「受勲〜?」
梅雨入り、連日の雨模様の最中。
じめじめと湿気が舞う栃木日光の屋敷で、俺はおやつの煎餅を食いながらそう言った。
相手は……。
『そうだ、受勲だ、婿殿』
時城のジジイだ。
「前にやったろ」
『一つでは足りんと言う話になってな』
「もう要らん、辞退だ辞退」
『そうもいかん、今回は婿殿だけでなく、多くの冒険者に受勲してもらう』
「うぁーーー」
俺はそう言って、海苔煎餅をバリバリ齧る。
そして、龍心人(ドラグナー)らしい、尖った牙で咀嚼しながら、唸り声を上げる。
「まあまあ、先輩も抑えて抑えて」
眼前に座って茶を啜る、嫁の杜和。
未だに、「萌え要素っす!」などと言って、旦那である俺のことを先輩と呼ぶこの女は、苦笑いと共に俺を嗜めた。
「けど、おかしくないっすか?先輩が前に貰った勲章って、国内で一番高位なものでしたっすよね?確か……」
『大勲位菊花章、であるな。確かに、あれは日本最大の勲章で、外国の王家や、国内では優れた総理大臣などのみに授与される最高位のものだ』
ジジイはそう答える。
そう、そうだったな。
一番すげえのだったな。
なんか首飾りみたいなのが居間にあるぞ。使い所が分からんのだが。
『……が、しかし。最近、冒険者用に新たな勲章を作ってだな』
「はあ?」
『作った、と言うか、復活させたのだ』
そう言って、立体映像が浮かび上がる。
迷宮端末の技術だ。
交差する剣と矛、黄金の鳥……。
「これって、もしかして!『金鵄勲章』っすか?!」
『ほほう、正妻殿は詳しいな。まさにその通り、日本唯一の武人勲章たる、金鵄勲章だ。今回はこれを、冒険者の為に復刻させた』
「おおーっ!功一級っすか?!年金九百円っすか?!陸軍大将っすかー?!!」
『……本当に詳しいな?年頃の女子が知っている知識かこれは?』
「あー、杜和はオタクだからな」
「仮想戦記大好きっす!!!」
『ご、ごほん。まあ、それは良い。とにかく、功一級にて受勲されるので、心に留めておいてくれ』
「はいはい」
で、勲章。
また、前のように、エライヒトらの前に立たされる。
折角作ったタキシードも、尻尾の穴を空けたりで仕立て直し。
バタバタと服やらスケジュールやらを調整して、またもや天皇陛下に謁見だ。
ソラが言うには、マジで神の血を引いている家系の人らしいが……、俺はイマイチ、凄さとかよく分からん。
だがまあ、嫌う理由はないし、評判の伝聞だが人格者であると聞くし、邪険にはすまい。
普通に頭を下げて、勲章とやらを貰う。
こんなもの、貰っても嬉しくはないんだがな。
もちろん、面と向かってそう言うほど性格は捻れちゃいないが。
「ありがとう、赤堀さん。貴方のお陰で、日本は救われました」
おっと……。
陛下に頭を下げられてしまったぞ。
どうするんだこれは。
実権はないとはいえ、この国の王様だろう?
それに頭を下げさせるのは、やはり良くないことのはずだ。
「あー、おやめください、陛下。自分は趣味でやっているだけなんで」
「それでも、ありがとう……」
「分かりました、ですが、自分のような者に頭を下げるのは……」
と、少し騒ぎになってしまった。
あとはまあ、大したことはない。
エライヒトとの会話だ。
が、最近気付いたのだが、どうやら俺はエライヒトよりも偉くなってしまっているらしい。
そう言われれば、俺は今、日本で一番稼いでいる人間なんだとか?
金も唸るほどあるし、総理大臣の義理の曾孫で、勲章もある。
そして、日本人はちゃんと、「銃火器や核弾頭なんかよりはるかに強い存在がこの世にいる」という認知があるからな。
海外では未だに、科学を信仰してダンジョンで銃火器をばら撒いているバカばかりだが、日本人はいい意味でアホなので、「つまり……、覆面ライダーみたいなもんってコト?!」みたいな認知をされている。
杜和んとこの実家のガキ共は、「にいちゃんスゲー!覆面ライダーとか、スペシャル戦隊みたい!」みたいな認知だったし……。
そもそもダンジョンに入って気軽にスキルスクロールとか使う日本人達は、「まあ、魔法があるなら、極めればあれくらい強くなれんじゃね?」みたいなノリだ。
老人はよく分かってないらしく、「つまり……、神様ってコト?!」みたいな感じで、こちらを拝んでくる。
そもそも、日本の人口の三割くらいがダンジョンに一度は潜ってるんだ。
銃火器よりも軍艦よりも核兵器よりも強い人間も、ナチュラルに受け入れて納得している。
まあその辺の話をすると、カルト宗教や変な利権団体など、文句をつけてきそうなアホ共は、時城のジジイに消されたと言うのもあるんだが。
日本人の気質なんだろうな、「異なる者」をなんとなくフワッと受け入れるのが。
そんなこんなで、エライヒト達に頭を下げられてご機嫌を伺われた。
特に問題はないな。
無難に返して終わりだ。
何かね、俺思ったんですけどね、俺はプロット立てない方が上手く書けるかもしれない。
ライブ感で書くのが一番上手くいく気がする。