「……ライザー、ちょっと聞きたいんだけど、貴方の家のメイド、これは何なの?」
「ワイの趣味やで」
フリフリのフリルと短めのスカートに長いソックスとガーターベルト。
髪型も統一感がなく、ポニーテールからおさげ眼鏡まで、幅広いメイドが揃っている。
「メイー」
「やーん❤︎ライザー様ったら❤︎」
メイと呼ばれるメイドの胸に顔を埋めるライザー。
情けない姿だ。
「気持ち悪い……。私にもそういうことをやろうとしてるのね!」
リアスが言った。
「いや……、なんかお前、変な病気とか持ってそうやし……。梅毒とか」
「はああああ?!!!!持ってないわよ!!!誰が梅毒ですって!!!!」
「あとなんかケバいしくさそう(小並感)」
「臭くないわよ!!!!ちゃんとお風呂入ってるわよ!!!!」
キレまくるリアス。
怖、近寄らんとこ……、と言い残して去ったライザー。
「ふう……、相変わらず最低ね、あいつ」
「あ、あの、リアス様?」
イライラを隠しきれずにいるリアスに、メイドがおずおずと話しかけてきた。
「ドレスは、ウエディングドレスと、ライザー様が用意したイメクラドレス、どちらにしますか?」
「………………ちょっと待って、ライザーを殺してくるわ」
「わー!お、お待ちくださいぃー!!!」
ところ変わって、ライザーの部屋。
ライザーは、結婚式だからと言って、特別な衣装を着ようとは思わなかった。
クソ高い金を払って、人生で一度しか着ない高級スーツを買うくらいなら、その金は馬券かパチンコ代に変えた方が有意義だと、ライザーは本気で思っている。
いつもの白いズボンに、白色で裏地が紫のコートを羽織り、上半身は全裸という、ワイルドスタイルである。
そのワイルドスタイルであっても、鋭く渋い相貌と、巌のような筋肉、それに刻まれた刺青から、様になっているので、特に格好について他人から何かを言われることはなかった。
「ライザー様ぁ、本当にスーツは着ないんですか?」
「ええやん、イメクラ嬢相手に着込んでも意味ないやろ?」
「駄目ですよライザー様!相手はグレモリー家ですよ!」
ミニスカメイド達にまとわりつかれるライザー。
ライザーは基本的に、お高くとまった貴族の悪魔には嫌われるが、その気安さと人当たりの良さから、一般的なメイドや領民からの支持は絶大なものであった。
メイドからすれば、粗相をしても笑って許し、下々の者である自分達に挨拶や激励を忘れず、たまにチップをくれて、その上見てくれも非常に良いライザーとその眷属達は、主人としてありがたい存在だった。
最低限のことは自分でやるが、基本的には頼ってくるので、お世話のしがいもあるし、何より、自分達一人一人の名前を覚えていてくれている。
ユーベルーナ達眷属も、悩みを聞いてくれたり、お喋りしてくれたりと、とても優しい。
メイド達は、ライザー達に一生をかけて奉仕したいと思っている。
「ええんやで!お前らもあんなイメクラ嬢褒めんでええわ!」
「まあ、確かに、自分のこと美人だと思ってそうなところが鼻につきますが」
「なんかビッチっぽいのは認めますけど」
「チョロそうですよね」
などと、リアスの悪口で盛り上がる。
そして、時間になると。
「ンアーッ!そろそろ行くかあ!行きますよー行く行く」
背伸びをして、ライザーが披露宴の会場へ向かった……。
因みに、そんなことをしている間、一誠君は披露宴への討ち入りの準備を始めていた。
炎と共に、会場に転移したライザー。
懐から、ユーベルーナが書いてくれた、挨拶のカンペを読む。
「はい、えーと、ちょっと待って、難しくて覚えてないわ」
貴族達は、あからさまにカンペを取り出したライザーの無様さに眉をひそめた。
「えー、冥界に名だたる貴族の皆様、ごさ、ご参集?下さりー、フェニックス家を代表して、おれい、御礼?申し上げます、あー、本日皆さんがおいでなすったのは、このわたくしがクソイメクラ嬢、いや、リアス?だっけ?と結婚するらしいんで、えー、その素晴らしい瞬間を共有したいと……、思ったからです」
何故かこの有様のスピーチをやりきっただけでドヤ顔を晒すライザー。
そして、何故か感動しているライザーの眷属。
「紹介いたします!こちらが、きさき?のリアス?ぐれもり?です!」
転移してくるリアス。
「グダグダじゃないの!!!」
「え?いや、パーフェクトやろ」
「ライザー様にしてはとても頑張りましたよー(小声)」
「ほら、ユーベルーナも言ってる」
「貴女!ライザーを甘やかさないの!」
そんなことをしていると……。
