ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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Q:主人公は何やってんの?


115話 小さな居酒屋で

克己煉行。

 

札幌ダンジョンにて試練の鍵を七本集めることにより解放される『エクストラ・ダンジョン』である。

 

日光ダンジョンの『百鬼夜行』、墨田区ダンジョンの『大殺界』、広島の『英雄踏破』などと同じ部類の、追加要素であるそれは、地獄のような難易度に加えて、一筋縄ではいかない難点が存在する……。

 

克己煉行においては、その名の通り「克己」……。

 

「己に克つ」ことを求められる。

 

即ち……。

 

「ォオオオオッ!!!!!」

 

『ォオオオオッ!!!!!』

 

自らと全く同じ能力を持つ、もう一人の自分に打ち勝つこと……。

 

無限に広がる道場。

 

平らな木目の地面に、どんなに走っても決して辿り着けない壁と屋根。

 

この空間で、時空間を破壊する一撃が気安く放たれまくる。

 

もしこの攻防が地上で十秒も行われたら、星が終わりを迎えるであろう圧倒的暴力……。

 

それが、無限に応酬される。

 

一撃、一撃。

 

手が飛ぶ脚が飛ぶ、斬撃、魔法、発勁に指弾。

 

それを時に受け、流し、弾き、凌ぎ……。

 

あたかもそれは、美しき演舞のような様相を成す……。

 

「ハハハ!」『ハハハ!』

 

「アハハハハハハ!!!!」『アハハハハハハ!!!!』

 

笑う、嗤う。

 

嗤いながら斬り合う。

 

矮小なるヒトの身にて、『戦神』の道を歩む修羅、羅刹。

 

善趣にして悪趣、修羅道を悠々と征く偉大なる『剣神』……。

 

二つの影が叫ぶ。

 

「『御影流!奥義!」』

 

遠く離れていても、瞳も、心も、魂の一欠片をも残さずに焼き尽くす破滅の業火。

 

そは太陽か。

 

否。

 

太陽にしては昏い、死の獄炎。

 

煉獄よりもなお昏い、深淵の劫火……。

 

十年もの時をかけて、一時も休まず、眠らず、食わず。

 

克己の煉行は成された……。

 

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

《速報!剣神、赤堀藤吾氏が克己煉行を踏破する!》

 

「はえー、マジでやったん、あのお方?」

 

「自分と同じ外見能力技能思考のもう一人の自分と戦って勝つって、どうなってんの????」

 

「……あ、技マシーンさんが早速、限定スキルの内容を聞きにいったぞ」

 

「勇者だなあ、あの人。スキルコレクター系Dチューバーから、今はその圧倒的な知識を認められて、赤堀ダンジョン研究所の特別顧問だっけ?」

 

「そうそう。赤堀ダンジョン研究所とか、倍率は五千倍だっけ?」

 

「その情報古いぞ。十年前の『七大罪ボス』の件で六千八百倍になった」

 

「あー、『大罪スキル』のやつね。確か、アレの反対の『元徳スキル』が凄かったんだっけ?」

 

「『元徳:愛』なー。触るだけで微弱にだけど全属性やられの回復だからなー。雑に強い。まあ俺みたいなのは『大罪:色欲』のおかげで助かってんだがな」

 

「もう俺、最近は属性の複雑化についていけないわ。最初は毒、睡眠、混乱、石化に呪いくらいだったのに、最近は酩酊、不幸、絶頂、カルマ、人形化、氷結、感電とか訳分からん」

 

「酩酊、不幸、絶頂辺りはMND上げりゃ喰らっても大体どうにかなるぞ?カルマと人形化はまあ使ってくるやつ少ないから良いとして、氷結と感電はかなりヤバいからちゃんと属性耐性で防げな?」

 

「この前、北海道のダンジョンで攻撃喰らったら、身体凍って死ぬかと思ったわ」

 

ワハハ!と笑う中年男は、無精髭にクマのある目が特徴。赤色のニット帽を被り、薄汚れたアウトドアジャケットを羽織る。

 

それと話しながらビールを飲むのは、男口調の女。頬に傷があり、吊り目で、ほぼほぼ坊主頭のベリショ髪に鍛えられて乳房の贅肉すら落ちているような、薄着の男女。

 

「fushianaは相変わらずおもしれーなあ!今はどこアタックしてんのよ?」

 

中年男はfushiana、旅系Dチューバー。

 

