EP72 なんでさぁぁぁ!!
「なんでさ…………って俺の台詞じゃないのに…………でも………なんでさぁぁぁぁぁ!」
龍牙は星が輝く夜空に向かって叫んだ。彼の手には1枚の紙が握られていた。その紙には何かのイベントの案内が書かれているのだが、問題は場所である『紅州宴歳館・泰山』と。
何が問題なのか?そう此処は【無】ではなく………新たな特異点である冬木市であった。更に言うなら龍牙は今から何が起きるのを知っており、それに巻き込まれると思うと胃が痛くなったのである。
~夜 冬木市 公園~
「はぁ………」
取り敢えず怒りを叫ぶと言う行動で発散させた龍牙は一先ず落ち着いた。
「今回こそ真っ直ぐ帰れると思ったのに………」
彼が真っ直ぐ帰れないのはお約束である。
「大丈夫ですか?落ち着いて下さいマスター、はい、お水です」
「ありがとう、ジャンヌ」
そう言って何故か共にこの特異点に着いたジャンヌからペットボトルのミネラルウォーターを受け取る龍牙。
「ごくっごくっ………ぷはぁ………取り敢えず、その服装を何とかしないとな」
龍牙がジャンヌに視線を向ける。彼女は現在、何時もの戦闘時の格好である。今は時間が時間なので人はいないが、これから動く為にも街に繰り出す必要がある。
「私は霊体化しておきますから」
「まぁ、今のジャンヌは純粋にサーヴァントとしているから霊体化できるんだっけ………でも折角だし、霊体化してるのは勿体無いでしょ。
応急だけど………庫から…………駄目だな。ギルが着てたのは露出多すぎだし、取り敢えず鎧を消してみて」
「はっ……はい」
ジャンヌは言われた通り、鎧の部分を消した。(霊基再臨第二段階の鎧や鎖、手甲、剣が無くなった姿)
「取り敢えず……それでいいか。次は…………寝る場所か。いや、その前に日時の確認かな。聖杯戦争真っ最中か、開始前か……………今すぐ、無理矢理にでも帰りたいけど…………そう言う訳にもいかないか。
さてと…………当面の資金を用意するとしようか」
「ですがどうやって」
「もう此処にある」
龍牙がそう言うと、宝物庫から黒い鞄を取り出した。その中には沢山の金塊が入っていた。
「これ……どうしたんですか?もしかして」
ジャンヌは龍牙が自分の力で創ったのかと思った。
「違うよ、人理修復を始める前の1年くらいで貯めた物だよ。時代が違うと現金は使えないからな。なら時代に関係なく価値のある物を持っておく方がいいと思ってな」
「成程…………ですがどうやってこんなにも」
「黄金律って…………凄いんだよ」
龍牙が遠い目をして空を見上げた。それを聞くとジャンヌはそれ以上追求しなかった。
~数時間後 冬木市内 ホテル一室~
「えっとベッドはマスターが使って下さい」
「サーヴァントとはいえ女をソファーで寝かせれるか!嫌と言うなら令呪使うぞ!」
「こんな事で令呪を使わないで下さい!」
2人が何を言い争っているのかと言うと………一先ず、色々な手を使って金塊の一部を現金に換えホテルに泊まる事にしたのだが………此処で問題が起きた。
本日はほぼ満室状態で、1室しか取れなかった。つまり龍牙とジャンヌが同室と言う事になる。仕方ないと諦め、同室でと言う事になったのだが…………ベッドが1つしかなかったのである。
「あの受付………ダブルだと言うから2つかと思ったのに………しかも何やら勘違いしてたし」
「あははははっ……」
受付の女性が「お似合いですね」とか言っていたのを思い出している。だがすぐにそれを止めた。
「そんな事は置いといて、今日はもう寝よう。明日はすることが多い………それに先の疲れも取れてない。ジャンヌはベッドで寝るように」
龍牙はそういうと、自分はソファーに寝転び、そのまま眠りについた。どうやらロンドンでの疲れが取れてない様だ。
「お休みなさい、マスター」
ジャンヌはそう言うと、龍牙に布団を掛け、自らもベッドで眠りについた。
主人公、聖女と同室しました。