「なら、次は君の事を聞かせて貰いたいな」

 

 龍牙がそう言うと、ダ・ヴィンチがそう言う。龍牙の力について聞きたいんだろう。

 

 

「俺はそう簡単に話すつもりはないよ」

 

 

「君のあの力についてもそうだけど、カルデアと君とのパスが繋がっておらず、マシュの作った召喚サークルを使用せずサーヴァントを召喚……全く以て謎だらけだ」

 

 そう龍牙は立香の様にカルデアとの魔力パスが繋がっていない。立香の場合は戦闘時や召喚時などの時以外は自分の魔力を使わず、目に見えないパスを通じてカルデアの魔力でサーヴァントを維持している。

 

 だが龍牙はそのパスが繋がっておらず、全て自分の魔力で補っている。

 

 

「でしょうね。パスは繋げてないもん、自分で補えるし他からのパスを繋ぐと面倒だしな」

 

 

「「「えっ!?」」」

 

 

「俺の事は話すつもりはない……会って間もない輩を信頼するほど、俺は出来た人間じゃないんでね……藤丸君が目を覚ましたら教えてくれ、俺は部屋に戻るとしよう」

 

 龍牙はその場を後にしようとする。牛若丸もそれに続く。

 

 

「君の言う事も最もだ。だがこれだけは教えてくれないかな……所長を助けた時のアレはなんだい?これは個人的な興味でね、教えてくれると嬉しいんだけど」

 

 龍牙が部屋から出ようとした時、ダ・ヴィンチがそう聞いてきた。

 

 

「それくらいなら……所長の肉体はあの野郎の策略で吹き飛んだ訳だ、大聖杯の影響で一時的に実体化したみたいだが、まぁあのまま放って置いたら」

 

 

「おっ置いたら?」

 

 龍牙の言葉に固唾を飲む当の本人。

 

 

「聖杯を回収したから魂は実体化できなくなり、魂は魔物やらシャドウサーヴァントに喰われてたかもな………もしくはゴーストにでもなってたか、最悪…魂そのものが消滅かな」

 

 オルガマリーはそれを聞くと顔を真っ青にしていた。

 

 

「だから俺は魂に肉体を与える為に、【生命の実】を使っただけだ」

 

 

「【生命の実】だって!?」

 

 

「生命の樹に成っている実……とは言っても俺の言う【生命の樹】とアンタ等の知る生命の樹が同じとは限らんがね」

 

 龍牙がそう言って掌を上に向けると、何も無い空間から金色の光を放つ果実が現れた。果実は光を放ちながらゆっくりと回転している。

 

 

「凄まじい高密度の魔力……計器振り切ってるよ!?」

 

 

「神秘……」

 

 ロマンは計器を確認するとメーターが全部振り切っていた。オルガマリーはその輝きに見惚れている様だ。

 

 

「此奴は文字通り、命を与える実。どんな病も治し、死者に命を与える。理論上はサーヴァントを受肉させることも可能だ」

 

 

「サーヴァントの受肉まで?!」

 

 

「一体、何処でそんなものを……」

 

 

「さてね……そこまで教えるつもりはない」

 

 龍牙の掌の上で回りながら金色の光を放つ果実は、そのまま消えてしまった。

 

 

「じゃあ藤丸君が目を覚ましたら連絡下さい」

 

 龍牙はそう言うと、牛若丸と共に部屋から出ていった。


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