俺のFateな話   作:始まりの0

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EP47 開幕・黄金劇場

 ~立香・マシュside~

 

 

 ―無皇 龍牙………カルデアで残った俺以外のもう1人のマスター。

 

 特異点Fで彼が見せた力……オルレアンで見せた力……マスターとしても、魔術師としても彼は俺よりも上だ。

 

 正直、彼の力を見た時に見た感想はまるでテレビに出てくるヒーローを見た様な感じがした。どんな状況でさえも覆してくれる正義の味方……でも今回、あの城で見た龍化(ドラグーン・ドライヴ)と言うあの力は、素人である俺の眼から見ても危険だと感じた。

 

 これまで相対したジャンヌ・オルタ、ジル・ド・レェと言ったサーヴァントやファヴニールと言った幻想種、レフ教授が変身した魔神柱もかなり危険だと思った。

 

 でも無皇さんが使ったのは、これまでの敵とは全く異なる異形の力………無皇さんの龍化(あの姿)を見た瞬間、本能が訴えていた。【アレに近付いてはならない】と。

 

 マシュやエミヤ、クーフーリン達が元に戻った無皇さんに完全に敵意を向けていた。だけど無皇さんはあの後、令呪を使って自分のサーヴァント達に俺やマシュを外に連れ出す事を命じた。そして自分が危険だと分かっていると言った時、何処か悲しそうな……寂しそうな表情だった―

 

 

 

 

 

 

 

 ―無皇 龍牙先輩……私のマスターである先輩と同じく生き残ったマスターの1人。

 

 彼は不思議な感じがします……先輩と変わらない歳だと言うのに、ドクターやダ・ヴィンチちゃんの様な大人びた雰囲気を放っていた。年齢と外見が在っていないと言った感じでしょうか。

 

 そして特異点Fでアーサー王を相手した時に見せた漆黒の鎧、オルレアンで見せた純白の鎧、サーヴァントと同化しているからでしょうか、アレは相反する物だと感じました。

 

 それに彼はまるで未来が見えている様に行動し、最善の手を前もって行っている。先のオルレアンでも村人達が襲われているのを感知し、治療の手段までも用意していた。所長の時もそうだった。それが何故かは分からないが、彼の行動は誰かの為に行動していた。だから私は彼が味方で安心していた。

 

 でも龍化と呼ばれる、あの力………私の中の霊基が危険だと訴えていた。【アレは世界を滅ぼす力……英霊の敵である】と………ですが、私は彼を敵と思えません。これまで彼は幾人もの人々を、私達を助けてくれたから―

 

 

 

 

「皆!戦闘準備!!!」

 

 これまで事を見守っていた立香がそう声を上げる。

 

 

「しかしマスター……」

 

 

「エミヤが言いたい事は分かるよ。でも今はアルテラを何とかしないと」

 

 

「むっ……それは……そうだな」

 

 

「他の皆も、いいね。今はローマを護る事が優先だ!」

 

 立香はマスターとして今すべき事を決定しサーヴァント達に告げる。

 

 

「分かりました、マスター」

 

 

「まぁ………マスターの決定だ。お前さんがそう言うなら先に厄介事を片付けるとしよう」

 

 

安珍様(マスター)がそう仰るなら」

 

 

「子イヌが言うなら私もそれでいいわ」

 

 

「Aaaaaa」

 

 マシュ、クーフーリン(術)、清姫、エリザベート、ランスロット(狂)が立香に同意した。

 

 

「皆!ブーディカ達が時間を稼いでくれている間に、ワイバーン達を迎え撃つよ!

