ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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生きるのってこんなに辛いんだな。


5話 神アイテム

あ、俺の屋台は、外にいるマルコの馬に接続して、牽引してもらってるぞ。

 

人前で屋台の召喚はまずいかなーって。

 

そんな訳で、今は夕暮れ前ってところか。

 

この世界には電灯なんてもんはないからな。

 

人々は、太陽が昇ると起きて、沈むと眠る。

 

そんな訳で、俺達も夜営の準備をする必要がある。

 

……とは言え、屋台の周りには絶対無敵バリアがあるし、マルコは睡眠のいらないその身体で寝ずの番をしてくれるそうだ。

 

まあ、なんだ。

 

ちょっとしたキャンプ?

 

寝具については、リンドのスキルで天幕と寝袋が出せたんで、困ることはない。

 

っと……、寝る前に晩飯だ。

 

「何食いたい?」

 

「簡単なもので良いよ」

 

ほーん。

 

「では、フォカッチャ・メッシネーゼで行きます」

 

シチリアのメッシーナって地方で作られるローカルフードだ。

 

アンチョビ、トマト、チーズ、そしてエンダイブが乗ったパンみてーなの。

 

「どうして旅館の息子がイタ飯作るの?」

 

「それはね、旅行先で盗んだ味を再現して遊ぶ趣味があるからだよ」

 

そんな感じで、材料を出す。もちろん、人の目があるから、さも「屋台の下にしまってました」みたいなノリで出すのが重要なポイントですわぞ。

 

「そ、それはっ?!!!」

 

おっ?

 

商人のおっさんが驚きに満ちた声を上げている。

 

何だ?

 

「『鑑定』!……ま、間違いねえ!『稚水龍の塩漬け』に『鬼神の実』、『アンブロシア』に『毒殺草』!!!」

 

「「……はいぃ?」」

 

おっと……、よく分からんことが起きた時、特命係みたいな反応をしてしまうのは僕達の悪い癖。

 

「『稚水龍』は海底にしかいない超希少なモンスター!『鬼神の実』は食べたものの筋力を強める!『アンブロシア』は神話にて語られる神の食物!『毒殺草』はあらゆる毒を抹消する毒消し草の最高峰!」

 

それぞれ、アンチョビ、トマト、チーズ、エンダイブってことかしらん?

 

「う、売ってくれ!頼む!全財産を譲る!女房と子供を売ったって良い!頼む!売ってくれえええっ!!!」

 

「「えぇ……」」

 

何ですかーこれはー?

 

うーん……。

 

俺は、トマトをかじってみた。

 

ふむ……?

 

「……おお!本当だ!筋力が増してる?!」

 

なるほどね?

 

この世界では、地球の食材はスゴイ・ツヨイ・パワーがある訳ですね。

 

ふむ……。

 

さっき、このおっさんは『鑑定』とか言ってたな。

 

つまり、そういうアレなんだろう。

 

「すまんが、貴重なものなんでな。売れない。故郷から持ち出したのが少しあるだけなんだ」

 

「そ、そんな……」

 

うわ、おっさんが崩れ落ちた。

 

はぁ……、これじゃ、商人一人が全てを対価にしてても買い取りたい食品を使って、「これから料理します!」だなんて言えねぇなこれは……。

 

しょうがない。

 

今日は普通にTKGって事で。

 

「そ、そそそ、それはっ!『光の種』と『不死鳥の卵』?!!!」

 

「はいっ!晩飯は抜きでーーーっす!!!」

 

 

 

俺達は、おっさんに見つからないように、こっそり果物を食べたりして飢えを凌ぎつつ、二週間かけて隣国に着いた。

 

「……リンド」

 

「……うん」

 

「「飯食いてぇ!!!!」」

 

おっさんがいなくなったのを良いことに、隣国の街外れでガッツリ飯を食って元気チャージ!

 

育ち盛りの高校生である我々にとって、断食は辛いのです。

 

われわれはかしこいので。

 

 

 

「あーーーっ、たくよぉ!あのおっさんよお!」

 

「迷惑だよねぇ、あれ。悪気はないんだろうけどさあ……」

 

食後、愚痴りながら会話をする我々。

 

「まあでも、道中でモンスターと戦えたから、私がレベルアップできたのは良かったかもね」

 

とリンド。

 

「お前戦ってねーじゃん」

 

道中のモンスターは、全て黒十字軍が始末していた。

 

「マルコの手柄は私の手柄!私の手柄は私の手柄!」

 

「ガキ大将か?いじめられっ子だった癖に言うようになったもんですなあ!」

 

「おっ、良いの?泣くよ?すぐ泣くよ?ワンワン泣くよ?」

 

「ベッドの上で鳴かせてやろうか?」

 

「水風船がないからねえ……」

 

そーなんですよねえ!

 

こんな世界でデキちゃったらやべーっすわ。

 

いかに俺が人間性最底辺のクズとは言え、流石に、テメーの恋人にガキ堕ろせとは言えんわ。

 

え?ああ、付き合ってるよ?

 

高校卒業したら結婚する予定だったよ?

 

収入?

 

ああ、仕事としては、うちの旅館の厨房で少なくとも三年は修行してから、その最中に経営について学んで……、って予定だった。

 

でも、それとは別に金は持ってるぞ。

 

前も言ったが、俺はバーチャルユウチューバーとしてそこそこ以上に有名だし、レシピ本も出版してそこそこ以上に売れてる。同人誌の収入も割と馬鹿にならない。この前は有名漫画の公式スピンオフの作者にも抜擢されたし。

 

正直な話、バーチャルユウチューバー一本でも、レシピ本一本でも、同人一本でも食っていけるんだよ俺は。

 

だから、リンド一人養うくらいは楽勝なのよね。

 

けど……、問題は、俺の持っている技能が、料理以外この世界で活かせねえってことだけどな!!!

 

まあ、何だ。つまりは、収入も安全も、全てが安定していない今、リンドを孕ませる訳にはいかないんですね。

 

早くメガトンコイン売って金を得なきゃ。

 

異世界でのガバは即、死に繋がる。

 

「はぁ……。にしても、これじゃ迂闊に料理とかできなくなったな」

 

「あの反応だと、質屋に食材を持っていくのもアウトっぽいよねえ」

 

うーん……。

 

「とにかくさ、その、何だろう……、『鑑定』のスキルを持つ人を仲間にした方が良くないかな?」

 

とリンドの提案。

 

「セヤナー」

 

その通りだ。

 

「あと、初めから調理済みのものを持っていけばバレないかも?」

 

「うん、その可能性もあるな」

 

よし、じゃあとりあえず、『鑑定』スキル持ちの仲間を探すぞ。

 




あーーーんもーーー!

書き溜めがさあ!全然ないんだよぉ〜!

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