俺のFateな話   作:始まりの0

9 / 109
EP3 漆黒と純白

 ~ウルクから離れた荒野~

 

 ウルクの国より離れた場所に在る荒野に、突如巨大な【穴】が開く。

 

 そしてその【穴】からそれは現れた。

 

 

 【グルルルルルル………】

 

 巨大な12枚の翼、禍々しい紅い光を放つ巨大な2本の角、漆黒の山10個ほどの巨大な躰と鱗、金色の獣の眼、あらゆる物を砕きそうな牙、総てを引き裂く爪、長い尾の先に光る紅い宝玉。

 

 それはまさしくドラゴン……いや正確には龍だ。

 

 漆黒の龍が見ているのはウルクの国のある方向。

 

 

 【ハ……イ………カイ………ハカ………イ……イ……グオォォォォォォォォォォ!!!】

 

 漆黒の龍は咆哮を上げながら、ウルクの方向に向かい飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ウルクの城~

 

 ウルクに迫る巨大な魔獣が迫っていると聞き、龍牙とギルはシャムハトと共にルガルバンダ王の元に向かった。

 

 

「ルガルバンダ王!」「父上!」

 

 

「ギルガメッシュに、龍牙か……」

 

 

「あらっギルちゃん、龍牙くんも来たのね」

 

 其処に居たのは、ルガルバンダ王と美しい女性がいた。

 

 

「母上、どうして此処に?」

 

 

「お久しぶりです、ニンスンさん」

 

 彼女はニンスン神。女神にしてギルガメッシュの母親である。

 

 

「今回のこの国に迫る魔獣は危険な存在です、この事態に大いなる父アヌ神を始め神々が魔獣を止めます。貴方達は直ぐに神殿へ」

 

 

「なっ!?神々が総出で……それほどに強大な魔物なのですか?!」

 

 

「……ニンスンさん、奴は神じゃ止められない……いや神だからこそ奴には勝てない。神々を喰らうのが奴の本能だから」

 

 龍牙はどうやら迫る魔獣の存在を知っている様だ。

 

 

「何故そのような事を知っているのです、龍牙くん」

 

 

「眼が疼いて疼いて……仕方ないんですよ。アレを止めれるのは俺だけ……詳しい事を話している暇はない。此処に居ても感じる、奴は破壊の本能に飲まれてる。放って置けばこの世界が壊れますよ………ニンスンさん、此処は俺に任せてくれませんか?」

 

 

「………」

 

 ニンスン神は何故龍牙が迫る魔獣を知っており、それを止められるのは自分だけだと言うのか理解できなかった。だが分かる事はある、他の神々の協力を得て国の守護も強化しているが、その守護を越えて感じる巨大な力。

 

 シャマシュ神に聞いた話からしても今までにない脅威だ、大いなる父であるアヌ神でさえも危機だと言っている。その様な危険な存在を、この子供は自分しか止められないと言っている。しかしその眼は本気だ、虚言ではない。そして、龍牙から感じる何かの力を身をもって感じる。

 

 

「……まぁ子供が言っても信じられないのは分かります……っち仕方ない、お前は先に行き止めておけ。直ぐに俺も行く」

 

 龍牙は目を瞑ると、髪が白く染まっていく。開いた眼は金色に染まり、その身からは膨大な力が溢れる。そして龍牙の身体から巨大な光が溢れだし、魔獣のいる方向へと飛んでいく。

 

 

「ふぅ……一先ずアイツに行かせたから時間は稼いでくれるだろう、とは言ってもアイツ等が本気で戦ったら大地の方が保たないだろうけど……」

 

 

「龍牙くん……貴方は一体」

 

 

「唯の子供って………流石にこの状況じゃ言えないか………普通に生きて、暮らしてただけなんだけどなぁ。アイツ等に魅入られて、神様と戦って、人類に裏切られ、此処(別世界)に来て……でも仕方ないか。はぁ」

 

 ニンスン神に聞かれ、龍牙は諦めた様に溜息を吐いた。そして空を見上げる。

 

 

「さっきから誰かに見られてる感じがするから、多分見てるんだろう!神様逹!」

 

 空に向かってそう叫ぶ。すると辺りに眩い光が満ちた。全員は光により視界を奪われるが、直ぐに回復した。そこには灼熱の光を放つ黄金の装飾を纏った神が、その横には雷を纏う神がいた。更に2人の背後には途轍もなく強大な力を放つ髭の生やした神がいた。

 

 

「太陽神シャマシュ様……それに世界と人類の創造神マルドゥク様……そして神々の王であり父アヌ神」

 

 ニンスン神がそう言うと、龍牙以外が皆、頭を下げる。

 

 

「そなたが先程の強大な力を放った者か?」

 

 アヌ神が龍牙にそう問いかける。どうやら龍牙が先程放った光の事について聞いているのだろう。

 

 

「そうだよ……」

 

 

「おい小僧!貴様、大いなる父にその様な口の聞きか「よい」」

 

 シャマシュが龍牙の口の聞き方に腹が立ったのか、発言するがアヌ神に制され下がった。

 

 

「此処に来ようとしている奴の事は俺は良く知ってる。奴はアンタ達、神にとっては天敵だ。奴は神を喰らう者、世界を壊す者……その様に産まれた存在」

 

