俺のFateな話   作:始まりの0

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EP26 知らずの内に怨みを買った

 砦の兵士達を救うべく、現れた救国の聖女ジャンヌ・ダルク。そして、彼女を助けるべく、立香はエミヤ達に彼女を援護する様に指示を出した。

 

 しかし1体1体は大した事のないワイバーンであっても、かなり数は多いために苦戦していた。だがそこに突如現れたのは神々しい光を放つ純白の鎧だった。その者は手を上げるだけでワイバーン達を追い払ったのだ。

 

 ジャンヌや立香達はその鎧の者を見上げていた。

 

 

「貴方は主なのですか?」

 

 ジャンヌはそう呟いた。

 

 

「いいや、俺はお前達の崇める神ではない。この壊れかけた世界を認めたくない唯の人間だよ」

 

 鎧の者は地面に着地すると、砦に向かい手を翳すと、砦が光に包まれる。

 

 

復元(Restoration)

 

 鎧がそう呟くと、砦を包む光が収まる。先程までボロボロであった砦が建てたばかりの様に新しくなる。

 

 それには、立香やマシュ、エミヤ達だけでなく、砦にいた兵士達も驚いている。

 

 

「これだけでは、ワイバーン達の攻撃を防ぐには心許ないな。『耐久・向上、耐炎を付与』」

 

 鎧がそう呟くと魔法陣が現れ、砦の外壁に吸収された。

 

 

「これで、多少はマシになったか……」

 

 鎧は光の粒子となって、消えていく。そして鎧が完全に消え、現れたのは龍牙だった。

 

 

「「「「無皇さん(龍牙先輩・龍牙の坊主)!?」」」」

 

 

「やぁ、藤丸君にマシュ、エミヤに、クーフーリン、ダレイオス三世」

 

 

「でも、無皇さんはなんで……」

 

 

「いやぁ……俺もなんで君達と別の所に転移したのか良く分からないんだよね。その辺りはドクターロマン辺りに教えて欲しいくらいだけど、俺の方の通信機は調子が悪いのか動いてくれなくてね………」

 

 

『いや……その色々と調べてみたけど、分からないです。はい……通信機については多分、龍牙君の膨大な魔力で通信機がいかれちゃったのかなぁ……なんて』

 

 立香の通信機から出た映像で、視線を逸らしているロマン。

 

 

「つまり主殿に不良品を渡したと言う事ですか、ロマン殿」

 

 突然現れた馬に乗った牛若丸。

 

 

「牛若、周りに敵は?」

 

 

「いいえ、特に敵影はありません。あのワイバーン共は主殿の御威光で逃げていきましたし、ゾンビもいませんでした。所でロマン殿、主殿に不良品を持たせたのですか?」

 

 

『いやそう言う訳ではない……筈だと思うよ』

 

 

「ロマン殿、帰ったら覚えておいて下さいね」

 

 牛若丸の鋭い刃の様な視線がモニター越しで、ロマンに突き刺さる。

 

 

「まぁまぁ……ドクターが一概に悪い訳じゃないんだし、そう怖い顔をしない。でも、この周辺もあんな事になってたら目も当てらんないからね………まずは怪我人の手当てが先…と言いたい所だけど」

 

 龍牙は砦の兵士達に目を向ける。兵士達の視線はジャンヌに向けられている。

 

 

「……魔女……竜の魔女だぁ!」

 

 1人の兵士がそう言うと、他の兵士達も脅え始め、砦に篭ってしまった。龍牙は予想していたのか、溜息を吐く。

 

 

「取り敢えず、此処から離れるとしよう。じゃないと攻撃されそうだ……そうなれば此方も、身を守る為に剣を抜かなければなんないからね。そうなる前に去ろう、無駄に血を流すのは良くない」

 

 周りの状況を見た立香も龍牙の言葉に同意して、この場を離れる事を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~森の中~

 

 一先ず、森の中に退避した一同。

 

 

「近くに魔性の物の気配がします。砦も近い……」

 

 

「あぁ、みたいだね。この辺り、一帯を浄化しておくとしよう……」

 

