Monster Hunter Parody ー名状しがたき狩人のような者達ー 作:銀紬
毎日5分くらいコツコツ書いてたのがなんか出来上がったんで投稿はしておきます。
次は受験が終わってからですね、ええ。
あ、今回は一際パロディが目立つので苦手な方は戻るをクリックしましょう。
「……暑い、な」
エリア9の陸地を動く3つの影。
ユウラ一行は雑魚モンスターを適度に掃討しつつ溶岩台地を横断していた。
生物にとっても過酷な環境なようで、アプケロスやブルファンゴの多かった岩地地帯であるエリア2からエリア9に進むにつれ植物、モンスターともに減少していく一方。
エリア9に到達する頃には、精々火薬草など火に強い植物とごく少数のはぐれたアプケロスが見受けられる程度だった。
そのごく少数のアプケロスも暑さでへばっているのか動きはいつもより鈍重に見える、いや、あるいは暑さ故に陽炎で揺らめいているように見えるのか。
「でも、へんなモンスターはどこにもいないね」
「いないならいないで楽だから良い……」
「まぁ、そうなんだけどさ」
「結晶」を持つモンスターはタヴィーナ曰く「紫色の吐息に緩急の激しい行動を示す」とのことであったが、それらしきモンスターはまるで見受けられない。
「そういや、僕たちが仮に先に結晶持ちモンスターに遭遇したらどうする?
あいつらはエリアがまるで違うからすぐに行動はとれないと思うんだけど」
「問題ない……そのためのコレ。 あの少女から貰った」
何やら奇妙な物体を取り出すユミ。
黒い枠を持つ褐色の楕円状をしており、枠の中にはまるで胎内で成長する胎児のような絵が描かれている。
そして裏側にはこれまた見慣れない、布地の少なめの一風変わったクツの絵が描かれていた。
「ん? なんだよこれ」
「ユウラくん、しらないの?」
「最近発売された新型携帯A-Phone17……通称、サンダルホン。
ここのところ確認されている新種のモンスターの幾つかから発見された物質を用いている。
1ヶ月あたりの使用量はわずか60ゼニー、PT内にこれを持っている人が居れば回復笛を吹いた人の体力を1.5倍、攻撃力を2.5倍する」
「聞いた感じの利点は凄いのに見た目の酷さで全て相殺されてしまってるように感じるのは僕だけじゃないよな」
「見た目といえば、サンダルホンは2時間くらいれんぞくで使ってると、腕の生えたおさかなさんみたいな形になるんだってね」
「熱膨張が起こるせいでそうなる……いつもが便利な反面、その形になると暴れ出す上に修理に出さないといけないから厄介」
「どんな変形だよ……というか、その携帯生物かなんかなのか」
というか、2時間の連続使用で変形するのは幾らなんでも欠陥品ではないのか。
それ以前に、自立して動き出すということはそれは生物なのではないのか。
それををあたかも機械として用いるのは如何なものなのか。
心の中でそのようなことを思ったが、今更ユミたちの所持品にツッコミを入れてもキリがないので心に留めておく。
「狂竜化モンスターの狂竜化度合いも表示される、ほら」
そこには、0%が4つ並んでいる。よく見るとこのエリアのアプケロスのことを指しているようで、どれも影響を受けてはいないことを示していた。
「……まぁ、ここにはいないならエリア10に移るか」
ともあれ、不可解な行動を取るモンスターもエリア9には見受けられない。
ユウラたちは隣接するエリア10への洞穴へ足を進めた。
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-エリア6,火口付近鉱脈
「おお、コレはメテオテスカトルですョ! 少々大きいので一度ここに置いといて後で回収するですょ」
「……」
「ふぅむ、獄炎塊ですか。砕けば獄炎石の山になるのでウッハウハですょ」
「……あのー、もしもし、いつまでここにいるんですか?」
「こ、これは……古龍の化石!? 砂漠でしか取れない筈なのに……」
「……聞いてますか?」
「こ、これは……僅か15年前に発見され、エンジェルビーシリーズでも十四番目に発掘された最高にして最硬の鉱石、ゼルエルビーですョ!」
「聞いてますかって言ってんですよ!」
未知なるトレジャーを目指して発掘を繰り返すタヴィーナに痺れを切らすシャルル。
「……煩いですね、なんですか? シャルルサン。十六番目のアルサミエルビーでも発掘出来たんですか?」
「あぁ、先ほど十七番目の鉱石タブリストーンなら……じゃなくて!
私たちの目的はそんなちっぽけな鉱石ではなくて狂竜結晶でしょう? あんたのトレジャーに付き合ってる暇はないんですよ!」
「全く……そうはいってもそういった類のモンスターがいないから仕方ないですょ。
それに、あちらが見つけたらこのサンダルホンで連絡が来るですょ」
「でも私たちもあとエリア8が残っているでしょうが」
「うーん……でもエリア8ってそんなにモンスターはいませんょ? どうせいてもあなたが瞬殺するでしょう」
「まぁ、そうですけど…………」
「それに、アレを見るですょ」
そういったタヴィーナが指さす先には。
みー! みー! みいい!
ギャォオ! グワォオ!