「部長!!!」
会場のドアがぶち破られる。
「イッセー!」
「部長の処女は俺が守る」
「いやこいつ処女じゃねーって!ヤリマンガバマンやろどうせ!」
「だっ、誰がガバガバよ!殺すわよライザー!!!!」
「頭も穴もゆるゆるやろどうせ。ガバ穴女や。乳首真っ黒やで」
「殺すぅぅぅ!!!絶対に殺すぅぅぅ!!!」
混沌としてきた会場。
さあ盛り上がってまいりました。
そこで。
「これは私が用意した余興です」
「は?」
「お兄様!」
サーゼクス・ルシファーのエントリーである。
「誰かは知らんけど、結婚式に花嫁泥棒を招き入れるとかアホちゃうか?おーい、衛兵さーん、このヘンテコ肩パットマン捕まえてー」
もちろん、ライザーは魔王の顔など知らないので、こう返した。
「ラ、ラ、ライザー様ぁ!その方は魔王様ですよおおおお!!!」
悲鳴をあげるユーベルーナ。
「バッカ、ユーベルーナ!嘘言うなや!常識的に考えてみろや!てめーの妹の晴れ舞台をぶち壊しにする兄貴がいるか?大体にして、本物の魔王ならそんなアホなことせんやろうし、仕事もあって来れねえだろうが!」
ボロクソに言うライザー。
「いや……、私は本物の魔王なんだが」
「はぁん?アホ言うなや。魔王っつったらバーン様みたいな白髪でヒゲのイケオジって決まっとるんや。お前みたいなセンスゼロの肩パットの若造が魔王な訳ないやろ?」
ユーベルーナの顔は真っ青だ。
「ラ、ライザー様、昔、魔王様は代替わりして、今の魔王様は大変お若いんです。こちらの魔王様は本物ですよ」
「マ?」
「マジです」
「ほーん。で、何しに来たんや?」
「ライザー様敬語!!!」
「は、ははは、中々ユニークな子だね」
顔を引きつらせてそう言ったサーゼクス。
「で?要点だけ言ってくれへんか?ワイはもう帰りたい」
「ドラゴン対フェニックスの戦いを余興として……」
「ん、まあ、ええんちゃう?でもワイにメリットとかある?」
「ではこうしよう。勝った方の願いをできる範囲で叶える、と言うのはどうかな?」
「ええやん!」
そんなこんなで、ライザー対一誠の戦いが始まる。
「10秒でケリをつける!」
威勢のいい一誠。
「なんか……、そう言うこと言うと大抵負けるからやめた方がええんちゃうか?」
余裕のライザー。
「これがバランスブレイカー、赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)だ!!!」
「ほーん、で?」
「うおおおお!」
ボコボコに殴られるライザー。
「ん?」
若干チクっとしたことに気がついた。
「十字架だ!どうだ、効いたか!」
「あー、十字架ね。なんかチクっとするわ」
「なら聖水で……」
「ハッ……、ハッ……、アッー!アーツィ!アーツ!アーツェ!アツゥイ! ヒュゥー、アッツ!アツウィー、アツーウィ!アツー、アツーェ! すいませへぇぇ~ん!アッアッアッ、アツェ!アツェ!アッー、熱いっす!熱いっす!ーアッ! 熱いっす!熱いっす!アツェ!アツイ!アツイ!アツイ!アツイ!アツイ!アー……、アツイ!」
焼かれるライザー。
「お前何するんや!」
「このまま、吹き飛べえええ!!!」
殴り飛ばされるライザー。
「やった、のか?」
しかし、ライザーは……。
「お前、お前な、さっきの聖水、蝋燭くらい熱かったゾ?ワイは暑いの嫌いなんやぞ」
「そ、んな!」
無傷で戻ってきた。
「まあ、取り敢えず死んどけや」
魔力が高まる。
「グスタフバスター!!!」
赤黒い魔力を放射しながら、魔力を纏った拳で突進しながら殴る。
「があっ」
一誠のバランスブレイカーはバラバラに破壊され、倒れた。
「よっしゃ!ワイの勝ち!なんで負けたのか、明日までに考えておいてください!ほな、いただきます!」
そう言ってどこからか出したコーラを一気飲みしたライザーは、告げた。
「何でも願いが叶う、つまり神龍。ギャルのパンティと言いたいところだが、ワイは結婚をやめるぞー!!!」
『婚約破棄が願いだと?』
「せやせや、結婚をなかったことにしろや」
『分かった、良いだろう』
「ま、待てよ、まだ決着は……」
立ち上がる一誠。
「いや、無理ゾ。お前じゃどんなに頑張ってもワイには勝てんわ。ほら、イメクラ女を返却してやるから帰って、どうぞ」
「舐めやがって、クソ、クソぉ!!!」
「所詮ドラゴンは、前の時代の敗北者じゃけえ!!!ファー!!!草ァ!!!」
煽るだけ煽って満足したライザーは、普通に帰宅した。
ああんもうやだ……、マジで書き溜めがない……。