Monster Hunter Parody ー名状しがたき狩人のような者達ー   作:銀紬

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皆さんこんばんは。

少々短めですが、第六章前編を更新させていただきます。
それではどうぞ。


第六章前編 ランゴ・アタック

「ふむふむ、なるほどなるほど……何者かが酒場の机を夜間に破壊した、と。

分かりました。一応こちらでも調査しておきますね」

「宜しく頼むぞい」

 

時は午前8時。

ユウラ達一行が少し朝早く酒場に到着すると、ちょっとした騒ぎが起きていた。

 

なんでも、夜間に机が一つ破壊されていたのだとか。

 

「ふぅー、また一つ面倒事を抱えちまいましたよ」

「小さい仕事っぽいけど仕事は仕事だろ、ちゃんとやっておけよ」

「いやー、こういう時はモンハン、もとい防犯カメラの一つでもあれば楽なのですが」

「ただのサボりじゃないのか? それ」

「効率化と言ってください」

 

その時ユウラは、強すぎるアイルーと共に効率に走るがあまり自らの腕前が伸びなくなってしまったハンターの話をふと思い出していた。

確か武具や名声だけはG級にも拘らず、実力的には下位のリオレイアにすら勝てていなかったような気がする。

まぁこいつの場合、この程度効率化したところで仕事の質が落ちる事なんて一切合切無いのだろうが。

 

「少年、少年……」

「ん、どうした」

「今日はアレ……やろう?」

 

 

ユミがくいくい、とユウラの袖、ではなく腕防具を引っ張ってくる。

その動作は年端に合わない幼さが交わっていたし、はたから見ればさぞかし可愛らしくみえるだろう。

そして、引っ張っている腕とは逆の腕の指が一つの依頼書を指していた。恐らくはこれに行こう、ということなのだろう。

ユウラはその依頼書を手に取り、読み上げてみることにした。

 

「ん、どれどれ……ほうほう、『終わりなき襲撃』、ねぇ……討伐対象は……おい」

「なに……?」

「なんかモンスター名が妙な文字で書かれているんだけど」

「気にしなくていい……ただの名状しがたきモンスター(UNKNOWN)だから。ものすごく(ちょっと)強いだけのリオレイア」

「うん、分かった。なぁシャルル、UNKNOWNってどんなモンスターなんだ?」

「黒いリオレイアですね」

「よしわかった、却下なユー子」

「ぐすん……少年は今日もいけず」

 

その黒いリオレイアとやら、戦ったことこそないもののいくつかの戦闘形態があるのではないか、という想像が何故かユウラは出来てしまった。

交戦経験どころか黒レイアに対する知識も無いのにどこから想像できたのかは良く分からない。やはり何か外界からの圧力があるのだろうか。

が、とりあえず気にしないことにした。

 

「全く、ユー子はコレだから駄目なんですよ。やっぱりユウラさんと行くクエストはコレですよね!」

 

掲示板に貼り付けてあるもう一つの依頼書をもぎ取り、ユウラに手渡すシャルル。

何となく嫌な予感はしなくもなかったが、一応読み上げることにする。

 

「えーと、「高地の迷惑蛮竜」? 

へぇ、高地のクエストなんてドンドルマにも回っていたのか……」

 

高地。

どこにあるのかは定かではないのだが、旧大陸にあることだけはとりあえず判明しているようだ。

そこには様々なモンスターが生息しているとされるが、ほかの狩猟域と比較して強力なモンスターが多い。

またコレは高地に限った話ではないが、そのような地域の狩猟依頼は強力なハンターが居る地に凱旋される場合が多い。

 

ドンドルマも十二分に有力なハンターもいるのだが、それ以上にハンターが居る地がこの世に存在している。その名は「メゼポルタ」。

そして、大抵の高難易度依頼はそのメゼポルタ、あるいはその管轄であるバローネ・キャラバンと称される地域のギルドに回されていたのだ。

 

それにより、ドンドルマにこうして依頼が来るのはかなり珍しい事であった。

 

「ふむ……で、対象モンスターはっと……なんだこれ」

「どうしました?」

「いや、対象モンスターのとこ、「グ」っていう文字より先が読めないんだけど」

 

読めない、といっても決してユウラに学が無い訳ではない。

依頼書の対象モンスター欄には確かに六文字のモンスター名が表記されていたのだが、「グ」以降がにじんでしまっていた。物理的に読めなくなってしまっていたのだ。

 

