ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あーあ。

マッチョでイケメンのお姉さんに養われてぇなあ。


15話 異世界の食文化はボロボロ

えー、それで。

 

今回のヅカお嬢様の依頼なんだけど……。

 

内容は、『近衛部隊百人への食事提供』でした。

 

量より質を選んだみたいやね。

 

「はえー、すっごい。近衛部隊ですってよ奥さん」

 

「近衛部隊?」

 

「せや、何かこう……、ロイヤリティがロイヤルな感じの人達なんだとさ」

 

「やっぱりアレかな?熊の毛皮の帽子に赤い上着なのかな?」

 

「ブリテンゥー!」

 

「ジェントルマン・アット・アームスがかっこいいと思います」

 

「ワイトもそう思います」

 

リンドと雑会話をしながら、仕込みを開始する。

 

今回はね、百人にそれなりの質の料理を提供する訳で。

 

で、お相手は兵隊さん。

 

となると、やっぱり食うだろうなあ。

 

でも、何を作るかはもう決まっているし、何を作るか悩む必要もない。

 

何故なら、この世界の料理は不味いからな!

 

近衛兵を集めるのに一日待たされたので、その時に貴族の食事を食べさせてもらったんだが、まあ不味い。

 

貴族の配下の料理人はまあ、俺から言わせれば色々と信じられない失格!ってレベルではあるが、まだ、「なるべく新鮮で衛生的な食材を使おう」という最低限の意識はあるようだ。

 

この国、酷いところでは、客が残したスープを鍋に戻して、また客に出すみたいな荒業を披露してくる飲食店が山ほどあるからな。

 

……でも、日本も昭和の頃はそんなことが割とよくあったらしい。

 

俺のじいちゃんの話なんだが、ラーメン屋でラーメンを食べたら、胡椒を入れてないのに胡椒の味がしておかしいな?と思ったそうだ。で、店の裏を見たら、客が残したスープを再利用していたシーンを見た……、とか。

 

食品衛生法にガトリングガンを撃ち込むかのような無法無法アンド無法!

 

いやぁ、恐ろしや。

 

この恐ろしいほどに意識が低い料理人達が扱っている食材もまた、恐ろしいほどに質が悪い!

 

肉や魚、野菜は、この城郭に囲まれた都市に運び込まれるまでに長い時間をかけているため、腐りかけだ。

 

食べるとなると、殺菌の為にくたくたになるまで煮込まなければならない。

 

そもそも、塩漬けや干物に加工されるのが常。

 

衛生的にも鮮度的にも、生で野菜を食べることはできない。

 

また、どうやら俺の思い違いではなく……、この世界には『動物がいない』ようだ。

 

馬車を牽いたり、農耕に使ったりするのは、陸鳥や陸蜥蜴と呼ばれる『モンスター』で、食肉もそのモンスターの肉であることが殆ど。つまり、牛や馬はいない。

 

通りで、リンドの連れている騎士団の馬が、奇特な目で見られてる訳だ。

 

そして……、このモンスターの肉ってのがクソ不味いんだなこれが!

 

ジビエの悪いところを煮詰めたみたいな肉ばかりなんだ!

 

野菜も、これもまた、俺の知る野菜は『存在しない』んだよ。

 

未処理の山菜のようなえぐみの塊!

 

総じて、とても人の食えるもんじゃない味だ。

 

ああ、それと、地球の豚肉が『天龍の肉』とかになってる!ってことは分かったんだが、どうやらその辺にも色々な思い違いがあった。

 

天龍=豚肉ではない、とのこと。

 

即ち、この世界では、空を飛び火を吹き、あらゆる武器を弾く強固な鱗を持つドラゴン……、天龍(スカイドラゴン)という強力な力を持つモンスターが存在するんだとさ。

 

だけど、その肉は、俺達の世界、地球での豚肉と全く同じものってことらしい。

 

つまり、バグみたいなもんだね。

 

本来なら、天魔料理長はこんなに強力な職業じゃないんだろうな。俺という、幼い時から各国を巡り、あらゆる食材に触れてきた人間だからこそ……、ってことなのかも?

 

それだけじゃなく、この世界の人々は何でも食う。

 

腐りかけの肉は当然として、デカい虫型のモンスターやその幼虫、卵。

 

家畜モンスターなんて、脳味噌や目玉まで全部食うらしい。血も飲むそうだ。

 

腐ったものも割と食うらしく、孵化しかけの鳥の卵、蛆が湧いたチーズなんかは蛆を指でピッと払って食べてしまうそうだ。

 

何ですかこれは?地獄かな?

 

じーごーじーごー地獄かな?鬼いさん呼んできてー。

 

まあそんな訳だから、この世界の人達は割と何でも食う。食わないと生きていけない。それくらいに食うものが少ないのだ。

 

納豆もいけるんじゃねえかなこれは……。

 

文化的なものもあるから差別をしようとは思わないが、人間の腕くらいあるミミズを輪切りにして焼いて食ってたのを見た時には、「ああもうこれ大体なんでも行けるんじゃね?」と思ってしまった。

 

もしかしたら美味いのかな?と思って、ミミズの輪切りを買って食ってみたが、まあうん。酷かったね!

 

そんな感じで、何を出しても喜ばれそうな雰囲気を俺は感じている。

 

ただ……、俺がここで、『鹿肉のロティベリーソースがけ季節のガルニチュールを添えて』みたいな感じのことをやったら、「なんだこれ、オシャレだけど少ねーぞ!」みたいな感じになりそうなのよね。

 

ヅカお嬢様にコース料理を出した時は、コース料理であることを説明して、少ない量の料理を次々に出したから喜んでもらえた感がある。

 

だが、次の客は荒くれ兵士。

 

ガッツリ食える一品ものと、何か副菜を二、三品……、ってのがベストだと俺は見ている。

 

メニューはこうだ。

 

前菜として『蒸し鶏のサラダ』に。

 

『牛タンのシチュー』と……。

 

『ペンネボロネーゼ』をメインディッシュに出しておこう。

 

付け合わせに『ガーリックトースト』も。

 

そしてデザートに『苺のタルト』で行こう。

 

ヅカお嬢様の話によると、近衛部隊は、日頃から厳しい訓練を受けているエリート部隊らしくて、その食事量は自分の倍ほどはあるとかなんだとか言っていたな。

 

となると、常人の三倍は作らないと拙いだろう。

 

煮込みは時間がかかるし、今から仕込みをしてちょうど間に合うくらいだな。

 

パンの仕込みをやらなくて良いのは助かる。

 

ああ、パンやチーズなどの加工食品は、そのまま召喚できるらしくてな。

 

まあ、パンは自分で焼いた方が美味しいし効果が高いんだけど、今回は勘弁してくれ。

 

百人分のパンを一気に焼くとか、そんなデカい窯はまだ出せないんだ。

 

さて、仕込みはこんなもんかな。

 

そうこうしているうちに、近衛兵とやらは全員集まっているみたいだし。

 

じゃあ、リンドの黒十字軍に給仕をやらせて、と。

 

さあどうぞ!

 




んもー、次で書き溜めは無くなってしまうのですわよー。

偏屈提督投稿して!と言われましても、偏屈提督は十話しか書けてないわあ。

もうマジで誰か俺の代わりに書いてくれんかな……。

次の次からは偏屈提督行きましょうか。

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