俺のFateな話   作:始まりの0

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EP74 突撃、蟲屋敷

 ~数日後 冬木市 ホテル一室~

 

 龍牙は冬木一帯の地図を机の上に広げて、思案していた。

 

(大聖杯はこの世全ての悪(アンリマユ)の影響で汚れている。

 

 サーヴァントはジャンヌの探知に引っ掛かったな。数は6……と言う事はキャスターの召喚は未だと言う事か)

 

「ねぇねぇ、ピグレット……構っておくれよ~」

 

 

「なんなんですか!貴女は!マスターに引っ付かないで下さい!」

 

 龍牙に抱き付こうとするキルケーを押さえるジャンヌ。

 

(でも此処が俺の知る特異点と全く同じ……と言う訳でもない。その証拠に彼の姿を確認した……と言うことはそう言う世界線と言うことなのか?

 

 どっちにしても、この聖杯戦争を止めるにはギルが動く段階で止めに入るか。

 

 それから各勢力の説得…………取り敢えずは)

 

 どうやら彼の知る特異点とは異なる状況にあると下調べで分かったので、これからどうするかと考える。そしてまず一番始めにする事を決めて立ち上がると、右手の令呪に意識を向ける。

 

「令呪を持って命じる、アタランテよ、我が元に来たれ」

 

 令呪が一画消費され、【無】にいるであろうアタランテが呼び出された。

 

「おぉ、マスターか……また厄介事に巻き込まれている様だな」

 

 

「あはははは、言わないで」

 

 

「それで、私を呼び…………キルケーにヘラクレスまでマスターに召喚されたのか」

 

 

「やぁやぁ、アタランテ。久しぶりじゃないか。まさか同じマスターに召喚されるとは……奇妙な縁だねぇ」

 

 アタランテとキルケーは旧知の仲であるので、話が弾んでいる。

 

「それはそうと、アタランテとヘラクレスには頼みがあるんだけど」

 

 アタランテとヘラクレスは首を傾げる。龍牙が2人にその頼み事を言うと、アタランテは怒った様だ。

 

「マスター……見損なったぞ」

 

 龍牙の発言に冷たい目を向けるアタランテ。

 

「大丈夫、大丈夫…………」

 

 龍牙がアタランテに何かを言うと

 

「何だ、そう言う事だったのか。先に言ってくれ、勘違いしたじゃないか」

 

 先程とは変わり満面の笑み浮かべるアタランテ。

 

「後、徹底的にそこ潰していいから。

 

 あっこれ、向こうに行く為の宝具ね。全部終わったら念話で連絡してね、繋ぐから。これは詳しい情報ね」

 

 そう言うと移動用の宝具と情報の書いた紙をアタランテに渡した。それを受け取ると、アタランテとヘラクレスは直ぐ行動を開始した。

 

 

 

 

 

「さてと…………俺達は俺達で乗り込むとしようか」

 

 

「何処へですか?」

 

 

「ボロボロのおじさんの所へ」

 

 

「つまり患者ですね!勿論私も同行します!」

 

 と言うナイチンゲールの気迫に圧される龍牙。

 

「あっ……はい。コホン、じゃ行くといますか」

 

 

「はい。それで場所は?」

 

 マルタにそう聞かれニヤッと笑みを浮かべる龍牙。

 

 

 

 

 

 ~数分後 冬木市 深山町~

 

「と言う訳でやって来ました。御三家の1つ間桐家………取り敢えずチャイムを鳴らしてみよ『ガチャ…』「ぐぅっ·····」およっ?」

 

 ある屋敷のチャイムを押そうとするが、中から誰か出てきた様だ。その者は男性で、龍牙はその男に見覚えが在った。

 

「間桐雁夜」

 

 

「だれ……だ。うぐぅ…………」

 

 男は苦しそうに胸を押さえ屋敷の外壁にもたれながら、龍牙を見る。

 

「俺?………俺は通りすがりのマスターさ」

 

 

「なぁ!?」

 

 

「待て、待て、俺は戦いに来た訳じゃない」

 

 彼はこの特異点で行われる聖杯戦争のバーサーカーのマスターである。彼はある目的の為にこの聖杯戦争に参加した。

 

「なに?」

 

 

「俺は貴方がこのままいけばどうなるか知ってるし、誰も幸せにならないからね」

 

 

「何を言っている!」

 

 雁夜が己がサーヴァント、バーサーカークラスを持つランスロットを呼び出した。

 

「だから戦うつもりはないと言っているのに………それにこんな街中でやり合うつもりかい?」

 

 

「…………」

 

 

