レースカーテンを通して降り注ぐ光を鬱陶しく感じながら、大島裕二は目を覚ました。そして目を覚まして早々ため息をつく。また1日が始まってしまったかと思うととても憂鬱だ。特に睡眠時間があまり取れてない時はさらに不機嫌の度合いが高まる。しかし遅刻するわけには行かないのでだるさを感じつつも着替えを始める。昨日届いたばかりのスーツに袖を通すと、体の大きさにピッタリと合っていたため、すこし気分が和らいだ。前々から通信販売というのに興味はあったが、欠点の方が多いという先入観にとらわれ今まで使ってこなかったのだがこれは中々いいものだ。今まで使ってこなかったことがすこし悔やまれる。まあこれから使っていけばいいかと考えている内に着替え終わったので会社に向かうとする。朝ご飯なんてそんなものを悠長に食べている時間はなかった。
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ジリジリと暑い夏の日照りがアスファルトを照らし人々の肌を焦がす。前を歩くおっさんの頭も、山だとしたら頂上から五合目付近まで何も茂っていない。この日照りのせいで焼き尽くされてしまったのだろうか……とくだらないことを考えていた大島、この日照りのせいで俺の頭もショートしてきたのかもしれないと思いながら歩く。大島の勤める本部ビルの最寄駅から本部ビルまで300メートルほどという微量な距離、バスを使うには時間的にも金銭的にももったいない、かといってこういう暑い日に歩くのは中々しんどいものである。最近地球温暖化とかいう言葉を世間ではめっきり聞かなくなってきたものだが、温暖化は止まったのだろうか………いや違う、そんなことにいちいち構っていられなくなったからだろう、6年前のフォーリナーの襲撃以来人類はフォーリナーを迎撃するべく様々な技術や兵器を開発することに人類 は持っている力の全てを注いでおり、他のことは特に今は後回しといった具合にしている。まあそれは仕方ないのだが今年で6年目なのだからそろそろ他のことにも目を向けていって欲しいところだと思っていると、いつの間にか本部ビルに着いていた。考え事をしながら歩くと早く感じるものだ。と自動ドアをくぐると冷房が効いているのだろう、涼しい空気が体を包み汗が引いていく、夏はこの感覚が非常に気持ちがいい、暑い中歩いてきた甲斐があったというものだ。一呼吸したあと建物の中央に据え付けられたエレベーターで作戦司令本部へと向かう。作戦司令本部は二重の扉を抜けなければならない、まず一枚目の扉は社員証で開けられ、一枚目の扉を入ると、二枚目の扉が待っている。この扉の前で体に凶器等を持ち込んでいないかチェックを済ませた後ようやく入ることができるのだ。作戦司令本部はまるで大学の講義室を思わせるような、奥に行けば行くほど高くなるという造りの部屋である。ただ講義室と違うのは、本来教卓や黒板があるような場所にまるで映画館にあるような巨大なスクリーンが据え付けられており、そして部屋の後ろ側、一番高くなっている所がさらに高くなっており、階段を5段ほど上らなければならない台地のようになっているという点だ。大島が階段を上りきるとおはようございますと、同僚に挨拶をしてから自分の席に座る。座った途端にうしろから、声をかけられる。振り返ると同僚でもあり友人でもある福田がいた。
「なんだ?...」
「おはよう」
「あ?おはよう……なに、にやにやしてんだよ」
「別に、ただ言ってみただけ」
「ああ、そうか……じゃあ頼みがある…寝かせてくれ」
「わかった、聞いてやってもいいがその代わり俺明日休むから俺の仕事全部やっとけよ?」
「……ならやっぱりいい…」
と渋々デスクに向かうがそれにしても眠い、自販機でコーヒーでも買ってこないと寝てしまいそうだ。そもそも、この仕事が暇すぎるのが悪い、フォーリナーとの戦闘が6年もない以上、こちら側としては、新型兵器の開発や、フォーリナーとの戦闘を仮定とした戦術を練ったりすること以外特にやる事がない、特に上層部はさらにやる事がなく、せいぜい1日に社員たちが考えた戦術が記してある書類に目を通す事が1回あるかないか、そして新型兵器の開発状況の確認、などしかやる事がない、どこかで戦闘が起ころうものなら忙しくなるのだが平和な以上、特に仕事が忙しいということはなかった。大島も公務員のようなものだろうということでこの仕事に着いたのだが案の定こうして暇を持て余しているのだ。
「……福田、飲み物買いに行こうぜ」
「あ、いいよ」
作戦司令本部を後にし、自販機まで歩いていく、まったく眠気がとれず欠伸が止まらない、そんな俺の様子を見てニヤニヤする福田にすこしイラっとしながら
「お前眠くねえのかよ?」
「お前みたいに遅くまで起きてねえからな、遅くまで起きてるとかみさんに電気代もったいないって怒られる」
「完全に尻に敷かれてるよな」
「いや、別にそういうわけじゃない」
と否定はするが、世間一般的に見てこいつは嫁には頭が上がっていない、まあそんなことを言ったところで特にメリットもないので強くは言わないことにする。、、、そんなことを話している内に自販機に着き、財布を取り出し硬貨を投入口に入れていきお目当のボタンを押したのだがなにも出てこない、、、頭の中に?が浮かんだがよく見るとコーヒーは売り切れ、ついてないなと内心で舌打ちしつつ代わりのものを見ていると眩暈なのか世界が揺れた、
「………?………!!!」
「地震だ!」
