ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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パスタ食いてえ。


114話 日本の問題点

総理大臣、時城政史郎の思惑通りに、日本の地位は国際的に高いものになっている。

 

未だ各国は半信半疑なところもあるし、為替も不安定な今、この数字にどれだけの意味があるかは誰も分からないのだが、少なくとも実質GDPの数値は世界一。

 

人々の顔は明るく、失業率や自殺率も異例の低さ。

 

そんな日本にも、いくつかの悩みは当然あった。

 

その中でも最たるものが、「インテリ層の減少」である。

 

いや、これは正しくはない。より正確には、「本来、インテリ層が行き着くべき場所」に向かうインテリ層が、どんどん減少しているということだ。

 

代表的なものを挙げると、例えば政治家など……。

 

日本の子供達は言う。

 

「苦労して勉強して政治家になるより、冒険者の方がよほど儲かるし気楽だ」と……。

 

 

 

世の中の、何も分かっていない人々は、政治家の年収の数値だけを見て「貰い過ぎだ!」などと叫ぶ。

 

悪名高い「天下り」も、メディアの批難の的だ。

 

だがしかし、よく考えてみてほしい。

 

市議会議員だとして、数万人の人間の信任を得てその頂点に立つ人間の報酬が、たったの七百万円そこら。

 

社員数が数万人の会社の社長なら、役員報酬は七百万円どころではない。

 

日本一の重工業グループ、豊原重工も、総従業員三十六万人に対して、社長の役員報酬はおよそ六億円。

 

一方で、日本人一億数千万人の支持を得る総理大臣の年収は大体四千万円……。

 

天下りにしたってそうで、三十代以降の中年が「政治家」などという仕事で何の役にも立たないボランティアをしてそのキャリアをドブに捨てているのだから、それの救済と思えばまだ理解が及ぶ。

 

むしろ本当に、政治家が利権に全く関われないのならば、かつての米大統領のような大金持ちが自分の顔を売るために政治界に入るような金権政治になるだろう。

 

無論、利権を貪り過ぎる悪徳政治家などもいるのだろうが、そんなものが大多数であればこの国は二千年も続いていない。歴代中華王朝が如く国家崩壊からのスクラップビルドが起きているはずだ。

 

つまり、元から政治家とは、「特別な志があり」「出馬できるほどの金とコネを持ち」「安い金で文句を言わず働く」という、日本古来から続く奥ゆかしい『社畜』『公僕』の『国士様』の仕事なのである。

 

政治家になる能力とコネあれば、例えば、金融関係で資産を転がすだけでいくらでも稼げるということだから……。

 

それが今、冒険者になる方がよほど、金も名声も得られて国の為にもなる職業である今。

 

なりたがる人間は殆どいなかった……。

 

となると、どうなるか?

 

答えは、政治家の一族による寡頭政治である。

 

 

 

「若者が……、政治家にならないぞ?!!!」

 

代々続く政治家一族、時城家の当主にして総理大臣の時城政史郎は、首相官邸で頭を抱えていた。

 

一時は、政敵の暗殺を含む超苛烈な手法で政権を得て独裁していた、所謂悪の独裁者だが……。

 

「儂の独裁など一時のもの!乱れた国を建て直す為の開発独裁は必要なことだった……。だが!こうして安定した今!儂の独裁など毒にしかならんだろう?!!!」

 

実は、独裁などというアホらしいことを一番やりたくなかったのは、この男なのだった。

 

「ひいお爺……総理!鎮まっとぉくれやすー!」

 

最強の男の妾にして、政史郎の玄孫、時城紗夜はそう言って怒れる政史郎のことを捕まえた。

 

彼女は、女性でありながら副総理を務める英傑である。

 

それがここまで慌てるほどに、政史郎の癇癪は大きかった。

 

「おかしいだろうこれは?!どうなっている、紗夜?!」

 

「総理が言わはった通りに、政治家の給料は二十年前と比べて三倍に。天下り先の斡旋なども含めて、五年間も政治家をやれば一生安泰どすえ」

 

「……では何故、政治家が増えんのだ?」

 

「まあ、冒険者やる方が儲かるさかい、どすなぁ……」

 

「駄目ではないかッ!!!」

 

政史郎がこうなるのも無理はない。

 

今、日本では、政治家が足りな過ぎて大変なことになっていた。

 

例えば、現在の総理大臣である彼は、任せられる相手がいないので、複数の大臣ポストを兼任している。

 

まるで戦時中の独裁国家だ。

 

その自覚がある彼は、他の政治家にどんどん役職を任せたいと思っているのだが、なかなか上手くいかない。

 

何故か?

 

彼より上手くできる!などと、自惚れられるアホは流石にいないからだ。

 

よく考えてみてもほしい。

 

GDPランキングで七位そこらまで転落して、1ドル二、三百円のいかれた円安に、国内で新たなカルト宗教や極左政党などが跳梁跋扈していたあの地獄の時代を。

 

たった一人の独裁者が、元の、地獄に堕ちる前の豊かさを遙かに超える楽園国家をほんの数年で作り出した、化け物政治家に。

 

支持率で勝てるなどと思い込む奴は、アホなどと言うレベルの話ではない。

 

それも、とうの昔に死んだ過去の人ではなく、現役なのだ。

 

言わばそれこそ、政治の世界の赤堀藤吾……。

 

つまりは伝説の存在である時城政史郎。

 

これと戦うのはもちろん、比べられ続けるのもゴメンだ!というのが、この国の全政治家の総意である。

 

ついでに言えば、政治家になりたがる者がいないとは言え、ならない者がいないという訳でもないのがタチが悪い。

 

皆、「根菜類の党」だの「特定放送局を破壊する党」だのと、変な名前の政党を立ち上げたマジもんの阿呆が国政に食い込んでは拙いと理解しているので、各選挙区ではお馴染みの家系が政治家を出す暗黙の了解が出来上がってしまっていた。

 

要するに、田舎の町内会長のように、貧乏くじをある程度まともな人に押し付けてしまおう!となっている訳だ。

 

人の嫌がることはすすんでやりましょうという、ある種のノブレスオブリージュである。

 

しかもそれで、国民の殆どがこの制度や風潮を納得しているし、逆らう気もないので最悪だった。

 

『実力主義武士道』の精神に内包される、『国家への服従』や『尊王思想』により、「不満があるからみんなで候補者を立てて政党を作り、国を変えていこう!」などという人々が殆どいないのだ。

 

まあそもそも、国民全てが「このまま余計な手出しをしないで、この調子で国家が進めば安泰だ」と自覚しているので、それはそうなろうものなのだが。

 

「このままではいかんぞ!かつての元勲が作りたもうたこの民主主義国家の根底を覆す事態だ!……と言うよりも、儂も良い加減に引退したい!政界の若返りをせねばならんだろうに、何故誰も危機感を持たんのだ?!」

 

「その……、ほんまに言いにくいんどすけど、総理に任せた方上手ういくさかい手出しをしいひんちゅう暗黙の了解ができていましてどすなぁ……」

 

「そんな!訳が!あるかーーー!!!儂も人間であるぞ?!必ずどこかで間違える!故にこそ、民主主義、合議というシステムが不可欠なのだ!!!」

 

「今現在上手ういってるさかい、余計な手出しをしたない言う……、そないな感じどす」

 

「儂は神ではないのだが?!!!」

 

この様に、日本では政治家不足が(一部で)叫ばれていた……。

 

では、政治をやってくれる外国人に参政権を与える?と言われれば、まあ、そんなものはないのだが。

 




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