「おかしいですねぇ、確かこのクエスト名からして対象モンスターはグ……グ……なんでしたっけねぇ。私も分かりません」

「わたしも……」

「えっと、ぐ……グ……グラン・ミラオス……? かな…?」

「一体どう読んだらそうなるんだよ」

 

六文字であることが分かる以上、そんな不死の心臓を持っているようなモンスター名でないのは確実に明らかであった。

 

ともあれ、一体どんなモンスターなのだろうか。

「グ」以降についてはなんとなく「レンゼブル」と書いているように読めなくもなかったが、どうにもグ以降がにじんでしまっていて読むことが出来ない。

 

「あぁ、思い出しましたよ!」

「ん、なんなんだ」

「グなんとかです」

「思い出せてねぇじゃないか」

 

書かれているモンスターが「グなんとか」なのは、ユウラは勿論全員が把握していることである。

 

なんとかといえば、幼少期に読んだ小説にも「なんとか」だのと呼ばれていた登場人物がいたような気がする。

そしてあの小説の主人公も、今のユウラ同様に不幸な境遇であったことをユウラは思いだしていた。

確かまだ完結はしていなかったはずだが、もしも完結したらその時は主人公も不幸な境遇から脱しているかもしれない。かなり絶望的ではあるが。

もしそうだとしたら現状打破に大いに参考になるであろう。書物屋はしっかりチェックしておこうと心に決めたユウラであった。

 

「とりあえず、その依頼はなしとして……ん」

「どうしました?」

「ふむ……コレなんてどうだ?」

 

珍しくユウラの方から依頼提案を投げかけた。

 

クエスト名は「死に至る眠り」。ヒプノック一体の狩猟であった。

ユウラの実力からしても丁度良いランクであったし、万が一命の危機に瀕したらシャルルたちが瞬殺可能なレベルでもある。そういう意味ではかなり妥当な判断である筈だ。

 

筈なのだが。

 

「えー……私は嫌ですよ? そんなソーシャルゲームの為だけに幻夢郷を危機にさらした奴なんて」

「なんの話だよ」

「……あぁ、ごめんなさい。コレは私の別世界線上の同位体でした」

「は?」

「気にしたら負けです。それが宇宙の真理です」

 

まず否定され、それから毎度のように奇妙なことを言われた。

理不尽なことこの上ない。

 

しかしながら、こんな奴の同位体がどこかに存在するのだろうか。

こいつより質量があるのかないのかは分からないが、どっちにしても考えるだけでおぞましい。

別世界線とか言っていたし、噂に聞く平行世界とやらに存在するのだろうか。

だとしたら、そいつの取り巻きもさぞかし奇妙な人物の集まりなんだろう。

 

……ヒプノックが「鳥」なだけに、「取り」巻き。

 

「少年、意外と人はうまいことは言えないもの……」

「なんでよりによって今心を読んだんだよ」

「わたしの同素体も読心術には優れていたから、多分そのせい……」

 

最早こいつらが不意に心を読んでくるのは茶飯事なのだが、なんでよりにもよってこんな時に心を読んでくるのだろう。

それだけではない。シャルルに続き、ユミも奇妙なことを口走っていた。

質量が違うのではなくどうやら性質が違うようだが、果たしてどんな感じなのだろう。

何故か語尾に付ける三点リーダ二つが前についていたりするのだろうか。

 

それはそうと。

シャルルの同位体に加え、ユミの同素体が存在する別世界線。ユウラは想像したくもなかったのだが想像してしまった。

想像しただけでHun値とはまた違う何かが下がりそうだった。こうなんというか、正気度なる数値が下がりそうだった。

さぞかしその世界は混沌な世界なのだろう。

 

「……ゆうらくん、いくらいまぼくがもっている武器が「ネロ=カオス」だからって、「混沌」だなんて……」

「いやいくらなんでもそれはこじつけだろ、てかお前まで人の心を読めるのかよ……」

 

珍しくハンマーを背負っていたハルトがユウラを何かを諦めたような目で見てくる。

しかし、こいつまで心を読めるとは。ここ最近出会う人間は何故いつも心を読めるのだろうか。

もしかしてこいつも別世界に何か関わっているのだろうか。

 

そうなると、かの「黄金衣状態」も別世界に存在するのかもしれない。

想像しただけでゲンナリしてくる。

 

みぃー、みぃー。

 

「……まさかな。お前までそんな訳ないもんな」

 

そんなユウラの心中を察してか察さずか、ユウラを元気づけんとするシャンティッ君。

それが嬉しくてかそうでなくてか思わずシャンティッ君の頭を撫でてやると、気持ち良さそうに再び鳴いた。

 

 

と、ここで。

 

 

 

……心中を察して?

