Monster Hunter Parody ー名状しがたき狩人のような者達ー 作:銀紬
第五章、後日談のようなものです。といっても数時間しか経っていない設定なので後「日」談とは言い難いかもしれませんがw
それでは、どうぞ。
『またつまらぬものを斬ってしまった……ふぅ、おわったね」
「いやー、今日もよく狩りました!」
「お疲れ様……」
シャルルたちがそのようにいう目の前には、既に融解されたラギアクルス亜種の無惨な死骸。
原形を留めてこそいたが、剥ぎ取りなどは出来たものではなかった。
というよりは、剥ぎ取れそうな素材は全て焼け落ちてしまっている。
「……Z級って一体なんだったんだよ」
「かませ犬ですかね」
「即答すんなよそこは」
いくらZ級とやらでも、これでは同情を禁じ得ない。
もしや、こいつらはいかなる敵が立ちはだかろうと余裕でぶちころがしてしまうのでは無いだろうか。
そうだとしたら、最早ラギアクルス亜種は最初から殺される運命にあったのだろうか。
心の中で密かに合掌をするユウラであった。
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「ということでユウラさん! ドンドルマですよ!ドンドルマ!」
「まーた紅玉症候群とやらか」
「そうそう、碧玉症候群です」
「少年……とても激しかった」
「ぼくでよければ……いつでも、イイからね?」
「……はぁ」
時は午後の大体6時ごろであろうか。ユウラ達は自分でも気付かぬ間にドンドルマの酒場に到着していた。
そして到着早々、いまいち名称の一致しない症候群名にため息を付くユウラ。
最早、間違いを修正する気すらないのだろうか。
更に、他の連中もこれに合わせるものだからもうどうしようもない。
しかしながらこの紅玉症候群、今後も何かの都合で使われまくりそうな予感がする。
特にコレと言った根拠は無い。
無いのだが、どうしてかそのような予感がしてならない。余りの都合の良さにそう錯覚しているだけかもしれないが。
「それよりも、ですよ。今回の狩猟によってユウラさんのハンターランクも鰻登りになっていく訳ですが」
「なんでお前ら主体の狩りで僕のハンターランクが上がるんだよ……」
そもそも、ランク区分を度外視した狩りは違反ではなかったのか。
今回はほぼ狩りに参加してこそいないものの、それならそれでハンターランクポイントなど入りそうもないものなのだが。
「それより、いい加減僕も自分で自分の実力位付けたいんだけど」
「それでしたらご安心ください。私とユー子とハルト君、そしてシャンティッ君の三人一匹の手でわずか半年の帰還で戦闘力を53万にしてごらんにいれます」
「せんでいいせんでいい。お前らの言うHun値とやらが下がりそうだ」
「え……? Hun値……?」
「え、常人度とかなんとか言ってなかったか」
「……」
「……」
「少年……知識とは日々進化するもの」
「なんでいきなり会話に割り込んできたんだよ一瞬誰か分からなかっただろ!」
「ぐすん……少年はメタ発言をするのをやめるべき」
「うるさいよ! というか、知識を無かったことにしてるってそれ明らかに退化じゃねぇか」
「ユウラさんユウラさん」
「なんだよ」
「ある人は言いました……「こまけぇこたぁいいんだよ!」と」
「…………はぁ」
どうやら、ユウラがハンターランク相応の実力を手に入れられるのはこの二人のせいで当分先になってしまいそうだった。
もう突っ込む余力すらない。
一方、会話に加わっていなかった一人と一匹はというと。
「シャンティッ君、はい、あーん」
みぃー!
