Monster Hunter Parody ー名状しがたき狩人のような者達ー 作:銀紬
今日は更新出来ないかなとは思ったのですが、思いのほか時間があったので更新します。
あーでも、日付変わっちゃってるかな…というか変わってますね。はい。
それでは、第五章「決戦、第五旧砂漠地区」どうぞ。
サフラ村。
デデ砂漠とセクメーア砂漠の丁度ど真ん中に位置していたこの村は、
村近辺の見張り台などは完全に破壊されており、入口付近の家屋もかなり崩壊していた。
ここまで来ると中心部まで侵攻されるのも最早時間の問題であった。
「そんちょーさんっ、つれてきたよっ」
金髪の目立つハルトがレンガ造りの家の戸を叩く。
すると、奥の方から物音が聞こえてくる。
「ほぅ……ヌシらがハルトの連れてきたハンターか……。
ふむ、面構えは悪くは無い」
じろじろと品定めをする老人の背丈はハルトよりやや高いくらいだろうか。
ユウラの顎に到達するかしないかくらいの平均的老人の背丈であった。
しかしその体は真っ黒に日焼けしており、年齢を感じさせない筋骨隆々な肉体が見え隠れしていた。
その声も老人にありがちなしわがれた声ではなく、若者の、それも所謂巨漢にありがちな野太い声。
その顎はもっさりとした髭で覆われており、背丈以上の風格が彼を纏っていた。
「初めまして。この依頼を受けさせて頂きました、ドンドルマのユウラと言う者です」
ぺこり、とユウラがお辞儀をすると、顔を上げるよう促す老人。
「そんなに畏まらなくてもよい。
ワシの名前はルーガじゃ。このサフラ村の村長なんかをやっておる。今日は宜しく頼むぞ」
そういって手を差し出す。握手をしようということなのだろう。それは信頼を意味していた。
二人はがっしりと互いの手を握った。
「ユウラさんの愛人のニャル「シャル子の愛人のクー」
「お前らは黙ってろ」
「ふぉふぉ……仲が良い奴らじゃの。わしの若いころを思い出すわい」
見た目と反して意外とフランキーな対応に緊張感は少しずつほぐれていった。
「それではユウラ殿。……早速本題に入るとしよう。
今回の依頼は主たちも既に知っておるじゃろうが、至って単純なものじゃ。
このサフラ村付近のデデ砂漠に出現したガレオスたちがここ最近サフラ村近辺を襲撃している。
それを食い止めるべくリーダー格のドスガレオスをしとめて欲しいのじゃ」
「えぇ、このハルト君から話は聞いていますよ。僕たちがこれより責任を持ってドスガレオスを狩猟し、ご覧に入れましょう」
「ふぉふぉ……頼もしい、頼もしい。主らのような者たちが来てくれて良かったわい。
おぉ……そうじゃ。主等を見込んで一つ頼みがある」
思い出したかのようにルーガがハルトの近くに歩み寄ると、後ろからハルトの肩を持った。
「そんちょーさん?」
「こやつを狩りへと連れて行ってはやれぬかの。
何、砂漠とそのモンスターに関してはどういう訳かこやつは熟知しておる故、足手まといになることは無かろう……のぅ」
「それは構いませんけども……ハルト、おまえは良いのか?」
「え、えっと、うんっ。ぼく、がんばるよっ」
「そうか……それなら僕たちには断る理由も無いので、お引き受けしましょう」
ユウラは自分でも驚くほど快く承諾していたが、後ろの二人が居れば一人や二人増えたところで全く問題ないだろうと考えた結果であった。
「ふむ……それでは後は任せたぞ、ハンター諸君」
「えぇ、それではまた後ほど」
