龍牙の中にいる無より産まれた創造龍と破壊龍、本来この龍達はどの様な状況で在っても世界に顕現してはならない。
何故なら創造と破壊と言う概念そのものが実体化した存在そのものである龍達は、唯、そこに在るだけで世界に大きな影響を及ぼしてしまうからだ。
龍牙がその力を必要とした場合には龍牙を纏う鎧として力の一部が顕現する。だがそれでは足りないと考えた際には更にその力を引き出す為に、龍牙の身体を媒体として龍を顕現させる……それが
力を使う為に、その魂を龍達に喰わせ、一体化する
だがこの際に長時間一体化していると、龍側に精神を引っ張られてしまう。そうなれば破壊を行うだけの機械へと変わる。先程、笑っていたのは破壊龍側に引っ張られ破壊衝動に飲まれていたのである。
このデメリットを防ぐ為に、龍牙は膨大な魔力を代償としているが、現在は魔力が制限させているのでそれは頼りにならず、
【無】との会話で出てきた3分と言う時間はこの制限時間の事だろう。
「ォォォォォォ!」
最終的にその身体は粉々に砕け散り、中から人間の姿の龍牙が現れた。
「はぁはぁ……あぶねぇ……危うく飲まれる所だった。やっぱ制限があると………不便だ」
《(弱った……この期を逃す訳にはいかん)貴様は危険だ!死ねぇぇぇ!!》
疲弊した龍牙を見て好機と思ったフラウロスは龍牙に怪光線を放とうとする。先程放った―焼却式・フラウロス―を放つつもりだろう。
ジャンヌ達が龍牙を庇おうと駆け出し、マスターを前に立つ。だが龍牙はこれを危機として見ておらず、笑みを浮かべていた。
【EAT】
《なっ……なんだ?!魔力が……魔力が喪われていく!?》
機械的な音声と共に、フラウロスの魔力が抜けていく。その魔力は龍牙の背後に浮いている宝珠へと吸収される。
《ぐわぁぁぁぁぁぁ!!》
凄まじい量の魔力が龍牙の宝珠へと吸収され、フラウロスはその魔神柱としての姿を顕現し続ける事が不可となり、レフの姿へと戻った。
「すぅ………ふぅ………御馳走様、レフ教授。お蔭で体力も戻ったぜ」
「ぐぅぅ……貴様、私の力を喰らったのか!?」
「おうさ………お前に牙を突き立てた時に準備は整っていたんだ。このままその魂諸共、喰らい尽くすだけだ」
「おのれぇぇぇ……だが私の勝ちだ!!!」
龍牙はレフの足元に魔法陣が浮かんでいるのに気付く、その手には聖杯が握られている。レフが用意していた魔法陣……それはサーヴァントの召喚陣だ。レフの魔力が魔法陣に注がれ、光を放つ。
「此れより現れるは、西方世界を蹂躙し尽くした大英雄!!例え貴様が化物であっても勝ち目はない!出でよ!破壊の大王・アルテラ!!!」
魔法陣から凄まじい密度の魔力が人の形を造り、彼の大王は顕現する。
現れたのは、褐色の肌と流れる銀髪を靡かせた少女………だか彼女の放つ威圧感は尋常な物だ。
「さぁ!行け!アルテラよ!この世界を破壊しろ!何よりあの化物に鉄t……」
レフは最後まで言葉を言い終える事無く死んだ。
「うるさい」
そう言ったアルテラが、三色の光を放つ剣により、レフを真っ二つにしたのである。
「私は……フンヌの戦士である」
アルテラがそう言うと、彼女は聖杯を吸収し、その力を高める。龍牙はそれを見た瞬間、拙いと直感する。
「令呪を持って命じる!我がサーヴァント達よ!仲間を連れ、この城より脱出せよ!!!」
龍牙は絶対命令権・令呪を使い、サーヴァント達にそう命じた。サーヴァント達は困惑している立香、マシュ、ネロ達を抱え、その場から駆け出した。他のサーヴァント達も直感的に拙いと感じたのか、直ぐにその場から駆け出す。
「この西方世界を壊す、破壊の大王である」
アルテラの持つ三色の光を放つ剣が、その輝きを増しながら回転を始めた。
「【
静かに告げられた真名と共に極光が周囲を包んだ。そして城は影も形もなく吹き飛んだのである。