俺のFateな話   作:始まりの0

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EP27 ラ・シャリテ

 ~話し合いの翌日~

 

 朝が来た。そうなると、必然的に朝食を取らねばならない。サーヴァントは魔力だけあればいいが、生身の人間である立香と龍牙は違う。生きているので、食事は絶対だ。一食抜いても死にはしないが、今は戦いの中だ。いざと言う時に動けなくなるのは頂けない。

 

 龍牙は目を覚まし、そんな事を考えていた。取り敢えず近くの川に魚でも捕りに行くかと考えていた時……

 

 

「おはようございます!主殿!朝食の支度は出来ております!」

 

 ブレーキの壊れた忠犬……牛若丸がそう言ってきた。牛若丸が調理したのだろうか?

 

 

「いいえ!私は魚や木の実を捕ってきただけです、調理はエミヤ殿がしました!」

 

 

「あぁ、そうなんだ。ありがとう」

 

 

「いぇ!従者として主の食事を用意するのは当然の事です!」

 

 

「よし!褒美に撫でてやろう!」

 

 

「あっ…そんな……あぅう、牛若は幸せ者です」

 

 

(あっ……つい褒めてしまった。どうにも牛若を見てると犬に見えて仕方ないな)

 

 こうして再び忠誠度が上がる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事を済ませた一同は、一先ずオルレアンへと向かう事にした。しかし、直接向かうのは困難なのでその周辺の村や町で竜の魔女の情報収集と敵陣営の戦力調査をして敵の情報も集める為に、まずは目的地をラ・シャリテへと進路をとった。

 

 

「歩いていては間に合わないかもしんないんで……掴まってくれ」

 

 そう言い出したのは龍牙だった。一同は振り返って見ると、背に先日見た黄金の翼を生やしていた。その腕には先日見た白い鎧の腕部だけが装備されており、手には鎖が握られていた。

 

 

「あっラ・シャリテの名前を聞いて思い出した。多分、街は襲われる」

 

 

「えっ、無皇さん、それは一体どう言う事ですか!?」

 

 

「ぇ~あ~、俺の力に未来視って物が在ってな。その力で未来が見えたんだ、この先の村が襲われる……信じる、信じないは君等次第だ。俺は行く……さっさと決めてくれ。無駄に血が流れるのは嫌いなんだ」

 

 龍牙に未来視の力はない、しかしこの世界でこれから起こる事を画面の向こうからとは言え知っているからだ。だが、違う世界から来たといきなり言っても信じられる訳がないので、龍牙は敢えてそんな嘘を吐いた。

 

 立香達も龍牙が未来視や鎧について、聞きたいと言う気持ちはあったが、「村が襲われる」と聞いてはそんな事は後回しだ。

 

 

「サーヴァントは霊体化してくれ、そんで着いて来れば振り落とされないだろう………藤丸君はマシュとジャンヌにしっかりと抱き留めて貰いなよ」

 

 

「はい!」

 

 

「君等も色々と知りたいだろうが、後回しだ!ちょいと飛ばすから歯食いしばれ!」

 

 龍牙がそう言うと、背の翼が大きく広がりその場から飛び上がった。その手に握られている鎖にはマシュとジャンヌが掴まっており、2人に抱えられる形となった立香がいる。他のサーヴァント達は霊体化した。

 

 龍牙はこの先の村へと向け、翔け出す。生身の人間である立香に悪影響のない範囲のスピードで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本来、数時間かかる筈の道のりを十数分で村が直ぐ近くに見えた。既に村は煙が立ち上っており、人々の叫び声が聞こえる。

 

 

「一足遅かったか!でも未だ、生きてる人間はいる!藤丸君、此処から先、一般人の君には多少居心地は良くないだろうけど、良く見ておいてくれ!この先、この村で起きる様な事が沢山起きる!」

 

 

「はっはい!」

 

 立香は龍牙にそう言われたものの、何の事か分からずにいたが、その言葉の意味を直ぐに理解する事になった。

 

 

 

 村についた龍牙は直ぐに立香達を降ろすと、周りの状況を確認する。

 

 

「サーヴァントが5。距離はあるけど……殺された人間がリビングデッドになってやがる」

 

 敵サーヴァントを感知した龍牙、しかし目の前には殺された人間がゾンビとなり生きている人々を襲っていた。

 

 

「藤丸君達とジャンヌは此処から東にいるサーヴァントの元に向かってくれ」

 

 龍牙は着地しながら翼を消し、そう言った。

 

 

「ですが、貴方と1人のサーヴァントでこの数は」

 

 

「問題ない、でもクーフーリンとエミヤ。彼等の手を借りたい。生きている人達を助けてくれ」

 

 

「承知した」

 

 

「任せときな」

 

 2人は現界し龍牙の言葉に了承した。龍牙は2人に1袋ずつ何かの入った袋を渡す。

 

 

「これは?」

 

 

「簡易的ではあるが、治療魔術を込めた玉だ。傷に翳すだけで、術式が展開する様に設定してる。多少の怪我なら、完治できる。ないよりはマシだと思ってね」

 

 

「お前……こんなの用意してたのか」

 

 

「救える命は救うのが俺のやり方だ……失った命は聖杯であろうが、人理修復しようが戻らないから……出来るだけ命は救いたいと思って用意したんだ、不要だったか?」

 

 

「いや、俺は治療のルーンってのは得意じゃねぇから助かる……お前がどう言う人間か、何となく分かってきたぜ」

 

 

「私としてもかなり助かるよ……君はかなりお人好しの様だ」

 

 

「何とでも言え」

 

 龍牙はそう言いエミヤとクーフーリンを見送りながら、破壊龍の眼(ノヴァズ・アイ)を発動させた。

 

 

「牛若!お前も藤丸君達と共に行ってくれ、俺も直ぐに追いつく」

 

 

「しかし……分かりました。御武運を……藤丸殿、マシュ殿、ジャンヌ殿、参りましょう」

 

 

「でも無皇さんが…」

 

 

「主殿で在れば大丈夫でしょう。此処に居ては邪魔になります、行きましょう」

 

 牛若丸の言葉に戸惑いながらも頷くと、マシュとジャンヌと共にサーヴァントの元に向かった。藤丸のサーヴァント、ダレイオスも現界しその後に続いていった。

 

 

「さて………と」

 

 龍牙は彼等を見送ると、直ぐに周りを確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―■■■■■■―

 

 唸り声を上げて、リビングデッドとなった者達が集まって来た。

 

 

「救われたいか………そうだろうな。その苦しみから解放してやる………【輪廻の龍焔(リミテッド・ノヴァ)】」

 

 魂を在るべき場所へと導く輪廻の龍焔(リミテッド・ノヴァ)を発動させ、全身から黒焔を放つ龍牙。その眼にはリビングデッドとなった者達に対する憐みと哀しみが宿っている。

 

 

「痛みはない………今此処に救済を……そして彼等の魂に安らぎを」

 

 龍牙はそう言うと、黒焔が龍の形になり辺りのリビングデッド達を焼き尽くしていく。その焔に包まれたリビングデッド達は灰になる瞬間、安らかな表情へと代わった。少なくとも龍牙にはそう見えた。

 

 

「この先、こんな事ばかりか………あぁ…嫌になる。でも俺は俺の役目を果たさないとね」

 

 燃え尽きた灰から魂達を眺めながら、龍牙はそう呟いた。そんな考えを振り払うかの様に首を振るうと、立香達の後を追い掛けつつ、現れたリビングデッドを倒しながら進むのであった。


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