Monster Hunter Parody ー名状しがたき狩人のような者達ー   作:銀紬

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どうも皆さんこんばんは。お久しぶりです。

こんな時間ではありますが、第六話後編を投下しようと思います。


第六章後編 ゲリョスよりのもの

「アレが、ゲリョスか……」

 

ユウラの目線の先には、妙な見た目をした怪鳥が一匹。

こちらに気付く様子はなかった。呑気に歩いている。それどころか、

 

『グワァ……』

 

欠伸までしている。もはや相手にとっては緊迫感などあってないようなものだった。

いや、こちらに気付いていないだけだろうが。

 

となれば。

 

「……ユウラさん。今がチャンスだと思いますよ」

「あぁ、分かってるよ。ちょっと行ってくる」

「がんばってっ」

「少年……、勝つことができたら、今日のご飯は緑のジュース」

「そんな無駄に生命溢れそうな飲みもんを勝手に主食にすんな……」

 

ため息をつきながらも駆けだすユウラ。

 

今日の狩りはユウラ単独での、いわば実力付け。

シャルルたちの後ろ盾はあるが、それでもタイマンということがあり緊張感は充分だった。

 

「よし、それじゃあ先手頂きぃ……っと!」

 

ザシュゥッ!

 

『グワァア!?』

 

尻尾に、一閃。アサシンカリンガの鋭い刃がゲリョスの尻尾に突き刺さる。

尻尾はゲリョス最大の弱点でもあり、こうかはばつぐんだ。

それもあり、剣の刺突と共に血が噴き出し、大きくゲリョスがのけぞる。

しかしそんな大ダメージを受けたにも関わらず、周りを見渡すばかり。

もしかして、いつも閃光ばかり出しているせいで視覚はそこまで優れていないのだろうか。

 

――否、そんなことはなかった。

ユウラを視界に入れるや否や、即座に臨戦態勢に入るゲリョス。

 

『グギャォオ!』

「おっと危ない」

 

小さな咆哮と共にゴム質の尻尾をユウラに振りまわす。

その尻尾には慣性が働き、ゴム質であるのを良いことに目に見える攻撃動作以上のアタックレンジを誇っていた。

だがユウラはそれをものともせず、前転でひらりとかわして見せると、しなる尻尾の根元に斬りあげをお見舞いしてやる。

すると、ゲリョスは再び尻尾から大量の出血を起こすとともに再びのけぞった。その隙を良いことに、更に一太刀を加える。

しかし深追いは禁物だ。ユウラはその一太刀を終えると、一度体制を整えた。

 

さながらその動作は初心者とは思えなかった。

普通初心者であればここで深追いして手痛い反撃を受けるのだが、ユウラはそれを見越して深追いは決してしない。行動の判断力だけで見れば充分上位ハンターのそれに匹敵する。

訓練校時代に実技点がダントツであったのは決して伊達ではない。

ユウラ自身も上手い具合に狩りが進行していると自覚していた。

コレはいける。

 

「キャー! ユウラさん素敵です! 貴方の隣で火照りを沈めさせて下さいっ!」

「少年……今の少年はとても輝いてる。今ならわたしの赤ちゃんを産んでも良いよ?」

「ゆうらくんすごい……かっこいいなぁ……」

みぃー!

 

一方後ろでは、ユウラを生暖かく見守る三人と一匹、特に二人が性欲をガンガン解放していた。

ハルトやシャンティッ君も、その様子を見て心なしか顔に赤みが灯っている。彼ら……いや、シャンティッ君は定かではないが、少なくともハルトは外見はともかく性別は完全な男なはずだ。

もしや、別世界の同位体だか同素体だかが関係しているのだろうか。

 

「なんか騒いでるけど……まぁ、今はこっちが優先だよな」

 

勿論、そんな三人+一匹など目にもくれず、ユウラはゲリョス戦に集中していた。

そんなゲリョスはというと、度重なる連撃にいい加減「限界」に達していたようだ。

 

『ギャォオオオオ!!』

 

ガチン!ガチン!