 龍牙の背中に先程の金色の12枚の翼が生える。そして、翼に嵌め込まれている12色の宝珠が全て真っ白に染まった。そして翼から眩い光が放たれ、森の中にいる魔物達を消滅させた。

 

 

「ふぅ……取り敢えず、魔物はこれでいい。はぁ………疲れた」

 

 

「さぁ、主殿!火の支度ができました!近くの川で魚と、食べれそうな木の実を用意しました!ささっ此方にどうぞ!」

 

 何時の間にか、焚火と食事の用意をしていた牛若丸が火の近くに座る様に龍牙に勧めた。龍牙は勧められた場所に座ると、ジャンヌの方に視線を向けた。

 

 

「取り敢えず、自己紹介しようか」

 

 それから龍牙や立香はジャンヌと自己紹介を終え、互いの状況を確認した。

 

 ますサーヴァント、英霊ジャンヌ・ダルクはクラス:裁定者(ルーラー)として現界した。そして、この時代はジャンヌが人間として生きてきた時代の直後である事が分かった。

 

 裁定者(ルーラー)とはエクストラクラスであり、他のサーヴァントに対する【特殊令呪】やサーヴァントの真名を見抜く【真名看破】といった特殊能力があるが、それが現在使用不可らしい。

 

 龍牙と立香、マシュは自分達の事を話し、ジャンヌと協力する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無皇龍牙……1つお聞きしたいのですが」

 

 

「ふぁに?」

 

 龍牙は牛若丸の用意した魚を食べながら、ジャンヌに声を返した。

 

 

「あの、食べてからでいいですよ」

 

 

「ゴクッ……なに?」

 

 

「貴方は本当に主ではないのでしょうか?……あの時、ワイバーンを追い払った時のあの光……アレはまさしく主の光でした」

 

 ジャンヌはかつて、神の声を聞いた少女。その彼女が龍牙の放った光は主……神の光だと言ったのだ。

 

 

「それについては俺も興味あるぜ、冬木の時のあの力……さっき使ってたのとは正反対の力だったぜ。あん時はまるで破壊の権化って感じだったが………今回のはまるで違ってた。一緒に戦う以上、知っておきたいんだが」

 

 そう言ったのはクーフーリン(術)だった。彼は冬木で戦った時の記憶がハッキリある様で、龍牙の力の事が気になっていた。立香もマシュも興味津々で龍牙の方を見ている。

 

 

「差支えなければお教え頂けませんか?」

 

 ジャンヌにそう言われ、立香とマシュの方を見る。何やらキラッキラッした目でこっちを見ている。

 

 

「………はぁ、じゃあ少しばかり私情を話そう」

 

 龍牙は自分の通信機を外し、立香に通信機を切る様に言った。立香はそれに従い、通信機の電源を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―総ての世界は【無】から創造され、破壊により【無】へと還る。これはあらゆる、平行世界・次元世界・宇宙において決して変わらない【無】が定めた絶対の法則だ―

 

 

「【無】?……とは何も無いと言う事でしょうか?」

 

 マシュは龍牙の話した【無】について考えを巡らせる。

 

 

 ―まぁ簡単に言えばね。【無】とは言わば、絶対の意志だ………この世界では【根源の渦】とか呼ばれている。【無】とは【根源の渦】の意志の様な物と考えてくれればいい―

 

 

「根源の渦?」

 

 

「先輩は元一般人なので分からないでしょう……【根源の渦】とは世界の外側に存在すると言われる全ての魔術師が最終終着点とする、全ての始りであり、終わり。ありとあらゆる概念・存在を内包するものだと聞いています」

 

 マシュは立香にそう説明するが、立香は今一分かっていないらしい。

 

 

 ―まぁ簡単に言えば、【無】と言うのは世界の意志そのもの。【無】は創造と破壊と言う概念を産み出して、世界を創る様に命じたそうだ。そして創造と言う概念は人間の言葉で表すなら【神】、破壊は【破壊神】【邪神】という所だろう。俺はその創造と破壊の力を持っている、決して覆す事のできない世界の理そのものをね―

 

 

