で?俺達のステータスは?
『ケンエイ・クジョウ
レベル:10
人間
天魔料理長
体力:180
精神:100
筋力:150
耐久:100
器用:200
知覚:100
学習:150
意思:300
魔力:100
魅力:100
《屋台召喚:3》』
『リンド・クロハ
レベル:10
人間
黒十字軍団長
体力:220
精神:100
筋力:180
耐久:180
器用:130
知覚:100
学習:100
意思:200
魔力:100
魅力:150
《黒の軍勢:3》』
おほー、強い強い。あ、これ、ヨミを買った食事の前のステータスな。
食事後は更にガンガン伸びていってるからもうわからん。
「で、だ」
「ええ」
「これから、屋台をやります」
「ええ」
「屋台は、質を落としたホットドッグです!」
「おー」
そういうことになった。
「ところで、料理人のプライド的に、意図的に質の下がった料理を出すのってどうなの?」
「プライドは確かにあるが、本気を出して変な奴らに目をつけられて幽閉とかされたら困るしなあ……。命とプライドどっち取る?みたいなもんや」
はい、街中。
ここはハシュマル帝国って国な。
そこの辺境伯領。
街は、先日まで俺達がいたアリスティア王国と同じくらい栄えている。
辺境伯領って字面だけ聞くと、田舎貴族のように思えるが、それは誤りだ。
辺境伯領ってのは、外国のすぐ隣にある領ってこと。
外国が攻めてきた際に真っ先に戦う領である。故に、大きな戦力を持つのだ。
更に言えば、外国のすぐ隣にあるってことは、一番裏切られたら拙い存在でもあるからして、王家からの配慮も信頼もあり、特別扱いを受けているということでもある。
その地位は、公爵と伯爵の間、侯爵に匹敵するほどだと言う。
公爵と言うのは、要するに王族の分家であるからして、侯爵相当の辺境伯ってのは王家に次ぐ位置であるのだよ。
まあ、この世界もそうだとは限らないけどね!
はいはいはいはい、では。
先日の、黒騎兵に飯を食わせまくった回により、俺のスキルは更にパワーアップした!
レベル1で屋台&調理器具&食材召喚
レベル2で屋台武装召喚
レベル3で屋台変形
が、覚醒したのだ。
屋台変形とは、そのまんま、屋台が色々な屋台にトランスフォームするのだ!
移動の時はキャンピングカー型の移動屋台にすればオッケーだし、焼き鳥屋、ラーメン屋、クレープ屋にたこ焼き屋など、様々な屋台に姿を変えるのだ。
これで、今回は、アメリカでよく見るホットドッグの屋台にトランスフォーム!
……うん、アメリカでよく見る屋台とかパターンがありすぎてよく分からんだろうから解説しておくと、ステンレス製の台車に、ソーセージをボイルするお湯入れが内蔵されたタイプのやつです。
しかもこれ、外見も弄れるらしいな。
なので、見た目は木製にしておこう。ステンレスとかこの世界に多分ないだろうしな。
おっと、その前に……。
「なんか、店のロゴマークを設定できるっぽいんだけど」
「んー、じゃあ、剣と蛇のマークで」
とリンドが言った。
「剣永とリンドヴルムだからか?」
「そう言うこと!」
「割と厨二病ですわね」
「大人になれない私のわがままを一つ聞いてよ」
「金色やめろ」
「いやだって、他に適切なマークとかあります?」
「三角形六つと瞳」
「魔法律やめーや」
「ホルスの目」
「ホワグリは良い……」
「いっそのこと星条旗」
「盾投げキャップかな?」
うーん、良い案も思い浮かばないし、リンドの案で良いか。
下向きのロングソードと、それに絡みつく蛇。
「店の名前はどうするの?」
リンドが訊ねてきた。
うーん、そうだな。
「剣蛇亭で」
「捻りのない」
「シンプルだと楽」
俺は、屋台の変形機能を使って、屋台の側面に剣と蛇のマークと、剣蛇亭の屋号を刻んだ。
「はい、よーい、スタート」
はい、じゃあ、ホットドッグ屋やっていきます。
ホットドッグ屋って色んなパターンがあると思うけど、俺は一番楽な方式を選んだ。
即ち、ソーセージを湯で茹でっぱなしにしておいて、注文が来たらソーセージを湯から取り出して、山積みされているパンに挟み、ケチャップをかける方式。
これくらいだと、調理もほぼしてないし、材料も安物だから、バフ効果も低めでバッチリなのよ。
あ、コンロは何故か燃料なしでも点火されるし、紙ナプキンとか包み紙も調理器具の一部のカウントらしくて出るよ。
ティッシュも出るっぽい。
さて、どうかな……?
「……うーん?」
人が来ない。
どうしてだ?
「……あの、多分、何の屋台なのか分からないのかと」
とヨミ。
なるほど?