ハルトがシャンティッ君に生肉を差し出すと、それを美味しそうにシャンティッ君が頬張る。
しかもどこから出てくるのか、その作業は止まることを知らない。
「なぁハルト、生肉沢山あるみたいだけどそんなに沢山どうしたんだ?」
「えっとね、なんだかよくわからないけど、アイテムポーチにたくさんあったから」
「へぇ…………ん?生肉?」
その時、ユウラはふと朝の光景を思い出していた。
『きょうはね、生肉がたくさんうってたから、ひゃっこ位かってきたんだっ。あと、ちっちゃい竜骨をごじゅっこと、ツタの葉をさんじゅうまい』
『みぃーん!』
……まさか。
「……それ、村に送った奴じゃないのか」
「ふ、ふぇ!?」
「……」
「……」
「……あのね、ゆうびんやさんがね、生ものはダメだって」
「……あー」
こいつはこいつで、なんで過去の事実をなかったことにしかけているのだろう。
送れなかったなら最初からそうだと言えば良いものを。
しかし普段の所業がシャルル達に比べて圧倒的にまともなので、なぜだか納得出来たユウラであった。
しかしながら、ハルトとシャンティッ君。
いつも殺伐としているユウラ、シャルル、ユミの三人の夫婦漫才的な空気とは余りに対象的すぎるというものだった。実にほのぼのとした空気が二人を包んでいた。
何をしたらこうも対照的になれるのだろう。
「まぁそれはそうとしてですよ。
先ほどのランディープ個体なんですが、どうも通常のランディープ個体と比べても余りに圧倒的な能力を保持していたそうで」
「え、そうなのか? その割にはお前ら簡単に倒してたけど」
「そうはいいますけどね、私たちの
自分で言うのもなんですけれど、正直火力に関しては自分、完璧ですし」
「……まぁ、確かに」
なんでいきなり一人称が私から自分になったのかは定かではない。
どうも南国アイドルっぽい響のような気がするがそれはどうでもいい。
最も、今ではその疑問そのものがどうでもいいのであって。
確かにシャルルの言っていることは事実であった。
完璧。そうシャルルが自負する資格があるほどの火力をシャルルたちが保持しているのは目の前でそれを見てきたユウラ自身最もよく知っていた。
「まぁ普通のハンターがアレに立ち向かうとしたら……
そうですね、アルバトリオンを迅雷砲・火竜砲改・カオスウィングに反動軽減やらを付けたガンナー一人、後はカオスラッシュにボロスGだとかブラックレザーパンツを用いた剣士三人で挑むかのような構成でも相当厳しいかと。
いや、むしろ火事場でハメ殺ししか出来ないのならばなお倒せないかも……」
「お前は一体何を言っているんだ」
例えはよく分からないが、恐らくは相当な強敵であるのだろう。
数少なく聞き取れたアルバトリオン、ハメ殺し、それでも厳しいという端的な情報だけでも十二分にそれを納得させられたユウラだった。
「まぁそういう訳で、もしかしたら自然で作られたものではないラギアクルスではないか……という見解もあります」
「自然で作られたものではない……? どういうことだよ」
「えーとですねぇ……ユウラさん、
「……いや、聞いたことは無いな」
「ぼ、ぼくもきいたことないかも」
「わたしも……」
「おい、もしかしてお前のでっちあげなんじゃないか、それ」
「そそそそそそんなこと!」
どうみても怪しい。
いつもはシャルルの怪しげな発言にも柔軟に対応する二人ですらも聞いたことが無いのだ。
それがより怪しさを助長する。
「で、でも本当にあるんですよ! マジです信じて下さい! なんなら公式的資料も見せますよ!?」
「分かった分かった、そこまでせんでいい。で、なんなんだ、その「
「えっとですね、おほん。
みぃー!
「さーて、そろそろグレンフォーク完成したかな」
「わわわ分かりました! 分かりました! 分かりましたのでウラガンキンの太刀を作ろうとなどしないでください!
それでですね、まぁ簡単に言ってしまえば、古代文明のなまらすげー技術で「作られた龍」なのですよ、
「古代文明ってアレか、さびた塊とかがあった時代に作られたって奴だろ?」
「そうなりますね。
まぁさびた塊に関しては厳密には太古の塊を研磨した武器を使っていたハンターがそこで死んでしまった結果武器だけがそこに埋まっていったものですので、
どちらかというとその名の通りただ単にさびた塊なんですけれど」
「なんだそれ初めて聞いたぞ」
「ぼ、ぼくもきいたことないかも」
「わたしも……」
みみみみー。
「おい、もしかしてお前のでっちあげなんじゃないか、その設定」
「そそそそそそんなこと!」
なんとなくデジャヴのある光景。
更にシャンティッ君も加わり、それがデタラメであるという信憑性が高まる。
何より、これがデタラメであるということについてはなんとなく確証があった。
