俺のFateな話   作:始まりの0

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EP64 小さな暗殺者

 ~ロンドン 街中~

 

 フランケンシュタイン氏と接触する事になった龍牙達は、モードレッドの案内で彼の元へ向かう事にした。

 

 

「また、オートマタにゴーレム……それにホムンクルスまで出てきやがった。はい、皆、戦闘準備」

 

 龍牙達の目の前にはオートマタやゴーレムの群れが現れた。

 

 

「あぁ、私が後衛を務める故に3人は暴れるがいい」

 

 

「よし、やるぜ!」

 

 

「セイバーでないのが残念ですが……我が剣に錆にしてやります!」

 

 

「どうか、主の御加護を!」

 

 アタランテが弓を構えた瞬間、モードレッド、謎のヒロインX、ジャンヌが駆け出した。

 

 

「皆、敵が多い!モードレッドとXはそのまま突っ込んで!ジャンヌは2人を襲おうとしている敵を!アタランテ、援護!」

 

 

「分かった!はぁ!」

 

 突破力のあるモードレッドとヒロインXが正面から敵の群れに突っ込んだ。ジャンヌは2人を攻撃しようとする敵を潰し、アタランテが3人をカバーしていた。

 

 龍牙の指示の甲斐があってか、数分もしない内に戦闘は終了した。

 

 

「戦闘終了……お疲れ様」

 

 

「……マスター、未だの様です」

 

 ジャンヌの言葉に龍牙は目を閉じ、周囲の気配を探った。確かに何かの気配がある……目を開けると、周囲の霧が濃くなっていた事に気付いた。

 

 

『解体するね』

 

 

「「「マスター!」」」

 

 龍牙はサーヴァント達の気付いた、自分の首にナイフが当てられている事を。

 

 

「アサシン……ジャック・ザ・リッパー」

 

 

「アレ?わたしたちのこと、知ってるの?」

 

 サーヴァント達は龍牙の後ろに居るサーヴァントを見た。白髪の子供の姿………その愛らしい姿とは裏腹に凄まじい殺気を放っている。

 

 

「あぁ、知ってるよ」

 

 

「まっ……」

 

 サーヴァント達が動こうとするが龍牙はそれを制した。

 

 

「取り敢えず、この危ないのは退けて貰おうか」

 

 龍牙はそう言うと、破壊龍の眼(ノヴァズ・アイ)を発動した。そしてジャックのナイフをその手で触れた。すると、龍牙の手に黒い光を放ちナイフを破壊した。

 

 

「あっあれ?」

 

 

「駄目だよ、そんな危ないのを振り回しちゃ」

 

 ジャックは破壊されたナイフを見て、何が起きたのか分かっていない様だ。一先ず、彼女は龍牙から距離を取った。

 

 

「テメェ……」

 

 モードレッドがジャックに斬り掛かろうとする。

 

 

「ヒロインX、モードレッドを止めてくれ」

 

 

「おっお言葉ですがマスター……今回のバカ娘の行動h「戻ったら焼肉食べ放題」止めなさい!マスターにはお考えが在るようです!」

 

 焼肉食べ放題と聞いて、モードレッドの行動を肯定しようとしていたヒロインXは掌を返した様に彼女を止め始めた。

 

 

「ちっ父上?!なんで食い物なんかで買収されてるんだよ!?」

 

 

「買収とは失礼な!マスターの命だから致し方なくです!(じゅるり」

 

 

「涎垂らしながら言っても説得力ないからな!」

 

 と親子のやり取りしている中で、ジャンヌとアタランテはジャックを見て複雑な表情をしている。

 

 

「マスター……どうするつもりでしょうか」

 

 

「分からん……だが万が一の場合は」

 

 アタランテは弓と矢を構え、何時でもジャックを射抜けるように準備をした。だがこれはアタランテにとっては辛い事だろう。彼女の願いは「この世、全ての子供達が愛される」なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「コホン、後ろの騒がしいのは置いといて………」

 

 龍牙は破壊龍の眼(ノヴァズ・アイ)を解除しながら、ジャックを見る。彼女は龍牙の事を警戒している様だ。

 

 龍牙はその様子を見ると、その場にしゃがみ込み、ジャックと視線の高さを合わせる。

 

 

「こんにちは」

 

 

「……こんにちわ?」

 