「呼び込みしてきます!」
そう言って、ヨミがピャッと飛び出して……。
「ホットドッグはいかがですかー?!美味しいですよー!」
と呼び込みをしてくれた。
はえー、自主性マンじゃん。
今の日本にいないタイプ〜。
「ホットドッグ?」「ホットドッグって……」「何だ?」
何人かの人が足を止める。
立ち止まったのは三人の男。
一人は斧を腰にぶら下げ、一人は杖を持ち、一人は弓を持っている。
「はいっ!ホットドッグと言うのは……、ええと……」
あ、説明してねーや。
「肉の腸詰をパンに挟み、野菜をすり潰したソースをかけたものだ」
俺が横から言った。
「聞いたことないな……」「腸詰って何だ?」「知らないな……」
うーん……。
「とりあえず、あんたらはタダで良いから食ってみてくれ」
そう言って、三人の男にホットドッグを差し出す。
「何だこの赤いの?血か?」「匂いはうまそうだ」「まあ、昼飯代が浮くなら万歳だね」
男達はどうやら、見るからに冒険者的なサムシング。
食においても冒険者だったみたいだ。
普通は、田舎の人って見たことない料理とかはあまり食べないんだがな。
三人の男達が、ホットドッグを口に運ぶ。
そして、パリッ!と。
ボイルされたソーセージ特有の、皮を破る音がした。
「「「………………!!!!」」」
三人の男は、驚愕で目を見開いた。
「「「な、な、何だこれ!!!うっめーーーっ!!!」」」
そのまま、ホットドッグをバクバクと、フードファイターのように食べてしまった。
そして……。
「もう一個くれ!」「お、俺も!」「俺も買うよ!」
と、猛烈な勢いで屋台の俺に購入を打診してきた。
「はいよ、一個で五十オルボスだよ」
え?
場末のホットドッグ一個で5ドルはぼったくり?
いやいや、この世界基準だと格安だと思うぞ?
俺も、何度か他の屋台に行ったが、どこも酷い出来だったからな。
さて、金は隣にいるリンドに回収させる。
手垢のついた銀貨を、食品を扱う俺が、調理中に触ることは許されないからな。
「はい、どうぞ」
「「「バクバクバクバク!!!」」」
そんな風にやっていると、まあ、目立つ訳だ。
「何だ何だ?」
「美味い屋台があるらしい」
「そんなに美味いのか?」
と、続々と人が集まってくる。
そして、三人の男達が、周りの人に美味いと宣伝する。
こうなればこっちのものだ。
「じゃあ、俺も一つくれよ」
「俺も」
「私も」
そして……。
「「「「「「うめえええええっ?!!!!」」」」」」
街には行列ができた。
今、ローグライク異世界転移ものを書いてるんだけど、追放してきたグループの描写を書けば書くほど辛くなってくるな。
まず、地震で殺された学校一つ分の人間が神の謎空間に招待されるじゃん?
そこで神にキャラメイクを命じられるのよ。で、主人公は、早々に転生先が自分のやり込んだローグライクゲームの世界だと割り出して、最強のキャラを作ってさっさと転移。
ヒロイン達が、主人公がハマってるゲームの世界だと気がつくのね。そして、千人以上いる高校から、目端の利く奴らが四十人くらい集まってきて、そいつらは主人公のプレイレポートについてヒロイン達から聞いて、強いキャラを作って転移。
他の奴らはヒロイン達の忠告を聞かずに適当なキャラにして転移。
主人公とヒロイン達の有能な奴らは、主人公の助言もあり、順風満帆な冒険者ライフができるのよ。
でも、主人公の言うことを聞かなかった連中と、大多数の日和見主義者達は、どんどん困窮して酷い目に遭う……、みたいな、そんな話なんですけどね?
世の中の人って大抵は日和見主義な訳じゃないですか。なので、日和見主義の大多数の無能達を酷い目に遭わせて良いものか?と悩んでいるんですよ。
感想欄で、「追放する側の描写が多いとそっちに感情移入してしまう」とあったので、今悩んでます。
いやまあ、お前ら全員無能!みたいなことを言う訳じゃないんですけど、ぶっちゃけた話、世の中って有能と言えるような人間なんて殆どいないじゃないですか。俺もバリバリ無能ですしね。
だから、無能な日和見主義者達の扱いについて悩んでるんですよねえ。
当初は、「中世レベルの倫理観の社会に来て、怖くて戦えないだのなんだの抜かすな死ねカス!」「ナーロッパでは判断力がない=死だからねちかたないね」って方針だったんですけど、もしかしたら「非がない人達が虐げられている!」みたいにとられるかもしれない……。
でも、よくよく考えたら、俺の書く主人公は、相手に非がなくても潰すときは潰すしなあ。
どうなんでしょう?