なんというか、外界からそういう圧力が掛かっている気がする。
「ま、まぁそれはさておきこの
「30!? どんだけ竜を乱獲してたんだよ」
「定かではないんですが、そうみたいですよ。
それとですね、ユウラさん達が知らないのも無理はなくて、実はつい最近水没林の遺跡とモガの村付近の海底遺跡から発見された一部の文献が解読された結果その存在が知られたのです。
そしてつい最近、水没林の遺跡の奥深くでそれらしきものが発見され、様々な調査がされています。
なんの用途に使用されていたのかは不明なのですが、
付着している放射性物質が発掘されたての太古の塊に残留しているものの数値と一致していることから太古の塊とほぼ同期に作りだされたものではないか、とも言われていますね。
恐らくは巨大な戦争か何かがあったのではないか、という一説もありますがその辺りはオカルトの域も出ていませんね、今のところは。
で、
「というか、やっと本題かよ……長すぎるからコレから言いたいこと三行で纏めろ」
「
個体差はあれど圧倒的強さを持っていたみたいで、今回のラギアクルス亜種もそうではなかいかという予想が立っています。
誰の手によるものかは分かりませんし、何よりそんな技術が現代にあるとは信じがたいんですけどね。
ユウラさん愛してます結婚してください」
「折角三行にまとまってたのになんでどうでもいいことで四行にするんだよ!」
「大事なことなので四行にしました」
小説で言えばそこそこ重要なシーンのような気もするのに、どうしてこいつはその重要なシーンでここまでおどけられるのだろう。
しかしまぁ、これもどうでもいい事であって。
問題は別のことだ。
実のところ、ユウラも古代文明についてはわずかにかじっていた。訓練校の選択科目で古代文明についてを学んでいたのだ。
勿論かなりが憶測ででたらめも多そうではあったのだが、なんとなく古代のロマンを当時のユウラは感じていたのだ。
そして、それによると、古代文明の技術というのは現代では殆ど再現不可能だという。
文献があれば不可能ではないものも一部あるようだが、その文献自体が損壊していたりするのだとか。
ともあれそれを現代において、しかもかなり強大なモンスターであろうラギアクルス亜種で実現したというのはにわかには信じがたいものがあった。
「わたしもにわかには信じがたい……」
「わたしも、って誰もそんなこと言ってないぞ」
「円環の理に導かれた……」
「訳が分からないよ」
なんとなく首から上を食べられてしまいそうな理であった。
最もこいつの場合食べる側のような気もする。主にシャルルを、性的な意味で。
「でも、そんなむずかしいことをできるひとっているのかな」
「私もそれが分からないんですよね……黄金衣状態のハルト君レベルの頭脳があれば、あるいは」
「ぼ、ぼく?」
「えぇ。なんでも設定によるとあの状態の時は頭脳もすごいことになってるみたいですからね貴方は」
「へ、へぇ……」
「やっぱりお前らも相応にメタ発言するよな」
「ゲフン! な、なんのことですかね」
「ごっほ……ヴぃんせんとヴぁんごっほ」
最早隠しきれていない。
ユミに至ってはふつうに咳払いをすればいいものを、何故そうして妙に難易度をあげているのだろうか。
「ともあれ、そんな輩がもしもいるとすれば犯罪ですよ。
もしも意図的に大陸的脅威となりうるモンスターを作り上げたのであれば、
一種の反逆罪が適用されることになるでしょうしね。
もしかしたら今回の一連の獣竜保護団体の黒幕も、その輩かもしれませんね」
「少年……実は結構大きな話に巻き込まれてるかも」
「……ふむ」
確かに、ここまでシャルルが語った話が本当であるのならば相当大きな話だ。
ただでさえ大きい話だったのに古代文明まで交わってくるとなると、今後どのような事が起こるのか見当もつかない。
あるいは伝説の黒龍と戦ったり、突如現れた巨大な龍を相手にすることもあるのかもしれない。
何故ごくごく一般的人物のユウラがこのようなことに巻き込まれるのかは分からない。もしかしたら外界からの圧力が掛かっているのかもしれない。
だが、それ以上にユウラはある一つの確信があった。
―こいつらと居れば、なんだかんだで安心だ。
と。
だって、そうだ。
今回だって「苦戦する」だのなんだのとシャルルは言っていたものの、想像以上にあっけなくケリが付いた。
それこそ外界から謎の圧力が掛かっているんじゃないか、というほど。
ならば、これからもそうに決まっている。あの手この手でこいつらはなんやかんや無事に生きられる、という道をユウラに歩ませる気満々なのだから。
「まぁ、何があってもユウラさんは全力でお守りしますよ」
「わたしも……。シャルルの幸せは、わたしの幸せ」
「ぼ、ぼくもがんばるよっ」
みぃー!みぃー!