 

 エミヤとクーフーリン、エリザベートは前に!ランスロットと清姫は宝具の準備!マシュは護りを固めて!」

 

 立香の指示によりサーヴァント達は動いていく。

 

 

投影・開始(トレース・オン)!」

 

 

「くらいな!アンサズ!」

 

 エミヤが弓で投影した宝具を矢をとして放ち、クーフーリン(術)はルーン魔術の炎で飛んでいるワイバーンに攻撃を仕掛ける。

 

 

「あぁ!鬱陶しい!!!ねぇ!子イヌ!私の宝具()で一掃しちゃ駄目なの?!」

 

 エリザベートが背に竜の翼を生やし飛びながら槍でワイバーンに攻撃を仕掛けているが、あまりの数に嫌になったのか宝具を解放しようと立香に進言する。

 

 

「駄目だ!マスター聞くんじゃないぞ!あんな物使えば、敵味方問わずに終わりだ!使うなら私が死ぬ気で矢を撃つ!」

 

 

「それには同意だ!アレを使うって言うなら、俺も死ぬ気でルーンを使う!」

 

 エミヤとクーフーリン(術)がワイバーンの攻撃の激しくする。

 

 

「何よアンタ達!あんな物とか、アレとか、私の歌を間近で聞けるって言うのに!失礼じゃない!」

 

 

「ふざけるな!君が演習の時に宝具を使った後、大変だったんだぞ!」

 

 どうやら彼女の宝具の所為でエミヤ達は酷い目に合った様だ、立香やマシュも彼女が宝具と言った瞬間に顔を真っ青にさせた。

 

 

「そっそうだね、宝具はランスロットと清姫にお願いするから!2人供、行ける?」

 

 

「はい!安珍様(マスター)の愛で満タンです!」

 

 

「魔力ですよね!」

 

 清姫の発言に突っ込みを入れるマシュ。

 

 

「Arrrr!!!」

 

 ランスロット(狂)も準備が出来た様だ。

 

 

「皆、後退!後方から援護を!ランスロット!」

 

 ランスロットの宝具【騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)】が解放される。この宝具は彼が生前、丸腰で戦う羽目になった際に楡の木で敵を倒したエピソードが宝具がした物。彼が武器と認識した物を擬似宝具とするものだ。

 

 何処からともなく「JM61A1」が降ってくる、ランスロットはそれを受けると擬似宝具と化す………JM61A1とはデカいガトリング砲である、しかも普通の人間では扱える様な代物ではないが、彼の力なら問題ない。

 

 

「Arrrrthurrrrrrr!!!」

 

 ガトリング砲の砲身が回転を始め、銃弾が発射された。銃弾は空にいるワイバーン達に向け放たれ、ワイバーン達を貫いていく。

 

 ランスロット(狂)は銃口をゆっくりと動かし、撃ち続けていく。ワイバーン達はそれを回避するべく動いていく。

 

 ワイバーン達は知能が低い為に気付いていない………自分達が地上に近い一箇所に集められている事に。

 

 

「清姫!今だ!」

 

 

「どうか御照覧あれ!これより逃げた大嘘吐きを退治します。【転身火生三昧】!」

 

 清姫の身体が炎に包まれ、その身を竜へと転身させていく。

 

【転身火生三昧】……清姫伝説で有名な話だ。約束を破った僧を追い掛けた清姫が竜または蛇へと変化し、鐘に隠れた僧を焼き殺したと言う伝説。

 

 実際に清姫に竜種の血が混じっていたとは記憶されておらず、恋い焦がれた人間へのあくなき妄執だけで竜になってしまったと言う物だ。

 

 竜となった清姫はワイバーン達へ向かい、突進しその炎で彼等を焼き尽くした。

 

 

「よし!」

 

 ワイバーン達はこれにより全滅したが、次の瞬間、三色の光の球が安堵した彼等に襲い掛かった。

 

 

「マスター!」

 

 立香に向かってきた、光の球はマシュがその盾で防ぐ。他のサーヴァント達もそれを回避するが、竜になっていた清姫は何発か受けてしまい吹き飛ばされる。それにより宝具は解除され、元の清姫の姿に戻った。

 

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター……これは一体」

 

 ジャンヌ達が自分達はどうするかを考えていると、漸く龍牙の変化に気付く。彼の全身に輝く紋様が浮かび上がっていたのだ。

 

 ジャンヌ達が声を掛けるが、彼は全く反応しない。

 

 

「ちょ……ちょっと、コレ見てみなさいよ」

 

 邪ルタが龍牙の手を見て驚いており、他の者達にもそれを伝えた。

 

 龍牙は先程、脱出するにあたって令呪を1画使用した。

 

