ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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東京って凄いっすよね。

もう引っ越して一年が経つのに、未だに慣れない。




107話 東京へ行こう

俺は、所用があって東京に来ていた。

 

いや、所用とは言っているが、実際のところ、東京の武蔵大異界にできた巨大健康ランドに行くだけなんだが。

 

ダンジョン産最高級木材「世界樹」製サウナルームで、「世界樹の葉」を蒸らして行うスチームサウナとか、行かない理由がないだろうよ。

 

大量のDポイントで作られた源泉掛け流し温泉も最高との噂。

 

更に飯屋は、飲み放題で、大盛りの激辛ラーメンと肉盛りチャーハンにニンニク餃子のセットが有名なんだとか。

 

サウナ後は塩分補給でしょっぱいものが食いたくなるんだよな。

 

そして、なんか知らんが辛くて熱いものを食いたくなる……。

 

飲み放題二千五百円に、食べ放題は一万二千円とお安い。

 

高い?

 

大食いの冒険者に対してまで一万円ちょいで食べ放題は法外なくらい安いぞ。

 

今じゃどこの飲食店でも冒険者向けデカ盛りメニューを用意するのは礼儀みたいになっているからな。

 

最低でも、インターネットで見かけるようなアメリカの体重200kgくらいありそうなデブくらい食わなきゃ、冒険者稼業はままならない。

 

そんな訳で、これはもう、行く以外の選択肢はない。

 

 

 

俺は、地元の下野大異界の転移門に、Dポイント払いで金を払い、入る。

 

転移門は、有料で使用できる瞬間移動装置だ。

 

大体、栃木から東京までで五千円ちょいだな。

 

この転移門があまりにも便利過ぎて、国内の電車は殆ど廃線にされて、代わりに景色を見て旅をするための観光用の「魔導列車」に変わった。

 

魔導列車は、デーモンの心臓を炉心として動く未来的なデザインの列車だな。

 

二酸化炭素も何も出ない。

 

で、列車は完全に観光用特化で、今時転移門を使わないビジネスマンは日本にはいないとのことだ。

 

後は飛行トランスポーターか、自動運転タクシーかくらいだな。

 

さて、到着したのは普通に東京。大異界ではない。

 

サウナに二時間、その後飯を食ってダラダラする予定なのだが、それでは大きく時間が余ってしまうからだ。

 

しばらくは観光でもして時間を潰そうと思う。

 

東京は学生時代によく来ていた。

 

電車で一時間と少しくらいなんだが、地元の栃木には何にも面白いものはないからな。

 

よく、東京の暴走族グループを潰したり、不良グループを潰したり、ヤクザの事務所を潰したりしたものだ。

 

いや俺が進んでやった訳ではないんだが。

 

なんかあっちから勝手に来てうざったいから潰しただけだ。

 

「にしても……、東京もだいぶ変わったすねえ」

 

ああ、それと、もちろんだが家族連れだぞ。

 

子供達はうちのジジイに押し付けてきた。

 

そうじゃなくても、うちには親代わりのメイド亜人がいくらでもいるのだから、子供の面倒で困ったことは一度もない。

 

嫁達もむしろ、仕事を中心に生活している。

 

そもそも、俺がめんどくさくて投げた仕事を拾って消化してるのは大体嫁だからな。

 

マジで俺は殺し合いしかしてないぞ。

 

本当にダンジョンができてよかった。

 

社会に適合しようと苦労する羽目にならず、むしろ社会の側が俺に合わせてくれたのだから。

 

世界がこうならなければ、俺は何をしていたんだろうか。

 

ジジイが言うには、「数年間紛争地帯でPMCとして活動した後、立派な暗殺者にしてやる予定だった」とのことだが……。

 

まあ確かに、人間だった頃も、刀さえあればアサルトライフルの弾丸くらいまでなら見てから弾けたし、恐らくはそうなっていただろう。

 

「そう言えば、お前はなんで俺に惚れたんだ?」

 

道端で、今女子高生に大流行中の「飲むどら」(魔法で液状化したどら焼きのドリンク)を飲みながら、キョトンとした顔で答えた。

 

「え?人を好きになるのに、理由って必要なんすか?」

 

あー……。

 

こいつはこういう女だったな。

 

だからこそ好きなんだが……。

 

「むしろ、先輩こそなんでオッケーしてくれたんすかね?」

 

と、杜和に聞き返される。

 