「それじゃあぼくは、そうびもってくるねっ」
「おぅ、村の門で待ってるよ」
そうしたやり取りの後、ユウラたちは村長家を後にした。
ハルトは先の角を曲がり自分の家へと、ユウラ達は門の方へと歩みを始めた。
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「……私たちの会話、頭だけでしたねぇ」
「ついに……わたし達もなんとかさん扱い……?」
相変わらずよくわからない女二人の会話を聞き流していると、ユウラは異常な存在に気付く。
背中には防具と同じ色の黒い片手剣が差してある。盾部分はそのまま手に持っているようだ。
フルフェイスのその防具からは全く素顔が分からない。
東方風の黒い防具に身を纏った、自分よりも背の低い何者かの存在。
そして頭防具からは……特徴的な金髪がはみ出ていた。
「ゆうらくんっ。コレ……にあうかな……?」
「……お、おう……凄く似合うと思うぞ」
「そ、そうかな……えへへ」
かつての少女のような少年の余りの変貌に片言になるユウラ。
「おやおやハルト君、相変わらずフルクシャおにぎり……と思ったらようやく装備を変えたんですね」
「フルクシャおにぎりは……大抵地雷だから……よかった……」
「も、もうおにぎりじゃないもんっ」
「お前ら食いもんの話してんのか装備の話してんのかはっきりしろよ」
やはりハルトで間違いないようだ。
どうやら話を聞く限りかつては装備が違ったようだが、おにぎりの意味が良く分からないユウラであった。
専門用語なのだろうか?ただなんとなくランスにすればよさそうな響きはあった。
「それじゃっ、いこっ?」
ハルトが声を掛けると、
「そうだなー。ほらお前らもさっさと行くぞ」
「承知しました」
「大丈夫……問題ない……」
いちいち妙な言い回しをしてユウラについていくシャルルとユミが居た。
ーーーー
「……やっぱ砂漠って暑いな……」
「まぁ仕方ないかと……温暖期ですからねぇ」
余りの暑さにぼやくユウラ。
シャルルも流石に温暖期の昼の砂漠に立ちいることは余りないのか、少し元気がなかった。
「ユー子ちゃん、あついのにつよいんだねっ」
「私は……炎の
一方後方に付いていた二人はこの暑さをものともしていなかった。
ハルトについては慣れているのかもしれないが、ユミについてはいまいち慣れている理由が分からない。
そうしていく中でもじりじりと一行を焦がしていく太陽。
時は午後三時頃、彼らは広大なデデ砂漠の砂漠地帯を歩んでいた。
そしてそこにはハルトの言うとおり、確かにガレオスたちは生息していた。
巣から遠いのか数は少ないが、心なしか気が立っているようにも見える。
「まちがいないよらゆうらくん。多分、おやぶんがいる」
「わかるのか?」
「うん。おやぶんがいるとおやぶんがエサを独り占めしちゃうから、
ほかのこたいはおなかがすいて、げきおこぷんぷんばつなんだって。おばあちゃんがいってたよ」
どうやら気が立っているのは見間違いではなかったようだ。
一部聞き慣れない単語が耳に入ったが、理論としてはおおよそ理にかなっていた。
「となると、この辺一帯のガレオスは餌不足でサフラ村を襲っているのかもしれませんねぇ」
「かもしれない……」
つまり、どちらにしろドスガレオスを倒さないことにはサフラ村の危機は救えないという訳である。
「そういえば……さっきも言ったけどお前らは極力手を出さないでくれよ?