 アヌ神がそれを聞くと、水晶の様な物を取り出すと、水晶から光が放たれ漆黒の龍が映し出された。そして龍と対なす様に純白の龍まで現れ漆黒の龍と戦っている。

 

 

「……何故そなたはこの存在を知っている?それにこの白き者は…」

 

 

「白いのは俺が放った奴だ、何で俺が奴の事を知っているか……奴も元々俺の中に居たからね」

 

 

「……そなたならアレを止められるのか?」

 

 

「勿論……でも今の俺はかつて程の力はない。だからアンタ達の武器を1つ貸して貰いたい」

 

 

「良かろう」

 

 

「アヌ神!?」「この様な人間の小僧を信じるのですか?!」

 

 シャマシュとマルドゥクがそう叫ぶ。神々を敬いもせず、得体の知れない者、しかも人間を信じる事など出来る筈がない。だがアヌ神は龍牙の眼を見て理解した、この眼は信じるにたるものだと。

 

 アヌ神が手を上げると、黄金の双剣が現れた。その双剣からは途轍もない力を感じる。

 

 

「終末剣エンキ……得体の知れない俺にこんな物渡していいの?」

 

 終末剣エンキ……双剣ではあるが、本質は「水を呼ぶ剣」。神話の世界を滅ぼす大海嘯【ナピュシュテクムの大波】を引き起こす神造兵器だ。龍牙は前世?よりFateのファンであった為、それを知っていた。

 

 

「本当にそなたが奴を止めてくれるのであれば構わぬ」

 

 

「じゃあありがたく……よいしょっと。じゃあ短い間だけどよろしく頼むよ」

 

 《キィ---ン》

 

 龍牙がエンキに向かい言った瞬間、エンキが応える音を立てる。

 

 

「どうやら終末剣がそなたを認めた様だな……他に必要な物は?」

 

 

「サービスがいいね……」

 

 

「アレはそなたの言う様に神にとっての天敵……多くの神が奴に倒された。儂であろうとそれは例外ではないだろう、そなたが奴を止めてくれるのなら儂は出来る限りそなたを助けるだけだ」

 

 

「……じゃあ俺をあそこに送って欲しい」

 

 

「それだけでいいのか?」

 

 

「十分………出来るなら白い奴の上に送ってくれればありがたい」

 

 

「分かった……では直ぐに送るぞ」

 

 アヌが龍牙に手を向ける。龍牙は頷くと、光に包まれその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~荒野~

 

 

 【グオオォォォォォォォ!!!!】

 

 

 【ガアアァァァァァァァ!!!!】

 

 荒野の真中で純白と漆黒がぶつかり合っていた。2つがぶつかり合った衝撃で、大地は割れ、雲は掻き消え、大気は震えている。

 

 

 【正気ニ戻レェェェェェェェ!!!】

 

 純白の龍は漆黒の龍に向かい吠える。その姿は美しいの一言だ、12枚の翼、12枚の翼にある様々な色の宝玉、神々しい光を放つ巨大な黄金の2本の角、純白の鱗と山10程の巨大な躰、銀色の獣の眼。西洋のドラゴンに近い姿である。

 

 

 【グオオォォォォォォォ!!!】

 

 漆黒の龍はただ咆哮を上げ、暴れる。それに意味はない、ただ本能に任せて破壊を続けるのみ……眼に映る存在の総てを破壊する。万物も、神々も、生命も、世界も……総てを破壊する。それが彼の龍の本能であり、その為だけに産まれた存在なのだから。

 

 

 【コノ阿呆ガ!】

 

 純白の龍はそう叫びながら、再び漆黒の龍に向かおうとするが自分の上に光が現れた事に気付いた。

 

 

「待たせたな!」

 

 光と共に現れたのは龍牙だった。純白の龍はそれに気付くと自分の頭を上げ龍牙を乗せた。

 

 

 【漸ク来ラレタカ……我等ノ王ヨ】

 

 

「あぁ……完全に暴走状態じゃねぇかよ」

 

 

 【破壊……破壊……破壊スル、グオォォォォォォォォォォ!!!】

 

 漆黒の龍は咆哮を上げる、その躰からは禍々しい闇が溢れ周囲の物を侵食していく。

 

 

「やべぇ、このままじゃ向こう千年は草木も生えず蟲一匹より付かなくなる」

 

 

 【アレハ私ガ止メヨウ。王ヨ……奴ノ眼ヲ覚マシテヤッテホシイ】

 

 

「珍しい、お前がアイツを心配するとはな。普段は仲悪いのに」

 

 純白の龍は全から神々しい光を放ち、漆黒の龍の放つ闇をせき止めている。

 

 

 【私ニモ狂イタクナル気持チハ分カル、永劫ト云エル時ヲ待ッテイタ………ヤット巡リ会エタ貴方ヲ失ッタ哀シミハ、ソレ程深イノダ】

 

 

「………ならまずは殴ってでも目を覚まさしてやるさ」

 

 アヌ神より貸して貰ったエンキを握り締め、目の前に居る漆黒の龍を真っ直ぐ見つめた。

 

 神さえも恐れる龍………それを止める為に龍牙は全身に力を巡らせた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。