遠方に居るイーオスと戯れるシャンティッ君の姿があった。
戦うでもなく、むしろモンスター同士通じるところがあるのかつつきあったりしてふつうに遊んでいるようだ。
しかし、古龍であるシャンティッ君はともかくとして、狂竜結晶の影響がイーオスに出てしまうようなことにはならないだろうか。
「ほら、シャンティッ君サンもあんなに楽しそうにしてますし、あれを引き離すのはとても難しいですょ」
「そういう問題じゃないでしょうが」
「あぁ、それとあのイーオス後ほど天空山でジンオウガに飛びつきますょ。終いには自分らのボスを捕食するですょ」
「よくわかんないこと言ってないでエリア8行きますよ? シャンティッ君も、そろそろ時間ですから来てくださーい」
みー……
グワォォ……
少々残念そうにしながらふわふわと浮遊してこちらにやってくるシャンティッ君。後ろにはそれを名残り惜しそうに見つめるイーオスの姿があった。
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エリア10,溶岩湖付近
「……ホントに火山に居るのか? 今回の目標とやら」
「わからない……でもわたしはオノノコバチを捕まえたから満足。今日の夜ご飯はとても豪華になる」
「いつの間に捕まえたんだよ」
ブゥンブゥン、とユミのアイテムポーチの中から聞こえてくる。捕えたのは確からしいが、今後待ち受けているかもしれない激しい戦闘で潰れてしまうのではないだろうか。
それはそうとして、このエリア。少々異様な点が見られた。
「……そういえば、モンスターたちがいないね」
そう、雑魚モンスターが一匹たりとも見当たらないのだ。
古龍襲撃……とも考えられなくはないが、シャルルたちからも一切受けていないのでその線は薄い。
もっとも、そうだとしても安泰だろう。こちらには恐ろしい実力者が3名も居るのだから。
ともすれば、一体何が起きているのだろうか。
「あぁ……いつもはアプケロスとかランゴスタが居るんだけどな。まぁこういうことも」
あるんだろ、と言いかけたその時である。
『デーンデーンデーンデーンドンドン! デーンデーンデーンデーンドンドン!』
どこからともなく妙な音楽が聞こえてくる。
「な、なんだ!?」
「総員……第一種戦闘配置。 対魚竜迎撃態勢に移れ」
「いや、そのBGMなんだよ一体」
「わたしの……お気に入りの着信。ほら、あそこ。サンダルホンは敵捕捉機能も付いている」
「無駄に器用な機械だなおい」
ユミが指をさすその先には、ゴボゴボゴボゴボ……と揺れるマグマ。
そして、数瞬後であった。
ザバァァァァ。
『…………』
キョロキョロ、と周辺を見回すそれ。
頭以外は溶岩に浸かってしまっているが、それでも頭の大きさから巨体であることは容易に想像がつく。
「ヴォルガノスか!?」
「うわあ、凄くおっきいねっ、おっきいねっ」
突然の襲来に驚くユウラに反して、何故か途端にはしゃぎ出すハルト。何が嬉しいのだろうか。
しかし、そんな大きなヴォルガノスの異変に真っ先に気付いたのはユミであった。
「吐息が、おかしい……?」
その口からは、紫色の瘴気が吐き出されていた。
心なしか体色も紫色がかっている。これではまるで。
「なあユー子、コレってもしかして」
「うん……間違いない、狂竜モンスター」
「やっぱりか…仕方ない、やろう」
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エリア8 南エルデ火山最深部付近
『デンデデデデデデデン! デデデデデデデン! デデデデデデデン!』
何かが覚醒したかのようなBGMが鳴り響く。
「おや、あんたに渡されたこの端末が鳴ってますよ、一体何事ですか?」
「あぁー……間違いない……狂竜結晶ですょ。どうやらあちらが先に見つけたようですょ」
「そうですか……ついにこの時が来たというわけですね」
「エリアは……10みたいですょ、ちょっと遠いですが急ぐですょ!」
「言われずもがな!」
みー!
そうしてタヴィーナを先頭に先を急ぐ一行。
疾走する。エリア10を目指して、そして目の前の崖を目指して。
……崖?
「はああああああああああああ!? あんた正気ですか!?」
「うーん……このままエリア10に行くにはちょっち時間が掛かりますょ。
なんで、最近見つけた道を試してみますょ。裏ルート、ザ・
「なぁっ!?」
「我慢してくださいシャルルサン。私も、我慢しますょ!」
みー!?
火口に自由落下していくタヴィーナ。
その速度は9.8メートル相当増えていき……
やがて見えなくなった。
「えぇい、シャンティッ君背中に乗せなさい! 行きますよー……
シャンティッ君にまーたーがあてぇえええええ火口に急降下ぁあああああああああああ!!!!????」
み、みー!?
