ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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俺の代わりに誰か書いてくれ……。


117話 十五年の出張明けで

「ってか、十五年は流石に長過ぎっすよー!寂しかったっす〜!」

 

そう言って、俺に抱きついてくる杜和。

 

まあ、気持ちは分からんでも無い。

 

ちょっとくらいゆっくりするか。

 

 

 

俺は久々に、杜和と二人で街に出た。

 

子供?

 

今は亜人保育士が一家に一人いるのが当然の時代なので……。

 

何にせよ、しばらくは休暇だ。

 

新しくできた温泉街や、景色のいいダンジョンなんかを巡りつつ、杜和に新しいガキを仕込んでおこう。

 

まずはここ、地元である下野大異界からだ。

 

この下野大異界は、栃木の日光に存在する異次元世界で、その広さは大体北海道三つ分ほど。

 

豊かな山林と河川に湖、そして温暖な気候が特徴か。

 

最早一つの国と化している節があるが、特に「私が天に立つ」的なことをほざき始めるアホが出ないのは謎だな。

 

「そりゃ、他人から奪うより自分で稼いだ方が早いからじゃないっすか?」

 

そもそも、他人から奪おうなんて思考の奴が強くなれる訳ないし……とは杜和の言。

 

「そうでもないだろう?他人を支配しようとしたり、奪ったりしようと考える奴は強いんじゃ……」

 

「そりゃ、地球上の富の総量が一定ならって前提ではそうっすね。でも、ダンジョンからは、時間とコストはかかるとは言え、ほぼ無限に資源があるっすから……」

 

「ああ、なるほど。何もしなくてもまともな生活ができるから、わざわざ『金欲しさに』とかの理由で犯罪とかやらんでいいのか」

 

「そっすね。このご時世に、人様から奪おう!とか考える奴って、相当なアホかサイコパスだけっす」

 

ふむ……。

 

「そもそも、国家予算も、自衛隊が訓練で潜っているダンジョンの資材を売却すれば、八割方ペイできちゃうんすよ?更に、お金の使い道がない先輩みたいな極まった冒険者達が、国債購入とか寄付とか言って、国とか各業界とかにじゃんじゃんお金を渡しちゃうじゃないっすか。今もう、消費税も取ってないんすよ?」

 

ああ、そうなんだ。

 

「じゃあ、相当なアホが犯罪やるんだよな?今の日本人は殆どが冒険者だから、ヤバくないか?」

 

「いや、ヤバくないんすよそれが」

 

「何でだ?」

 

「『国民の殆どが冒険者だから』っす」

 

ふむ……?

 

そんな時、歩いている道の側面にあった、『回転寿司スシロウ』のドアがぶち破れる。

 

「ぐあああっ!!!」

 

道路に放り出されたのは、顔面がベコベコに耕されたガキだった。

 

店からは、強化魔法によってゴリラのような上半身になった青年が、拳を鳴らしながら現れる……。

 

杜和が「ヨネヅのアレだ」などと言っているが、意味は分からん。

 

「おいコラこのクソガキ!うちの店でよくも舐めた真似をしてくれたな!物理的に!!!」

 

「ゆ、許してェ!俺はちょっと、ふざけた姿を動画サイトに投稿して、有名になりたかっただけで……!」

 

「うるせぇ!落とし前をつけてもらう!!!」

 

「ぐぎゃあああ!!!!」

 

どうやら、アホそうなヒョロガキは、店の中でふざけて回って迷惑をかけて、その様を動画投稿サイトに投稿しようとしたらしい。

 

で、たった今、それを見咎めた店員がそのヒョロガキを半殺しにして土下座させ、その姿が動画投稿サイトに投稿されたようだ。

 

それを見ながら、杜和が話を続ける。

 

「……つまり、舐めた真似をしたらボコられるのが当たり前なんすよね」

 

えぇ……?

 

「いや、だが、正しい方が強いとは限らないんじゃないか……?」

 

「正しい方が強いっすよ?」

 

うーん……?

