龍牙は自分のサーヴァントとネロや立香達と共にアサシン・荊軻の案内で王宮へ向かっていた。今は敵陣に着く前の休憩をしていた。
これまでの経過を簡単に説明しよう、敵側のダレイオスの登場やブーティカが敵に召喚されたキャスター
(あらすじはそれほど、変わっていない。でも皇帝が落ち込んでいると……士気が落ちる)
「………」
ネロが困惑し落ち込んでいる原因は、先に上がった神祖・ロムルスの登場の所為だ。
神祖・ロムルス……ローマの建国神話に登場する国造りの英雄にして、生きながらに神の座に祀られた存在。ネロは勿論のこと、カリギュラの様な歴代皇帝が最も敬愛し、尊敬する存在。
そんな英雄が現在ローマ……そして自分の敵になるなど信じたくないのは当然だろう。立香達とこれからどういう作戦で行くかを話し合っていたが、彼女の事が気になり声を掛けた。
「(放っておく訳にはいかないか)……皇帝陛下」
「むっ……龍牙、立香、マシュか」
「落ち込んでますね……まぁ建国王が敵になったとしたら落ち込む……いや戸惑うのは仕方ない事です」
「ウム……正直言うと、まだ迷っているのだ。本当に余は正しいのか……このまま神祖に敵対していいのかと」
ロムルスは言わばローマそのもの。これまで信じていたものと敵対するなど困惑するのは当然だ。
「ん~俺から言える事はただ1つ。
この時代は今を生きている貴女達の物だ。過去の亡霊が貴女達の生き方を左右していい訳がない。これは当然の事……こんな簡単なことは
「今を生きているのは余達か……そうだ、その通りだな!それに」
「これまで見て来た連合側の人達は笑ってなかった」
立香がそう言った。これまで連合国の者達と遭遇したが笑いを浮かべている者達はいなかった。
「そうだ!以下に完璧な統治であろうと、笑い声のない国など在ってたまるか!」
「笑顔……国か…(何時だったが、ギルに同じ言った事を在ったな)」
かつてウルクで過ごしていた時の事を思い出した。龍牙が旅に出て、ウルクに戻ってきた当時、民達がギルガメッシュの圧政により苦しんでいた。その時に龍牙は立香と同じ様な事を言ったのだ。
もう既にネロに迷いはないだろう。
~王宮~
龍牙達は現在、王宮の目の前に立っていた。この先に待つのは神祖ロムルスだ、決して容易い事ではないだろう。
「では往くぞ!荊軻、案内せよ!!」
「承知した。此方だ」
さて、これから敵大将の元に向かおうとする時に現れたのは多数のシャドウ・サーヴァント達だった。
「チッ……仕方ない。藤丸君と陛下達は先に行ってください。俺達が道を開けますんで、信長、火縄の用意を」
「良いのか?あの程度なら余達が戦っても」
「恐らくシャドウ・サーヴァントは無制限に出てくるでしょう。此処で時間を喰うと更に増えてくる。だったら2組に分かれた方が勝率が上がります」
「そっそうか……だが死ぬでないぞ!」
「勿論……牛若、ジャンヌ、邪ルタ、沖田は信長の射撃後、直ぐに中央に道を開けてくれ」
龍牙の指示にそれぞれ返事を返すと、戦闘準備を整えた。
「マスター!何時でも撃てるぞ!」
「よし……撃てぇぇぇぇぇ!!」
龍牙の声と共に、信長が待機させていた大量の火縄銃が放たれる。銃撃は全て、シャドウ・サーヴァント達に直撃し、吹き飛ばした。
「皆、出番だ!」
「フン!」
邪ルタが手を向けると、炎が出現しシャドウ・サーヴァント達を焼き尽くし、中央に道を作った。
「はあぁぁぁ!!」
「セイッ!!」
「てやぁぁぁぁ!!」
続いて、牛若丸、沖田、ジャンヌが道の左右の敵の残党を掃討した。これで立香達は戦闘する事無く、行けるだろう。
「今だ!」
龍牙の掛け声と共に立香達は駆け出した。そして敵将の元へと向かう。彼等を後姿を見送ろうとするが、シャドウ・サーヴァントや魔物達が出てきた。
「取り敢えず、皆、敵を一掃してくれ………スマンが、少し魔力を溜める(奴がどれほどのものか、分からないが油断は身を滅ぼす。だからこそ、万全でいく)」
龍牙はシャドウ・サーヴァントをサーヴァント達に任せるとこの地に通っている龍脈から力を吸収し始めた。
《グルルルルルルルル!》
《ガアァァァァァァァ!》
龍牙は自分の中にいる龍達が何かに対して敵意を剥き出しにしている。
「あぁ、分かってるよ。お前達の言いたい事はな……だから待て」
「マスター?」
「あっ、ごめん。抑えるのに必死でな」
「「「「ッ!?」」」」
この場にいるサーヴァント達が龍牙の髪と眼の変化に気付き驚く。黒髪、黒眼だった彼は銀髪、金眼へと変化していた。それだけでなく、龍牙から来る魔力の質が変化していたのだ。
「さてと……大体、片付いたか。じゃあ、皆、行くよ」
そう言って龍牙は歩き始める。その身に宿す龍達を必死に抑えながら……。