突然の騎乗に耐えられないシャンティッ君はバランスを崩し、浮遊も出来ずそのまま落下してしまう。
どすん。
十数秒後、地面に鈍い音が響いた。
「グラビモスやらショウグンギザミが居るかもしれないので気を付けて行くですょ。
それにしても……意外とアナタおっちょこちょいなんですょ」
「あいたた……あんたが突然に飛び降りたから私も咄嗟に飛び降りてしまったんでしょうが。それに着地失敗したのはシャンティッ君ですし。
ふつうにエリア8→7→10で良かったでしょうに……というか、あんたも私もよく死ななかったものです」
「本職を舐めちゃいけないですョ」
一部が拳大に膨れ上がった頭を摩りながらタヴィーナについていくシャルル。
着地に失敗したのは自明であった。
しかし、この獣道。
確かに獣道と呼ばれるだけありいたるところに巨大な足跡が残っている。溶岩に真っ直ぐ進む足跡はグラビモスのものだろうか。
などと考えていると、既に目的地に到着していたようだ。
「よっし、ココの穴を上がればエリア10ですょ。」
「よくこんなルート見つけましたねあんた。 上手くすれば地図に書き加えられますよ」
「いやー、それは困るですょ。 このルートは極秘ということでお願いしますょ」
「いえいえ、こんな便利なルートの発見、ギルドが黙っちゃあいませんよ」
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エリア10,戦闘区画
「ハルト君……、そっち」
「う、うんっ」
その場から退避するハルト。
その数瞬後、地面が赤に染まって、
『ゴオオォォー!』
かの巨体が飛び出してくる。
その体は図鑑で見たものよりも紫がかっており、通常の個体とは明らかにちがった状態であることも示唆されていた。
「ヴォルガノス、かぁ……僕は一度も戦ったことないんだけどな」
「少年……なんだったら、今は少しそこの高台に登っていた方が良い」
「……いや、僕も戦うよ。 戦いは男の仕事っ!」
そんな会話を意ともせず、這いよるヴォルガノス。その方向はユウラやユミの方を向いている。
しかし、狂竜化の影響なのかスピードは遅く、辛うじて回避することには成功した。
「今度はこっちの番……ハルト君、少年。 一先ず落とし穴に落とそう。 それから全力で畳みかける」
そう言うが否や、落とし穴の設置を数秒で完成させるユミ。
自分でも思うが、何故これほどの装置を数秒で完成できるのだろう。
「練習のせいか、みせてあげるよっ」
そうハルトが言ったが否や、カッ、と赤く輝くトルネードトマホーク。
しかしあの状態になった訳ではなく、ハルト自身はそのままだ。
つまるところ、いつの間にか双剣の本来の奥義である鬼人化状態の会得に成功していたようだ。
一方でユウラは、
「よし、落とすぞ!」
ヴォルガノスを上手く落とし穴の方向へと誘導させていた。
そして後ろから這いずり迫りくるヴォルガノスを背に、ダイヴ。
刹那、
『グォオオオオオ……オゥ!?』
ヴォルガノスが地面へと吸い込まれる。上手い具合に落とし穴に落ちたようだ。
『オォォオゥ!! オォオオゥ!!』
暴れ狂うヴォルガノス。しかし脱出することはなかなか出来ないようで、拘束が解けることはない。
「喰らいなさい……わたしの発掘イクリプス」
一太刀を抉るように突き立てるユミ。腹部への一撃は効果抜群だ。
しかしその武器は相変わらぬゴールドイクリプス……のように見えるが、そこから迸るのは水属性。
その横には一心不乱に乱舞を行うハルト。軽い一撃もあるが重い一撃もあるようで、順調にダメージが積み重なる。
普段は乱用すると忌み嫌われる乱舞もこうして拘束されているときには最高のダメージパーセコンドを叩きだす。
「よし、この位置からなら二人に影響はないな……そらっ」
ドガーン!
炸裂する大タル爆弾G。
上位に上がりたてで有効なダメージソースが未だに乏しいユウラは爆弾での攻撃を決行した。
流石はGという銘なだけあり、その爆発でヴォルガノスの溶岩に包まれた鱗は一気に剥がれ落ち、本来の黄金の体表が浮かび上がる。
「よし……っ、そろそろ時間切れだ、お前らずらかれ!」
そうユウラが言った刹那、落とし穴が破壊される。
と、共にヴォルガノスが飛び上がり、自身の体躯を地面に叩きつけた。
凄まじい震動に一瞬動けなくなる一同だったが、ヴォルガノスもその場から起き上がるまでにラグがあったので些細な問題であった。
しかし問題はここからどう体力を削っていくか。
圧倒的戦力を誇る二人はいるが、相手は未知のウィルスに感染した大型モンスター。何が潜んでいてもおかしくはない。
敵は周囲をキョロキョロと見まわしていた。心なしか溶岩の輝きが強まり、吐息にも熱が混ざる。
『グワォオオオオ!』
それから数歩歩くと、グラビモスのような予備動作の後にガノトトスのような這いずりをかましてくるヴォルガノス。標的はユウラのようだ。
ただそれだけなのだが、何トンとあるであろう巨体によるそれは、例えユミのような実力者であろうと一撃貰えば重傷は免れまい。
「速い……!」
避けきれない。そう思ったユウラであった。
事実として、50m,40mと凄まじい勢いで近づいてくる。
避けろ。避けろ。避けろ。ただその一心で疾走するユウラ。しかし、それよりも圧倒的にヴォルガノスは疾かった。
「ま、間に合わないっ……!?」
既にその巨体は15m先まで迫っていていた。
走りながらも被弾の覚悟を決めるユウラ。
しかし、その時である。
「少年……わたしが、受け止める」
「おわっ!?ゆ、ユー子!?」
横からユウラを突き飛ばすと、ゴールドイクリプスの盾を構え、絶対防御姿勢に入るユミ。
鈍重な体躯から繰り出される凄まじい速度での一撃。強烈な衝撃により剣は弾き飛ばされ、盾のみが腕に残る。
「ユー子!」
「ぐっ……うううゥ…………!」
勢いをユウラより一回り以上小さな体躯で相殺しようとするユミ。
片手剣の盾の大きさでは信じられないレベルのガード性能でヴォルガノスの勢いも緩やかになっていくが、それでも完全に勢いを殺すことは出来ず、次第に壁際に圧されていく。
ヴォルガノスも壁で圧殺せんとばかりにユミを壁際に押し込んでいく。
バキバキバキバキバキッ!