これは僕自身のスキルアップでもあるんだから」
「分かってますよ」
「ならいいんだけど……あ、なんだったらハルトに少しゲネポスの相手とかさせたらどうだ」
「いや、念のためドスガレオスの居るエリアには居ておきますよ。事後でも事足りるでしょう」
「あ、あぁ…まぁ、そういうなら」
「事故」で流れ弾をぶち当てたりしないだろうか、等心配ではあったがこの際は信じることにしておいた。
「それよりユウラさんユウラさん」
「なんだ?」
「手助けをするな、とは言いましたが、ドスガレオス戦の復習位は良いですよね?直接手を出す訳ではないので」
「あぁ。僕も今脳内反芻しようと思ってたところだからそれは構わないけど」
「それなら良かったです! それでは始めますね。
まずガレオス……もそうなんですが、ガレオスを始めとした魚竜種は今からおおよそ三百万年前、「ガルトト」という絶滅種からガノトトスとガレオス、及び別大陸のデルクスなどに分化したのですが、ガルトトの時点で既に視覚はかなり退化していたんですよ。
それが進化した訳ですから、ほぼ彼らに視力はないようなものです。
閃光玉レベルの光であれば反応するかな、程度ですね。まぁ一部の地域のガノトトスなどは進化の過程で若干の視力を獲得して閃光玉が有効な種も存在するみたいですが。
そうした例外を除けば基本的には「熱知覚」「聴知覚」といった視覚に頼らない知覚法で狩りを行っていたとされています。
よって熱を極端に知覚させるということで火や雷属性、あるいは熱知覚の反応を極端に鈍らせるということで氷属性が属性としては有効な事が多く、また聴知覚が優れているので大きな音にも」
……
「……と、いう訳でですね、ドスガレオスにはこの音爆弾が非常に有効なので、発見したら使ってみてくださいね」
「原理はともかく音爆弾、火属性、氷属性は有効なんだな。有難う」
「結局なかったことにされるんですね……」
音爆弾をユウラに手渡しながらがくっ、とうつむくシャルル。
この三点リーダの前にはドスガレオス及びガレオスの基本的生態、その生態故の弱点といった三行どころか三十行以上掛かる明らかに長い会話が入っていたのだが、
ユウラはここ数日間でシャルルの会話のおおよその要点のみを聞きとる技術を会得していた。
その為要らない情報は7割以上脳内でジャミングが掛かっていたのだった。
それも、もしユウラが今ここで文学系統の学術校に興味を持ったのであれば、その為の入試試験はきっと満点に近い点数が取れるに違いないほどの高レベルな技術であった。
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ハルトの案内で更に砂漠を奥へと進むと、やがて岩地が見えてくる。
どうやら現在は「エリア2」というエリアであったようだ。
先ほどまでのエリアよりガレオスの数も増えてきて、いつ狩猟対象に遭遇してもおかしくない状況であった。
「そろそろ出てきても……おっ」
ユウラが何かに感づく。
目線の先には、ガレオスのものとは一線を画す黒いヒレが悠然と砂原を泳いでいた。
どうやらまだ、こちらには気づいていないようだ。
すなわち、絶好のチャンス。
「先手必勝。……少し、行ってくる」
「……ご武運をお祈りしております」
シャルルに見送られるが否や、ユウラが黒いヒレの方に駆け出しながら球状の物体をドスガレオスに投げ込む。
キィーン!!
快音が鳴り響き、黒いヒレの持ち主は溜まらず砂中から飛び出す。
たちまち黒いヒレの持ち主の体躯が露わになったかと思うと、じたばたと彼は砂上で暴れる。
一見そのシルエットは魚類を想起させるものであったが、頭はエラのように左右に張っており非常に特徴的であった。
そしてその体格はガレオスのものより大きく、色も明らかに黒身を帯びている。
間違いない。コレは
狩猟対象は突然の爆音により、ユウラに弱点の腹をさらけ出していた。
当然、ユウラがその隙を見逃すはずもなく―――
「うぉおおおおお!」
ザシュッ!ブシャアァ……
ザシュゥゥ!ブシィ……
アサシンカリンガの鋭い刃がドスガレオスの腹部を襲う。
短い刀身故に致命傷は与えられないが、それでもその効果は出血量の多さに加え、一撃一撃ごとに小さな呻き声をあげる彼の反応からして抜群であることがわかる。
やがて踏ん張りをつけ起き上がるドスガレオス。口からは砂煙のようなものをあげていた。
訓練校時代の知識も総動員した上で早くも「怒り状態」に突入したことを悟ったユウラは、攻撃の手を休め先方の出方を待つ。
するとユウラ攻撃の手が休まったのを良いことにドスガレオスがすかさず反撃に出る。
『グォォ……!!』
頭をあげながら低いうなり声をあげ、その口から砂の塊をユウラへと飛ばしてくる。
しかしその挙動は怒っていれどお世辞にも早いとは言えず、ユウラは余裕を持って回避する事が出来た。
「おっと!危ない危ない……じゃあ、反撃と行こう」
砂塊が先ほどまでユウラの立っていた地点に着弾した時には、既にユウラはドスガレオスの懐の中。
ザシュゥウ!