 ジャックは戸惑いながらも、龍牙の挨拶に返事をした。

 

 

「俺は龍牙って言うんだ」

 

 

「りゅうが?」

 

 

「そうそう……ジャックは此処で何をしているのかな?」

 

 

「わたしたちはお腹が空いてるの………だから食べるの。でも全然、お腹いっぱいにならない、ぺこぺこなの」

 

 サーヴァントは現界するだけでもかなりの魔力を消費する。そして契約していないジャックがその魔力を補充するのに使う方法は【魂喰い】。つまり人を()()()()()()と言う行為だ。

 

 

「そっか………でもそれじゃあ、君は満たされないよね(この子が求めるのは……)」

 

 

「あなたは知ってるの、どうしたらお腹いっぱいになるのか?」

 

 

「お腹が一杯になるかは分からないけど」

 

 龍牙は手を彼女の前へと突き出した。

 

 

「?」

 

 ジャックは何をしているのか分からなかった。そして龍牙がその手を開くと、ポンと音を立てて掌にぐるぐるキャンディが現れた。

 

 

「はい」

 

 

「えっ、わたしたちにくれるの?」

 

 

「うん……どうぞ」

 

 龍牙は笑みを浮かべてそう言い、キャンディをジャックに渡した。

 

 

「………おいしい」

 

 ジャックはキャンディを舐めると子供らしい笑顔を浮かべる。

 

 

「そんな恰好で寒いだろうに」

 

 龍牙はそう言うと、自分の来ているコートを脱いで彼女に掛けた。

 

 

「あたたかい」

 

 

「それは良かった」

 

 龍牙はそう言うと、ジャックの頭を撫でた。そして彼女に魔力を流し込む、彼女が【魂喰い】を行う理由は魔力を欲する為だ。ならば一先ずは魔力を与えれば無容易に殺しはしないだろうと考えた。

 

 

「あなたは、どうしてわたしたちにやさしくしてくれるの?」

 

 

「俺も、もしかしたら君みたいになってたかも知れないから……かな」

 

 目の前にいる少女は……ジャック・ザ・リッパーと言う伝説に組み込まれたのか、また伝説を取り込んでしまったが分からないが、彼女は「堕胎により、産まれる事を拒まれた数万以上の胎児の怨念」だ。彼等が望んでそうなった訳ではない……この子達は社会と言うシステムの犠牲者だ。サーヴァントとして顕現したこの子達は「母の胎内へ還る」事を願っている。その為の手段は殺す事しか知らない。何が善で悪なのか知る前に彼等は拒絶された。

 

 龍牙もまた産まれながらに人とは異なった存在だ。異なる考え、知能、力を持ちながら人間として生きてこれた、それは偏に家族と親友の存在が在ったからこそだ。もし家族や友人にさえ見捨てられていれば、今の龍牙はなく、力の限りに全てを拒絶し、破壊する事しか知らない存在となっていただろう。だからこそ、龍牙はジャックと自分を重ねていた。

 

 

「よいしょっと」

 

 

「わぁ」

 

 龍牙は立ち上がると、ジャックを抱き上げる。彼女は抱き上げられるが、抵抗はしない様だ。

 

 

「取り敢えず、用が済んだら一緒にご飯食べよっか」

 

 

「ごはん……わたしたちも?」

 

 

「うん、ジャックも一緒に食べよう」

 

 

「あなたは………マスター(おかあさん)?」

 

 

「ぇ~と……俺は男だからどちらかと言うとおとうさん……でもジャックにはそう概念がないのか」

 

 ジャックにとって男性だから、女性だから「おかあさん」と言う訳ではない。彼女達にとって、マスターは性別は関係なく、自分を甘やかし、愛していくれる人こそ「おかあさん(マスター)」なのだ。

 

 

「俺よりもあっちの方がおかあさんって感じだけど」

 

 ジャンヌ達を見てそう呟く。

 

 

「マスター……その子をどうするつもりですか?」

 

 ジャンヌが龍牙にそう聞く。

 

 ジャンヌはジャック・ザ・リッパーを知っている。知っているからこそ………ジャック(彼女達)は決して救われない魂である事を。

 

 

「あぁ……そっか、座には時間の概念はなかったんだっけ。ジャンヌとアタランテは()()()()()()()()()()のか」

 