余りの力の均衡についには地盤の方が耐えられなくなり始め、ひびが入るユミの足もと。
溶岩で形成された堅牢なそれがこうなるのだから、その力の掛かり方は想像を絶するものであることは間違いなかった。
一方でヴォルガノスは正面に気を取られていて後ろはがら空き。それを見逃さない男二人ではなかった。
「少年……わたしの片手剣で尻尾を……!」
「わ、分かった! くのぉおおおお!!!」
「ぼ、ぼくもっ!」
ユウラはユミの片手剣を拾い上げると、それを用いてヴォルガノスに斬りつけた。
ザシュゥウ!!!
ゴールドイクリプスが突き刺さり、多量の水飛沫が舞う。
ヴォルガノスは一瞬怯みかけたが、それでも勢いを止める気配はない。
「クソッ! どうしたら止まるんだ!」
がむしゃらに斬りつけるが、止まる気配はない。
ところどころ弾かれる部位もあり、全て有効打になっているかは怪しい。
「尻尾を……! 尻尾を引きちぎれば止まるはず……ッ!」
「尻尾って、こんなデカい尻尾をか!?」
「ヒレの少し先は有効打突点……比較的衝撃に弱いから……!」
「分かった! ……で、でも動きまくっててぜんっぜん当たる気配がっ」
突き進んでいくヴォルガノスの尻尾に、這いずりに巻き込まれぬよう攻撃を加えていくユウラ。
周囲に鮮血が飛び散るが、やはり止まらない。有効打突点とやらにも当たらない。
岩壁まで1m、90cm,80cm……僅かずつではあるが岩壁への侵攻は進む。
「くそぉ……!」
『少年! 力を貸すぞっ!!』
「ハルト!?」
いつの間にやら黄金衣状態となっていたハルトがそう叫ぶと、何とヴォルガノスの尻尾ををその両腕でヒレを掴むことで固定して見せた。
ヴォルガノスの動きがそのまま止まるわけではないが、揺れ動く尻尾だけは見事に動きひとつ見せない。
『早く! 時間がない!』
「分かってるよ! ……でも、固定されていてもどこなんだか……!?」
固定されたのをいいことに手当たり次第に斬りつけると、ついにその部位を発見する。
一際鮮血があふれるその部位を見逃すことは無かった。
「ココかっ!!」
「早く…………! 少年!」
「分かってるっちゅうのおおおぉおお…………!!」
一か八か、尻尾にナイフの如くゴールドイクリプスを突き立てるユウラ。
その瞬間、尻尾の先端が完全に千切れ、今までに見ない量の鮮血が火山の大地を汚した。
『グォオオオオオ…………!?』
そして、完全に勢いが止まるヴォルガノス。
それを機にユミはヴォルガノスの正面を脱することに成功した。
「だ、大丈夫か!? あ、コレお前の」
「大丈夫……わたしには12000頭の右ラージャンで得たこのゴールドイクリプスの盾と、
オートガードとガード性能+2とガード強化スキルでなされた絶対防御領域、通称ADフィール」
「あぁうん大丈夫なんだな分かったわかった」
かつてハンターになる前のユウラが読んだことのある小説にどことなく似ている展開であった。
ともすれば次は味方の誰かが何らかのウィルスに侵食されるのか。
……………ウィルスに?
などと考えていると、
『グルルルル……』
気付けばヴォルガノスは既に戦闘態勢に入っていた。
しかしそれまでの体表を流れる溶岩の輝きは失われており、動きも緩やかであった。恐らく先ほどの一撃で削られたに違いない。もう長くはないだろう。
「よし、じゃあ行ってくる」
「だいじょうぶ? ひとりで」
「問題ない、捕獲ぐらい僕にやらせてくれよ。 というかお前いつの間にか戻ったな」
ヴォルガノスが緩やかに這いずりを行うが、先ほどのような勢いはもうなかった。
容易く避けると、その懐に球状の物体を埋め込むユウラ。
数秒すると、それは発動した。
『グォオオ!?』
突然体が動かなくなり戸惑いを隠さないヴォルガノス。
抵抗しようにも体が動かずどうしようもない。
ばしゅっ。ばしゅっ。
罠によって動かなくなったことを確認すると、ユウラは玉を投擲する。
麻酔毒が仕込まれたそれは、瀕死のヴォルガノスの意識を容易く闇の中に落とし込めた。
それとほぼ同時に、
「ふー、やっと辿り着いたですょ……」
「やっとってあんたのせいでしょうが! なーにが裏ルートですか、結局道に迷いやがった挙句に崖登りすることになるだなんて」
みー……
二人と一匹も到着したようだ。
やっとか、という表情で迎えるユウラ。
「遅かったな、もう終わったぞ」
「意外と……強敵だった」
「まぁ、終わったなら良いんですけどね」
「私は少しこいつを調べてますょ、キャンプに戻ってて」
ください、とタヴィーナが言いかけたその時である。
ゴガァアアアアアォオオゥ!!!
