隣国行きの乗合馬車に揺られる俺達。
ガタガタ、ガタガタ。
「「あ"あ"あ"あ"あ"あ"」」
ガタガタ、ガタガタ。
「「あ"あ"あ"あ"あ"あ"」」
「……どうした、ニイちゃん達?」
乗り合わせた知らんおっさんに胡乱な目で見られる。
「ケツがいてぇんですわ」
俺が答えた。
中世ナーロッパの馬車は、チート転生者さんがいない限り、サスペンションとかそういうのがない。
となると、ケツが壊滅的被害を受ける羽目になる。
馬車の外では、リンドが召喚した黒騎兵マルコが馬で並走している。最初は俺達も馬に乗ろうかなとか考えたが、訓練期間が足りないから諦めたんだよな。
「はっはっは!馬車は初めてか!俺も最初の頃は、よく尻を痛めたもんだぜ!」
でっぷりと出た中年のビール腹を揺らしながらそう言ったおっさんは、商人らしい。
「俺達はシティーボーイなんでね」
「都会っ子だあ?それが何で外国に?」
ほーん?
横文字は類似した言葉に置き換えられるのか。
「おいおい、おっさんよ、あんた何年商人やってるんだ?人の事情に首を突っ込むと痛い目に遭うぞー?藪を突けば蛇が出るってな」
「犬も歩けば棒に当たるってか?」
ふーん?
諺も通じる、と。
こんな調子で、おっさんから情報を引き出す。
「にしても、聞いたか?」
「何をだよ?」
「勇者様だよ!」
「ああ、街中で噂になってるな。俺は興味がないが」
あ、因みに、めんどくさいことになると嫌なんで隠す方向で行きました。
服とかも全部買い替えて、一般人っぽい格好してます。
我々はオタクガチ勢なので、コスプレも嗜むのです。
毎年コミケに出てます。
俺は絵も描けるんで、本も売ってます。
売ってる同人誌の内容?
リンドとコスプレしながら、好きなアニメの健全な本を売ってて、内容は、好きなアニメキャラが延々と料理を作って食べるって本だね。レシピ本としても使えるから、割と結構売れてるよ。
あとは、俺達は旅行が趣味なんだけど、旅先で撮った写真集とかも売ってる。
それと、同人活動については、俺は動画制作、リンドは小説執筆もやるな。絵は二人とも描けるので、毎年夏と冬に出す同人誌は共著だ。
俺はまあ、学校にはバレてないが、バーチャルユウチューバーとしてそこそこ有名だし、リンドは『小説家になれる』で書籍化した経験があるぞ。
で、勇者様だっけ?
とんでもねぇ、あたしゃ勇者様だよ!とは言えねえな。
と、俺がつれない態度をとっていると……。
「興味がねえってこたぁねえだろう?昨日のお披露目を見たか?」
としつこく聞いてくる。
「お披露目ねぇ……。あんなに人混みでいっぱいじゃ、何にも見えないだろうに」
と、俺は適当なことを言っておく。
「ははは!違いねぇ!俺も見に行ったけど、ちょっと見えただけで、詳しくは分からなかったぜ!」
ふーん。
「にしても、魔族と戦うっつってもよ……、本当に勝てるのかよ?」
神妙なツラをした俺が言った。この手の演技は得意だ。
「さあなぁ……。でも、少なくとも魔族が減ることは良いことなんじゃねえのか?」
と、おっさんは言った。
「そうなのか?魔族にも良い奴がいるとは聞いたが」
「……それ、この『アリスティア王国』で言うのはやめた方が良いぞ?隣の『ハシュマル帝国』ならまだしも」
そうだったな。
この国は、魔族に異様なまでの憎悪を向けているんだったな。
その理由は、このアリスティア王国は、この世界で最大の宗教である『サスラ教』を国教に定め、一切の異端を許さないからだ。
サスラ教では、魔族は全て憎むべき敵であると教典に記されている。
故に、この国の中には魔族は一人もいない。
物好きな貴族が奴隷にして飼うとかもない。マジでモンスター同然の扱いだから、見つけ次第殺せ!って感じらしい。
「おっさんは、魔族を殺せとは言わねーのか?」
「んん……、まあそりゃ、俺は生まれは別の国だしな。俺の祖国じゃ、魔族もそこそこいたし……」
ふーん。
魔族……。
この国にはいないから会ったことはないが、この世界では、エルフやドワーフ、獣人なんかも全て魔族扱いらしい。
まあ、肌の色くらいで差別するのが人間って生き物だからな。さもありなん。
その辺はまあ、別にどうでも良い。
魔族が嫌われてるから何?みたいな。
いやそりゃ、正義感ビンビンマッチョでオエオエオの人は突っかかるのかもしれんけど、俺は自分に実害のないことはどうでも良いしなあ。
まあ、親か……、リンドが困ってるならできるだけ助けてやろうとは思うけど。
っと……、もうそろそろ陽が落ちるか。
「リンド、飯にしよう」
「うん」
もうマジで頭おかしなるで。