『グゥゥ!?』
そして再びガラ空きの腹に斬り上げを加えると、ドスガレオスはその体をノックバックさせ更に軽い隙を晒す。
「隙ア……」
『グァォ!ゴォォ!』
「……ッ!?」
隙を晒したドスガレオスの腹に更に斬撃を加えようとすると、反撃と言わんばかりにドスガレオスがその尻尾を回転させる。その勢いはやや突き出た腹の部分にも例外なく乗り、腹の部分がユウラの上半身を襲う。
思わぬ反撃とその衝撃にユウラは不意を突かれ、、その場から五メートルほど吹き飛ばされた。
地面にたたきつけられると共に肺の中の空気が全て吐きだされる。
「ゴホッ……今の範囲で当たったか……っ」
乱れた呼吸を整え、立ちあがるユウラ。
その時ドスガレオスは既に懐に居ない対象を排除すべくもう一回転を掛けていたところであった。
「……
尻尾回転を終えユウラの方を振り向こうとするドスガレオスの首に、アサシンカリンガの刃がユウラのイラ立ちを餌に食い込んでいく。
『グァァ!?』
刹那、首から大量の血しぶきと、その喉から悲鳴を上げるドスガレオス。その様子を見るにどうやら相当なダメージが入ったようだった。
「っと……冷静になれ僕。一度離れよう」
ユウラがドスガレオスから距離を取る。
ドスガレオスは酷い状態であった。
首や腹からは大量の血が流れ出ており、雄々しく靡いていたそのヒレも弱弱しくたたまれていた。
『キュウゥ……キュウゥ……』
「瀕死、か……?」
敵わない、と判断したのかドスガレオスがユウラに背を向け、脚を引きずりながら逃亡を図ろうとする。
その鳴き声も先ほどの雄々しさを感じさせるものではなく、弱弱しい悲鳴のような声であった。
放っておけば再び砂海に姿を消し、エリアのどこかにあるであろう巣で体力回復を図られるのはもはや自明であった。
「……させない!」
脚を引きずりゆっくりと移動していくドスガレオスの腹に背中に背負う剥ぎ取りナイフを投げつける。
すると再び出血がおこり、ドスガレオスも小さな悲鳴を上げて怯む。
その怯んだ一瞬をユウラは見逃さなかった。
「……
アサシンカリンガの刃が砂漠の陽光に照らされ、
同時に、その体からは滝のような出血を起こしていた。先ほどの斬撃による傷も再び開いていたようだ。
その一撃は、彼を事切れさせるのに充分過ぎる威力を秘めていたのだった。
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ぱちぱちぱち。
ぱちぱちぱち。
「おめでとうございますっ!」
「おめでとう……」
「おめでとうっ!」
目標の討伐を終えたユウラが2番の日陰に待機させていたシャルルたちの元へ戻ると、彼女たちの拍手がユウラを歓迎した。
「あぁ……ありがとう。でも不思議だな、思いのほか怖いとかそういうのも無く狩れたよ」
「そりゃあ私が何も考えずにクシャルダオラを討伐したりしていたと思いましたか?