 

「はい………だからこそ」

 

 

「ッ!」

 

 違う自分達が経験した事違う自分達が経験した事(Apocrypha)は彼女達も記録として知っていた。そしてジャック(彼女達)がどう言う結末を迎えたのかも。

 

 

「まぁ……この子の事はゆっくりと考えるさ」

 

 

「ですが……」

 

 

「この子が救われぬ存在だって言うなら……俺だってそうだよ。世界を破壊する存在、化物、現に罪人とは言え何人も手に掛けた」

 

 

「………」

 

 

「話し合える相手なら無理に戦う必要はないだろう?」

 

 

「はぁ……分かりました」

 

 龍牙の言葉を受け入れ、ジャンヌは了承した様だ。

 

 

 ―それから俺達は、ジャック・ザ・リッパーを連れてフランシュタイン氏の元に赴くが、彼は既に今回の特異点の黒幕達に召喚されたキャスター・メフィストフェレスにより亡き者になっていた。

 

 戦闘シーン?……って言っても、ジャンヌ、アタランテ、モードレッド、ヒロインXが一斉に襲い掛かった。何やら、言おうとしていたが登場数秒で退場した。

 

 それで彼の書斎に入ると、そこには人造人間のフランケンシュタイン……フランちゃんがいた。取り敢えず、彼女とフランケンシュタイン氏が纏めた資料を持って隠れ家へと戻る事にした―

 

 

 

 

 

 

 ~隠れ家~

 

 

「おかあさん、おいしいね」

 

 

「うぅー」

 

 ジャックとフラン達は現在、俺の出したケーキを食べていた。

 

 ジキルはジャックをつれて来たと言うと顔を引き攣らせていたが、取り敢えず害はない事を伝え、もしも場合は自分がどうにかすると言い納得させた。

 

 

 ―おかあさん、認定された俺。

 

 やべぇよ!ジャック、可愛過ぎるよ!純粋無垢な笑顔が眩し過ぎるよ!俺の中の父性だけじゃなく母性や色んな物が目覚めそうだよ?!

 

 出来ればお父さん……いやお兄ちゃんがいいけど―

 

 

「どうしたの、おかあさん?」

 

 

「ううん、おいしいかな、ジャック?」

 

 

「うん、おいしいよ!」

 

 頬にクリームを付けながら、笑顔を浮かべるジャック。アタランテが物凄い笑顔で、ジャックのクリームを拭いている。

 

 

 ―ぬわぁぁぁぁぁぁっぁ!やべぇぇぇぇ!もう、真の黒幕見るとかどうでも良くなってきた!

 

 いや、駄目なんだけどね。でもそんな気がする…………アタランテなんてデレデレだよ。何だかんだ言っていたジャンヌでさえ、小さい妹が出来たみたいに構ってる。

 

 はぁぁぁぁ………癒されるね。小さい頃のギルにはこの純粋さがなかったんだよ。えっ慢心王になる前は純粋だって、アレは猫被ってるだけ。基本、俺に対しては小さくても、大きくても、同じだよね。全く無慈悲で、らんb『ゴッ!』―

 

 

「まっマスター!?」

 

 

「主殿、お気を確かに!!」

 

 

 ―さっ最近……宝物庫が勝手に開くんだけど……どうすればいい……か…な(ガクッ―

 

 龍牙の真上に大きなダイアモンド(人間の頭の倍くらいの大きさ)が落下してきた。その直撃を受けた彼はそのまま気を失った。




~バウ=イル~

宝物庫の合鍵の中にあるギルガメッシュの残留思念は腹を立てていた。


「暇だ」


【はぁぁぁぁ……癒されるね】


「ムッ……龍牙の思念か……ほぅ、殺人鬼を引き込みおったか。奴は子供に甘いからな。それがアイツの良い所であるのだが……」


【小さい頃のギルにはこの純粋さがなかったんだよ】


「………」


【猫被ってるだけ。基本、俺に対しては小さくても、大きくても同じだよね】

ギルガメッシュは宝物庫内にあった大きなダイアモンドを用意した。


【全く無慈悲で、ら】


「死ねぇぇぇ!!!」

用意したダイアモンドを龍牙の上に開いた門から、彼に向かって放り投げた。


―ゴッ!―

物凄い音と共に龍牙は気を失った。

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