エリア7へとつながる洞窟から聞こえる、龍の咆哮がエリア10を轟く。
「この声……まさか、奴ですか? この誰かさんのせいで凄く疲れてる時に……」
「奴って? 心当たりがあるのか、シャル子?」
「うーん……まぁ、端的に言うと古龍ですよ、テスカトのどっちかかなと思います。
まーた機関の情報規制があったみたいですねぇ……まぁ、仕方ないんで撃滅しましょうか」
「おいちょっと待て、勝手にやっちまっていいのかよ」
「大丈夫ですよ、不意打ちに対応したと言えば。 ユー子もハルト君も、まだ行けますね?」
「問題ない……」
「いけるよ、大丈夫っ」
みー!
シャンティッ君もやる気は万全だった。
「あーじゃあ、テオ・テスカトルはあんたがたに任せるですょ。私はコレ調べてるんで、2時間後くらいにキャンプで逢うですょ」
「仕方のないヤツですね……まぁ、じゃあ精々死なない様に祈っといて下さい」
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エリア7 火口付近
『…………』
『ギャォオ!ギャォオ!』
突然の古龍襲来に逃げ切れなかったイーオスたちが、苦し紛れにテオ・テスカトルに威嚇を繰り返す。
しかし一方のテオ・テスカトルはそれをまるで意ともせず闊歩していた。
恐らくは眼中にないのか、あるいは後でどうとでも出来るので今は吠えさせておいているのか。
「へぇ……赤いんだなこの古龍は」
「違うのはカラーリングだけじゃない……所詮クシャもナナも発展途上の古龍。
けどテオ・テスカトルは違う。これこそ実力も段違いの本物の古龍」
「そ、そうなのか」
エリア10とエリア7を繋ぐ洞穴より、遠方からテオ・テスカトルを監視する一行。
ユウラは、はじめて見るテオ・テスカトルに威圧されていた。
それもそのはずである。
その頭部には勇猛な一対の角と鋭い犬歯が、そして古龍種独特の四足歩行に翼というスタイル。
全身が紅に染まったそれは、まさに威風堂々。古龍足らしめる権威を周囲にまとっていた。
「大丈夫ですよユウラさん。いざというときはこの老山龍砲・極で貴方と視線が合う前にヤツを射殺しますから」
「お前が言うと洒落になんねぇよ……ん?」
「どうしました?」
「……シャンティッ君は?」
「おや、確かに。 どちらに……っておや、あんなところに」
みー! みー!
ギャォオ!ギャォオ!
なんとイーオスと一緒にテオ・テスカトルを威嚇していた。
どうやら先ほど仲良くなったイーオスと一緒のようだ。
が、それでも一瞥とくれないテオ・テスカトル。
一応シャンティッ君は古龍なのだが、それをも意に介さないレベルの戦闘力を有しているようだ。
「ふぅむ……イーオスはともかく、シャンティッ君の威嚇をも意に介さないとは……」
「シャル子……もしかしたら、グッジョブ個体かもしれない」
「あり得ますね。そうなると短期戦でも済みますが攻撃力が高いのは厄介ですね……しかしそうなると、シャンティッ君貴方はとてもよく成長したものです!あんな強敵に自分から挑むなんて……うるうる」
聞きなれない言葉が飛び交うが、またいつものような冗談めいた雰囲気になっているので、どうせまたその場限りの設定なのだろう。
「なんだそのグッジョブ個体って」
「えっとですね、グッジョブ個体、通常GJテオというんですが、
攻撃力がべらぼうに高いんですけど防御力はそこまで高くなく、また全般的に金冠サイズに近いテオ・テスカトルです。
戦闘力自体は通常種より高いので区別されてますね。
なんでグッジョブなのかというと、実は古龍の大宝玉が手に入りやすくて」
「うんわかった、それ以上はいらん」
「これからが良いところですのに……おっ? ついにやる気を出したみたいですよ」
シャルルがふと目をやると、そこには。
イーオスたちに対峙するテオ・テスカトルの姿があった。
ギャ、ギャオォオ!
微かな怯えを伴いつつも無謀にとびかかる一体のイーオス。
しかし、
『ゴガァ』
ばしっ。
グォオオ……
パンチ一撃で軽くその命を貰われてしまったようで、動く気配は以後なかった。
「あー、まぁそりゃそうですよね」
「そりゃイーオスだもんなぁ……って!」
ユウラが驚いたのはそこからだった。
みー! みー!
何かを指示しているのか、何度か吠えるシャンティッ君。
すると、驚くべきことに残ったイーオスたちは一斉に毒を吐きかけたのだ。
『グルゥ!?』
自身が毒に侵されたのに気付いたのか、思わず怯むテオ・テスカトル。
みぃ!みぃ!