「はぁ!?そんな事、不可能だろ!?普通の人間が理、そのものを内包できる訳がねぇ!仮にそんなもんを人間の身体に内包したとしても身体が耐えれる訳がない!」

 

 クーフーリン(術)はそう言い放つ。普通の人間がそんな力を身体に封じれば、使うどころか封じた時点でその者の身体は崩壊するだろう。

 

 

 ―仮にこの身が【創造】と【破壊】を扱う為に生み出された存在だとすれば話は別―

 

 

「そんなもの、できる者がいる訳がない」

 

 エミヤはそう言う、クーフーリンもそれに同意する。

 

 

 ―普通はそう考えるよね、でも深く考えないでくれ……俺が持ってるのは【創造】と【破壊】の力さ。ついでに戦闘能力は経験に基づくものだよ―

 

 龍牙はそれだけ言うと、欠伸をして眠そうにしている。

 

 

「まぁそう言う事さ……なんで、そんな馬鹿げた力を持っているのかは想像にお任せすると。後、この話は他言無用で願うよ。特にダ・ヴィンチちゃん辺りに聞かれたら根掘り葉掘り聞いて来そうなんで……じゃあ俺は少し休ませて貰うよ」

 

 龍牙は立ち上がると、何処かに行ってしまった。牛若丸も霊体化してその後に続く。

 

 話が終わった一同は何が何なのか分からないと言う顔をしていた。

 

 

「えっと彼は何時もあんな感じなのですか?」

 

 

「はっはい、龍牙先輩は大切な事は何も仰ってくれません………ですがジャンヌさんは、何故龍牙先輩を主だと?」

 

 

「あの方の放っていた光が、かつて感じた主の御威光に似たものだったからです」

 

 ジャンヌは龍牙が行った方向を只々見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処かの城の玉座に座っている女性が近くにいる男に視線を向けた。

 

 

「ねぇ、見たジル?」

 

 真っ黒な鎧を着て、ジャンヌと同じ顔をしている女性。彼女こそ、ジャンヌ・ダルク・オルタ、この時代の人々に「竜の魔女」と呼ばれた存在だ。

 

 

「えぇ、見ましたとも。あれこそ主の光!なんと忌々しい!」

 

 彼女の従者、キャスターとして現界したジル・ド・レェはワイバーン達を退けた光についてについて話し合っていた。

 

 

「本当に忌々しい………」

 

 ジャンヌ・オルタもまたワイバーンを退けた光を思い出し、イラだっている。

 

 

「ですが、ジャンヌ、ご安心を。例え相手が誰であろうと貴女の歩みを止める事はできません、私がさせません!」

 

 

「そうね……ジルが一緒なんですもの…大丈夫よね。私は少し休むわ……」

 

 ジャンヌ・オルタはそう言うと、玉座から立ちあがり出ていってしまった。ジルはそんな彼女を笑顔で見送った。ジャンヌ・オルタが出ていったのを確認すると、クワッ!と目を見開いた。

 

 

「おのれぇぇぇぇぇっぇぇぇ!!!!忌々しい神めぇぇぇっぇっぇぇ!!!」

 

 今にも目玉が飛び出しそうな程、目を見開いている。

 

 

「御身が我が前に現れるとは思っても見なかった!!いずれは天の座より引き摺り降ろしてやろうと思っていたが、手間が省けた!!!我が聖処女を救わなかったにも関わらず、他の民を救う為に現れるとは………フフフフフフフ………ハハハハハハハハハハ!!!その光を汚し尽くしましょうぞぉぉぉぉ!!!」

 

 狂ったかの様に、獣の様に叫び続ける。総ては国の為に、民の為にと戦い続けた聖女を救わなかった神への怨み、憎しみが彼をそうさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっ………へっくしゅん!ずずっ……誰か噂してるのかな」

 

 

「主殿、大丈夫ですか?」

 

 

「あっうん……俺は少し休むとするよ」

 

 龍牙はそう言うと、大きな木にもたれ掛かり眠りについた。半狂乱となったジル・ド・レェに完全に標的にされているなど露知らずに。


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