ブラウンの髪に碧の瞳。
髪は短め、活発ながらも儚い感じの、矛盾したイメージを持つ美少女。
一級能力、『千里眼(クレアボヤンス)』の観目南寧(かんのめなんね)ちゃんだ。
この子は、ここに来てから定期的に、俺にこう言う。
「あのな、あのな、海岸から五十キロ先にな、大陸があるんよ。でな、大陸には、おっそろしい化け物がおるんよ」
と……。
「ウチ、怖いわ。守ってや、お願いや、あんちゃん!」
怖がりだなー。
「大丈夫だ、そのモンスターとやらは、俺がここに来て二ヶ月も過ぎたのに、こっちに来ていないんだろ」
「せやけど、怖いやろ……」
「そうか?」
「せや!ウチは、あないな恐ろしい化け物が近くにおるなんて、それを考えるだけで身の毛もよだつわ……!」
身の毛もよだつ?
ムダ毛なんて一本も生えてない美少女能力者が何言ってんだか。
俺は、南寧のズボンの前側を引っ張る。
「身の毛、よだってねえぞ」
「んなーっ?!!!何すんねんこのアホーっー!!!」
思いっきりビンタされた。
酷くない?
「あ、ご、ごめんな?つ、つい……」
「あーあ!傷ついたわー!もー駄目!あーあ!あーあ!」
被害者です!僕は被害者ー!
「ご、ごめんて!ウチも、まあ、おっぱい突かれるくらいは慣れたんやけど、その、ア、アソコを見られんのは……」
「ケチケチすんなよ」
「いやするわ!!!」
「俺のも見るか?それならイーブンだろ」
「何言うてんねーん!!!」
いかんのか?
「全く……、あんちゃんはホンマに頭おかしいで?」
「過分なお言葉です」
「いや褒めとらんわ!」
「結構ふわっとしてんだな。お前の髪質に近いのかね?あと薄めか。綿みたいな感じだったな」
「へ?何の話や?」
「お前の下の毛の話だぞ」
「いてまうぞコラァ……!」
おー、怖い怖い。
「で?今日はそれだけでいいのか?そんなに怖いなら添い寝でも……」
「あんちゃんと添い寝したら、明日には大人のオンナにされてまうわ!そうやなくて、また新しい危険があるんや!」
ほー、危険が危ない。
「そのな、この村に、大きな化け物が向かって来とるんや!危険やし逃げよ?な?」
ふむ、化け物。
「化け物とは?」
「6mくらいある熊の化け物や!手が太くて長くて、猫みたいに顔が短くて、大きな牙の、黒い毛並みの……、とにかく化け物や!」
6mか。
「それくらいなら何とかなりそうだな」
「ならへんよー!!!」
なるなる。
俺は、南寧を小脇に抱え、そして、警備部門を呼び寄せた。
「創壱、何事だ?」
と、男言葉で俺に訊ねてきた、警備部門の帯流に。
「襲撃があるそうだ」
俺が答える。
その瞬間、ざわめきが広がる。
「静かにしろ!うろたえるな!」
帯流が警備部門の人々に命じた。
そして、咳払いをして、もう一言。
「それで、相手は?」
「大したことないよ、6mくらいの熊だそうだ」
「何匹だ?」
俺は、小脇に抱えた南寧のケツを叩く。
「ひぃん?!に、二匹や!多分、つがい!」
「二匹だとよ」
「なるほど、二匹の大熊か」
「今回は、警備部門に実戦経験を積ませるために、是非戦ってもらいたい。どうだ?」
俺が提案した。
実際問題、警備部隊は、日頃から訓練をしているのだから、こう言う時に役立ってもらわねば困るんだよな。
タダ飯食いみたいなイメージが付くのは良くない。
ここらで一発、価値を示してもらわなけりゃ困るんだがな。
「ふむ……、まあ、6mの的に当てられないほどではないはずだ。お前ら、やれるか?!」
帯流が、警備部門のメンバーに向かって言った。
「え、ええと……」
「怖いんだけど……」
「が、頑張ります……」
しかし、反応は芳しくない。
「何だその態度は!気合が足りんぞ!声を出せ!えいえいおー!」
「「「「「「お、おおー!」」」」」」
大丈夫なのかね、これ。
肆嘉と南寧が叫んだ。
「来たでやんす!」「来たで!」
大熊だ。
『『ガアアアアアアアッ!!!!』』
こちらを獲物だと思っているようだな。
馬鹿正直に走ってくる。
「毒矢だ!構えーっ……、てーっ!!!」
帯流の指揮で三十人の警備部門のメンバーが、トリカブトの毒矢を一斉に放つ!
『グオオオオッ?!!!』
お、ちょっと怯んだか?
だが、身体がデカ過ぎて毒が回りきらないようだ。
命中弾もそう多くはない。六割くらいのヒット率。だが、トリカブトの毒は効くはずだ。
お?
知恵がそれなりに回るのか……、いや、本能的なものなのか、オスがつがいのメスを後ろに隠して、そのまま向かってきた。
ジェットストリームな攻撃だ。二体だけど。
「次!構えーっ、てーっ!!!」
次弾……、だが、慣れなくてテンパった子らが半数。実際放てたのは半分だけ。
十五の矢のうち十一本くらいが、オスの大熊に突き刺さる。近いからな、さっきより命中率も高い。
帯流が放った一矢は、上手い具合にオスの大熊の右眼を貫いた。
『ガガフーーーッ?!!!』
さしもの大熊も、目は弱かった。
長細い腕で顔を押さえて、一瞬足が止まる。
狙ってやったのかね?カックイイじゃーん。
「よし!怯んだぞ!次は超能力攻撃だ!力を貯めろ!」
そして……。
「超能力、放てーっ!!!」
『グガアアアアアッ!!!!』
電撃、火炎、真空波。
超能力攻撃がオス熊を貫いた。
致命傷だな。
だがどうだ?
後ろのメス熊が来るぞ?
「油断するなっ!次が来る!」
あー?
うん、間に合わないかな?
「「「「「「きゃああああっ!!!」」」」」」
前列が悲鳴を上げる。
その瞬間、俺は駆け出して……。
「シャイニングフィンガーである!!!!」
『ガ』
シャイニングフィンガーをメス熊の脳天に放ち、首から上を『分解』した。
始原の龍神バハムートに転生した理系大学生ニキの話。
宇宙の始まりとともに生まれたバハムートに転生。
暇を持て余して魔法を創り出し、数千億年かけて宇宙の全てを解き明かす。
その過程で、神の子たる『龍王』を四体創造する。
その後、『陸神』ベヒモス、『海神』リヴァイアサン、『空神』ジズの三体の神が生まれて、地球、海、大気が生まれる。
バハさん、ベヒモスとリヴァイアサンとジズを捕まえて、魔法を教え込む。
人化の魔法を覚えた三体の神を侍らせてイチャイチャする。
やることないので、遠い記憶の最中にある地球のような世界になってくれることを祈り、生き物を作り始める。
バハさんは眷属たる『ドラゴン』を作る。バハさんの子供である龍王達は『エルフ』『ドワーフ』『ハーフリング』『ジャイアント』を作る。三体の神は『獣人』『魚人』『天使と魔族』を作る。
バハさん達は、シムシティの感覚で創造物達と遊んだり、魔法を教えたりしつつ、星に自然や生物を放って暮らす。
飽きて眠りにつく。
すると、猿が進化して人類になってた!
みたいな。
そこから、一般通過下級ドラゴンのフリして人と縁を結んだり、人のド下手くそな魔法を見て爆笑したり、魔王とかいう奴が暴れてるのを観察したりして遊ぶよ。