また寒くなった?
オレの家は、バイクの修理工だった。
なんてこたぁねぇ、薄汚い小さな田舎のバイク屋だ。
生活はカツカツで、小遣いなんてろくに貰えた試しがねぇ。
周りの女達は、親から色々買い与えられて、やれ化粧だ、やれ服だと可愛がられていたみたいだが、オレん家にはそんな余裕はなかった。
そうなると、自然に、遊ぶおもちゃは家の中に転がってるバイクになって、周りにいるのは男ばっかりだった。
そうやって、男共に囲まれて暮らして、いつの間にか『オレ』だとか言うようになって。
『政府の人』とやらに脅されて、あっさり俺を手放した親と別れて、FB学園に通っていたオレは。
熱方涼巴。
『炎天氷獄(サーモルーラー)』の涼巴だ。
能力をはっきりと自覚したのは小3の時だ。
それまでのオレは、なんとなく、暑い時に涼しく、寒い時に暖かくする程度に、無意識で能力を使っていた。
はっきり、人を蒸発させたり凍らせたりできるくらいに強い能力だと自覚したのは小3の時で、あの時はうっかりボヤ騒ぎを起こしちまった。
公園の木製遊具をの一部を灰にして、オレは初めて能力を自覚すると同時に、自分の力を怖いと感じた。
ただでさえその頃は、能力者が犯罪やらなんやらをやって話題になっていた頃だからな。
自分も悪者なんじゃないかと震え上がったもんだぜ。
だがまあ、親は子供をそれなりに見ているもんだ。そもそも、オレの周りだけ常に適温とかおかしいもんな、髪の色もこれだし、そりゃバレるか。
そうして、親に売り渡されてFB学園に通うオレだったが、FB学園では特に問題はなかった。
元からそこそこに貧乏していたオレは、FB学園の生活でも特に困ることはなかった。後から聞いたが、睦みたいな金持ちはFB学園の環境が悪くて驚いてたらしいぜ?
まあなんであれ、オレはFB学園で自由に暮らしてた。
将来のこととかも、よく分からねーしな。
そして、一度日本に帰郷させられて、またアメリカにとんぼ返りってところで……、これだ。
なんかよく分からねーところに落とされた。
ほら、あれだ……。
タイトルは忘れたけれど、恐竜に襲われるパニック映画みたいな……。
つまりは、何つうんだ?そう、ジュラ紀!
ジュラ紀みたいな森に落っこちちまった。
オレは、ぶっちゃけ、ビビっていた訳じゃねーけど、驚いちまってなんにもできなかった。
でもそこで、建国がどうこうとか言う奴が出てきた。
アイツも、まあ、頭はおかしいけど、いち早く動いた辺りスゲー奴ではある。
けど、創壱は建国派の奴よりもずっとスゲーんだ!
アイツはまず、ちゃんと飛行機の燃料とエンジンを壊してきたらしい。
普通、今の時代だとアンティークカーでもない限りは電気エンジン車とかの電動車ばっかりだから、飛行機が燃料を使っていることとか気づかねえんだ。
ああ、飛行機はまだ燃料で飛んでるのは、電気エンジンだと推力が足りねえかららしいぞ。
とにかく、飛行機の燃料なんてもんは、今はかなり特殊な高エネルギー燃料を使っているから、万一引火したりすりゃ大変なことになる。
それにいち早く気付いて対処した創壱は、とんでもなくクレバーだった。
その後も、貨物庫をこじ開けて荷物を回収して、更に飛行機のボディから金属の道具を作ってた。
オレの能力はエネルギーの操作であって、工作とかはできねえ。
ああいう、手先が器用で頭も回るスゲー男になら、ついて行った方が良いと思って頭を下げた。
それが結果的に大正解だったんだよなあ……。
「はふ、はふ……、美味え!」
「そりゃ良かった」
海に潜って魚介を捕らえ、野山を駆け回り獣を仕留め、土を弄って作物を収穫する。
木々を切り、家を建てて、家畜を育てる。
現代社会ではなんの役にも立たない技術だけど、今は何よりも大切な能力だ。
こんな世界でこんな良い生活できるのは、確かに全員の頑張りもあるけど、一番は創壱のおかげだ。
「このコリコリするやつ、なんだ?」
「ああ、そのシューマイにはホタテの貝柱を刻んで混ぜたんだよ。美味いか?」
「おう!美味いぜ!」
料理もできる!力も強くて背が高い!おまけに顔もいい!
