ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ダイエット、します。


105話 Dの者達

Dチューバー。

 

新たな時代の萌芽たるそれは、インターネットの片隅でひっそりと生まれた。

 

「ダンジョンでネットに繋がるってことは……、ダンジョンで配信ができるってコトぉ?!!」

 

そして、後追いではなく、シンクロニシティ。

 

同時期に、同じことを考えた人間はごまんといた。

 

「もぐら丸のかわいさを……、全世界にお届けできるってコトぉ?!!!」

 

「コスイベ以外でコスプレ姿を他人に見せつけられる?!!!」

 

「えっ?!全世界に俺カッケーを大公開してOKなんです?!!!」

 

そうして始まったのが、ダンジョン・ユウチューバー……『Dチューバー』なのである……。

 

Dマテリアルをふんだんに使い、従来のスマートフォン並みの大きさであるにもかかわらず、数千万画素とアホみたいな手ぶれ補正の頭のおかしい録画録音性能と一週間くらい保つバカみたいなバッテリーを搭載し、あとなんか自動で浮遊して勝手に撮影を代行してくれます、みたいな面白マシーンが、『最新型スマートフォン』という名目で携帯ショップに平積みされている今、ダンジョンでの活動が生配信できますよと言われてやらない奴はいない。

 

元々コスプレ同然の服装で日常生活を営む今の日本人が、ダンジョンでアクロバティックに戦うのは非常に絵になるという都合もあるが、とにかく、Dチューバーは瞬く間にインターネット上のあらゆるコンテンツを駆逐し、頂点の座を掻っ攫った……。

 

 

 

「いえーい!」

 

『ぷむぅー』

 

赤髪に口元を隠す鬼の面をつけた男、梵天。それとその従魔のもぐら丸というでかいもぐら。

 

『もぐらまるちゃん、こんにちわー』

 

機械的な犬を模したマスクで顔を隠す長身の男、イヌ噛ミギョーブ。

 

「ふわーっ!もぐら丸ちゃんかーいーね!かーいーよー!」

 

もぐら丸に抱きつくのは、ピンクのツインテールにフリフリのドレスとハートのステッキを持った頭がおかしい女、魔法少女☆ゆきりん。

 

「もぐら丸さン、こんにちハ」

 

もぐら丸に頭を下げるのは、黒いコートに山高帽を被り、ペストマスクと黒革で頭全体を隠した変人、唐墨。

 

「俺!俺にあいさつは?!」

 

「「「梵天さん、いたんだ」」」

 

「そりゃいるわい!!!もぐら丸のパパは俺なんだぞぅ?!!!」

 

こんな風に、Dチューバー達は好きに集まり、好きにパーティを組み、好きにダンジョンで仕事をする。

 

ただそれだけを録画して放送するだけで、彼らのような上位層ならば、一晩で数千万再生されるのだ。

 

どうせ、ダンジョンでたらふく稼ぐので、動画のインセンティブなどおまけのようなものだろうが、それでもやらない馬鹿はいないというもの。

 

自分が好きでやっている仕事兼趣味を、動画撮影して垂れ流しにするだけで、寝ていてもうん百万円が毎月口座にねじ込まれるとして、やらない奴がいるか?といえばまあ、普通はいないだろう。

 

そもそも、彼らの気合が入ったコスプレのような装備から分かるように、彼らはそういう趣味人だ。

 

Dポイントを貯めて、自分の愛用する装備に注ぎ込み、強化する。

 

さながら、ソーシャルゲームで推しのキャラに強化素材を流し込み続けるが如く。

 

魔法少女☆ゆきりんが着ている、ダンジョンには到底似つかわしくないフリフリのドレスも、一見しては分からないのだが、実は戦車の前面装甲並みの堅牢性がある。

 

Dポイントでの装備強化で気持ち悪いくらいにポイントを注ぎ込んだのだ。

 

イヌ噛ミギョーブの、顔面を覆う機械的な犬面マスクも、元々は単なるコスプレ用品だったのだが、強化ポイントをアホほど流し込んだものだから、日曜朝九時の特撮ヒーローのマスクのように、正気を疑うレベルの多機能性堅牢性を誇っている。

 