 

 

……

 

 

ユウラはもう考えるのを止めた。これ以上考えていたら正気度が下がりかねない。

 

ここまで来ると、ユウラの同位体か同素体かどっちかは分からないが、同じような存在がどこかの世界線で苦労しているのかもしれない。

そもそも存在するのかが不明ではあるが。

 

---

 

「んで……? 結局どうするんだよ」

「!? おかしいですねぇ、紅玉症候群が発動しないだなんて……」

「おい、聞いてるのか」

「は、ははははい!」

 

やや遅れて反応するシャルル。

何やら紅玉症候群が発動とかどうたらとか言っていた。やはりこいつらが何かしているのだろうか。

じっくりと問い詰めておく必要があるだろう。

 

……が、これ以上クエストへの出発を遅らせると帰りも遅くなってしまう。

よって、この時は今日何をすべきかを優先することとした。

 

「全くボケッとしてないで少しは人の話を聴け……どうするんだ、今日は」

「そうですねぇ……あっ!良いことを思いつきましたよユウラさん!」

「嫌な予感しかしないけど聞いてやるよ」

「是非ご一緒に流星にまたがって快楽の絶頂に私と急上昇しましょう」

「……良いらしいぞ、ユー子」

「少年はやっぱりいい子……わたしのアイソトープのように少年を愛人にする」

「なーにが愛人ですかこの脳内ン・ガンガが! それ以上近づいたら雪山深奥に素っ裸で放りこみますよ!?」

 

訳の分からないことを言いながら指をいやらしくうねらせてシャルルに迫るユミ。

ここまで性欲があるのだ、雪山にぶち込んでも雪山の方が溶けていくのではなかろうか。

それに、なんだかさっきと言っていることが違う気がする。

ユミに至っては性質に留まらず、質量数までもが違う個体がどこかの世界線に存在するのだろうか。

 

その時もうまともな依頼を受けられるかどうかも諦めかけていたユウラであったが、その時ある依頼に目がとまる。

それは、先日シャルルが持っていた「保安隊用依頼」と全く同じ、上質な紙のものであった。

更にいうと相変わらず達筆な依頼書であった。

だが、それはシャルルたちのような保安隊のみが極秘で受けられるものであった筈だ。それが何故このような公衆の目に留まるところに貼られているのだろうか?

毎度の如くろくでもない理由なのだろうが、一応聞いて……

 

「なぁ、シャル」

「えぇいあんたはいい加減に離れやがれってんですよ! あっ、そんなところ触っ……」

「シャル子……シャル子……はぁはぁ……」

「離れなさいっ……離れないとっ……んんっ……あっ」

 

とても聞けたものではなかった。

そっと依頼書を掲示板に戻した。

 

 

「ゆうらくん、ゆうらくん」

「おう、どうしたどうした」

「コレ……なら、いいよね?」

 

おそるおそる依頼書をこちらに手渡すハルト。

確かにユウラはハルトの手渡していた依頼書もつっぱねてこそいたが、決して行きたくないとかそういう訳ではなく、単にランクが足りないのだ。

ランクとユウラ自身の実力さえ考慮されていれば、古龍とかではない限りユウラだって絶対に行くまいとする訳ではないのだから。

それ故に、こうしたハルトの態度には妙に罪悪感が沸いてくる。

 

「なになに……? おっ、これなら僕でも問題無いかも」

「ほんと?」

「あぁ、コレ僕も丁度挑んでみたかったし」

「そっか……実はぼくも、強走薬グレートがほしいから…」

 

その相手とは、かの「狂走エキス」を取れる「ヤツ」。

 

そう、「毒怪鳥ゲリョス」の討伐依頼であった。

 