ほら。
結局そういう運命なのだ。
「……はは」
「な、なんで笑うんですか!?」
「いや、なんというかさ。
なんで僕なんかを守ってくれるのかなって。いつも好きだの何だの言ってるけど、理由が分からない」
「ありますよ、理由なら」
「何だって?」
「ユウラさんの作るこんがり肉は、美味しいですからね」
「は……?」
いやいや、ここにきてどんな理由だよ。
そう思わざるを得ないユウラであった。
「ユウラさんが普通のハンターだとか、そんな事はどうでもいいんです。『問題』は。私たちにとっての『問題』は。貴方と一緒に狩りに出られることを望んでいるという事です」
言葉にせずとも、ユミやハルト、そしてシャンティッ君も頷く。
それはシャルルにとって、シャルル達にとっての了解であったのだ。
だが、ユウラはそれでも腑に落ちないところがあった。
「でも、僕がお前たちに何をしてやれるというとかそういうのはないんだぞ?」
これもまた、事実。
ごくごく一般的ハンターのユウラが、果たして彼女たちにどれだけのことをしてやれるというのか。
助けられこそすれど、助けることは出来ない。
それはユウラも内心ではとても悩んでいたのだ。もどかしく感じることすらあった。
「そんなのはどうだっていいんです!」
突然、シャルルがばん、と机をたたく。
その顔はいつものお惚け的な雰囲気ではなく、至って本気の顔であった。
「しゃ、シャルル……」
「では、昨日までが普通ではなかったというのですか?
私たちがユウラさんの狩りや採取を全力でサポートして。一緒に笑って。怒って。泣いて。
ユウラさんが何かをしてくれるとか、そういうのは気にしなくていいんです。まぁしてくれれば嬉しいですけども!
そんな昨日までの生活をこれまで通りやっていくだけですよ。簡単なことです」
「……それは」
「ユウラさんを目当てに近づく輩が現れるというのなら、それもいいでしょう。
その度に私たちが、私が王の裁決を下します」
「それ、ぼくのもとのせりふ……」
「そんなメタなこと気にしてはいけません」
折角真面目な雰囲気だったのに、一気に台無しになってしまった。
というか、いつからシャルルは王になったのだろう。蒼い仮面でも被っているのだろうか。
だが。
「……ふふ、あはは」
そのやり取りを見て、自然に笑いがこみあげてくるユウラ。
そうだ。こいつらがあくまで望んでやっていることなのだ。
時には自分の不利益になることもあれど、守ってくれているというのも事実。
ならば、今はそれに巻かれてもいいのではないだろうか。
「そうだな……なぁ、お前ら……いや、シャルル」
「はい!」
「ユー子」
「……少年」
「ハルト」
「……うんっ」
「そして、シャンティッ君」
みぃー!
「その、これからも宜しく、な」
本心からの、言葉であった。
はい、如何だったでしょうか。
ちょっと最後小奇麗に纏めようとして見たんですけれども、なかなかうまくいかないですねぇw
まぁ、これからも精進していこうと思います。
それで……、次回の更新ですが、大体土曜日か日曜日になるかな、と思われます。
本当はもっと早く更新したいんですけどね。今週中に数学と化学の奇襲、もとい既習範囲を復習しておきたいので。
それでは、次回予告です。
時は午前二時。
『……そうか、ランディープ・クルスがやられたか』
『クク……まぁ奴は我らの作り上げた「ドラゴンウェポン」の中でも最弱……』
『ハンター如きにやられるだなんて、ドラゴンウェポンの面汚しね』
黒、白、そして赤。
それらの色の古代風の衣装を身に纏った彼らは、人気の無くなった公衆酒場で談笑していた。
『だが、それ以上に収穫もあった。
奴を倒したハンター……奴らの一部が「狩人CQC」を使っていた。古の龍殺しの業である狩人CQCを今のハンター如きに扱えるなどとは微塵も思っていなかったのだがな』
『ふぅん……でもまぁ、それならランディープ・クルス程度ではやられても仕方ないかもしれないわね』
『ふむ……だがまぁ、こうも都合よく竜どもに対抗できる者がこの時代に生まれるとはな。おもしろいものだ』
『収穫はそれだけじゃない。奴を倒したハンター共の中に……いたんだよ、「奴」が。』
『「奴」? あぁ、アイツか……!』
ドン!
感情的に机を殴りつける黒衣の男。
力が入りすぎたのか、机にややひびが入る。
『落ちつきなさい……全く貴方はすぐ感情的になるんだから。
で、……そう。彼なのね』
『そうだ。我らの元同胞にして、裏切り者の「王」が、な』
赤衣の男が静かに、しかし邪悪ににやけてみせた。
次回第六章、「ランゴ・アタック」
to be continued……