「それに俺はその気になれば、貴方の大切な子のいる屋敷を消し飛ばす事だってできるんだ」

 

 そう言う龍牙の後ろにマルタが現界する。

 

「…………」

 

 雁夜は息を飲む、もし目の前の男の言う事が事実であるとするなら危険だと考えていた。仮にも御三家の屋敷だ、結界は張っているがサーヴァントの宝具を使われれば一溜りもない。

 

 彼にとって家も家族もどうでもよかった。問題は屋敷の中に居る1人の少女だ。少女は彼が戦う為の目的でもある。その大切な存在を失う訳にはいかない。

 

「本当に敵意はないのか?」

 

 考えて漸く出て来たのはその一言だった。

 

「勿論、俺は貴方にも、中に居る子にも手を出すつもりはない。まぁ……蟲爺は例外だけどね」

 

 

「ほぅ………面白い事を言う小僧だ」

 

 雁夜と話していると屋敷の中から老人が現れた。

 

「これは、これは………」

 

 

「儂がどうとか言っておったが………」

 

 

「その通りさ、マキリ・ゾォルケン」

 

 

「ほぉ、よく調べておるな………小僧」

 

 この老人こそマキリ・ゾォルケン………先の特異点でも現れた、聖杯戦争を考案した魔術師の1人でもある。

 

「調べた訳じゃない。唯、知っていただけさ…………そしてさようなら」

 

 龍牙はそう言うと紫色の液体の入った試験管を取り出し、マキリに向かい投げる。試験管はマキリの前に落ちると勿論、試験官は割れ、中身が地面に飛び散った。紫色の液体は直ぐに気化を始めた。

 

「ぐっ……………ぐおおおぉぉぉぉぉぉ?!」

 

 すると、何故かマキリは苦しみ始め、地面に転がるともがき始めた。

 

「なぁんだぁぁぁぁぁぁぁこれぇはっぉぉぉ!!?」

 

 マキリは徐々に身体が崩れ、無数の虫達がもがき死に絶え始める。数十秒で人間としての姿を維持できなくなっていた。

 

「それは殺虫剤の原典を俺が少し改良した物でね。魔力を持つ蟲だけを殺す………延命に延命を重ねて身体を人から蟲に置き換えているアンタには良く効くだろう?」

 

 そう老魔術師、マキリ・ゾォルケンは延命の為に自分の身体を蟲へと変え人外と成り果てた魔術師だ。

 

 そして龍牙が先程投げたのは、蟲だけを殺す毒の原典だ。少し改良したようだが、マキリを殺すには十分効果を持っている様だ。

 

「うぐっ!ぐぅぅぅぅ」

 

 マキリの横にいた雁夜も先程の毒に当てられたのか、胸を抑え苦しんでいる。

 

「あっそう言えば、アンタも蟲が入ってるんだった………」

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!」

 

 龍牙は急いで、雁夜に近付くと身体を確認する。彼の服の中から無数の蟲が這いずり出てきた。蟲達は苦しんでいるのか、キィーキィーと鳴きながら地面の上で悶えている。

 

「こりゃ………やばそうだ。このままナイチンゲールに引き渡すと大変な事になりそうだし……」

 

 龍牙が右手を開くと、そこに光が集まり始め、黄金に輝く果実が現れる。龍牙自身の持つ生命の実、その一部を取ると雁夜の口に放り込んだ。

 

 すると先程まで苦しんでいたのが嘘の様に穏やかな顔になり眠った。

 

「今のは……」

 

 

「それはまた後で説明するよ………俺は屋敷にいくとするよ」

 

【創造龍:鎧化(ARMOR DRIVE)

 

 生命の実を消すと、その身を純白の鎧で包む。

 

「そう言えばバーサーカーは何処に行ったんだ?」

 

 彼の近くにジャンヌ、ナイチンゲール、キルケーが現界した。

 

「どうやら、バーサーカーは何処かへ去った様です。恐らく令呪による転移だと思われます」

 

 ジャンヌがそう言うと龍牙は首を傾げた。

 

「だってマスターは此処に………あれ?令呪がない。令呪はあの爺が考案した物………………って事は蟲を介して引き抜けてもおかしくないか?この男の魔力も蟲によるものだし………って事は爺の本体は別の場所か」

 

 龍牙はそう言って、マキリ・ゾォルケンであった蟲の残骸を一瞥すると視線を屋敷に戻す。

 

「まぁ、爺の事は置いておこう。先にお姫様を助けるとしようか」

 

 金色の翼を広げ、龍牙は屋敷の中に飛び込んだ。


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