ギャォオオ!ギャオォォ!
それを見て、勝ち誇ったかのように咆哮を上げるシャンティッ君一行。まだ毒に侵しただけだが。
「すごい、すごいやシャンティッ君!」
「毒に弱いとはいえ……、あのテオ・テスカトルを小型モンスターが毒化に成功したのはまれにみるケース」
人間サイドもそれなりに関心を寄せていたようではある。
「ほぉ……なかなか面白そうなので、少し見ていましょうか」
「でも、大丈夫かよアレ。 下手打ったらシャンティッ君死んじゃうぞ」
そう。
一応シャンティエンとテオ・テスカトル、どちらの実力が上かと言えば恐らくシャンティエンの方が上ではあろう。
しかしそれは成体同士の戦いの話であり、まだ幼体であるシャンティッ君と成体となったテオ・テスカトルには明確な実力差があるはずである。
「大丈夫ですよ。あの子には12000枚の甲殻と絶対天翔領域がありますから。
まぁ、いざという時は私たちが全力で阻止するので問題ありません」
「……あ、そ」
そのテオ・テスカトルを虫けらのように扱う人種もこちらに居たという訳である。
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『ゴガァアアアアアア!!』
毒に侵されたことで目の前のイーオスたちを「敵」とみなしたテオ・テスカトルは咆哮をあげた。
刹那、体が陽炎に包まれることとなった。
みぃい!?
突然熱を帯びた敵に怯むシャンティッ君。その隙を古龍が逃すことは無かった。
口に満々と炎を湛え、
『ゴォオオオオ!!』
「あ、危ない!」
それを吐き出した。
その劫火は見る間にシャンティッ君に迫り、その体躯を炭にする…………
ことはなかった。
寸前で弾き飛ばされたのだ。
そこには、
ギャオオオ! グワォ!
イーオスの姿があった。シャンティッ君と先ほど仲良さげに遊んでいた彼である。
そこまでサイズに差はなかったので、どうにか炎の射程圏外に弾きだせたのだ。
みー!? みぃいいいいいいいー!
炎の射程圏外に弾きだされたシャンティッ君は悲痛な声を上げた。
自分を助けた友が焼き払われていくのを目の前で見せつけられたのであるから、無理もない反応だ。
「よしユウラさん! あいつをぶっ殺す理由が出来ましたよ!」
「物騒なこと言ってんじゃねぇよ」
「なぁに言ってんですか、ペットの友が殺されたのですから仇を取るのは飼い主の義務です」
「お前の場合単に虐殺したいだけじゃねぇか」
「ちちちちちちちちち違いますよ!」
どうみても図星だ。
「ま、まぁ、もう少しだけ見ていましょう。シャンティッ君はまだ無事ですから。私のペットの実力を見ているがいいですよ!」
仲間が焼き払われた光景を見て、一目散に逃げ出していくイーオス。
しかし、それは粉塵爆発で瞬く間に全て爆散されてしまった。
そして、シャンティッ君一体のみが残った。
対峙する二匹。
先に動いたのは、
みみみみみぃいいい!
仲間の死に猛り狂ったシャンティッ君であった。
全身から電撃を放ち、正しく本気モードと言った様子。
普段のふわふわとした浮遊からは想像もできないスピードでテオテスカトルに突っ込んでいく。
『ゴォオオオ!!』
テオ・テスカトルも正面からそれを迎え撃つ。
ガギィイイン!
力と力がぶつかり合い、鱗粉や甲殻の破片が正六角形状に四散する。
体躯の大きさは圧倒的にテオ・テスカトルで、無謀なぶつかり合いに見えた。
が、驚くべきことにシャンティッ君の方が押している。
「ふっふっふ、流石私のペットなだけはありますよ。これはもしかすると私たちが手を下すまでもないかもしれません。恐るべきキズナパワー」
「いやいつの間に成長したんだよお前のペット、明らかに数話前はふわふわ浮いてただけじゃねぇか」
「あー、えぇ。気にしてはいけませんよ。ちょっち龍フードとか言うのを食わせてみたら急成長したという設定です」
「設定ってなんだよ……」
みぃいいい……!
『グルゥウウ……!』
バチバチバチバチバチ!!!
ゴォオオオオオオオオ!!!
人間サイドが呑気な会話を続ける間もぶつかり合う二頭。
電気と炎の二つの力が強烈なエネルギーを生み出し、巨大な陽炎を形作っていた。
だが、電気の方がどんどん大きくなり、やがて炎を包み込み始める。
『グルルルッ……!?』
みいいいいっ…………!!
目の前の自分よりずっと小さな外敵が生み出す異常なパワーに怯みを隠せないテオ・テスカトル。
その怯みも見て、勝てる。野生の勘がシャンティッ君に告げた。
「さすがですシャンティッ君! いよっ、私のペット!」
「いや、お前のペットっつうか古龍だから……あーでも、こりゃ行けるのか?」
「がんばれシャンティッくんっ」
「ふぅむ……コレは後世まで伝わる戦い」
なんて、この時まではユウラ一行も割と呑気なものであった。
しかし、その時。
バチバチバチバチッ!!!!!………バチッ……バチッ…………。
み、みー?