と福田が叫ぶ、強烈な横揺れが襲いかかり自販機に思いきり体を叩きつけられつつも、なんとか自販機にしがみつき必死に揺れに耐える。自販機が倒れたらそれこそ危ないのだがこの様な状況では普段の様な判断は大島には出来ない、とにかく揺れが収まるまで大島は自販機にしがみついていた。、、、体感的には何時間にも感じられたがおそらく数分の間に地震はおさまった。
「………福田、大丈夫か?」
「………なんとかな」
床に這いつくばって耐えていた福田は立ち上がると服をはたいた。凄まじい揺れだったな…作戦司令本部の方は大丈夫だろうかと考えているとスピーカーから放送が入った。
「緊急放送、緊急放送、東京都を震源とした局所的な地震が発生しました。作戦司令本部職員は至急作戦司令本部へお戻りください。繰り返します。東京都を震源とした………」
「急いで戻らないとヤバそうだな」
「ああ、急ごう」
なにか大島は胸騒ぎがしていた。なにか嫌な感じがする。とにかく急いで戻ろうと小走りで中央司令室へ向かった。
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デスクの上に置いてある通信機が鳴り響き、その周りでは多くの人の靴音が鳴り響く、1、2回しか入ったことがない者には先ほどとは別の部屋に迷い込んでしまったと思っても無理はないであろうその光景に大島は驚きとどうしてこうなったのかという原因の知りたさに、急いで自分のデスクに向かう、途中歩き回る職員達の間をなんとかすり抜けつつようやく自分のデスクに到着する。いったいなにが起きてるのかと思いながらパソコンを起動したところで後ろから声がかかった。振り返ると司令長官の東郷武蔵が立っていた。
「大島くん、今戻ったのかね?地震は大丈夫だったか?」
「長官!……はい、自分は大丈夫です。……長官、この騒ぎはいったい…?」
「うむ、…江戸川区に攻殻巨大生物と思われる生物が多数出現したようなのだ。今正確な情報を集めるためにスカウトチームが現地に向かったところだ、現在警察や消防等の方からも情報を貰っている。住民の避難と並行して攻殻巨大生物と思われる生物を殲滅しようと思う」
と東郷が言ったところでスカウトチームから連絡が入る。
「こちらスカウトチーム第3小隊、攻殻巨大生物と思われる生物を多数確認、映像送ります」
「よし、メインスクリーンに映せ」
そう東郷が言うと作戦司令本部の前にある巨大なスクリーンに映像が映し出される。高層ビルに張り付いているのは6年前のものと酷似した攻殻巨大生物、それがまるで波打つかのように重なり合いながら高層ビルを覆い尽くす、しかし攻殻巨大生物の勢いは止まらず、ビルの下を通るモノレールをも飲み込んでいく、一応市民のほとんどはすでに避難を終えているのでまだいいもののまだ市民が残っていたら大惨事は免れられないだろうと、考えていた大島だったが、あることに気がつき慌て始める。このままではスカウトチームにも危険が及んでしまうのではないか、今の映像はかなり遠距離から観測しているようだが、攻殻巨大生物の足の速さからしてその気になればあっという間に距離を詰められてしまう、スカウトチームはあくまで偵察を主としたチーム、武装していると言ってもレンジャーには遠く及ばないほど貧弱なもので攻殻巨大生物と面と向かって撃ちあうのはさすがに厳しいと考え、すぐに東郷に進言する。
「長官、ただちにレンジャーチームを現地に急行させて下さい、このままではスカウトチームが危険です」
「うむ、私も同じ事を思っていたのだ。よし、ただちにレンジャーチームを現地に向かわせよう、指示は君が出しておいてくれ」
「分かりました」
東郷と話を終えた大島は急いで通信機を手にし指示を出す。
「こちら、EDF総司令部。只今東京都江戸川区にアリの大群が発生!至急、全チーム江戸川区に向かえ!」
全チームと言っても今、本部ビルに居るのはレンジャーチームしかいないのでレンジャーチームに言っているようなものなのだが……とそこまで思ってから大島はある事を思い出した。
そういえば旧ストームチームの隊員達で構成された非公式の集まりがあったな……あいつらがこのビルにいるなら今の放送で出撃してしまったかもしれないと、内線電話でいつもその連中が集まっている部屋に連絡を取ろうとしたが電話に出る気配がない、慌ててレンジャーチームに連絡を入れて聞いてみることにした。
「こちら作戦司令本部、レンジャーチーム応答せよ」
「こちらレンジャーチーム、あと3分で現地に出発する予定です」
「そちらにレンジャーチームではない隊員達はいるか?」
「はい、我々のトラックに乗っていますが…?」
「………了解、その隊員達と合同で攻殻巨大生物を駆除せよ」
「了解しました」
「幸運を祈る」
ボタンを押し通信を切ると同時に盛大にため息をつく。全くもって困る連中だ、普段から勝手に動くような奴らの集まりだ、しかし注意はできるが、それぞれ隊長や、それに匹敵するような実力の持ち主なので、下手にクビなんて事も言えないから非常に扱いに困る。つい数日前にも入社テストでゲームをやらせ、筋がいいからといって合格にしてしまうような奴らだ。ゲームと現実は違うという事も分からないのだろうか奴らは……とりあえずそのゲームで入社したやつには戦場で痛い目にあわない内に退職させてやるのがベストだと思っていたのだが、もう出撃するのなら仕方がない、幸いにも周りにはかなりの実力がある隊員が数多くいるためなんとかなるだろう……と希望的観測をしながら大島は無事に帰ってきてくれる事を願う他なかった。