~王宮 玉座の間~
降臨した魔神柱フラウロス。
それを静かに見ている龍牙。現在、彼は
「立香、マシュ、アレは龍牙なのか?」
「はい……そうです。詳しい事は分かりませんが、アレは破壊の力だそうです」
「破壊の力……?」
ネロはそれを聞くと首を傾げる。
「恐らくアレは純粋な破壊の力だろう」
「神祖殿?!未だ!!」
ネロ達に声を掛ける神祖ロムルス。彼に対して皆は警戒する、今まで敵対していたサーヴァントが話しかけて来れば当然だろう。
「安心するといい、今の私は
アレは恐らく破壊の概念そのもの………それだけではない、死と言う概念でもある。巻き込まれぬ様に気をつけるのだ」
神祖ロムルスはそう言うと、彼等を庇うように前に立つ。
《その力……危険だ……消えろ!無皇 龍牙!!!》
怪光線を放つフラウロス。龍牙はそれを防御することもなく、フラウロスを見上げていたが突然変わる。
「グオォォォォォォォォォォォ!!!」
龍牙が咆哮する、その瞬間、彼の身体から凄まじい衝撃波が放たれた。それにより怪光線が掻き消された。
《馬鹿な!?掻き消しただと!?在り得ん!サーヴァントでもない唯の魔術師如きがその様なこと、出来る訳がない!!!》
「はぁぁぁぁぁぁ………ふぅ……いいだろう」
龍牙はそれだけ言うと、両手を広げ天を仰ぐ。
「『大いなる母よ、我が身に宿る戒めを解き放つ許可を頂きたい』」
―構わない、貴方の想うがままに………でも制限時間は3分―
「3分か十分だよ」
―でも無理しないでね。創造と破壊もそうだけど、貴方が苦しむのは嫌だから―
「はいはい……
―それでも……気を付けてね。後、『はい』は1回―
「はぁ……この頃、口五月蠅くなってきたなぁ………全く」
《なっ何を!何を言っている?!誰と話しているんだ?!それになんなのだ、貴様は!?》
フラウロスは龍牙の妙な行動と彼から溢れ出している力に困惑していた。
「うるさい……3分しか時間ないからさっさと終わらせるよ」
龍牙は紡ぐ破壊の力を引き出す言の葉を。
「『我が声に応え、目覚めよ。創造より産まれし、あらゆる存在を喰らいし破壊龍よ。
森羅万象を【破壊】をもって無へ還そう。苦しみ、もがき、彷徨う魂達を【死】をもって輪廻の輪へと導こう。
我【楔】としての役目を果たす。我が魂力を喰らい、我が肉体を通し現世へ顕現せよ』
龍牙が言の葉を紡ぐ度に、その身を変貌させていく。
身長約180㎝しかなかった龍牙は5mほどに巨大化しており、鎧も今までの物とは異なっており、それは生き物様に変貌していた。
黒く堅牢な鱗に覆われた身体、全身に脈動する血管、咢より見える巨大な牙、両手足の先の鋭い爪、背から生えた翼、先に龍珠の付いた太い尾。
小さくはあるが、その姿はまるで……龍そのものだった。
「【
これまでに竜種……ワイバーンやドラゴン、ファヴニールと言った存在が数多居たが、これは今まで見て来た中でも異質な存在感を放っていた。
「グガァァァァァァァァ!!!」
龍化した龍牙が咆哮する。唯の咆哮だけ、周辺の空間が歪み、大気が、世界が震える。
《なっなんだのだ!?これが人間だと言うのか?!》
「グルルルルル…………」
龍化した龍牙は魔神柱・フラウロスをジッと睨みつけ唸る。
《貴様はなんだ?!それは何なのだ!?》
龍化した龍牙は何も答えない………答える必要などない。今の彼にとって、魔神柱は倒すべき敵だ。それ以上でもそれ以下でもない。ただ………破壊すべき
「ハカイ……ハカイスル」
《なに?》
「破壊スル……世界ヲ乱スモノヲ!」
《ふざけるな!!!貴様の様な化物にやられて堪るか!!!貴様が死ねぇぇぇぇ!!!》
フラウロスの全身の眼が、龍牙を凝視して、これまでにないくらい光を放つ。
龍牙に向かい放たれた怪光線……恐らくこれまでにない力だ。恐らく取り込んだ聖杯の力をフルに使った一撃だろう。
―焼却式・フラウロス―
「グルルルルル」
怪光線が目前に迫った瞬間、龍化した龍牙がその口を大きく開き、怪光線を
《はっ?》
「「「「えっ?」」」」
フラウロスだけでなく、立香やマシュ達、龍牙のサーヴァント達もこれには驚きである。防御した訳でもなく、打ち消した訳でもない……文字通り
「ガアァァァァァァ!」
龍化した龍牙は魔神柱へ接近すると、その身体へと牙を突き立てた。
《ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!》
そのまま、魔神柱の肉を噛み千切り、爪で引き裂いていく。この場に響く、魔神柱の悲鳴………フラウロスも必死に抵抗している、怪光線を放ったり、その巨体で龍牙に攻撃するものの全く効果はない。
《ふっ……ふざけるなぁーーー!!!》
フラウロスは自分の陥っているこの状況を認めたくなかった。
《人間がぁぁっぁあああ!!!!人間如きがぁぁぁぁぁあ!!!!!このフラウロスにこの様な!!!!!》
だからこそ限界以上の魔力を引き出し、龍牙を吹き飛ばす。
《その力が人間だと!?貴様の様な存在が人間である訳がない!!!この化物がぁぁぁぁぁ!!!》
フラウロスはその身に取り込んだ聖杯から更に魔力を引き出し、光線を放つ。だが龍牙はそれを喰らう。
「ぐっ………がぁ……ぐぅぅぅぅ……ぎゃ……ハハハ……」
龍牙の様子が変わる。先程まで、ただフラウロスを滅ぼす為に集中していた。だが突如、笑い始めた。
「ギャハハハハハ!!!」
笑いと同時に凄まじい破壊の力の暴風が吹き荒れる。立香、マシュ、そして彼等のサーヴァント達……ネロは震えた。
変貌した龍牙から放たれた圧倒的な力も原因の1つだった。だが最も大きな要因は別の物だ。
生物としての本能が叫ぶ、【アレは在ってはならない物……生きている限りは決して敵わぬ存在……逃げろ】と。
「ハハハハハハハハハハハハ!!!」
《なっ……なんなのだ……それは………貴様は……その身体に何を抱えている?!》
フラウロスは目の前にいる龍牙が笑い始めた時からその異変に気付いていた。龍牙から放たれる気配……人間としての気配が在ったものの、笑い始めてから人間の気配とは別の
「ハハハハハハハ……ガッ!?ぐあぁぁぁぁぁ!!!」
笑っていた龍牙は突如苦しみ始める。そして、その身体に罅が入り出した。