最後に一際輝いたかと思うと、電光はそれから光らなくなった。
みぃい!?
勿論、シャンティッ君も驚いていた。
突然働かなくなった自身の能力。
確かに強大な力ではあったが、まだ幼体だった故に不完全、かつエネルギー充電も不充分であったのだ。
その事実が隙と焦りをシャンティッ君に与え、テオ・テスカトルに利を与えた。
『ゴォオオ!』
それまでとは打って変わって炎が支配し、やがて相手の勢いを殺し切ったテオ・テスカトルはそのままシャンティッ君を10m先の岩壁まで吹き飛ばした。
みぃいいっ!!!
ドシャアアア。
ドドドドドド…………
吹き飛びながら苦痛な声を上げるシャンティッ君。叩き付けられるとともにその声は轟かなくなった。
衝撃で周囲の岩が崩れ落ち、体躯に突き刺さる。
『ゴガァアアアアア!!!』
勝利の雄たけびを上げるテオ・テスカトル。
ぶつかり合った頭部にはそれなりに傷も残ってはいたが、それでも彼の勇猛な角は折れていなかった。
そして、ゆっくりとシャンティッ君に近づいていく。勝者の余裕がそこにはあった。
回復する余裕も与えず、翼をはためかせ、爆破性の粉塵を撒き散らし…………
カッ!!!
ドドドドドドド!!!!
止めの、一撃。
爆砕される岩々。そしてそれは、シャンティッ君の埋もれた場所も例外ではない。
爆炎に包まれるエリア7。
敗北。正しくその二文字が相応しかった。
「おい、アレ明らかに負けてるよな。早く助けに」
「おっかしーですねえ、そろそろGJ個体ぐらいなら勝てるはずなんですが」
「いやいや、事実負けたじゃねえか」
「あー……そうですね、この煙が晴れたら水冷弾改、通称水零弾を超連射してあの赤いのをどうにかしますよ」
何故飼い主の方がどことなくやる気がないのかがいまいち謎であった。
やがて晴れる煙。恐らくそこには瀕死のシャンティッ君が……
なかった。
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ……」
絶句する四人。
代わりに、ついさっきまでシャンティッ君の埋もれていた場所には蒼白の稲妻が走っている。
そこには、先ほどよりも遥かに強烈な電光を迸らせたシャンティッ君の姿があったからだ。
みー…………み……ミ……ミィ……
『ギィィイイイイーーー!!!!」
何時もの可愛らしい鳴き声が一転し、獣のそれを轟かせるシャンティッ君。
その姿は、最早ペットの範疇を超えている。彼が古龍であるということを認めざるを得ない瞬間であった。
「おぉー! やっぱり流石私のシャンティッ君! あんな赤いの目じゃありません!」
「いや、何か様子がおかしくないかアレ」
ユウラが指摘する。
確かに妙な雰囲気もかもし出されている。目は赤く爛々と輝き、周囲には紫色のオーラが纏われている。
まるで、先ほどのヴォルガノスのように。
……ヴォルガノスのように?
『デンデデデデデデデン! デデデデデデデン! デデデデデデデン!』
瞬間、BGM、響いて。シャルルのアイテムポーチからであった。
「これは……狂竜結晶のサインみたいですね」
「そうなのか、シャル子」
「えぇ、先ほどのヴォルガノスの時もこれが鳴ったんですよ。しかし、一体どこにそんなモンスターが……あっ」
「………………おい、まさか」
--ぱくぱく。 がりがり。 ごくん。
--みぃー?
「……朝のアレはこれの伏線かよ!?」
「ということは……シャンティッ君も、狂竜化?」
「かもしれませんねぇ……まぁ、無事っぽいのでとりあえずよしとしましょう」
「無事って、アレがか……?」
そこには、体を一層禍々しい紫色に輝かせたシャンティッ君の姿があった。
ふしゅー、ふしゅー、と紫色の瘴気が口から漏れ出る。
一方で、対象が生きていることを察知したテオ・テスカトルも黙ってはいない。
更に今度はより確実にその命を刈り取るべく、再び炎を口に満々とたたえ、
『グォオオオ!!』
その塊を吐き出した。
けれども、それはシャンティッ君に到達する前に全て纏われた雷で霧散していく。
炎ブレスが無駄だと判断したテオ・テスカトルは、次に突進を繰り出した。
勿論ただの突進ではなく、あの龍炎に加え爆破性の粉塵を纏っていた。
ガキィイイン!!!!