 令呪……高純度の魔力の塊であり、サーヴァントに対する絶対的な命令権。本来の聖杯戦争であれば使用した令呪は戻る事はない、だがカルデアでの令呪は使用しても、魔力が令呪に供給され約1日で1画回復する様になっている。

 

 龍牙もカルデアとは別系統……自分の創った召喚式でサーヴァントと契約している。令呪もカルデアと同じ様に1日あれば回復する。

 

 だが先程、使用した令呪は既に回復して始めていた。それはつまり、龍牙の全身に凄まじい魔力があるという事だ。だが彼は疲弊していた筈なのに何故この様な事が起きているのだろう。

 

 そう考えていると、龍牙が瞳を開けた。顔の黒い鱗も消え、開いた彼の目は人間の物へと戻っていた。

 

 

「すぅ………はぁ」

 

 息を吐くと、彼は立ち上がった。

 

 

「ん~……ぅ~……はぁ」

 

 身体を動かしたり、伸ばしたり、手を開いたり握ったりと自分の身体を確認している。

 

 

「マスター!大丈夫なのですか!?」

 

 

「あぁ………身体も元に戻った、魔力もな」

 

 

「ちょっと!何が在ったかくらいは説明しなさいよ!」

 

 

「あぁ……後でな、ジャンヌ。アルテラはどの辺り?」

 

 

「はい………先程、ロムルス、荊軻、ブーディカの反応が消えました。彼女は再びゆっくりとでは在りますが、此方に向かって来ています。あっ……今、藤丸さん達と接触しました」

 

 

「分かった。さて……陛下」

 

 

「ウム……そなたの正体が何であれ、ローマの為に戦ってくれると言うのであれば余はそなたと共に戦おう!」

 

 龍牙はネロの言葉に頷くと、アルテラと立香達のいる方向へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルテラと対峙していた立香達。彼等は改めて彼女の力を目の当たりにする。

 

 

「この私の行く手を阻むか」

 

 

「清姫……くっ」

 

 

「そこを退け……私は文明は破壊するが、命は壊さない。邪魔をしなければお前達を壊しはしない」

 

 アルテラは立香達に向かいそう告げる。

 

 

「残念だがこれ以上は進ませないよ」

 

 後ろから龍牙とネロ達がやって来て、彼女にそう言い放つ。

 

 

「何故阻む?お前達では私に勝てないのは理解しているだろう」

 

 

「阻むぞ、貴様を進ませる事は出来ぬからな。

 

 貴様は言ったな……世界を滅ぼすと、何故だ?世界はこんなにも美しく、愛が満ち溢れていると言うのに……勿体無いと思わぬか?」

 

 

「私は、フンヌの戦士である。この西方世界を滅ぼす………破壊の大王」

 

 ネロの言葉に何の反応も示さず、先の城で言った事を繰り返し言うアルテラ。

 

 

「また、それか。哀れな……本当に美しい物を知らぬのだな。花も、愛も、世界も……何もかも」

 

 

「私は……美しさなど、愛など、私は知らない」

 

 これまで機械の様に同じ事しか言わなかった彼女が反応を見せ、そう言った。

 

 

「この世界には例え君の破壊の剣であろうと壊せない物がある。だから俺は君と剣を交えよう」

 

 龍牙がそう言うと、背に創造龍の翼を出現させた。

 

 

「そんな……事はない………この世界に私の壊せぬもの……など……ない!」

 

 そう言うアルテラの全身から凄まじい力が溢れ出し始めた。

 

 

「ネロ陛下!」

 

 

「ウム!我が才を見よ!万雷の喝采を聞け!インペリウムの誉れを此処に!咲き誇る華の如く……」

 

 龍牙の合図と共にネロが薔薇を放り投げた。薔薇が魔力と共に散り、地面に剣を突き立てると彼女を中心に世界が染められていく。

 

 

「開け!黄金の劇場よ!」

 

 龍牙達は光で目を瞑り、再び開けた時にはそこは荒野でも、ローマでもなかった。

 

 そこに広がるのは、豪華爛漫の黄金と赤の2色、そして薔薇の花びらが舞い散る黄金劇場だった。


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