EP40 いざ、ローマへ!
~カルデアス~
一通りの説明をロマニから聞いた龍牙は自分が連れて行くメンバーを彼に伝えた。
―どうやら藤丸君はローマの皇帝を助け、現在はローマにいる様だ。まだ藤丸君のバイタルが確認されている事からコンサートは開かれてないらしい……本当に良かった―
「じゃあ、今回の龍牙君の面子は牛若丸、ジャンヌ・ダルク、ジャンヌ・オルタ、沖田総司、織田信長の5人でいいね?」
「あぁ、それで藤丸君達からの連絡は?」
「通信が安定しないから何とも言えないよ」
「取り敢えず着いたら探すか…」
「それから龍牙君、これを」
ロマニが取り出したのは新しい通信機の様だ。オルレアンで使っていたのは壊れてしまった為、新しいのを用意してくれたらしい。
「前みたいに壊れないよな?」
「一応戦闘でも壊れないように設計してるから大丈夫……だと思う」
「助かる……俺はレイシフト後、藤丸君と合流するって事で良いな」
その言葉にロマニは頷き、龍牙はコフィンの中に入る。そしてレイシフトが始まり、彼の視界は青い光で覆い尽くされた。
~第二特異点 永続狂気帝国 セプテム~
「……眩しい……って言うか超あつい!」
龍牙は暑さで目を覚ました。目を覚ませば付近はゴロゴロとした岩が在り、煙が出ている場所もある。
「此処は……みんな、いる?」
龍牙がそう声をかけると、牛若丸達が現れた。
「皆、いるな……それで此処はどこなんだ?」
「さぁ分かりません……ですが此処に霊脈があるのは確かです」
「えぇ……付近には生命の反応はありません。ただ霊脈が近い所為か、死霊系の敵の気配があります」
牛若丸、ジャンヌがそう答えた。
「取り敢えず……カルデアに連絡をするか」
そう言ってつい先程、ロマニから貰った通信機を操作した。どうやら今回は壊れていなかった様で、ちゃんとカルデアに繋がった。
『やぁ龍牙君、今回はちゃんと繋がった』
『取り敢えず状況を説明するね。今、君がいる所は立香君とマシュが設置した召喚サークルの在ったエトナ火山だ。立香君達はローマのネロ皇帝と合流してガリアへ向かったよ、君もそっちに合流してくれたまえ』
安堵した様子のロマニと笑顔のダ・ヴィンチちゃんが龍牙にそう説明した。
「了解した……さてと」
龍牙は通信を切り、サーヴァント達の方に向き直る。
「じゃあ……行こうか。牛若丸以外は今回が初めての戦いになるけど……よろしく頼むよ」
「はい!沖田さんに御任せください!」
「マスターと認めた以上、儂はそなたに従うぞ」
「はい!共に戦いましょう!」
「フン、契約した以上は従ってあげるわよ、マスターちゃん」
沖田、信長、ジャンヌ、邪ルタがそれぞれそう返事を返す。
牛若丸は自分に構ってくれないので頬を膨らませている。
「牛若丸も頼むぞ」
「はい!」
ちゃんと牛若丸にも声を掛けて、頭を撫でようと手を伸ばすが
―キシャアァァァァァァ!―
スケルトンやら、ゴーストの群れがやって来た。
「ぁ~………取り敢えず迎撃だ。俺はサポートするよ……牛若、沖田は突っ込め!信長は2人の道を開いて!その次にジャンヌと邪ルタは牛若たちの援護を!」
自分の魔力をサーヴァント達に送りながら支持を出していく。サーヴァント達も、それに従い戦闘を開始した。
「撃てぇぇぇい!」
まず信長の火縄銃により、ゴーストの群れに隙間ができた。
「参ります!」
「せい!」
その隙間に牛若丸と沖田が突っ込みゴースト達を蹴散らす。ゴースト達は牛若丸と沖田を倒すためにそちらに集中する。
「はあぁぁぁ!」
「フン!」