オレが地元でつるんでた不良気取りの雑魚共なんて、今思えば、この創壱って色男と比べりゃずっと格下だったな。
地元にいたら、親の紹介とか言って、雑魚い不良気取りのクソガキの嫁にされてたと思うと怖気が走るぜ。
好きだったバイク弄りができねぇのが不満っちゃ不満だが、それでも毎日旨い飯が食えて、創壱に構ってもらえて、程々に働いて暮らせるんだ。
こんなに幸せなこたぁねぇよ。
「旨かったぜ!ごちそうさん!」
「おー、皿はそこ置いといてくれー」
「おう」
そうして食後のオレは、管理責任のある氷室を見回りする。
家……、ロングハウスを出て、外にある石造りの建物の中に入る。
ここの地下が氷室になっていて、ここに氷を置いて、オレの能力で温度を下げて、冷凍庫にしているんだ。
それとは別に、家の中にも冷凍庫があるけどな。
「能力……、ヨシ!」
指差し確認っと。
氷室には、冷凍された獣の肉や魚、角切り野菜なんかがある。
因みに、この氷室の上に立つ石造りの建物は倉庫で、倉庫には塩や砂糖とかの常温で保存できる調味料がある。
よし、氷室の確認は済ませたな。
あとは、クーラー代わりにその辺に冷気を置いてきてやるか……。
「すーずはちゅわーん」
そう思った瞬間、いきなり後ろから、胸を鷲掴みされる!
「にゃああっ?!!!な、何しやがるっ?!!!」
案の定、乳を揉んできやがったのは創壱だ。
……だがまあ、エロい目で見るだけで手出ししてこない腑抜けた地元の不良モドキと比べれば、ストレートに性欲を向けてくる分だけ清々しくはあるな。
けど、一発殴っておく。
「あらまあ、夏なのに元気いっぱいだね」
「何なんだよ?」
「俺も元気いっぱいだぞ。見るか?」
と、自分の股間を指差す創壱……。
何言ってんだこいつ?!
「み、見ねえよ!」
と、とは言え、創壱のモノに興味はあるんだよな……。
よく考えれば、男のモノって見たことねえや……。
「……割とムッツリだよな、お前」
「な、ななな、何言ってんだこの野郎!!!」
クソ、こいつ、視線とかに敏感なんだよな。
つい、股間を凝視したのをバレちまった。
「共同生活だとオナニーもできないもんなあ、大変そうですぐべっ」
「う、うるせー!何の用だよ?!!」
「アイスクリーム作りたいから手伝ってくれ」
「なら最初からそう言えよ!セクハラを挟む意味は?!!」
「楽しいだろ?」
「楽しくねーよ!」
「そうか?俺はお前と話すのが楽しいぞ」
なっ……!
そ、そんな、のは……。
「そんな……、言い方は、卑怯だぜ……」
「ははっ、お前も可愛いなあ。ほら来い!」
「ひゃわあ?!」
うわあっ?!
抱っこされた!
うわ、腕太っ……、血管ゴツゴツで男らしさヤバッ……、フェロモン臭ヤベェ……!
クソ、クソ!
惚れた方が負けって事かよーっ!!!
ゴールデンウィーク中の外出先どうするか……。
引きこもると不健康だしなあ。
そんなことより、なんもしないスローライフ主人公の話、割とマジで書きてえぞこれ。
一応最初は、創造スキルも、おにぎり一つ作っただけでMP切れしちゃうくらいなのね?だから、最初はレベル上げをする必要がある。
そして、神様転生なので、神がスキル欄を勝手に弄って、解除不能の厄介スキルである「運命神の悪戯」を付与されるのだ。
神は、高い魔力を払って地球の神から、良質な魂である主人公を購入した。そして、購入の目的は、自分の世界に放流して世界の停滞を打ち破ること。それは、技術の発展でも人助けでも戦乱でも、とにかくなんでも良くて、停滞した世界を動かしてくれれば何でもよし!
……しかし、主人公はガチでなんもやらん!強制スキル「運命神の悪戯」で、強制的に厄介ごとに巻き込まれる運命にあるのに、全ての運命をぶち破って引きこもる!
業を煮やした神様達は、他の地球人を購入し、スキルを与えて世界に放流する……。
ある神は、「あの非道な男(主人公)を殺してしまえ!」と命じ、またある神は、「あの狂った男(主人公)には関わらず、あの男の代わりに世界に変革を齎しなさい」と命じる……。
一方で、神々に反逆する邪神達は、地球の犯罪者の魂を使って、敵対転生者である「魔王」を作り、世界に放流したり……?
引きこもり主人公vs転生者vs魔王!!!
三つ巴の形になるな……。
まあ、転生者はまともな奴とは和解するけどね。
魔王達とは和解不能。ガチの犯罪者の転生体で、しかもモンスターに転生してるから。
見てえ……、見てえんだよ!比古清十郎とかロンベルクとか亀仙人とか玄海師範とか、なんかそういう、山奥とかに隠れ住んでる社会不適合有能キャラみたいな奴が主人公の話をさあ!!!