再びぶつかり合う両者。しかし、雷の勢いが衰えることは無い。
それどころか、
『ギィイイイイイイ!!!!!』
『グワォ!?』
強烈な電磁波を発生するシャンティッ君。25mはあるであろうテオ・テスカトルの巨体をそのエネルギーで容易く跳ね返してしまう。爆破性の粉塵も暴発し、テオ・テスカトルに更に大きなダメージを与えた。
その電圧は勇猛な一対の角を容易くへし折り、イニアチシブを完全にモノにした。
と思ったら、再び先ほどのように浮遊して突撃するシャンティッ君。
先ほどよりも遥かに大きな電気を湛えたその体躯はテオ・テスカトルの巨体を、炎エネルギーを発生させることすら許さずいともたやすく吹き飛ばし、岩盤に叩きつけた。
衝撃で殆ど動かなくなったテオ・テスカトルを一瞥すると、やがて地上に降り立ち、凄まじい勢いでテオ・テスカトルの場所へと突進する。
その姿は、最早何時もの可愛らしいそれではない。獣。そうとしか形容の出来ないモノであった。
「なんですかコレ……狂竜化パーセンテージが400%に到達しています」
「はぁ? パーセンテージつったら100%が最高じゃないのかよ普通」
「私もよくわかりませんが、まぁ所謂「極限状態」、とかいう奴なんでしょうかね」
人間サイドはただただ見ているしかなかった。
そうしている間にもテオ・テスカトルに到達するシャンティッ君。
テオ・テスカトルも辛うじてブレスを吐き出そうとするが、頭部を押さえつけられて完全に沈黙した。
そして…………牙を立てられる。
グシャァッ。
ガツガツガツガツ。
グシャァ。グシャァ。
ガツガツガツガツ。
ブシャアア……
ガツガツガツガツガツガツ。
グシャッ。グシャ。グシャア。
牙を立てるたびに迸る鮮血。
見る見る間に無惨な姿になるテオ・テスカトル。
「…………テオを、食ってる?」
「う……ぼ、ぼくちょっとあっち行ってくる」
余りの光景に耐えきれなくなるハルト。まぁ、無理もないことであるが。
『ギィイイイイイイイ!!!!!』
完全に喰らいつくすと、シャンティッ君は勝利の雄たけびを上げた。
5倍近くサイズ差があるというのに、異様すぎる光景である。
「うぅむ……コレは流石に止めないとまずいかもしれませんね。飼い主として」
「いや、かもしれないじゃなくてコレ明らかに不味いだろ。狂竜化、それも古龍がなんて」
「一先ずさっきあの女に貰った妙な石をぶつけてみますよ、どうもそれで沈静化するらしいので」
ガシャン、と老山龍砲【極】を取り出すシャルル。蒼い砲身には似合わない紅蓮色の結晶を装填すると、狙いをシャンティッ君に定める。
「ちょっと我慢してくださいね、何、痛みは一瞬です」
タァン! ギュィイイイイイイイイイイン!!!
銃声が鳴り響くとほぼ同時に、それが甲殻にあたったのであろう音が響く。
少々異質な音ではあったが、恐らく稲妻のエネルギーが大きすぎる故に着弾の衝撃が影響を受けているのだろう。
突如紫色に発光すると、輝いていた稲妻は全て霧散した。
同時に動きがフリーズするシャンティッ君。恐らく沈静化が始まっているのだろう。
「や、やったのか?」
「みたいですね……狂竜化パーセンテージが0に収束していっていますよ」
「そ、そうか……」
その証拠に、先ほどまで纏っていた稲妻はもう微塵も見られることがない。
こうして、長い火山での一日は幕を閉じたのである。
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ラティオ活火山 エリア???? 観測地点
「…………」
「…………」
「…………ふむ、なるほどですょ」
「シャンティッ君サン……いえ、天昇龍シャンティエンの早すぎる覚醒」
「機構が黙っちゃあいませんですょ」
長い展望鏡を下す少女。
「あんな石じゃ、流石に沈静化は無理ですょ。一先ず今回は私がケツ吹きを担当するですょ」
傍に置いてあった巨大な銃身を下方へ向けて下ろす。狙いは、シャンティエン。
銃身に紫色の稲光が集中する。
「充填率100%、発射!」
カッ、と乾いた銃声が鳴り響くとともに、紫色の弾丸が小さな体躯へ吸い込まれ、そして被弾する。
ギュィイイイイイイイイイイン!!!
稲妻を霧散され、完全に沈静化するシャンティエン。
少し後に先ほどまで道中を共にした人間たちがシャンティエンに近寄っていたが、最早そんなものは目に入らない。
成功だ。ただそれだけ。彼女は一つの確信を持ち、そしてほくそ笑んだ。
「ぐふふ……これでもう大儲けですょ。 ドンドルマで開発中の抗竜石、錬金に成功ですょ……!」
はい、如何でしたか?
シャンティッ君をそろそろ活躍させてあげたかったので無理やり活躍させました。
本来はもうちょっち短かったんですけど、長くなったので+α。
えっ? なんか見たことがあるシーンだなって?
いやはや、まさかそんな。
という訳で次回予告。
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「突如覚醒したシャンティッ君こと天昇龍シャンティエン」
「動き出す機構……、そしてシャル子たちの組織」
「未知なる結晶、「抗竜石」とはなんなんですょ!」
「じかいっ、だい8話「アルバ、来山」 さぁ~て、次回も」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
……………………
「あの、ユウラさん?」
「なんだよ」
「そこはもっとその、読者様に感謝というか、尽くす気持ちというか、サービスというか」
「いや知らねぇよ、というかさっきまでのお前らのよくわからんナレーションはなんだったんだよ」
「虚構で知られている予告編です」
「予告が虚構ってアウトだろ常識的に考えて」
「さーて次回もシャル子に……ご奉仕ご奉仕」
「ユー子、あんたのは要りません」
次回第8話、「※タイトルは未定です」
to be continued?