 

「おっと!? 怒り状態か!」

 

ゲリョスは突然その場で吠えると、文字通り目の色を変えてユウラに襲いかかる。

頭のとさかは若干輝きを増している。口からは毒を含んでいるせいか紫色に染まっている吐息がだだ漏れだった。

咄嗟にバックステップを行い、ゲリョスから距離を取ることにする。

 

『グワォォ!』

 

その判断は正解であったらしく、ユウラが先ほどまで立っていた場所に毒球が吐きつけられる。

怒っているせいか敏捷性は目を見張るものがあり、先ほどまでの鈍重な動きなど微塵も思わせない。

着弾と同時に紫色の瘴気が立ちこめ、やがて消えていく。

 

「毒か、喰らったらただじゃ済まなそうだな……ここは少し回避優先で行こう」

 

ランポスメイルを据え直すと、一度横へ回りこむ。

 

『ガァアッ!ガァアッ!ガァアッ!』

ゲリョスもそれを追うようにこちらを振り向くと、ユウラに向かって突進を行う。

 

「イャンクックと同じ突進か、なら後ろから……

っ!?」

 

モーションを確認し、背後から尻尾への斬撃を繰り出そうとするユウラ。しかしそれは憚られた。

イャンクックとは違い、突進後倒れ込むことなくその場に踏ん張るゲリョス。

イャンクックよりは上級扱いされているだけあり、隙は多くなかった。そのまま振り向くと、再びこちらへの突進を繰り出す。

後ろから近づいていたユウラはほぼ0距離でそれを受ける形になった。

 

『ガアァァア!』

「ぐ……っ!」

 

咄嗟に回避行動を取った為、直撃はかろうじて免れた。

しかし完全に回避するには至らず、その場から吹き飛ばされる。

 

「ユウラさん!? あんの糞鳥、よくも私の(フィアンセ)に……!」

 

一方、後方ではその様子を遠くから見ていたシャルルが反射的に老山龍砲【極】をリロードする。

装填された弾種は、全て火炎弾。ゲリョスの弱点である火属性である。

 

が、攻撃に至る前にユミがそのバレルを地面に向けさせる。

 

「シャル子……心配なのは分かるけど、放っておくのが少年の為」

「どいてくださいユー子! あいつ殺せません!」

「でも少年は任せて、って言っていた。 だから、ギリギリまで放っておこう?」

「そうだよシャル子ちゃん。 もしあぶなくなったら、そのときたすけにいこう?」

「ぐぬぬ……」

 

どうやらゲリョスへの無慈悲な火炎弾による報復は、二人の傍観者の手によって防がれたようだ。

 

 

と、こんなことが後ろで起こっていた中。

 

「っち……」

『グゥゥ……』

 

ユウラがゲリョスの攻撃から立ちあがると、ゲリョスは既にこちらを向いていた。

目の色は元に戻っていることから怒り状態は解けたようであるが、このまま棒立ちしているのも危険だろう。再び剣と盾を構える。

直撃していない為ダメージは薄いが、油断は出来まい。

 

「さて、どうしたもんか……ん?」

 

突如あさっての方向を向くゲリョス。

いきなり交戦中にそっぽを向くとはどういうことなのだろうか。

だが、これはまたとないチャンスでもある。接近して、弱点の尻尾に斬りかか……

 

『ガァアッ! ガァァッ! ……グワァァア!!』

「うぉっ!?」

 

れなかった。ゲリョスがいきなり走り出したのだ。瞬く間に距離を取られていく。

暫く走ると停止し、その場で何かを威嚇するかのようなポーズをする。

そして、その場で羽ばたき始めた。

風圧に押されゲリョスと暫く距離を取っていると、やがてゲリョスはその場から姿を消した。

 

「……逃げた、のか?」

 

はるか上空を羽ばたく音のみが木霊する。

方向的には恐らくエリア4と呼ばれる方角に向かったかのように思える。

いや、もしかしたらエリア1やエリア5等に逃げた可能性もあるが、

一先ず隣のエリアに逃げた見込みがあるのであれば、隣のエリアから見ていくべきだろう。

 

「……っち、命拾いしましたね」

「あぶないところだったよ……」

「シャル子……激しいのは良いけど、それはわたしにだけでいい」

 

一方後方では、愛しのユウラに傷をつけたことでゲリョスに逆鱗をなでられたシャルルが

しぶしぶ老山龍砲【極】を背中に背負い直していた。

だが、そのバレルには派手な赤い装飾のバレットが装着されたままであった。

恐らく隣のエリアへ行っても何かがあれば容赦はしないということだろう。心強い半面、とてつもなく嫌な予感もする。

 

----

 

エリア3からエリア4への岩穴を通ると、目線の先には純白の砂浜に似合わぬ毒々しい藍色が一つ。

どうやらエリア4へ向かった、というのは正しい判断であったようだ。

 

『ギャォオオ!』

 

今度はすぐにこちらに気づくゲリョス。

だが距離は離れており、向こうも威嚇を繰り返すのみであった。

改めてその体躯を見ると、無数の傷が入っている。

そのことから、向こうも決して浅くない手を負っていることが確認できた。

 

「じゃ、手早く済ませちゃうか……っと!」

 