そりゃあ、まあ。

 

「断る理由がないからな」

 

杜和は、側に置いていても苦痛に思うことが一切ない。

 

なら、側にいてもいいだろうと思った。それだけだ。

 

「あー、先輩ってそういう感じっすもんねえ」

 

と、半笑いの杜和は、俺の腕を抱いて前を向いた……。

 

 

 

「ところで、それ、美味いのか?」

 

「中々いけるっすよ。なんて言うか、どら焼き味のスムージー……?みたいな?」

 

「美味そうな感じが一切しないんだが」

 

「いや、そこはクリームを入れたりとかしてうまい具合にまとめてあるんすよ。どっちかって言うと、ガラス張りの魔動式転換機で、固形のどら焼きが液体に変換されていく様が面白くてウケてる感じっすかね?」

 

後はこの形が可愛いっすよね、と。

 

そう言って、プルプルするどら焼きの入った容器を揺らす杜和。

 

確かに、魔導具でどら焼きの「原型を留めたまま液体にする」というのは、エンターテイメント的に見て面白いな。

 

見た目は大きなどら焼きだが、口の中に入れた瞬間にスムージーのような液体になる……。

 

冒険者化による飲食量の増大もあり、高カロリーの食品を手軽に食べられるようにするスイーツの類は、稼げるコンテンツなのだとか。

 

因みに俺は、原型を留めたまま液状化したリンゴにストローを突き刺して吸っている。

 

りんご120%ジュースというらしい。まあ普通にりんごなので美味い。

 

「にしても……、大分、世の中も変わったっすねえ」

 

おもむろに、杜和はそう呟くようにして言った。

 

確かに、風景は全く違う。

 

武蔵大異界と同じように、SF都市になっている。

 

何でも、不況の時に多くの企業が潰れて、地権を手放した人が多いから、雇用確保のための公共事業として全国の都市のリノベーションを始めたらしい。

 

数百兆円と数十年が吹き飛ぶ計算だったのだが、Dマテリアルや魔導具を大量に活用した先進(?)技術の導入と、亜人雇用による人海戦術で、たった二年で日本各地の主要都市の全てがSF都市と化したそうだ。愛人がそう言ってた。

 

道ゆく人々の身なりも違う。

 

銃刀法がなくなり、武装して歩くのが当たり前だからだ。

 

先ほど、「飲むどら」とかいうスイーツ店に集まっていた女子高生も、映えるだの何だの言ってスマホで写真を撮るのは変わらないが……。

 

高校の制服の上から、ガントレットと胸当てをして、数十kgはありそうな大剣を腰からぶら下げていた。

 

制服のシャツの上からコートを着込み槍を背負っていたり、仮面をつけて刀を帯びたり。

 

スーツを着たビジネスマン風の男も、最近はスーツの下に鎖帷子を着るのが礼儀みたいな話になっているらしく、その上で更にロングソードを腰に下げてる。

 

「そう言えば、『武装マナー』とか言うものをネットで見たっすね」

 

「武装マナーって何だよ????」

 

何だそりゃ????

 

「ビジネスマンらしい武装のマナーっすよ」

 

「意味分からん……」

 

「例えば、『縁が長く続きますように』と言う意味を込めてロングソードを帯びるのがマナーだとか……」

 

「いや、意味が分からん、本当に」

 

「半袖鎖帷子はクールビスの証なんだとか」

 

「意味が分からん!」

 

他にも、最近開発された「魔法銃」なる武器を肩から下げたキャバ嬢や、ボウガンを背負った中年親父。

 

騎馬に乗ったままフルプレートアーマーの騎士がその辺を歩いているのも日常茶飯事だ。

 

とにかく、街も、人も、考え方すらも変わっている。

 

「……まるで、別の国みたいだな」

 

「そうっすねえ。外国人も全然いないし、全然違う街って感じがするっす」

 

ああ、それもあるか。

 

外国人は一人もいない街か……。

 

過ごしやすくなった、などとは思わないが、確かに東京で外国人を見ないのは何と言うか、凄いな。

 

「でも、これはこれで良くないっすか?永遠に変わらないものなんてこの世にはないんすから、良い方向に変わったんだと思って、今の世の中を楽しむっすよ!」

 

「それもそうだな」

 

 

 

こうして俺は、新しくできた健康ランドで温まり、飯を食い、リラックスした……。

 




ラーメン食いてえ……。
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