2025年、4月1日。
約束の日が来た……。
初日は、大した話はない。
いかに、世界大戦を起こしたという、ある種の無能の烙印がついていても、彼らは政治家。
段取りをつけたり、事務手続きをしたり……。
お勉強が得意な連中らしく、お仕事も得意というだけの話だ。
能力と思想は別物であるという良い例であった。
そしてそんな風に、段取り、計画通りに、世界各国がそれぞれ自国で用意した冒険者候補を日本へと送り込んできた……。
冒険者候補達は皆、まるで英雄か何かのように胸を張って入国したし、海外のマスコミ達も持て囃したし、各国の上層部は「やっと日本がフロンティアを明け渡した!」だの、「これは我々の外交的勝利である!」だのと、大騒ぎしていた……。
総理大臣たる時城政史郎も、外国人を迎え入れるために新出島に挨拶に来ており、それもまた海外を増長させる一要素となっているようだ。
時城総理としては、本当にそうであるかは別として、「海外から攻められた国の総理大臣なのに、海外に丁寧に接する人間なんだぞ」と、アピールしている訳で。
要するに、国内外に向けた人気取りパフォーマンスである。
法案により、日本では偏向報道を規制された。かと言って与党に忖度しろというのもそれもまた偏向報道に当たる。故に、良いことも悪いことも全てが報道される今、細やかな行動に気をつけねばならないのだ。
それにはもちろん、「こちらは元敵国にも礼を尽くすが、お前らはどうだ?」という嫌味も含んでいるのだろうが……。
その点を言えば、総理大臣が挨拶しにきたことに対して、「日本は反省した!」だのと鬼の首を取ったかのように騒ぐ海外は、皮肉が通じていないのだろうということが窺えてしまう……。
さて、早速始まった、海外のダンジョン攻略について見ていこう。
まず、例によって、各国は銃器の類を山ほど持ち込んでいた。
時城総理が自ら、「ダンジョンおいては銃火器は有効打たり得ない」としっかり説明したにもかかわらず、だ。
いわゆる、「銃信仰」と言うものである。
映画などを見ればわかるが、先進的な文明を持った異星人でも、「銃で撃てば倒せる」と思っている節があるのだ。
むしろ、刀剣を持って戦う日本人のことを馬鹿だと思っている。
「俺達はアメリカの特殊部隊だぜ?補給システムが脆弱な自衛隊と一緒にしないでもらいたいね」
「あいつら、トイレットペーパーすら経費で落ちないんだぜ?」などと言って、米軍選抜のダンジョン攻略部隊の兵長は、資料文書を作戦室のテーブルに投げ捨てた。
「全くだ、馬鹿らしい。確かに、この島のように、空間を拡張する魔法というのは理解した。その技術は素晴らしい。ダンジョンとやらも、長い遠征になるんだろう。だが、俺達なら、日本のように物資不足になるなんて愚は犯さんよ」
黒人の軍曹がニヤつきながらコーヒー缶を傾ける。
「ボブの言う通りだ。我々米軍は、敵性生物相手に刃物を持って接近戦など、馬鹿らしいことはしない。近代戦の基本はアウトレンジから一方的に敵を叩くことだからな」
真面目そうな白人の小隊長がそう言って顎を撫でる。
「その通りです、隊長。金属の塊でできたゴーレムだろうが何だろうが、対戦車用の成形炸薬弾を撃ち込んでやれば、モンローノイマン効果で風穴を開けられますよ!ノロノロ動く金属なんてただのカモですね!」
調子のいいヒスパニックの一等兵が笑う。
「何にせよ、割のいい仕事だ。だからといって気を抜くなよ!」
「「「「イエスサー!!!」」」」
「我々の攻略するダンジョンとやらは、最下層にミノタウロスがいるらしい」
白人の、イギリスの特殊部隊であるSAS上がりの隊長は、その精悍な顔を顰めて言った。