あれは予め強大な敵にユウラさんを対峙させることで、後続のモンスターへの恐怖心を和らげるというショック療法効果が」
「もういい、これ以上聞いてたらHun値とやらが下がりそうな気しかしない」
実際に古龍と対峙させるだけでドスガレオスを狩れるならば既にこの世には沢山の凄腕ハンターが居るだろうに。
ユウラとしてはそこのところも突っ込みたかったが、面倒になりそうなので止めておいた。
「でも少年……遠目で見ていたけど、凄く鮮やかな戦いだった……一回被弾があったのは惜しかったけど……少年はとても優秀。ハルト君も、そう思うよね……?」
「うん、すっごいじょうずだったよっ」
「そうですねぇ。まぁ私の療法が功を奏したと」
「療法は多分効いてないぞ。
……でも、そんなに良い立ち周りだったかな?自分じゃよく分からないけど」
三人の言葉に少し照れ笑いを浮かべるユウラ。
特にユミからの言葉は特別なものがあった。
いつもは脳内が性的な意味でフォーマルハウトな彼女だが、その実力はシャルルに並ぶレベルのものであることを忘れてはならない。
その彼女から「優秀」と評価されたのだから、いつもは彼女を無下に扱うユウラであっても内心そこそこ嬉しかった。
「さて、こんなクソ暑いとこになんてずっと居たくないし、早くおさらばしよう」
ユウラが提案する。
「えー、せっかくですから少しデデを回りませんか?デデ・デ・ツアー!」
「少年は少し環境に耐性を付けるべき……」
「えーと……よくわからないけど、もうすこしあんないすればいいのかな?」
しかしシャルルはそれに反論した。それに乗じてユー子、更にはハルトまでノッてきた。
まぁハルトについては悪気は無いのかもしれないが。
「そうそう、避暑でしたらこの近くに地底湖があるんですがとっても涼しくてですね」
「どうせ洞窟でホットドリンク必須とか言うんだろ」
ユウラの反論を聞くや否やぴゅー、ぴゅー、とそっぽをむいて口笛を吹くシャルル。
いつの間にこいつは口笛を覚えたのだろうか。
「でも少年が嫌なら……無理強いはしない」
「うん、嫌だから是非帰宅の方向で頼むよ」
「じゃあ、むらにまたあんないするねっ」
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時間は午後六時ごろ。
剥ぎ取った幾つかの素材と共に、ドスガレオス狩猟の証拠として砂竜の桃ヒレを一つ持ち帰った三人は順調にサフラ村への帰路を歩んでいた。
だが、残り一キロといったところだろうか。ユウラが異変に気付いた。
「……なんか、煙たくないか?どっかで火事でも起きたのか? でも、この辺りに火事が起きそうなところなんて……」
……なんだか嫌な予感がする。
「くんくん……シャル子……良い匂い……はぁはぁ」
「あんたはいい加減に離れやがれってんですよ! しかし、確かに少し煙のような、きな臭いような匂いがしますねぇ……。」
「……! 村の方から煙が……!」
「か、かじ!?」
「とにかく急げ!」」
その時は煙たさにしか気づかなかったが、サフラ村に近づくにつれその臭いは強いものになっていく。
やがて村に着くと、強烈な咆哮が奥から聞こえてきた。
村人の姿は見えない。既に逃げおおせたのか、はたまた目の前の強大なモンスターを前に逃げ出すことすらままならないのか。
だが、家の中からは時折泣き声のようなものも聞こえる。恐らく後者であることは間違いなかった。
『グワォオオオオ!!!』
「あの声……モンスターか!」
「みたいですね……それも厄介なことに、どうやらただのモンスターではないみたいですよ……!」
「アレが……火事の原因かもしれない……」
「い、いってみようよっ!」
村に入り、再び駆けだす四人。村は余り大きくないのかそう経たずに「彼女」の姿を拝む事が出来た。
「コ、コイツはっ!」
ユウラが見たそのモンスター。
全身は深緑の鱗に包まれ、翼や尻尾からは特徴的な棘を生やしていた。
その体躯はイャンクックと基本的な構造は変わらないものの、イャンクックのそれより明らかに攻撃性に富んだものであった。
『雌火竜、リオレイア……!』
「りおれいあ……!」
雌火竜、リオレイアの姿がそこにあった。
「ど、どうする!?」
「駄目です、出来ません」
「……え?」
いつものシャルルらしくない返事。こいつであれば二つ返事で斬り刻みそうなものだったのだが、相応の理由があったのだろうか。
