ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

1100 / 1724
体調がdeath。


20話 チートは気持ちいい

さて、村だ。

 

モリン村と言うらしい。

 

宿場町としてそこそこに栄えているそうだな。

 

中世ヨーロッパと言わずとも、このくらいの世界観は人心の荒っぷりは世紀末並みと評価できる。

 

よく、懐古おじさんが、昔は良かった的な世迷い事を呟くことが多いが、実は昔の方がクソなんですね(メンタリスト)。

 

なーんか知らんけど無条件に人の善性信じちゃってるパープリンがたくさんいらっしゃるが、人間とは本来カスなのである。

 

このくらいの時代の人々は、村人でも、旅人を殺して身ぐるみを剥いて後は知らんぷり……、みたいなことを村ぐるみでやる。平気でやる。

 

貧すれば鈍すると言うべきか、貧乏だと善悪を判断する道徳観なんて身に付けられないのだ。

 

我々日本人は豊かだから他人から奪わずとも生きていけるので、他人から奪うことは悪いことだと教えられて育つ。

 

だが、こういう時代の人々は、他人から奪ってでも生き延びることを学んで育つのだ。

 

……まあ、このモリン村は、ゴルディアス領の地図にも明記されているちゃんとした村であるからして、村ぐるみの追剥行為などはやらないみたいだが。

 

とにかく、他人の善性をアテにして動くには危険過ぎる世界だってことよ。昔のTRPGみたいにGMが積極的にプレイヤーを騙してくる世界だと思った方が良いってことだ。

 

 

 

はい、そんなこんなで村の中に案内された俺達。そこで……。

 

「あんたが商人さんかね?」

 

と、三百六十度どこから見ても村長にしか見えない村長が俺に語りかけてくる。

 

禿頭に白髭の、曲がった腰を木製の杖で支えた老人。

 

村長だ……、絶対に村長だ……。

 

「ああ、あんたは?」

 

「村長のダンプ・モリンじゃ」

 

やっぱり村長だ……。

 

「俺は商人のケンウェイだ。塩とエールと、あとはちょっと珍しい食い物くらいなら売れる」

 

「ほう、そりゃ助かるぞい」

 

そんな訳で、村の真ん中で品物を並べる。

 

持ち込んだのはもちろん、岩塩だ。

 

真っ白な海塩なんて、この世界にはまだないからな。

 

それと、エール。

 

ビールは流石にね。

 

エールとラガービールは全然違うぞ。

 

それとウォッカもあえて安っぽい瓶に詰め替えて販売。

 

あとは、木彫りの兵隊の模型とか、ボールとか?安物の万華鏡くらいは置いても良いかな?

 

いやー、やっぱりね、俺も永遠に生きられる訳じゃないからさあ。

 

俺の召喚能力でしか手に入らないものをアテにして生きていくとか、社会として健全じゃないでしょ。

 

……ん?

 

そういや、地球で『エリクサー』と呼ばれる薬草酒が売ってたっけ?

 

エリクサー召喚、と。

 

「ヨミ、これ鑑定して」

 

「はい、『鑑定』!……ヒェッ」

 

おっ、どうしたどうした?

 

「えっ、ええと、エリクサーです……。一口飲めばどんな怪我や病気もたちまち快癒し、怪我をしていないときに飲めば五歳は若返るという、伝説の秘薬です」

 

うーん。

 

「わりぃ、おれ、死なねぇわ」

 

「麦わらァ……!」

 

「人の夢は……、終わらねェ!!!どん!!!」

 

「世はまさに大航海時代!って言うけど、この世界はまだ羅針盤ないから外海に出れてないらしいよ」

 

「ほーん?ならもう大後悔時代やな」

 

「それは草」

 

的確にチャチャを入れてくれるリンドには感謝しかないな。

 

それにしても、これで殺されない限り不老が実現されたんだが……。

 

とは言え、考えは変わらないな。

 

奢侈品を中心に、珍しいものやちょっと便利なものを金持ちを中心に売る。

 

俺がいなけりゃ世界が回らねえ!みたいのは駄目だね、駄目よ、駄目なのよ。

 

それは、俺の責任がーとかそう言う話じゃない。

 

ヤバくなれば逃げちゃえば良いんだし、そもそも、市場やら何やらが破壊されても、生活に必要なもの全てを自弁できる俺達には関係ない。

 

だが、別に俺は、偉くなったり、市場を破壊して悪の大王になったりとか、そう言うのには一切興味がないのだ。

 

世の中には、意味もなく経済やら何やらを破壊して遊ぶ変態もいるのかもしれないが、少なくとも俺はノーマルなので。

 

もしも、俺が俺しか作れない便利な品……、例えば紙とかを国中に独占して流通させたとするじゃん?

 

そしたら、世の中の人々は、お高い羊皮紙よりも紙を選ぶよな?

 

はい、この時点でダンピングです。市場は大荒れ、羊皮紙職人が何人か首吊ります。

 

で、上手い具合に紙を流通させたとするじゃん。そしたらまあ、安いし軽いし薄いし、便利だから大流行するやろなあ。

 

そして、もしも、俺に何かあって紙の流通がストップしたら?

 

もう非難轟々ですわ。必需品になったものの生産が完全ストップとか、もういろんなところが悲鳴を上げるでしょ。

 

異世界で商売してチート!なるほど、やってる本人は気持ちええやろな。

 

でも、異世界人が欲しいものはチートな商品ではなく、教育や知識と言った目に見えないもんなんやで。

 

まあ、こんな感じでだらだらなんか言ってたけど……。

 

「ほらほら、見てみろ!ドワーフでも酔っぱらう火酒だぞ!」

 

「くれ!」「買うぞ!」「一本くれ!」

 

チートは気持ちいいので、自重はあんまりしませーん!

 

まあ、食い物関係なら食ったらなくなる訳だしセーフやろ!




死にたい、死にたい!

あーーー。

やる夫スレのまとめられてない短編集とかやっぱおもしれぇなー。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。