時間差でジャンヌ達が突っ込みゴースト達を後ろから倒す。戦闘は1分掛からずに終了した。
「ぁ~ゴースト相手じゃ指示いらなかったかな……」
サーヴァント達の戦闘があまりに呆気なく終わった為、龍牙はそう呟いた。
「そんな事はありません、マスター」
「そうです!全ては主殿の指示の賜物です!」
「ははは、ありがとう。じゃあ、移動しよっか」
「その前にマスターよ」
「なに、ノッブ」
「以前の特異点で、儂と人斬りをとめた時に使っておった力の事を聞きそびれたと思ってのぅ」
龍牙はふっと思い返してみた。
2人を止めた時も、ジャンヌ達を召喚してからも自分の事を話してなかった。
「そう言えばそうだった……まぁ歩きながら説明しよっか」
龍牙は腕に着けていた通信機を仕舞う。もしもこれが自分のサーヴァント以外にバレると面倒だからだ。
~龍牙一行 移動&説明中~
「むぅ」
「「ぐすっ」」
「……」
龍牙から説明を聞いて、それぞれ反応するサーヴァント達。
信長は何やら難しい顔をしており、沖田とジャンヌはその時の龍牙の心情を考え涙し、邪ルタはムスッとした表情で涙目になっている。
「そこまで深く考える必要はないよ」
「マスター……貴方は家族と友人を守る為とは言え、人類に裏切られ命を差し出した。憎くくはないのですか?」
ジャンヌも同じ様に裏切られた身、なので彼に憎しみはないのかと尋ねた。そう聞かれて龍牙は少し考えた。
「昔は多少なり憎しみはあったかもな。人として生きるために生を受けたのにそれを全うする事を許されなかったからな。
………でも今はない。あっちの人類がした事は間違ってはない。誰だって何時、爆発するか分からない核爆弾を身近において起きなくないだろうしな。それで大切な人達が傷付くと考えれば尚更だ。だから家族と親友の安全だけは保証する様に取引した。もし俺が相手の立場ならそうしていた。
まぁ…未練はないかと言われれば未練はある。だから未練はない、こんな俺はを家族だと言ってくれた人達を護れるのなら……。
それにそうならなかったら、お前らと会えなかった訳だしな!」
そう笑みを浮かべて龍牙は言った。その言葉に嘘はない。
「じゃが、向こうの人間達が約束を反故するとは思わなんだのか?」
信長はそう尋ねた。確かにその約束は守られなければ意味がなく彼が無駄に命を散らしただけだ。
「それについては問題ない、一部の人間以外の記憶は改竄した」
「改竄?」
その言葉を聞いて首を傾げる沖田。
「そっ……俺には家族はなく天涯孤独の身……そして神を倒し、力に溺れ、暴走した。それを人間の手で討ち果たしたと」
それを聞いてサーヴァント達は驚いた。
「しかしそれでは……あまりに」
「それを言うならジャンヌだって魔女の汚名を着せられたじゃないか……あくまで家族や友人、俺を信じてくれた人達の為に汚名を被っただけだ。
各国の上層部の人達は俺に同情的だったし……万が一、約束を反故するなら俺の中の龍が顕現して暴れるぞと脅しもかけておいたし……それに本当の俺を覚えてくれてる人が1人でもいるならそれでいいさ」
彼にとっては自分が罵倒され殺されるよりも、自分の家族や友人が傷付く方が辛かったのだろう。
だからこそ汚名を被り、死んだ。 例え汚名を着せられても、誰か1人でも本当の自分を覚えてくれてるなら……喜んで命を捧げた。
「おっあれがローマ駐留軍か……さて話は此処まで、さっさと人理を修復しようじゃないか!」
龍牙は目視でローマ軍を確認してそう言うと歩き始めた、ジャンヌ達も互いに顔を見合せ、気持ちを切り換えると先へと進む。