威嚇中のゲリョスにその脚で急接近するユウラ。どんどん速度を上げるユウラに気付き、即毒液による反撃を試みる……

が、慌てたのか距離感を掴めなかったのか定かではないが、毒液はユウラより五歩以上先に着弾し、

ユウラがそこを駆け抜ける頃には毒液はすべて霧散してしまう。

迎撃出来ていないことに気付いたゲリョスが慌てて二発目の毒液を吐きつけようとするが、遅い。

 

「そのトサカ、貰った!」

『グワァア!?』

 

毒液を吐きださんとしていたゲリョスの頭に強烈な斬撃を加えるユウラ。

その一撃は会心の一撃(クリティカルヒット)となり、一撃でそのトサカを破壊してみせた。

衝撃にゲリョスは悶絶する。

 

「よっし! アレで閃光は封じましたね」

「これで……もうただの鳥」

「ユウラくん、頑張ってっ」

みぃー!

 

後方からも聞こえるように、毒怪鳥ゲリョスの厄介な攻撃の一つに「閃光攻撃」があるが、

今のユウラの攻撃によってそれは封じられたのだった。

 

もっとも、そのことにユウラは気づいていないようであったが。

 

やがて目の周りを赤く染め、再びゲリョスが怒り状態になる。

破壊された頭からはだらだらと血が流れており、頭部はほぼ真っ赤といっても良かった。

更にその場で怒り移行時特有の暴れをみせるものだから血が周囲に飛散し、非常にグロテスクな光景となっていた。

 

そしてそのグロテスクさをモノともせずユウラが再びゲリョスに対峙し直すと、

こちらにそのゴム質の伸びる尻尾を叩きつけてくる。

が、怒りで我を忘れているのか、血で視界を塞がれているのか、ユウラの居る方向とは全く逆向きに尻尾がしなっていく。

それを見て、再びユウラは斬撃を加える。今度は腹の部分だ。

その一撃は的確にゲリョスの腹部を抉っていく。血の出方もひとしおだった。

 

『グァアア!! ……ギッ、ギゥウウ……』

「……っと」

 

その一撃を受け、ついに倒れこむゲリョス。さっとアサシンカリンガを引きぬくと、

倒れ込みに巻き込まれぬようにユウラは距離を取った。

 

頭からは未だに血がだらだらと流れており、目の周りもまだ赤いままだ。

腹部からも血が出ており、先ほどにもましてグロテスクである。

 

「終わった……か」

 

だが、見た目の悪さなど気にしていては、ハンター業は成り立たない。

自身の体力は勿論そうだが、精神力もまた重要なのだ。

ユウラはゆっくりとゲリョスに近寄っていく。

――なにも知らない愚かな狩人は、それを「罠」とは知らない。

 

ゆっくりと、剥ぎ取りナイフをそのゴム質の皮に突きたてる。

 

そして、刹那。

 

 

『グワァアアアォオオ!!!』

「!」

 

これまでの仕返しだ。

そう言わんとばかりに、死んだ「はず」の敵は己を知らぬ狩人に鉄槌を下す。

 

狩人は回避を試みるが、間に合うはずがない。

完全に油断した「弱者」である以上、最後まで勝利を目指した「強者」に勝つことはない。

それが自然の摂理なのだから。

 

強烈な一撃はそのまま、狩人の意識を奪い去った。

 

----

 

「………………ん」

「少年が……起きた」

「シャル子ちゃん、ユウラくんがおきたよっ」

「……はっ!ユウラさん、いま目覚めのキッスを」

「もう起きてるよバカ野郎」

「なんでこんな時に限ってすぐ起きるんですかぁ……ぐすん」

「泣いても無駄だぞ。……ったく、幾ら気を失って反抗できないからって変なことするんじゃねぇよ」

「変なこととは失礼な! これでもネコタクの代わりにここまで運んできて傷も完治させたんですからね?」

「え、そうなのか?」

「当たり前でしょうが。愛しのユウラさんの為ですよ?」

 

言われてみれば、確かにそうだった。

強烈な一撃を受けたと言うのに、その体にはこれといった痛みも残っていない。

それどころか一部の古傷も治っている。

 

「そ、そうか……それは、ありがとうな」

「えへへへ……」

 

ユウラに礼を言われ、笑みをこぼすシャルル。

不覚にも可愛いと思ってしまい、一瞬目を逸らした。

 

しかし、ここまでの治癒力を見せる薬とは一体何なのだろう。

ふと疑問に思い、聞いてみることにした。

 

「しかし、どんな薬を使ったんだ? いにしえの秘薬でもここまでの回復はないだろうに」

「……え?」

「いや、だからどんな薬使ったんだろうなーって」

「それは……その」

「それは?」

「……」

「……」

「……ユウラさん」

「なんだよ」

「……助かったんですから、そこんとこは気にしたら負けですよ。

しいて言えば、フレッシュな素材を沢山ですね」

「よし分かった吐いてくる」

「ちょっとー! フレッシュでしょうっ!?」

「シャル子……それ、わたしの同素体の中の人の台詞」

 