例えば、犬並みの感度の嗅覚センサ、暗視機能に酸素供給機能。ついでに、身バレ防止用に、声をリアルタイムで電子音声に変換するフィルターマイクも搭載。まさに覆面ライダーである。

 

そんな、「まさに覆面ライダーである」といえる連中が、集まってモンスターとリアルに殺し合うのだ。

 

普通に考えて、最高の娯楽である。

 

いささかグロテスクではあるのだが、ユウチューブ本社側も切るに切れない。

 

その辺りは普通にカネの問題である。

 

何せ、Dチューバーが現れてからというものの、動画配信サイトユウチューブやヌコヌコ動画などの株価は右肩上がりの鰻登り。

 

彼らのスパチャの手数料三ヶ月分だけで、前年度の利益を上回るドル箱コンテンツを、「グロテスクだから」という倫理上の問題のみで切ることはできない。

 

残念ながら世の中カネである。真に「青少年の健全なうんちゃらかんちゃら」を心配している人間などほぼいないのだ。

 

さあ、そんな訳で、「リアル覆面ライダー」並みのスペックを持つ人間が、本当のド派手な殺し合い……それも魔法を使って行われるそれらは、現代のコロシアムにして最高のエンターテイメントである。

 

《もぐら丸ー! 1000¥》

《もぐら丸がんばれ 2500¥》

《ゆきりん! 2100¥》

《もぐら丸養育費 10000¥》

《ギョーブさんカッケー! 5400¥》

《唐墨さんに先日辻ヒールしていただいた者です。この程度でお返しになるとは思いませんが、少しでもお返しがしたく、赤スパをさせていただきます。 50000¥》

 

スパチャ……いわゆる投げ銭がとめどなく飛んでくる。

 

「スパチャありがとー!」

 

『ありがとねー』

 

「我々からすれバ金なんテ今更誤差みたいなもんですよネ」

 

「唐墨さんそういうこと言うなって!ユウチューブ全否定じゃん?!」

 

「ア、すみませン」

 

それを殆ど気にせず、趣味友達と会話するようなテンションで笑いながらダンジョンに入り……。

 

ごく当然のように、ダンジョンの魔法陣に乗り、転移する……。

 

この、空間転移だけでも、外国人はしばらく大騒ぎしたほどだ。

 

なお、日本では既に金さえ払えば転移はできる。人を転移させるような、そういう仕事もできた。

 

そしてそんなふざけた連中が、ダンジョンに入った瞬間に雰囲気が変わる……。

 

ここは、金沢ダンジョンの九十階層。

 

戦車大隊すら数分で吹き飛ぶ、地獄の一丁目である……。

 

 

 

エリアは自然に埋もれた廃墟。

 

石造りの西洋風の建物が崩れ果て、蔓草に覆われ、建物の下から木々や草花が漏れ出している。

 

天気は晴天、雲はなし。

 

風も少なく、気温も春模様。

 

難易度が高いようには見えないが……。

 

問題は、モンスターだった。

 

『キシャアアアアアア!!!!』

 

それは、黒鉄色の大蜘蛛。

 

全ての面の防御性能が重戦車並み、軽トラ並みの巨体を持ちつつも、自動車並みの速度で天地を這い回る!

 

関節の隙間すらも戦車砲を弾く堅牢さと、石壁や木の上を身軽に跳ね回る異様な軽さを両立した化け物!

 

マーダータランチュラである!

 

それだけではない。

 

『グオオオオッ!!!!』

 

頭の先から尻尾の先まで、実に三十メートルにまで達する巨大な蛇!

 

鱗の一枚一枚が、触れるだけで鉄すら削ぎ切る鋭利な剃刀になっており、それを武器や鎧として使う大蛇……。

 

ライべルサーペントだ!

 

『キィーーー!!!!』

 

空を見れば、象三頭をまとめて持ち上げられるほどに巨大な猛禽!

 

ロック鳥!

 

『ギ、ギ、ギ……!』

 

ついでに、三メートルもの身長を誇る巨体の大鬼もいる!

 

オーガロードだ!

 

凄まじい力を持ったモンスターの群れが、四人に襲いかかる……!

 




あーもうダメ、書けない。

いや書けるでしょ。

書けない……?



それはそれとして、自分の過去作を読み直したところ、「なんでこんなに面白い作品の続きがないんだ?!」とキレてしまった。

続きはどこにあるんですか????

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