ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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イライラの塊。


10話 偉い人からのご招待

次の日、俺が、昨日屋台を出していたところに行くと……。

 

「あ、あいつだ!」

 

「ホットドッグってやつ!売ってくれ!」

 

「病みつきになっちまった!」

 

何十人もの人が出待ちしていた。

 

「ホットドッグ、売るよ!」

 

俺が叫ぶ。若干濁声で。

 

「月からマイクロウェーブが来そう」

 

リンドが呟く。

 

「「「「「「うおおおおおおっ!!!!」」」」」」

 

そして街人達が声を上げる。

 

 

 

「ンアーッ!チカレタ……」

 

「乙」

 

「お疲れ様です、主人様」

 

俺が、街外れの天幕で伸びをする。

 

今日は、「そんな来る?」みたいな、アホみたいな量の人が来たんだよね。

 

三百人は超えてたと思う。

 

大変な重労働だった。

 

まあ、若いんで体力はあるからヘーキだが。

 

ふむ……、にしても、そんなに美味いのか?

 

こんなもの、アメリカでは1ドルで食べられるんだが。

 

「とっても美味しいですよ!」

 

とヨミ。

 

はえー、そうなんだ。

 

まあでも、俺も、料理をすればするほど腕が上達している自覚があるし、味もどんどん良くなっていっているのが分かっているしな。

 

いや、本当に、不自然なレベルで加速度的に上手くなってるんだもん。流石に気付くわ。

 

俺は、自慢じゃないが、父親からは「本物の天才、百年に一人の才」とまで言われていた。

 

それは、身内贔屓じゃない。

 

実際、マジな話、親父の同期らしい板前やら何やらと会ったが、正直に言って俺の方が腕は上だった。何年も修行した板前の味を、一口舐めるだけで完全再現できてしまう俺は、料理の世界では神扱いだった。

 

本来なら、うちの実家レベルの大きい旅館の料理長を務めるならば、親父並みに修行しなきゃならないはずだろ?

 

親父は、調理師の専門学校を出て、板前として十五年以上の修行を積んでから、料理長になったんだぜ?

 

それを、俺は、たったの三年の修行を終えれば、後継として完璧だと言われたんだ。

 

しかも俺は、普段は、旅館で出す筈もないような洋食ばかり作って遊んでるのに。

 

そんな俺だが、この世界に来てスキルを手にし、料理をしていると、もっともっと料理が上手くなっていく。

 

そもそも、そんな急に上手くなったと自覚が出るのがおかしいんだ。

 

年単位で包丁を握って、ふとしたある時に、「ああ、上達したな」と思うのが普通……。

 

それが最近は、毎日、一日一日毎に上達、否、進化しているという自覚があるのだから恐ろしい。

 

前に、リンドが、良くあるトンデモグルメマンガみたいな超能力料理ができるようになるんじゃないか?みたいなことを言ってたが、その可能性はあり得るレベルだ。

 

ま、しばらくはレベル上げと金稼ぎを兼ねてホットドッグ屋だな。

 

 

 

そうして、一週間が過ぎたある日……。

 

ホットドッグ屋の屋台の前に、やたらと豪華な馬車が停まった。

 

「あ、あれは……!」「お貴族様じゃねえか……?!」「ゴルディアス家だ……!」

 

おーっと?

 

我の客が、モーゼのアレのように店の前から消える。客の海が割られた。

 

そして、馬車の扉が、御者の手によって開かれる。

 

そこから降りてきたのは……。

 

「「……ヅカじゃん」」

 

某男装歌劇団のような、目鼻立ちがひっじょーーーにくっきりとした美女だった。

 

いや、おっぱいがあるから女ではあるだろう。それは確実なはずだ。

 

だが、あの顔。

 

中性的美男子です!と言っても通用するような顔立ち。

 

服装もドレスではなく、将校の軍服のようなもの。

 

おまけに、帯剣までしているのだというのだから、ひょっとしたら、おっぱいのある男なのかもしれないとすら思わせられる。

 

年齢は俺と同じくらいだろうが、その威厳っての?オーラから、大人っぽく見える。

 

俺の前に立ったヅカ貴族女は、その、男のように薄い唇をゆっくり開いた……。

 

「……君が、ホットドッグ屋の店主だろうか?」

 

おっほ。

 

「何だこのハスキーボイス」

 

「宇宙世紀のミンキーモモかな?」

 

俺達が思わず呟いた。

 

「……?」

 

怪訝な顔をする貴族女。おっと、いかんいかん。

 

「はい、私がホットドッグ屋の店主です」

 

シツレイは良くないからな、ちゃんと答える。

 

「おお!そうか!良ければ、この後、私の館にご足労願えるかな?」

 

うーん……。

 

これ、実質断れないやつだろうな。

 

まあええやろ。

 

今のところ、特にデメリットはないし。

 

料理作れ!とかなら、適正価格を払って貰えば別に構わんよ。

 

「後と言わずに今すぐ行きますよ。貴族様をお待たせしてまでホットドッグを求める民はここにはいないでしょうからね」

 

俺がそう返した。

 

「ふむ……、そうか。であれば、私の執事の案内の元、館に来てくれたまえ。屋台の撤収などもあるだろうからな」

 

貴族女はそう言い残して、馬車で去っていった……。

 

で、俺達は、残った執事について行くことに……。

 

「では……、撤収作業に入っていただいてもよろしいですかな?」

 

白髪の執事がそう言った。

 

「ええ」

 

俺は、屋台をキャンピングカーに変化させる。

 

「こ、これは……!」

 

「乗ってください、行きますよ」

 

 

 

道中、執事に色々と話を聞いた。

 

まず、俺を呼びつけたあの貴族女は、ここ、『ゴルディアス辺境伯家』の長女にして次期当主である、『ブリュンヒルデ・フォン・ゴルディアス』と言うらしい。

 

俺を呼びつけた理由は、料理に興味があるからだとか。

 

今のところ、問題ないな。

 

何もおかしなことは言われてない。

 

それどころか、この執事は低調な物腰を崩さないし、平民である俺に礼の言葉まで言った。

 

ナーロッパでは、貴族が割と下手に出てくるか、クズ貴族が暴れるかの二択だよな。

 

でも、本来のヨーロッパでは、貴族ってのは「青い血」……。

 

要するに、平民とは全く別の上位者であるんだよな。

 

ああ、いや、人種とかそう言う話じゃなく、権力的な意味で。

 

ほら、日本だって、侍が平民を無礼打ち、切捨て御免とかあったろ?

 

そんな感じで、貴族ってのは、平民なんてどうとでもできる立場にあるんよ。

 

警察権とかそう言う話じゃなくて、「偉いから」「格上だから」ある程度何でもしていいってこと。

 

現代じゃ、「無礼だから」って理由で殺されたりはしないだろ?でも、このナーロッパの貴族ならそれができるんだよ。

 

そんな偉い人の遣いであるこの執事が、中々に低姿勢であるってのはどう言うことなのか……。

 




なーんでダラダラ小説を書くだけで生活できるような世の中じゃないんですかね?

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