「本当なら手を出したいところですが、我々の機関では依頼と一切関係ないモンスターの狩猟は禁止されているんですよ……!」
「じゃあ此間のクシャルダオラはなんだったんだよ!」
「あ、アレはユウラさん名義なのでセーフ、だったんです! ハンターランクが上がったのもその為ですよ!」
「なんでこんな土壇場でご都合主義使ってんだよ! 使うところ間違ってるだろ!」
「二人とも……まずは落ちついて……?」
『ユー子は黙ってて!』
「しゅん……でも……シャル子に放置プレイされるなら……んんっ……」
「え、えと、あわ、あわわ……」
二人が言い争い、一人は発情し、一人はどうしようもないという様子だった。
しかしそうしている間にもリオレイアはその力で村を蹂躙せんとしていた。
『ギャォオオ!』
リオレイアが火球を吐きつける。こちらにはまだ気付いていないのか、ユウラ達とは真逆の方向に吐きつける。
すると、ユウラの目の前にあったわらぶきの家が瞬く間に燃え上がる。さながらそれは地獄絵図、といった様子だ。
そしてリオレイアは再び咆哮をあげると、再びレンガ造りの家にブレスを行う。
一撃で破壊こそされなかったものの、凄まじいダメージを受けていたのは目に見えていた。
「! ぼくのおうち……と、とーさまっ! かーさまっ!」
「なっ……! あれ、お前んちなのか!?」
よく見ると、確かに「ストモ」と書かれ、以下が焼け落ちた表札が残っていた。
どうやらハルトの家なのは紛れもない事実のようだった。
しかしそんな事実など知ったこっちゃないとばかりにリオレイアが再び家に向き直る。
そしてじっと睨みつけ、エネルギーを口内に溜めていく。恐らく一撃での破壊を試みようとしているのだろう。
恐らくは、彼の家族も家の中。このままいけば……命の保証はない。
「あ、あのままじゃハルトの家族が……!」
「止むを得ません……こうなったらユー子、違反覚悟で行きま」
しょう、とシャルルが言い掛けた時である。
『……手を汚す必要は、無い』
どこかから声が聞こえた。
『私が……私が奴を止めて見せる!』
『ゴガァァァァ!!』
その声は後ろから聞こえたと思うと、凄まじい勢いでリオレイアの前に「何か」が立ちふさがる。
それと同時にリオレイアが炎を吐く。
ドゴォオオオオオオオ!!!
巨大な爆発音。
「うわぁぁあ!?」
「ち……!」
「ちょっと、痛い……!」
ユウラ達三人が爆風に飛ばされかけるが、辛うじて踏みとどまる。
凄まじい砂煙が周囲を覆った。
「おい、シャルルにユー子にハルト、大丈夫か!」
砂煙の中、ユウラが呼びかける。
「わ、私は大丈夫です!」
「わたしも……問題無い」
どうやら二人は無事であったらしい。
……そう、二人は。
「……ハルトはどうした?」
金髪の少年ハルトだけがその場に居なかった。
「分かりません……この砂煙では……!」
「晴れてみないと……わからない」
「くっそ……どうしたってんだよ……?」
しかし、三人の不安は砂煙が消えるとともに抹消されることになる。
『ゴガァァ!?』
砂煙が晴れると、リオレイアは戸惑いを見せていた。
確かに自分は、目の前の建物を破壊した筈。
ではなぜこの建物は破壊されていないのか。
『……甘いな、雌火竜』
それは、彼女の目の前に立っている「金髪の少年」の所業であった。
「……ハルト……なのか?」
ユウラも戸惑いを見せる。
この状況下で金髪の人間は恐らくハルトのみ。そう考えると彼はハルトであると判断するのが妥当だった。
しかし、その時の彼は違った。
まずその声色は普段の可愛らしい声ではなく若い青年風の声に変化していた。その声色はさながら王のような風格すら感じた。金髪も逆立ち、ゆらりゆらりと揺れている。
かつて真っ黒だった装備は黄金に輝き、さながら「黄金の衣」を纏っている状態。
背負っていた双剣からも赤いオーラが出現し、明らかに現実離れした姿になっていた。
強いて彼を思わせるのはその低い背丈くらいであった。
『ゴォオオオ!!』
やがて自分の活動が邪魔されたことを悟り、邪魔者を排除せんと咆哮をあげるリオレイア。
『我が故郷を蹂躙せんとし雌火竜よ……これより王の裁きを下す……!』
しかしそのような咆哮など気にも留めず、むしろ咆哮を隙であると言わんばかりにその頭に斬撃を加える。
『ハァァァァアアアア!