「岸原さんほどじゃないよ。……最近は四国の彼岸系ダンジョンかなあ?あの辺は景色が凄いからさあ」

 

男女は岸原亜紀、写真家Dチューバー。

 

二人は、二十年も前から友人関係を続けている、戦友であった。

 

……なお、惚れた腫れたとかそう言う関係ではない。

 

「ってかあんた、まだ結婚してないのかよ?!枯れてんなあ……」

 

「俺は岸原さんみたいに、女の身で『大罪:色欲』スキルでチンチン生やして女の子孕ませまくり!みたいなことはできないの、身体保たないからね?」

 

fushianaは女にあまり興味がなく。

 

岸原はレズの上に、女亜人を十人も侍らせて、「肉体の一部を性交に適した形に変質させる」という特殊スキルである『大罪:色欲』により生やした男性器で、女亜人ハーレムを楽しんでいる変態だからだ。

 

「女なんてめんどくさいだけじゃん……?」

 

「なーに童貞拗らせた大学生みたいなこと言ってんだ?大体にして俺も女だぜ?」

 

「……ハハッ」

 

「お前なーっ!そういうのがなーっ!一番なーっ!!!」

 

「いや……、その、マジで言ってる?俺、岸原さんのことは男だと思って接してるんだけど?」

 

「俺は女の子が好きなだけで、俺自身は女だと思ってんぞ?」

 

「……チンチン生えてるのに?」

 

「チンチンは別に関係ねーだろ?!ほら、今流行りのポリコレってやつだよ!」

 

「あ、はい」

 

そんな馬鹿話をしている二人の元に……。

 

「お待たせしました、ご注文の漫画肉です」

 

と、1ポンドくらいありそうな骨付き肉がドンと出された。

 

そう、ここは横浜租界の居酒屋である。

 

「おっ、きたきた!ここの漫画肉はめちゃうまなんだよ〜!」

 

と、むしゃりと肉をワイルドに噛みちぎる岸原。

 

この漫画肉は、ダンジョンの四十階層レベルの大型獣モンスター、マンモノスの肉である。

 

脚関節の肉を上手い具合に切り分けると、例のあの漫画でよく見る肉の形になるので、おふざけ好きな冒険者に大人気だ。

 

「ええ……?これ大丈夫?中まで火が通ってる?」

 

fushianaはそう言って、小さなテーブルナイフを手首だけで一閃。

 

超速の技はテーブルナイフでも有効で、漫画肉はバラバラの一口サイコロステーキに分解された。

 

「あっ!そりゃないぜ!こういうのは雰囲気を楽しめよー!」

 

「山で腐ったもん食って死にかけたトラウマから、俺はこう言う変な料理が食えなくなったんだよ!」

 

「じゃあダンジョン産食品は全部ダメじゃん?!」

 

「いや、『鑑定』かけながら食ってるから……」

 

「なんなの?暗殺者にでも狙われてんの?」

 

「暗殺者ではないけど……」

 

ビールを飲み交わす二人の間に、いきなり、ぴょこんと。

 

小柄な女が飛び込んできた。

 

「師匠ー!あっしに冒険の秘訣を教えてくだせえー!」

 

緑色の髪をした、褐色肌の女である。

 

「……何これ?」

 

「知らん!」

 

「fushiana師匠の弟子、marronってえもんです!」

 

「認めてないぞ?!」

 

このご時世で、人口が異様に増える理由は、まあ、こういう訳だった。

 

とにかく、女側が押せ押せで、既婚者でも強ければ妾になろうとする……。

 

そうでなければ、強い女やレズビアン。彼女らは自分好みの男や女を亜人で揃えて侍らせて、孕んだり孕ませたりと大忙し。

 

特に、fushianaのような、ダンジョン黎明期から戦い抜いているベテラン高レベルが独身を貫くなど、不可能に近かった……。

 

「いや……、本当に勘弁してくれ!俺は女が苦手なんだ!」

 

「師匠ぉ〜!見捨てないでくだせえ〜!」

 

「ってか、お前みたいな変な女は万が一にも嫌だ!お前と付き合うくらいなら岸原さんと付き合うわ!」

 

「俺はバリタチだが良いか?」

 

「いや掘られるのはちょっと……」

 

兎にも角にも、日本は平和だ。

 




A:元気いっぱいです。



はいっ、書き溜めもうない!もうないよ!終わりだよ!終わりー!!!

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