もうなんというか、猛烈に嫌な予感しかしない。

更に言うと、そんな得体の知れない薬を服用させられて無事な自分の体もたいがいなものだ。

 

「さーて、グレンフォークはどこにやったかなっと」

「ユウラさん……貴方まだ下位なのにG級武器作れるってどういう……」

「あぁ、その辺気にするのならさっきの続きとして背中の上でチュクチュクの盾を転がしてやっても良いぞ」

「すんません冗談です言ってみたかっただけなんです」

「しょうもない嘘つくんじゃないよ……で、本当はどうしたんだ」

「そうですね……あの飛行方向からして1番へ行ったのではないかと」

「隣……のエリア」

「ふむ」

 

どれほど信憑性がある情報かはいざ知らず、隣のエリアの可能性があるのならば行ってみても良いだろう。

武具に傷がないことを確認すると、一行はエリア1へと向かった。

 

----

 

「……マジでいやがった」

「だから言ったでしょう、私の狩人レーダーの的中率は宇宙一なんですよ」

 

本来なら胡散臭さを盾に否定するところだが、流石にこうなってくると否定は難しいというものだ。

目の前の血まみれの怪鳥を見てつくづく思うユウラであった。

 

「まぁ……とりあえず、リベンジと行くか」

 

ゆっくりと対象に近づくユウラ。

 

『クワァ……クワァ……』

 

一方対象はというと、普通に歩いているように見えて、時折ふらつきをみせるゲリョス。

彼もまたただで済んではいないのだ。

 

「弱ってるところ悪いが、これも仕事なんでねっ……と!」

 

大体対象まで10mといったところだろうか。

ゆっくりとした足取りを一気に速め、数瞬でゲリョスの背後、弱点の尻尾を手に持った獲物で抉ってみせる。

 

『グギャァォオオ!? ォオオ……』

 

すると、再びゲリョスはその場に倒れ込む。

 

だが、もう同じ失敗は踏むまい。その身で体験したのだから。

後ろに一度下がると、

 

「せいっ」

 

その辺に落ちていた石ころをぶつけてやる。

 

すると、

 

『グワァアアアァァア!? ガゥウウ!』

 

突然大暴れしだし、起き上がるゲリョス。

どうやら先ほど自分を戦闘不能に陥らせた攻撃はこれのようだ。

成程、確かにいかにも大きなダメージを受けそうな感はある攻撃だ。

といっても、当たらなければどうということはない。残念な大技である。

 

『ガチッ! ガチッ!』

 

起き上がったゲリョスは、突如ついばみを始める。

だが、こちらに向かってくる様子はない。一体どういうことなのだろう。

 

「……少し様子を見るか」

 

そして、少しすると、

 

『グワァアアア!』

「おぉっ!?」

 

雄たけびをあげ、荒ぶるポーズを取るゲリョス。

 

しかし。

 

「……なにも、ない?」

 

そう、何も起こる事はなかったのだ。

つまり、この攻撃……といえるかも微妙なこの行動は、完全な隙といえた。

言えたのだが、

 

『ガチッ! ガチッ!』

 

再び攻撃のようなものをしようとする。

 

「念のためもう一回様子を見てみるか……撃ち損ねたのかもしれないしな」

 

そう、もしかしたらさっきのが不発に終わっただけで、何をしてくるか分かったものではない。

もしかしたら毒を噴出してきたりするかもしれないのだ。

 

しかし、それは杞憂に終わる。

 

『グワァアアア!』

「……」

『……』

 

全く怯みもしないユウラをじっと見つめ、ゆっくりと前進だけするゲリョス。

 

そして。

 

『ガチッ! ガチッ!』

「隙ありぃいい!!」

 

懲りずにもう一度それをするゲリョス。

もう完全に隙であった。振るったアサシンカリンガが腹の部分を大きく抉り、尻尾まで一気に断つ。

 

『グァア!? ゴォァアアアアア……ギ、ギィイ……』

 

ばたん。

 

再びゲリョスが、先ほどの死にまねのように倒れこむ。

だが、その瞳にはもう意志というものを感じられない。つまるところ、真似ではなく。

 

「……念のため、な」

 

念のため、石ころをぶつけてみるユウラ。

しかし、先ほどのような反応はない。それどころか、動く気配すらない。

 

こうして、トリッキーな毒怪鳥ゲリョスとの戦いは幕を閉じたのであった。




はい、第六話後編如何でしたか?
それでは、後日談に続きます。
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