毒怪鳥、という名の通り毒を使ってきたり、閃光により相手の目をくらませたり、

挙句の果てには死に真似で油断したところを奇襲するなど、とにかくトリッキーな戦法をとることで知られている。

だがその身からは「ある素材」が得られるため、下位上位凄腕G級問わずあらゆる腕前のハンターが彼の命を狙っているのだ。

 

そして、その素材とは何かというと。

 

それこそがハルトのいう「狂走エキス」であった。

こちらの大陸ではゲリョスのみから確認されているのだが、ドンドルマから遠く離れた大陸では比較的容易に入手可能らしい。

強壮効果に長けており、スタミナ増強を必要とする武器種を扱うハンター……特に、双剣使いにしばしば狙われるのである。

基本的にはランクを問わず得られるため、特に下位個体は人気だった。

そしてそれは、やはり双剣使いであるハルトにも例外ではなかった。

前回の狩りにより黄金衣の王形態に強走薬が有効であることが判明したため、恐らく今後も月一程度にはゲリョスを狩ることになるのかもしれない。

 

また狂走エキスばかりが凄い素材のようにみえるが、実際のところその毒やゴム質の皮の武器への使用もかなり期待されている。

事実、優秀な毒属性武器……特に片手剣のいくつかはゲリョスの素材から作られている。それだけでなく、雷属性の武器の絶縁体にも用いられる等、全身の需要が高い鳥竜種なのだった。

更に個体数もかなり多く、ある程度以上狩られても個体数が揺らぐことは無く。

「戦闘対象」としてはトリッキーな戦術故に余り好まれてはいないが、

「素材入手対象」としてみればかなり人気の部類なのだ。

 

ともあれ無事に依頼も確定した為、未だに乳繰り合っている二人に声を掛ける。

 

「ほらお前ら、依頼決まったから行くぞ」

「シャル子、命拾いしたね……今日はここいらで勘弁してあげる」

「一生勘弁して下さいよ……」

 

ユミがかなり強気な一方で、シャルルは妙にしおらしくなっている。

ユウラがハルトとの会話をしているわずかの間に一体何があったというのか。

 

みーみみみー。みみっみー?

 

シャンティッ君も疑問に思っていたようだった。

----

 

「という訳で、密林ですよ! 密林!」

「どういう訳だよ」

「気にしてはいけませんよ。昨日も言ったでしょう?稀玉症候群です、と」

「……はいはい」

 

またも名前が変わった症候群名であったが、もうツッコむまいとかたく心に誓ったユウラであった。

いちいち突っ込んでいては身が持たない。

 

時は午前11時。一行は再び密林に降り立っていた。

しかも症候群が強化されたのか、既にエリア1と呼ばれるエリアに居た。

今回はテロス密林、現密林とも呼ばれる密林である。

 

「それにしても、ランゴスタ多いな……」

「そうですねぇ。まるでなにかの伏線を回収したかのように多いですね」

「そんな伏線今日起きてから今までどこにもねぇよ……と信じたい」

 

もしかしたら、なんたら症候群のせいで気付いていないだけでここに来るまでの間になにかあったのかもしれない。

あるいは、何かの圧力がまた掛かっているのだろうか。

 

「とりあえずゲリョスを私の第六感で見つけ出しましょう。 えーと……↑↑↓↓←→←→BA……

分かりました! あっちに居るみたいですよ。エリア3」

「いや適当すぎんだろおい」

「私の狩猟レーダーは世界一ですのでご安心を」

 

いくらなんでもそんなに都合よく行く訳が無いのが、この世の道理である。

それはいつまでも絶対不変である。

 

……と思っていたのだが。

 

「……なんで当たるんだよ……」

「どやぁ、です」

 

密林エリア3。

シャルルが差したそこには、確かに奇妙な竜が居た。

 

特徴的なトサカに、黒とも藍色とも言えないその色。

ピンク色の尻尾の先端はやや膨れ上がっている。

 

毒怪鳥ゲリョスが、そこに居た。




はい、第六章いかがでしたでしょうか。
強引にタイトル通りのことを少しだけ盛り込んでみたんですが、分かりましたよね。

さて、13日のユニークアクセスが100人を超えていたんですが、一体何があったんでしょうかねぇ……?確かに更新はしましたけれども。

その他の日は大して伸びていないんですが、はて。


正直ちょっと日曜の更新も危うくなってきたので、一先ず切りあげて更新という形に致しました。
次回更新は火~水曜日あたりかと思われます。

それでは。
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