「つまり、我々はテセウスになれと?隊長のジョークは相変わらず面白いですね」
皮肉っぽい面構えをした黒髪の兵士は、苦笑いしながらそう言った。
「誤解だよリッツバーグ軍曹。普段の私のジョークは、もっとエスプリが利いている」
隊長は、イギリス人らしい、嫌味ったらしい話し方。
その答えを受けて、兵士達は目を丸くした。
「……つまり、本気だと?」
「ああ、そうだ。迷宮に潜り、モンスターを剣と魔法で打ち倒し、宝物を奪うんだそうだ」
「……ハッ!」
鼻で笑った兵士達。
「つまり、我が国の名作小説のように、魔法の森でモンスターと戦う?魔法のステッキから光の粒を散らして?……我々は軍隊ですよ?!」
「日本人のお得意の、低俗なMANGAやANIMEみたいなことを、我々にやれと仰るので?!」
「馬鹿らしい!我々の仕事は調査ではなかったのですか?!国を守るために死ぬなら理解できますが、こんな極東の地でモンスターと戦うなんて!」
口々に文句を言い始める兵士達……。
「もちろん、君達の言いたいことは理解している。だが、国の命令なんだ。理解してくれたまえ」
「「「「……イエスサー」」」」
「……そして、我々が攻略するダンジョンの最奥には、グリフォンがいるそうだ」
ドイツ軍のダンジョン派遣部隊の隊長は、重苦しいため息を吐いた。
「グリフォン、ですか」
兵士達は、訓練されている精兵であるはずが、あまりにも素っ頓狂な答えに、思わず聞き返してしまう。
「ああ、そうだ。迷宮に潜り、宝を守るグリフォンを打ち倒し、財宝を得る、と。そう言うことだ」
「はあ……?」
「無論、財宝とは金銀や宝石だけでなく、例の『若返りの霊薬』や『万能薬』も得られる可能性が高いとのことだ。他にも、新素材や新エネルギーなども」
「は、はあ、そうですか」
「とにかく、フロンティアなのだ。ここを開拓し、研究すれば、第三次世界大戦により消耗した我が国の経済的低迷を持ち直せるかもしれん。アメリカやイギリスも来ているんだ、出し抜かれるな」
「は、はっ!し、しかし、その……、グリフォンとは?何かの隠語でしょうか?」
兵士の一人が質問すると、隊長は作戦室のプロジェクターに画像を映す。
そこには、風を纏う四足の猛禽、グリフォンの姿が……。
「そのままの意味だ。我々はこれから、このモンスターと戦う」
「こ、これは……!」
「日本の報告によると、これは、音速を超える速さで空を自由に飛び、風の刃を飛ばしてくるそうだ」
「し、しかし隊長!航空力学的にも、生物学的にも、このようなフォルムの生物が音速で空を飛ぶなど不可能では?!それに、風では人体は切れません!」
と、兵士は、「あくまでも物理法則的に」おかしい点を批判した。
「もちろんだ。恐らくは、日本政府も虚偽の報告をしているのだろう。フロンティアの開拓を妨害しようとしていると、我が国は認識している」
しかし、と前置きして、隊長は……。
「しかし、調査によると魔法というものの存在はどうやら真実のようだ。何かしらの特殊な攻撃をしてくるかもしれん。念の為、対戦車用の兵装を持っていく」
「は、はっ!」
「ただ一つ、忘れないでほしい。我々は、ナチスドイツの反省を心に刻んでいるはずだ。日本のように、『スキルスクロール』なるもので、若者の人体を改造し生物兵器にするなど、到底許されることではない!!!」
「はい!」
「良いか、諸君!ダンジョン技術などという不確かなものに頼らずとも、我々人類が積み上げてきた知識と経験を活かせば、日本と同じことなど簡単にできるのだと証明してやれ!!!」
「「「「ヤヴォール!!!」」」」
スパダリ、ちょっとずつ書いてる。
マジで時間がないので、日刊更新できてるの本当に奇跡。