さて、晩飯はどないしよか。
穀物が欲しいな。でも自生してる穀物なんてそうそうないし……。
いや、でんぷんが摂れれば大丈夫かね……、そういや栗があったっけ。
「双夢ちゃん」
「はい?」
「この辺に栗の木を生やしたいんだけど、できる?」
「十分ほどいただければ」
「大丈夫?無理してない?」
「大丈夫です。今晩は栗ですね!」
十分後。
「うおお……」
栗の木が生えて、栗がわさっと実っていた。
桃栗三年〜とは何だったのか。
「あれを取れば良いのね?」
啞零が気を利かせて収穫してくれた。
啞零のサイコキネシスは、栗の殻をバリバリと破って、中の実のみを取り出す。
よし、では栗と、捕まえてきたキジニワトリの肉を食おう。
「えーまず、栗はアク抜きしなきゃならないんだけど」
「ええ」
「『分解』でアク抜きします」
「……あんたのそれ、ズルくない?万能よね?さっきも、川の水を分解して純水にしてたし」
「ズルいよ。だから普段は使わない」
そうなんだよね。
俺は人生がスローライフ系オープンワールドゲームと認識して生きているのだが、能力に頼りすぎると難易度が下がりすぎてクソゲーになるとも思ってるんで、今みたいな緊急時以外は基本的に自重するぞい。
まあ、俺の本当の能力は、ズルってかチートだがな。
それは口に出さない。
「これでアク抜きして皮を分解した栗を……、双夢ちゃん、茹でといて」
「はーい」
俺は、俺の鞄に入れてあったサバイバル調理器具セットの中にある鍋を貸して、栗を茹でてもらった。
そして……。
「次は、要らない雄鶏を解体して食べまーす。遠くでやるんでグロシーンは見えないよ」
「待ってくれ」
お?
涼巴に呼び止められた。
「オレにも、解体の仕方を教えてくれ」
「やる気あるんだ?」
「おう、お前にばっかりやらせる訳にはいかねぇからな」
えらーい。
「じゃあ、僕も」
「あたしも……」
と、なんだかんだで全員が来た。
じゃあ、やるか。
「えっとね、普通のブロイラーからは1kgちょいくらいの肉が取れるんだけど、このキジニワトリはデカいんで2kgくらいは取れるね。んでまず、こうやって首を落として」
鉈でダン!
「「「「「ひええ……」」」」」
「逆さ吊りにして血抜きすんのよ。まあ今回は血液を『分解』しちゃうけど。で、次は内蔵抜いてくね。内臓は、抜くときに傷つけて中身が漏れると、糞の匂いが肉に移るから気をつけて。こんな感じで……」
内臓デロン!
「「「「「ひいい……」」」」」
「そしたらこうやって薄皮を切ってもも肉を……」
まあほら、ニワトリの解体ってそんなグロくないじゃん?
そんなことを言いながら、肉をぶつ切りにして、採取した行者ニンニクと炒める。
それと並行して、鶏ガラとポロネギっぽいの、行者ニンニクのあまり、それと生姜っぽいのを煮込んで、鶏ガラスープを作っておく。
完成したら、鶏ガラスープ成分から水分のみを『分解』して、粉末にしておくこととする。
これは今度使う。
さて、今晩の夕食は、鶏肉と行者ニンニクの炒め物と、茹で栗だ。
「うう……、あのシーンを見た後だと、なんか複雑ね……」
啞零がなんか言ってる。
「食わないのか?」
「食べるけど……。あ、美味しい!」
食うんじゃん。
「栗なのに、あんまり甘くねぇな」
涼巴が言った。
「ん?ああ、栗は、収穫してから一、二週間くらい冷蔵庫に置いとくと甘くなるぞ」
「へえ、そうなのか」
「時間が経つと、デンプンが糖に変わるんだ。まあ、今はご飯とか芋の代わりに、ホクホクした栗を食べて欲しい。しばらくは、縄文人よろしく栗が主食だ」
「ふーん、まあ、美味いから良いけどよ」
そう言って、肉を食う涼巴。
「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」
はい、じゃあ、寝るか!
と思いきや……。
「水浴びしたいんだけど、良い?」
と啞零が聞いてきた。
「冷たいと思うぞ?」
「う、そうよね。でも、もう限界なの!」
うーん。
「手ぇ出せ」
「え?ええ」
手を握る。
「よし、良いぞ」
「……何したの?」
「お前の体表にある汚れを『分解』した」
「え?本当?」
「おう、バッチリだぞ」
「そう言われると確かに……、うん、さっぱりしたわ!」
よしよし。
「あ、あのっ、私もやってもらえますか?!」
お、双夢。
「オレも頼む」
「僕も」
「あたしも」
全員きた。
「良いけどよ、俺に触るってことは、分解されるかもしれないってことだぞ?怖くないのか?」
「ははは、ナイスジョーク。一緒に過ごしてまだ一週間も過ぎてないけれど、君はそんなことしないって信じてるよ」
と正那。
信用し過ぎじゃねーかな?
まあ、やるけどね。
イケメンのお姉さんに養われてえんだな。