ザンッ!ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザンッ!!
彼が声高に言うと同時に、わずか数瞬。
その隙に彼はリオレイアの頭、甲殻、脚、翼、シッポに無数の斬撃を加えていた。
『グォオオオオ!?』
『汝に、幸あれ……!』
ぶちん。
ブシャアアアアア!
一瞬遅れて、リオレイアが悲鳴をあげる。
尻尾は切断され、翼の棘は折られ、頭の甲殻は砕かれる。
大量の血しぶきを上げ、瞬く間にリオレイアは地に伏した。
『……他愛もない……。 ……きゅぅ……」
やがてリオレイアを討伐すると、ハルトのようなものは全身からオーラのようなものが抜け落ち、何時もの姿に戻っていく。
声色もだんだん戻り、最終的にはいつもの声で弱弱しく一声を絞り出すと、その場に倒れ込んだ。
防具の色も黒に戻り、髪の毛も重力に従った状態に戻る。
『』
三人とも唖然、とした状態であった。
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「ふぉふぉ……よくやってくれたの。まさかドスガレオスだけでなくリオレイアまでし止めてくれるとは」
ルーガが帰宅の支度を終えたユウラたちに深々とお辞儀をする。
先ほどまで焼き落ちていた村は、謎の技術で数時間もすれば復活していた。
どんな構造なのだろうか。
「あ、リオレイアは僕たちじゃなくて……」
「良い良い。誰がやったのかは知っておるよ。のぅ、ハルトよ」
ルーガの背後に隠れていた影がビクッ、と震えると、再び動きが無くなる。
「えっと……村長様はハルト君の「アレ」、ご存じだったんですか?」
シャルルが問う。
「うむ……実はここ最近「トルネードトマホーク」という武器でこやつに特訓をさせておおったら途中でドスゲネポスが来ての。
かなり苦戦していたのじゃが、後一歩で喰われ掛けた時にあの状態になった、という訳じゃ。そうでなきゃ足手まといにならぬとは言わぬよ」
「いや知ってたなら止めて下さいよ」
ユウラが文句を垂れる。まぁ当然のことではあるか。
「まぁまぁ、良いではないか。あやつの実力が本物であると証明されたのじゃから。
そこで、またまた折り入って頼みなのじゃが……」
「えーと、今度は一体…?」
「ハルトを良ければ、主等と一緒に連れて行っては貰えぬかの。ホレハルト、お前からも頼まぬか」
「は、はひっ! え、えええと、 ふっ、不束者ですが宜しきゅおにぇがっ」
あんまり突然ふられるものだから、噛んでいた。
「……えーと、つまり?」
「つまりも何も、そのままの意味じゃよ」
成る程。つまりこれはまたユウラのパーティーに一人厄介者が入ってくることになる。
いや、ハルト自身は良い子なのだが。
「私は賛成ですねぇ。大陸保安に欲しい位の逸材ですよ」
「いっそ……少年とハルト君も大陸保安に」
「入らねーよ。 でもまぁ……分かりましたよ、村長。
僕たちで良ければ、ハルト君をお預かりします」
「ふぉふぉ……交渉設立、じゃな」
再び先ほど同様に握手を交わす二人。
自分ではハルトをどう思っていても、どうにもこの村長の頼みは断れない気がしたユウラであった。
「それではわしは帰りの船を手配してくるから、その間に挨拶でもしておきなさい」
「は、はいっ。えーと……不束者ですが、宜しくお願いしますっ!」
今度は噛まずにキチンと言えていた。先ほどの出来事も原因の1つであるが、そもそももうユウラには断る気力すらなかった。
「あぁ、宜しく」
ということで、第四章終了です。いやー長かった。
ちょっと今回はハルト君を元ネタっぽく変身させてみました。
無論変身の機会はこれ以降は余りない気もしなくは無いんですけどね。
さて……次はどんな登場人物を登場させようかな。
それでは次回予告……といってもパーティーが曲がりなりにも揃ったので、次回は人物紹介の回にしたいと思います。
それでは。
end