 

「今のご時世、就職なんてしなくても、福祉で底辺冒険者やってれば人並みの生活はできるんすよ。逆に言えば、就職してる人達って、凄く真面目でまともな人なんす」

 

「真面目だとなんで……、ああ、そうか」

 

確か、今の時代は、就活の時に「どれだけ戦えるか?」とか、「レベルはどれくらいか?」とか聞かれるんだったな。

 

「そう言うことっす。『動画サイトに不謹慎動画を投稿して有名になろう!』みたいなことを思いつく底辺無職が、真面目にレベル上げをしてきた社会人に勝てる訳がないんすよね」

 

なるほどな……。

 

「因みに、あんなに殴っていいのか?」

 

「あ、今は法律が変わって、正当防衛の範囲が拡張されたりしたっす。殴り合いの喧嘩とか果し合いとか、そう言うのは周りの人を傷つけなきゃセーフになりました」

 

あっ、そう。

 

「まあだから、舐めたことを言うといきなり斬られたりするんで、みんな言動には気を遣い始めたっすねえ」

 

うーむ……、よくできているな。

 

万一の時は命のやり取りになるが、簡単にふざけたことをやる奴は大半が雑魚だから一蹴されるので問題ない、ってことか……。

 

「じゃあ、万一、強い犯罪者とか出たらどうするんだ?」

 

「感知系の冒険者が絶えず国中を見てるっすからねえ……。自衛隊のもっと強い冒険者に要請が来て、速攻で制圧されて終わりっすよ」

 

……まあ、そうだよな。

 

もう今じゃ、自衛隊の上位レベルなら条件付き転移魔法くらい簡単にやってくるから、本当に言葉通りに一瞬で制圧されるか……。

 

最後の最後、最悪の場合は俺が出れば全て終わらせられるしな……。

 

「凶悪犯罪とか起きたら止められなそうだが……」

 

「まあ……、強いサイコパスが奇跡的に郎党を組めば、そんなこともあり得るんじゃないっすか?今の所何もないっすけど」

 

そうか……。

 

「自衛官は謀反とかしないのか?」

 

「今の自衛官の給料と立場を考えると、不正する意味がないっすねえ……」

 

「理屈じゃないだろ、そういうのは」

 

「うーん、だとしても、ほぼ居ないっすよ?自衛隊の100倍くらいの倍率と、難しい試験に厳しい素行調査を潜り抜けて、やっとのことで自衛官になって……。それで高い立場とお金を得てまで、リスクだけが無駄に大きい不正をするって、意味不明っすからね」

 

……そんなもんか。

 

不正は馬鹿しかやらないが、そもそも自衛隊は今やそんな馬鹿を採用しないってことなんだな。

 

まあ、その辺りは良いだろう。

 

治安維持は何故かできているので、何か起きてから考えれば良いな!

 

俺には関係ない。

 

問題があれば、問題がある奴を適当に斬れば良いだろう。

 

そんなことより、街を見て回ろう。

 

「この辺りもすっかり、建物で埋まったな」

 

「そうっすねえ。建築ラッシュで業界は荒稼ぎらしいっすよ」

 

「そうか……、確かに、今の日本は、異界も含めると北米より大きいんだったか?」

 

「はいっす。なんで、北米一つ分を建物で埋めると考えると、かなりのお金が動く訳っすね」

 

確かに、建築ラッシュと聞くと、「なんか儲かる感じなんだな」とは、経済素人の俺でも分かる。

 

何だかよく分からないが、ヤクザの漫画などで公金を使って何百億の施設をーだの、入札がーだの、そんな話を読んだ記憶があるからな。

 

アレだろ?政府の弱みを握って不正に権利を得て、大量の公金を横領するやつだろ?俺はヤクザ映画が好きだからよく知っている。

 

「だけど、飲食店には人があまり居ないな?」

 

「まあ、転送通販で即買えるっすからね……。今は、寛げる空間があるカフェとかが強いっすかねえ?」

 

なるほどな、そういう感じか。

 

「けど一応、『みんなで食事しに行く』ことには価値があるんで、飲食店そのものがなくなることはないらしいっす」

 

「確かに、レストランとかはサービスも含めて、みたいなところがあるもんな」

 

「そういうことっす。けど、直接お店に行く必要がないところ……、例えば雑貨屋とかは、もう全然ないっすねえ」

 

確かにそうだな。

 

となると、どんな店があるんだ……?

 

 




今は不審者の続きを書いてます。

時間がとにかくない。

ゴールデンウィークくん早くきてくれー!

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