ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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湿度。


86話 和風喫茶猫妖精

またもや、休暇。

 

新出島小ダンジョンの調査もそろそろ大詰めだが、二日間の休暇だ。

 

俺は、何となくで入店した、「和風喫茶猫妖精」とかいう店で茶をしばいていたのだが……。

 

そこに、笹耳人(エルファン)瑛伝蔵人と妖眼人(フェアリス)礼譲莉愛無が現れた……。

 

金髪碧眼、白肌の美青年という、エルフそのものの外見を持つ瑛伝だが、笹耳人(エルファン)らしく植物が身体に纏わりついている。

 

そう言えば、超越種(エクストリア)にも個人差というものがあるらしいな。

 

例えば獣牙人(ビースター)は、その人間にとって相応しい獣の特徴を得るらしい。

 

鳥の獣牙人(ビースター)は羽を持ち飛行能力を得るし、ネコ科の獣牙人(ビースター)は鋭い爪と牙を持つとか。

 

稀に、二種類以上の獣の特徴を得るキメラもいるらしいが、それは本当に貴重で、草薙のような複数種類の特徴をいいとこ取りしたような存在はオンリーワンだそうだ。

 

そしてこの瑛伝も、複数種類の植物が生えている。通常なら一種類の植物しか纏えないのにも関わらず、だ。

 

で、瑛伝の義妹の、妖眼人(フェアリス)礼譲莉愛無。

 

魔力でできた幽幻物質(アストラル)の翅を持つ、七色の瞳が特徴の少女だ。

 

こいつも同じく特別で、本来一色であるはずの瞳の色が七色ある。

 

しかし本人は、吃り持ちで、無口な、黒髪を長く伸ばした中学生だな。

 

美人なのだが、長く伸びた髪で顔を隠し、自信なさげな態度をしているので、素材を活かしきれていない。

 

今も、瑛伝の背後に隠れて縮こまっている。

 

「こんにちは、藤吾さん」

 

「おう」

 

瑛伝に話しかけられた。

 

「この店はいかがですか?」

 

「良いんじゃないか」

 

「だ、そうですよ、莉愛無。良かったですね」

 

「う、うん!嬉し、い!」

 

んー?

 

「ああ、すみません。実はこの店は、莉愛無の店なのです」

 

ほう。

 

「そうなのか?」

 

俺は礼譲の方を見る。

 

「ひうっ」

 

あ、隠れた。

 

「すみません、莉愛無は他人がどうも苦手で……」

 

頭を下げる瑛伝だが……。

 

「そうか」

 

別にどうでも良い。

 

怖がられるのは慣れてるからな。

 

「当店は、ダンジョンのダンシングキャットや猫又などを配置した猫カフェでありながらも、お茶にこだわった和風喫茶の一面もあるのですが……」

 

「猫?」

 

怯えて出てこないが……?

 

「と、とと、藤吾、さんは。猫に、嫌われて……、るよ」

 

と、瑛伝の背後に隠れている礼譲が言ってくる。

 

「そうなのか?」

 

「ね、猫、猫ちゃんはね、自分のこと、を、大切に、してく、れる、人がね、好きなの」

 

ふむ。

 

「逆に、逆、に、藤吾さん……、は、犬、わんちゃんに、好かれる……、よ」

 

「へえ、そうなのか?」

 

「ん、うん、わんちゃんは、ね……、強い、強い、リーダーがね、欲しがるの。猫ちゃんとは、逆なの」

 

ふーん、そうなのか。

 

別にどうでも良いんだが……。

 

そういや、この礼譲はテイマーとか言って、モンスターの手下を多数引き連れてるとか?だから動物に詳しいのか。

 

普段は位相空間にでも待機させてるんだろうが……、それでも、肩に梟、頭の上にトカゲ、胸ポケットにハムスター、足元に猫、腕に蛇が巻き付いている。

 

あれは見た目は小さいが、うちの早太郎のように変幻のスキルを持っているんだろうな。

 

恐らくは、察するところ、真の姿になれば実力も大きさも早太郎並みだろう。一体一体が、だ。

 

流石は一級冒険者と言うべきか……。

 

俺がそうやってギラついた視線を向けているのを察した礼譲は、更に小さく縮こまった。

 

「ぴいっ!や、やめて、ください……!怖い目、やめて、やめて……」

 

「ん……、ああ、悪い悪い。どうも、殺し合いしたらどうなるかとか、そう言うことばかり考えちまう」

 

「ぴいいっ!」

 

ちょっと「戦ったらどうなるかな?」くらいのことを考えただけで、危機を察知してビビられると、それはそれで困るんだがなあ。

 

殺気も飛ばしてないんだが……。

 

「因みに、店の方の詳しい感想ですが……」

 

瑛伝が、迷宮端末を取り出して言った。

 

メモをとっているようだ。

 

「茶が美味いな、ダンジョン産の抹茶を……、ええと、何と言ったか……」

 

「ラテ、ですか?」

 

「おお、そうだ、そのラテにして出しているようだが、これは中々イケるな。和三盆とダンジョン産の牛乳で淹れた抹茶だろ?」

 

「はい、その通りです」

 

「これは食事には合わないだろうが、こうして菓子を食う分にはいいんじゃないか?俺はよく分からんが、若い女が好きそうな味だ」

 

「なるほど」

 

「だがしかし、生の和菓子なんてどうやってチェーン店に置いてるんだ?」

 

俺は、テーブルの上にある練り切りを指差した。

 

練り切りとは、白餡に様々なつなぎを入れて練り、美しい形に成形したもの……。

 

本来なら、季節のもののモニュメント的な、そういうものを模るものだが……、これは、この店のオリジナルデザインであろう、猫の姿を模した可愛らしいものだ。

 

味からして上物で、冷凍したもののように風味が落ちたりなどはしていない。

 

生菓子は足が速いのに、どうなっているんだろうか……?

 

「一応、企業秘密なのですが……」

 

と、前置きして、瑛伝はこう答えた。

 

「時間停止型のマジックアイテムです。和菓子は、本州京都の和菓子職人が手作りで一つ一つ作ったものを、時間停止型アイテムボックスに梱包して海路で輸送。食べる瞬間に初めて出すので、新鮮そのものなのですよ」

 

はあ……、なるほどなあ。

 

「他にも、生どら焼きや水菓子(果物)なども多くあります。メニューはあえて和菓子に統一し、和のテイストを大切にしているというのも特徴の一つですね」

 

なんか色々あるらしい。

 

「何かご意見などはありますか?」

 

ふむ、意見か……。

 

「そうだな、接客の店員をキャットピープルにしてみるのはどうだ?毛の混入などが気になるのは分かるが、調理スタッフはエルフで、接客のスタッフはキャットピープルでと分ければ大丈夫なんじゃないか?」

 

「なるほど……!素晴らしい案ですね!莉愛無、どう思う?」

 

「う、う、うん!良いと、思う……、よ!キャットピープルは、あまり、使われない、から……、盲点、だった、ね!」

 

採用されたようだ。

 

「では、またのお越しをお待ちしております。是非、ご友人にも紹介なさってください」

 

「おう」

 

そんな感じで、休暇は過ぎていき……。

 




スパダリもの、ヒロインが出せないぞ。

ヒロイン出るまで巻きで行くか……。

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